ついに発売の日を迎えた注目のシリーズ最新作。世界に通じる"ジャパニーズ・ダークヒーロー"を目指して制作された本作には、さまざまな意図が込められている。いまの時代に向けた新たな『NINJA GAIDEN』とは? 発売後だからこそ語れる想いをプロデューサー早矢仕氏に聞く。

"HERO"に込めたこだわり

ダークヒーローの頂へ 解き放たれた孤独の超忍『NINJA GAIDEN 3』 よりぬきファミ通Xbox 360【5月号】_01
コーエーテクモゲームス
執行役員
Team NINJA
プロデューサー
早矢仕洋介氏

──今作はプレイスタイル"HERO"が入ったことで敷居が低くなった印象ですね。
早矢仕 『NINJA GAIDEN』シリーズは、アッパーバージョンも含めるとすでに何作もリリースされている作品です。だから、それらをすべてクリアーしてくれた方や途中で挫折された方、そもそもプレイされたことがない方などいろいろな方がいて、皆さんのスタートラインがまったく違います。だから、ノーマルの難度をどのくらいにするかという問いに100点の答えがなくなってしまったんです。その正解がないのであれば、われわれが考えるノーマルの難度を提示したうえで、それが難しいと感じる方に対しては、まったく別軸でサポートしてあげようと考えました。これならば、作品に初めて触れる方たちも含めて、皆さんに同じ体験としてゲームを遊んでもらえるのではないかと思ったんです。

──被ダメージが減るとか、敵が手加減するといった調整とは別物ですよね。
早矢仕 敵の調整はノーマルといっさい変わっていませんし、プレイヤーの皆さんが押したボタンなどもすべてそのまま生かしています。やはりアクションゲームなので、敵を斬るその操作に関してはすべてプレイヤーの皆さんに体感してもらいたかったんです。もし「軟派になった」と思われている方がいるのであれば、決してそれだけではないというのはお伝えしたいです。

──「イージー」と呼称しなかったことにも理由があるのでしょうか?
早矢仕 選ぶことをネガティブに考えてほしくなかったんです。イージー、ノーマル、ハードと並んでいた場合、イージーを選ぶのってプライドとして少し気が引けるじゃないですか(笑)。だから、プレイスタイル"HERO"というのはあくまでもヒーローのように活躍できるモードであって、『NINJA GAIDEN』としての根幹、いちばん大事なチャレンジングな部分は残っていることを示したかったんです。難易度を選択する画面で、ヒーローとノーマルを横一列に並べたのも、どちらが上でもないよという思いからです。やっぱりプレイするからには絶対に最後まで遊んでほしいし、プレイスタイル"HERO"にはデザインを含めてわれわれからのメッセージをたくさん込めています。

アクションジャンルの一歩先へ

──ストーリーモードは、戦闘と戦闘のつなぎや途中で挿入される演出が独特で、とても印象に残るものでした。
早矢仕 ひたすら先へ進むことだけが目的のアクションゲームにはしたくなかったんです。もちろん本作にもたくさんの戦闘がありますが、それをひとつずつ乗り越えていく遊びはそのままにしておいて、それ以外の部分で、この先はどんな展開が待ちかまえているんだろうとか、どんなステージがあるんだろうとか、物語はどうなってしまうんだろうとか、そういう動機づけをしようと意識して作ったところはありますね。だから、「最後まで一気にクリアーしてしまいました」という声をいただいたときは、われわれの狙いがしっかり伝わったんだなという思いで、すごくうれしかったです。

──ゲームの世界に入り込んでいく感覚もすごくありました。
早矢仕 たとえば、アクションゲームの中には、ステージをクリアーすると評価画面のようなスコア表示がされるものがありますよね。でも、これって物語から一度プレイヤーを寸断してしまっているようで、没入していくときの妨げになっているような感じがしたんです。ショップ画面のようなものも同じで、今作のストーリー中にはこういった要素を意図的にいっさい排除しています。その結果、今回のようなストーリーモードができあがっています。

リュウ・ハヤブサの新たな側面

──今作ではリュウ・ハヤブサの人物設定や世界観がかなり現代風にアレンジされていますが、これはどうしてですか?
早矢仕 映画とかでもそうですが、昔かっこよかったものが時代の流れとともにいつしかダサく見えてしまうことってあると思うんです。『NINJA GAIDEN』も、忍者がマスクをして忍んで何も語らずに殺すというのは確かにかっこいいんですけど、現代の人たちの感性で見たときに少しズレがあるんじゃないかなって。だから、いまこの時代に、かっこいいと思えるような作品にしようと考えて、今回は"忍者"リュウ・ハヤブサではなく、"人間"リュウ・ハヤブサを描こうと思ったんです。

──物語に登場する隼の里での描写も、そういったところを意識して?
早矢仕 人間生きているからにはふれあいや人間関係で成り立っているわけで、家族が会話をしているようなシーンがあればグッと人間味が出てきますよね。隼の里では、村をただ歩いて回るだけなんですけど、忍者としてではないハヤブサの一面が見られるシーンになっていると思います。

──今回、新たな一面を描くことに対して、従来のファンからの否定的な意見を心配はされませんでしたか?
早矢仕 心配しましたね。だから、今回シナリオ原案をファミコン版の『忍者龍剣伝』を作られた加藤正人さんにお願いしているのは、じつはそれが大きな理由です。そもそも生みの親が書いたものを納得できないとは言わせないぞと(笑)。もちろん書いていただいたものをそのまますべて使っているわけではありませんが、いままでなかった側面を描くときに、やっぱりお手伝いをしていただけたのが大きかったです。

── 登場人物の中では、ミズキがリュウ・ハヤブサにとって大きな役割になりますが、このキャラクターの設定については?
早矢仕 今回の物語には、ハヤブサをサポートする役が必要だったので、世界観にマッチする形で自衛隊のヒロインとしてミズキを登場させています。ただ、いきなり知り合った女性のために命を懸けて戦いますっていうのはちょっとおかしいので、ハヤブサ自身が自分の意思によって行動できるような何かきっかけが欲しかったんです。その存在に、じつはこれまでずっと公開してこなかった女の子がいます。ここにひとつ仕掛けがあって、このシリーズはヒロインがいつも金髪なんですね。そして、この女の子も金髪です。つまり、今回は彼女こそが本当のヒロインで、そういう意味で言うとミズキはヒロインではないんです。

システムを変更した理由

──システム面では前作から大きく変更になったものもありますが、これはなぜ?
早矢仕 まず忍法から言うと、前作では使用回数に制限があるものだったので、なぜか使うときにネガティブな感情が付いてくるんです。使えば強力なのに、けっきょく使わないでクリアーしてしまうようなことって誰もが経験していると思うんです。だから、もっと気持ちよく使えるものにしたいと。それで考えたときに、身近な例で『真・三國無双』シリーズの無双乱舞の感覚はいいなと思ったんですよ。だから、とにかく忍法自体をよりポジティブな印象にしたかったのがいちばん大きいです。

──忍法で体力を回復させる仕様もその時点で構想されていたのですか?
早矢仕 作りながらベストな答えを探しているうちに、忍法で体力を回復させるのがいちばんよかったというのが正直なところですね。今作では回復アイテム自体をなくしているので、ゲームデザイン的に戦闘を進めると体力がジリ貧になってくるんです。だけど、そのあいだにきちんと気力ゲージを溜めて忍法を使うことで、体力が回復するうえに形勢逆転もできる。こうなるといろいろなことが紐づいていって、敵によって気力ゲージの溜まりかたを変えたりすることで、戦闘における戦略の幅が広がっていきました。

──絶技も大きく変更になりましたね。
早矢仕 これまでのシステムは、絶技→絶技→絶技……という、いかに絶技をつないでいくかの戦いかただったんです。でも、せっかくの刀アクションなのに絶技だけで戦闘が終わってしまうのはもったいないというのがまずありました。そこで、敵を倒した数を条件にして絶技を使えるようにして、戦い→絶技→戦い→絶技……という流れを作るようにしたんです。ただ、これをずっと同じテンポでやり続けると飽きてしまうので、ストーリーが進むに従って絶技が溜まる間隔が短くなっていたり、一度に倒せる敵の数が増えていったりしています。これは、右腕の呪いが進行しているからというちょっとした裏設定もあるんですけど、こういったことをわれわれの思うように調整することができたんです。絶技をいつ使うかという戦略が生まれるようになったこともいいところです。

──弓の仕様についてはいかがですか?
早矢仕 このゲームはあくまでも近接アクションなので、戦闘のあいだのアクセントとして機能させることを考えて作っています。近接戦闘だけだとどうしても同じテンポになってしまいますから。本当に1秒、2秒のスキの中で、遠距離からジャマをする敵を先に倒すか後回しにするかという駆け引きを楽しんでもらうためのものです。そのために、弓で攻撃したい敵は明確に配置されてあって、構えるといちばん遠くの敵にロックオンするようにしています。

──新しく加わったシステムとしては断骨がありますが、これを入れたのは?
早矢仕 ソードプレイのアクションゲームって、もう何十年もの歴史があります。でも、空振りしたときのモーションと、人を斬ったときのモーションって、敵側のリアクションは違うんですけど、プレイヤー側っていっさい変わらないですよね。それをデザイン上もう少しリアルに表現できる要素がないかと思って取り入れたのが断骨です。これはヒットストップを使って表現しているゲームも多いのですが、さらに上を考えたときに、時間を止めてもう一回ボタンを押させるというシステムに行き着きました。いろいろ試した結果、最終的にプレイヤーの操作と斬った感覚にすごく一体感が出せたと思っています。でもこれを最初に開発スタッフに伝えたときは非難轟々でした(笑)。『NINJA GAIDEN』というほかのゲームにはないハイスピードなアクションゲームで、なんで時間を止めるんだって。だけど、速ければいいというものではないし、速いゲームだと思わせたいのなら、緩急で勝負しようという話をしたんです。

──寄りの演出も迫力がありますね。
早矢仕 ほかのアクションゲームとこのシリーズの何が違うのかを突き詰めたときに、やっぱり刀にしかできない迫力があると思ったんです。斬ったときに敵と顔が密接するほどの距離、ここまで寄れるアクションゲームはほかにはないだろ! という自信は持っています。

──逆に、前作から絶対に変えられない部分もあったのでしょうか?
早矢仕 いちばんにあったのは、バイオレンスというテーマから絶対に逃げてはいけないなということですね。だからといってゴアな表現を追求すればいいのかということではまったくなくて、『2』が見た目に訴えるものだったとすれば、『3』は心に訴えるものにしようという気持ちでした。

今後の展開について

──ダウンロードコンテンツなど、今後の展開についてお聞かせください。
早矢仕 今回の『NINJA GAIDEN 3』では刀にフォーカスした物語で、ハヤブサが使う武器も刀のみになっています。とはいえ、このシリーズはいろいろな武器を使ってクリアーする楽しみかたがもちろんあったので、そこに関してはダウンロードコンテンツで、段階的に無料で配信していきたいと思っています。なぜこういった形を取らせていただいたかというと、ストーリーモードを含めて、やっぱり本作を初めてプレイするときは刀で最初から最後まで遊んでもらいたかったんです。そうでなければ、本当に伝えたかったことが伝わらなくなってしまう。だから、皆さんが一度遊び終わったころに、追加の武器を配信させていただきますので、そこでもう一度チャレンジしようという思いを持っていただければうれしいです。あとは、せっかくNINJA TRIALSというモードもありますので、過去のボスキャラクターなどもどんどん出せればいいなと考えています。

──それでは最後に読者へのメッセージをお願いいたします。
早矢仕 このシリーズは、そもそもその時代にいちばんおもしろいアクションゲームを作ろうとして始まったシリーズです。今回の『NINJA GAIDEN 3』に関しても、いい意味で過去にとらわれない、いまの時代のアクションゲームとしていちばんの形に仕上がったと思っています。ゲームが大好きで育ってきたのに、満足のいくゲームに出会えない大人の方たちにぜひプレイしていただきたいと思っています。

KEYWORD:冒頭シーン

ダークヒーローの頂へ 解き放たれた孤独の超忍『NINJA GAIDEN 3』 よりぬきファミ通Xbox 360【5月号】_02
発売までひた隠しにしてきた冒頭シーン。リュウがマスクを脱ぐ描写をいきなり持ってきたのは、「彼の"忍者"ではなく"人間"の側面を描いた作品であることをアピールするため」(早矢仕氏)。このシーンの視点、演出からも制作者の意図を汲み取ってほしい。

KEYWORD:命乞いをする兵士

ダークヒーローの頂へ 解き放たれた孤独の超忍『NINJA GAIDEN 3』 よりぬきファミ通Xbox 360【5月号】_03
「この先に進んでいるプレイヤーは、皆さんが自分の意思でボタンを押している。その行動に対して、何かを感じてもらうのが大人のエンターテイメントとして正しいありかただと思う」(早矢仕氏)と、プレイヤーへの深いメッセージが込められたシーン。

 

●表紙:『ドラゴンズドグマ
本誌読者にも非常に人気が高いこのタイトルが表紙! 5月24日発売予定の『ドラゴンズドグマ』は誌面でも最新情報を掲載。ディレクター伊津野英昭氏のインタビューもあり!

●特別付録1:『Kinect スター・ウォーズ』 "オーラ・シング" ダウンロードコード
4月5日発売のKinect専用ゲーム『Kinect スター・ウォーズ』の"ジェダイ デスティニー"モードで使用可能なキャラクターのダウンロードコードが本誌だけの特別付録で入手可能!そのキャラクターは"オーラ・シング"。『エピソード1/ファントムメナス』に登場した賞金稼ぎだ。このチャンスを逃すな!
※本コードは、2012年4月5日よりご使用いただけます。

●特別付録2:NINJA GAIDEN 3 攻略ガイドブック
3月22日発売『NINJA GAIDEN 3』を本誌では特別付録で徹底攻略!敵キャラクター別に倒し方を伝授、NINJA TRIALSもミッションごとにその攻略法をお届け!

●特集:日本人クリエイターによるKinectの作りかた
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