『GRAVITY DAZE』PS3用ソフトからPS Vitaへの転換など開発秘話が満載【PS Vita ゲームカンファレンス】

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ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンが2012年3月28日に実施したゲーム開発者などを対象に行われた技術交流会。ここでは、『GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動』の開発スタッフが行ったセッションで、同作の制作秘話がお披露目されたので、その内容をお届けしよう。

●PS3並の開発が可能だったPS Vitaだったからこそ実現できた『GRAVITY DAZE』

 ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパン(SCEJ)は2012年3月28日、同社本社でPS Vita ゲームカンファレンスを開催。これは、ゲーム開発者などを対象に行われる技術交流会で、複数のゲームメーカーがプレイステーション Vita(以下、PS Vita)用ソフトの開発事例を紹介するという試み。これまでは関係者にのみ公開されていたが、今回初めてメディア向けにもその内容が一部明らかにされた。ここでは、SCEJの『GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動』の開発スタッフが行ったセッションで、同作の制作秘話がお披露目されたので、その内容をお届けしよう。


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 ソニー・コンピュータエンタテインメント JAPANスタジオ インターナルデベロップメント部の五十峯誠氏によると、『GRAVITY DAZE』はフレンチコミックのエッセンス(+日本アニメのキャラクター性、さらにアメコミのヒロイズム)と重力方向を自由に定義できるデザインというふたつをコンセプトに、2008年夏から制作を開始(下記は2008年に制作されたコンセプトムービー)。当時の映像を観るとグラフィックやそのタッチも『GRAVITY DAZE』最終形とは異なるものの、その世界観は初期段階からブレていないことがわかる。このコンセプトムービーは、開発中にブレが生じたときの指針にもなるので、かなり重要であったという。


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▲オープンワールドのコンセプトには、“ここに「実在する世界がある」と感じさせる”、“ユーザーに情報を与え続け、覚さめさせない”、“「背景」と「感覚的リアル」をリンクさせる”などとあったという。

▲重力を“デザイン”。

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▲見えるところには行けるようにする。

▲至るところに立てるする。

▲存在するものには干渉できるようにする。

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▲空に色を入れる。

 ただ、この時点ではプレイステーション3用ソフトとして制作が進められ(上の映像もプレイステーション3なら実現可能であろうという予測のもと、Mayaで作成されている)、プレイステーション Vita用に方向転換したのは2009年のことになる。その時点では、プレイステーション Vitaという名称はなく、チーム内でも“新しい携帯ゲーム機”という程度の認識。さらに一旦チームは縮小され、基礎研究と企画を並行して進めることになったという。ちなみに、プレイステーション Vita用ソフトへの変更を提案したのはソニー・コンピュータエンタテインメント ワールドワイドスタジオ プレジデントの吉田修平氏だったとのこと。


GRAVITY DAZE/DSC_0201.JPG

 ここで、リードプログラマーを務めた横川裕氏にバトンタッチされ、プログラマーの視点からの『GRAVITY DAZE』開発秘話が語られた。プレイステーション3用ソフトとして開発がスタートした2008年は、プレイステーション3が発売され2年近くが経ち、同ハード向けソフトの開発のノウハウがたまり、技術もこなれて開発しやすくなってくるころだ。そんなタイミングで、完全新規のタイトルを立ち上げるチャンスが生まれ、横川氏をはじめ開発スタッフはチャンスと捉えていたという。当時のプレイステーション3開発上でのプログラム的課題は、オープンワールドをどう実現するか、そのボリュームをどうするか、さらにはそれをどうプログラムするか、の3つだったという。
 だが、プレイステーション Vitaへの移行が決定。同ハード上で『GRAVITY DAZE』を開発するにあたり、何を残して何をあきらめなければならかないか取捨選択する必要があるものの、当時はプレイステーション Vitaの仕様もわからないような状態で「雲をつかむような状態」(横川)だったという。しかも体制を立て直すことになり、チームが縮小された結果、プログラマーは横川氏ともうひとりの計ふたりだけ(最終的にはプログラマーは15人に)となった。しかも、1stパーティの宿命として、現在進行形で進む本体開発といっしょにソフトを開発するだけでなく、その新ハードの特長を提示できるようなタイトルでなければならない。その苦労とプレッシャーは並大抵のことではなかったようだ。


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 プレイステーション3の開発技術をどうPS Vitaに落とし込むか、というのも課題には「ハードが影も形もない状況でしたし、それまでプレイステーション3で作っていたもののテストもしたかったので、まずはWindows PCで開発を進めることにしました」(横川)。サードパーティーならPC環境での開発は珍しいことではないだろうが、ファーストパーティーの開発チームがWindows環境でゲームを開発するという例はあまりないという。だが、そのメリットとして、PCで作ったものに関してはPCですぐに確認できること、開発機をスタッフ全員分用意する必要がない、バグとロジックの峻別がつきやすいなどがあったという。

 ただ、Windows環境で制作していた『GRAVITY DAZE』を、PS Vitaの開発機に落とし込んだ際にも、新ハードということもあり、やはりいろいろ苦労があったようだ。マスターアップまでの苦労としては、最後までシステムのハングアップに悩まされたとのこと(ただし、これはハードのロンチ期ならよくあること)。さまざまな苦労の末に生まれた『GRAVITY DAZE』は、ファーストパーティならではのハードの特長を活かした良作となったわけだが、横川氏がPS Vitaで開発してみて感じたことは、PS Vitaにはさらなる描画解像度向上やロード速度高速化、ボリュームアップなど、まだまだポテンシャルを秘めたハードであり、プレイステーション3用ソフト並のクオリティが出せる携帯ゲーム機だということ。各ソフトメーカーに、PS Vita開発のノウハウがたまり、こなれてきたころ、どんなソフトが出てくるか期待したいところだ。


 このほか、アートディレクターを務めた山口由晃氏によるアートの側面から見た『GRAVITY DAZE』についてが語られたが、こちらはアメリカ・サンフランシスコのモスコーニセンターで開催されたGDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス) 2012のリポート(→こちら)と共通する事項が多いのでそちらを参照いていただきたい。


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▲『GRAVITY DAZE』は2種類のライティングモデル(キャラクターはトゥーン、背景はHDR)が共存。ポストエフェクト(レンダリングのあとに処理を加える、全体のトーンを決める重要な要素)にも多大な時間が費やされた。上はポストエフェクトなし。

▲フォグ追加。

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▲フォグと線描を加えたもの。

▲フォグ、線描、ブルーム処理されたもの。


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