海外RPGで重要なのが、プレイヤーの選択によってストーリーが分岐していくこと。どんな選択を用意し、どう展開させていくかは、開発者の腕の見せどころだ。ありきたりすぎては自由度がなくなっちゃうし、プレイヤーが突飛に感じてしまえば「こいつそんなこと言わねぇだろ!」と思われて没入感を削いでしまう。

 米時間の3月5日から9日にかけて行われた今年のGDCでは、『Fallout: New Vegas』を開発したObsidian EntertainmentのJosh Sawyer氏が、そんなプレイヤーに与える選択肢をテーマに講演を行った。

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賢い選択肢の作りかた――『Fallout: New Vegas』の場合【GDC 2012】_01

 Sawyer氏が問題視したのは、プレイヤーの目指すゴールとゲームデザイナーが考えるキャラクターのゴールが衝突してしまうこと。『Fallout』シリーズのような、クレイジーな世界で、プレイヤーのスタイルも多様なゲームだと、プレイヤーが納得する選択肢をゲームデザイナー側が用意するのは難しい。しかしSawyer氏は、プランニングによって選択の衝突を避けることができるとする。

ステップ1:選択のタイプを決める

 Sawyer氏は、まずその場面で提供する選択のタイプを決めるようにしているそう。選択肢には以下のような属性を想定しているとか。

・限定:小さなひとまとまりごとの選択、短い会話。
・戦略:長期的な結果につながるもの(名声などに影響してくるようなもの)
・予測:プレイヤーの興味をひき情報を与える、因果関係の違いを見せる(非常に重要。犠牲をはらったら何かと相殺していることを感じさせる)。
・認証:プレイヤーが選択した結果を認めてあげること。自分の考えに対して間違った選択をしたと思わないよう、きちんとサポートする。

 そして、どの選択をしても最終結果がおなじではいけないとSawyer氏は語る。とくに、オプションをたくさん用意したいと思って選択肢を増やしてしまいがちだが、やりすぎるとプレイヤーは自分の選択に意味がないと感じ、ダイアログをつまらなく感じはじめると警告していた。

 また、極端な選択の例として、映画『ソフィーの選択』(2人の子供のうちどちらをガス室に送るか選ばされる)などを例示。どちらを選んでも心が痛むわけで、こういった選択肢は望ましくないとのことだった。

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ステップ2:プレイヤーとキャラクターの表現の範囲を決める。

 どんな性質の選択肢を用意するか決めたら、お次は表現の範囲だ。どんなキャラクターを想定するか、どういった種の反応をさせるかを決める。善悪、モラル、スタンス、名声など……。『Fallout』シリーズが対象とする範囲は広大だ。誰でも殺せ、裏切りの裏切りもあり、かと思えば筋書きに沿った反応ももちろん必要で……。キャラクターのプロトタイプを決めると範囲が決めやすいとのこと。

ステップ3:物語のゴールを確立する

 どんな奴のセリフとしてどんな性質の選択肢を出すかが決まったら、今度は語る内容のゴールを決める。ここでよくありがちなのが、ゲーム上必要な情報をセリフのやり取りに入れることだが、Sawyer氏は「情報は感情のコンテンツの中に紛れ込ませるべきだ」とする。プレイヤーは情報が選択肢内に入っているのは好まないので、重要な情報とそうでないものを明確にわけ、その上でどう情報を入れるかを丁寧に検討すべきだと語っていた。また、物語の分岐は多いに越したことはないが、太い枝からたくさん枝分かれするのは良くないとのこと。

ステップ4.上記3つがどう働くかを検討
スタップ5.選択肢となるセリフを散文体で書く

 まとめとして、RPGプレイヤーは“優れた”選択肢を求めており、どんなクレイジーなキャラクターであっても、キャラクターにきちんと合っているかを気にするもので、これがきちんとできているゲームは好まれる。だからこそデザイナーはプレイヤーの求めるゴールと衝突しないよう、プランをもって選択肢の構築をすべきだと語り、講演をしめくくった。

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