GREE Platformで10億のユーザーサービスを作り上げる

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▲GREE Internationalのプロダクトバイスプレジデント、イーサン・ファセット氏。

 2012年3月5日~9日の5日間、アメリカ・サンフランシスコにてGDC 2012が開催された。例年どおり数多くの日本人クリエイターが登壇し、注目を集めたGDC 2012だが、日本のゲーム業界にとっては話題がもうひとつ。グリーがGDCに参加を果たしたことだ。開催3日目の2012年3月7日には、グリー提供によるふたつのセッション“Why Mobile Social Games Need a Platform Now More than Ever”と“Why Mobile Social Platform? A Discussion with Game Developers & Publishers”が行われた。昨年グリーでは、GREE Platformのワールドワイドでの展開を表明したばかりだが、今回のGDCへの参加は、そのグローバル戦略にのっとってのものだ。

 アメリカ、GREE Internationalのプロダクトバイスプレジデント、イーサン・ファセット氏による“Why Mobile Social Games Need a Platform Now More than Ever”は、グローバル戦略を明確にしているグリーが、モバイルプラットフォームの必要性を語るというもの。ファセット氏はまずはグリーを「世界最大のモバイル・ソーシャルゲームプラットフォームの制作会社」と定義し、「日本で8年前に設立されたばかりにも関わらず、国内で約2900万ユーザーを擁する日本のリーディングゲームプラットフォームカンパニーです」と説明した。

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▲グリーの何たるかが紹介された。

 いまや、“フリー・トゥ・プレイ”のゲームが急速に成長しているのは世界的な潮流。ファセット氏は、“フリー・トゥ・プレイ”のゲームはむしろ、ユーザーがゲームに触れる時間を増やすと続けた。 “フリー・トゥ・プレイ”だからこそ多くの人が集まり、そこに価値が生じる。“フリー・トゥ・プレイ”の代表格であるソーシャルゲームが特別なゆえんは、まさにそのソーシャル・ネットワーク性だ。「ソーシャルネットワークはひとつのプラットフォーム形態であり、そこにいるユーザーにもっとも価値があります」とファセット氏。そこでファセット氏が挙げるソーシャルネットワークの優位性は3つ。“ユーザーの獲得”、“ユーザーの維持”、そして“収益”だ。多くのユーザーを獲得しているので各コンテンツのコストダウンが容易になり、ユーザーを維持しているからこそ、口コミ効果などでよい循環が生まれる。再度のユーザー獲得にコストをかける必要がない。そして、ユーザーが獲得&維持できているからこそ収益も向上するという、まさに正のスパイラルだ。

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▲ソーシャルゲームの優位性が語られる。

 そのうえでファセット氏は、「今日、モバイルソーシャルゲームはひとつのプラットフォームに乗っていないと効率よく収益を上げられません」と斬り込む。なぜなら、プラットフォームを使わない場合は、ユーザー獲得のために複数の媒体で広告キャンペーンをしなければならず、効率が悪いからだ。大手ソーシャルモバイルゲーム企業を見ると、DAU(デイリーアクティブユーザー)にフォーカスし、広範囲にアピールする戦略を採用しているのがわかるという。

 それでは、GREE Platformの優位性とは何か? ひとつには、“グローバル展開”。ゲームをワールドワイドで展開でき、高いARPU(加入者ひとりあたりの月間売上高)を実現できる可能性がある。そして、ふたつめが “ソーシャル性”。GREE Platformには世界屈指のユーザー数を誇る、モバイルソーシャルネットワークが存在する。そして最後が“オープン性”。デベロッパーは、クロスプラットフォームを見据えたオープンな戦略が可能になるというのだ。

 「GREE Platformは2011年11月に発表されましたが、2012年第2四半期(4月~6月)にはワールドワイドでの展開を目指しています。今後各地域の市場ごとにパートナーを発表していきますが、日本、中国、韓国についてはすでに主要パートナー様を発表しました。近日中にはアメリカでのパートナー様を発表するつもりです」とファセット氏。そして最後にファセット氏は、「10億のユーザーサービスを作ります」と目標を口にした。ファセット氏のひとことひとことが、聴講したクリエイターには説得力を持って響いたのではないか。

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▲GREE Platformの優位性や立ち位置などが説明された。
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▲すでの数多くのメーカーがGREE Platformへの参入を果たしている。
▲目標は10億ユーザーとの意気込みを見せる。

北米大手パブリッシャーがモバイルソーシャルプラットフォームの可能性を語る

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 続いて行われた“Why Mobile Social Platform? A Discussion with Game Developers & Publishers”は、北米でモバイルソーシャルプラットフォーム向けのアプリを配信しているデベロッパーやパブリッシャーが参加して、「なぜ、モバイルソーシャルプラットフォームで展開するのか?」をディスカッションするというもの。GREE Internationalのマーガレット・トールマン氏による司会のもとTinyのスルマン・アリ氏、SkyVuのベン・ヴー氏、Fluik Entertainmentのビクター・ルーバ氏、そしてCrowdStarのイアン・シャービン氏がパネルディスカッションに参加した。

 「iOSとAndroidを比較すると、Androidがナンバー2のプラットフォームとして急上昇しており、現在収益、保持率とも同じだが、若干Androidのほうが収益は少ないです。Googleもこの分野には投資をしており、Facebookもモバイルに注力しています。何と言ってもフレンドとプレイするのは楽しいし、ソーシャルはゲームメカニズムのひとつになっていますね」とのスルマン・アリ氏のコメントに代表されるように、各社とも積極的に展開しているモバイルソーシャルプラットフォーム。『Social Girl』(⇒こちら)などを展開するCrowdStarのイアン・シャービン氏も「今後はロシア、中国、日本、韓国に進出していく予定です。この分野はiPadやAndroid、キンドルなどプラットフォームが多く競争も激しいので、追いつくのがたいへんです」と語る。

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▲Tinyのスルマン・アリ氏。
▲SkyVuのベン・ヴー氏。
▲Fluik Entertainmentのビクター・ルーバ氏。
▲CrowdStarのイアン・シャービン氏。

 パネルディスカッションは、モバイルソーシャルプラットフォームを中心にディスカッションされたわけだが、「プラットフォームから何を求めるのか?」との質問に対しては、「ユーザーの確保ですね。まあ、これはエンドユーザーが選ぶものですが」(CrowdStar/イアン・シャービン氏)、「プラットフォーム展開をするにあたっては、ツールを慎重に選びます。日本でのローカライズの援助も期待したいです」(SkyVu/ベン・ヴー氏)、「アップルのおかげで誰もがアプリを売ることができるようになりました。アマゾンやGoogleもこれにならいましたが、革新的なものにはなっていません。ユーザーにアプリを見つけてもらうことが重要です」(Tiny/スルマン・アリ氏)といった意見が聞かれた。

 また、クロスプラットフォームのカギとなる戦略については、「アプリを見つけてもらうこと」(Fluik Entertainment/ビクター・ルーバ氏)、「課金からの収益ですね。ユーザーの動向はつねに調査します。あと、売れているデバイスのトップ5には注目しています」(SkyVu/ベン・ヴー氏)、「ユーザーの動向を追うこと。テクノロジーへの投資も必要ですね。支払い方法に支障がなくなることもカギを握るかもしれません。アジアではインストールしたアプリの16%に課金しているようです。日本や韓国ではもはや生活の一部になっていますが、フランスやドイツではまだ弱いです。今後はローカリゼーションにも力を入れていきます」(Tiny/スルマン・アリ氏)とのことだ。

 さらに、「プラットフォームなしでもやっていけるのか?」との質問には、「やはりプラットフォームはすばらしいです。アプリを見つけてすぐにインストールできるわけですから」(Tiny/スルマン・アリ氏)、「プラットフォームはつねにドアが開いているような状態でありがたいです」(SkyVu/ベン・ヴー氏)、「ソーシャルゲームは市場ごとのマーケティング戦略が必要です。そのためパートナーがいないと難しい市場でもありますね」(CrowdStar/イアン・シャービン氏)と、プラットフォームの有用性を認める意見が相次いだ。

 一方では、「この分野は変化が激しいが、1年前に知っておいたらよかったことは?」といった興味深い質問も。それに対してFluik Entertainmentのビクター・ルーバ氏は、「毎週何かしらの変化があり、追いつく努力をしています。アプリはユーザーの動向を分析できるので、配信するときは25%の状態で出して、そこから変更していけるようにしています」と変化への対応を語ったうえで、「リーダーボード(スコアランキング)の大切さを知っておけばよかった」と続けた。さらには、「ユーザーのユニークIDについてもっと知っておけばよかった」(CrowdStar/イアン・シャービン氏)、「マーケティングにもっと予算を取ればよかった」(SkyVu/ベン・ヴー氏)といった切実な意見も聞かれた。

 テーマが多岐にわたったパネルディスカッションだが、いずれもモバイルソーシャルプラットフォームには大きな将来性を感じている点で共通しているようだ。

 さて、GDC 2012では、グリーはキャリアパビリオンにてブースを展開。来場者より広く人材を募った。記者が足を運んでみると、グリーブースには文字通り黒山の人だかりが。そこかしこでグリーのスタッフと来場者らが話しあう光景が見られた。やはり北米のクリエイターにとっても、グリーは注目株のようだ。グリーブースで関係者の人に話しを聞いてみると、「反響は大きいです。みなさんグリーのことをご存じで、興味を抱いてくれているみたいですね」とのこと。また、必要とされる人材について聞いてみたところ、「情熱。Can Do Attitude(何でもできるという姿勢)が大切です」とひと言。今年のグローバル展開に向けて、優秀な人材が続々と集まってきそうだ。

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▲ウエストホール1階のエントランスではGREEの垂れ幕も見られた。
▲人材を募るキャリアパビリオンではグリーブースが大盛況。やはり日本で勢いのあるグリーに対する注目度は高いようだ。