これからのゲーム販売の形はどうなるのか?
2012年3月6日~3月10日(日本時間)の期間、アメリカ・サンフランシスコのモスコーニセンターで開催されたGDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス) 2012。このGDC 2012において、Telltale Gamesのダン・コナー氏が講演を行った。
Telltale Gamesは、2004年に設立されたゲームメーカーで、小売店を通さず、デジタル・ディストリビューション(デジタル配信)でゲームを販売している。
コナー氏はTelltale Gamesとデジタル配信の歴史を振り返る。2004年創立当初、デジタル配信は、ヤフーゲームなどの一部のポータルサイトに限られ、しかもカジュアルゲームが中心だった。しかしコナー氏たちは、“今後デジタル配信は成長する”というビジョンをもっていた。コナー氏たちは、
・ストーリー・ベースのゲームでプレイヤーを引きつける
・小売販売のゲーム並みのクオリティーの高いゲームを作る
・比較的短い時間でプレイできるようにし、低価格で販売
と方針を定め、Telltale Gamesをスタートさせた。
2007年以降、状況は変わる。小売販売のPC用ソフトのマーケットが衰退し、デジタル配信化が進んだ。ゲームのポータルサイトSteamが、サードパーティのゲームの配信を開始した。Xbox Live、PlayStation Network、Wiiウェアがスタートした。
そして現在。PC市場がデジタル配信によって成長。コンシューマーゲームのデジタル配信も順調。さらに、AppleのデバイスとAppStoreによって、ゲームの裾野が広がった。Telltale Gamesも、「Tales Of Monkey Island」(2009年)や「Back To The Future」(2010年)など、多数のヒット作を生み出した。
コナー氏は、デジタル配信が小売販売より優れている点について語る。
・小売販売は資金がないと障害が多い
・小売販売は、これまでにないような新しいゲームに対してのサポートが乏しい
・デジタル配信ではユーザーに直接話しかけることができる
・デジタル配信では、生産数が少なくとも損が出ないビジネスが可能。また、発掘されていないニッチな市場にも進出可能
・デジタルのコミュニティには同じものを好む人たちが集まりやすいので、意見を求められる
・デジタル配信では、経済の動きに合わせて柔軟に調整する、長期的なビジネスが可能
続いてコナー氏は、デジタル配信だからこそヒットしたゲームの例を挙げた。5億ダウンロードを記録した「Angry Birds」や、290万本を記録した「CASTLE CRASHER」などだ。
では、デジタル配信を始めるにはどうするべきか。まずは、ユーザーの行動を知り、分析することが必要。特定の作品のコアなファン、コアゲーマー、一般的なユーザー、誰にどう働きかけるかを検討する。YouTube、Facebook、Twitterなどを利用することも重要だ。
そしてコナー氏はこのようにまとめる。
デジタル・パブリッシングによって得られること
・自分がパブリッシャーになれる
・ユーザーとの関係をコントロールできる
・画期的デジタル・パブリッシングによる機会
・ニーズに合わせた商品を作り、提供できる
・商品を取りまく経済をコントロールできる
デジタル・パブリッシングの課題
・自分がパブリッシャーになる
・マーケティングと広報・宣伝に詳しくなる必要がある。コミュニティ作りへの尽力も必要
・つねにコンシューマーの声に集中している必要がある
・自己統制し、開発効率を上げ、可能売上高を高める
デジタル・パブリッシングの見通し
・次世代のコンソール、PC、デバイスなど、すべてのゲーム機はデジタル配信を基本として作られる
・2015年までに、これまでのようなフルプライスで販売されるゲームの売上は40~50パーセントになる
・マルチプラットフォームでのデジタル配信での大きな収入が見込める
・クリエイターには大きなチャンスと課題が訪れる
ますますデジタル配信が盛んになる今後、各ゲームメーカーはどのような販売方法をとっていくのか……変革の波は着々と迫ってきている。