学生たちの成果を業界のプロが評価

 兵庫県神戸市に校舎をかまえ、ゲーム・IT系からコンテンツ系まで7分野15学科を網羅し、幅広い分野の“プロ”を育成する神戸電子専門学校。年間を通じて185社以上の企業説明会、業界セミナーなどの実施や企業を招いた作品発表会、東京ゲームショウ13年連続出展など業界連携に特に力を入れた専門学校だ。そのひとつである“Digital Works”は、2012年2月17日(金)に、神戸市内にある松方ホールでゲーム業界の関係者たちが審査員として招かれ、開催された。

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▲“Digital Works”には毎回、第一線で活躍する多くの業界関係者が招待されている。

 神戸電子専門学校は、その名前からITやエンジニア系の学校と思われがちだが、ゲーム、サウンドなどのエンターテインメント系や建築、製品デザインなど、7分野15学科が学べる“総合専門学校”だ。短期間で即戦力の人材を育成するためのカリキュラムを備え、各関連業界からの評価も高い。ゲームソフト分野のカリキュラムについては、プログラミング技術指導に注力されており、2年~3年の短期間で集中的に、プロの世界で通用する知識・スキルを磨くことができる。そうした事情を反映して、就職先には大手メーカーやデベロッパーが名を連ねている。この日の会場でも「次代のゲーム業界を担う優秀なクリエーターを一人でも多く見つけよう」と、平日にもかかわらず多くの業界関係者が訪れ、熱い視線を送っていた。

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▲サイバーコネクトツー 曽我氏。
▲ディンプス 田中氏。
▲バンダイナムコゲームス 原田氏。
▲ヘキサドライブ 松下氏。

 Digital Worksは今年で12回目の開催。そのレベルは年々向上しており、一昨年は1年生、昨年度は2年生”の作品が最優秀作品に選ばれている。

↓一昨年度最優秀作品  1年生 チームIMAJINの作品“モノリス”

↓昨年度最優秀作品  2年生 上原 亮太さんの作品“『CUBEs

 今回も、事前に学内審査を勝ち抜いた、上位15作品(1年生6作品、2年生7作品、3年生2作品)がノミネートされた。限られた時間の中、自分たちの作品を的確に伝えなければならないプレゼンテーション形式ゆえ、緊張と闘いながらのアプローチ。もちろん、作品のクオリティだけでなく、アピール力も采配につながるファクターに。
 プレゼンは1年生から始まり、テンポよく進む。1年生の作品は、ゲストクリエイターに「どの作品もアイデア力がある」と言わしめるほど、グレードの高いものばかり。1年間で学んだことを、しっかりカタチにできている印象だ。

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作品名:「ケロ☆たま」
チーム名:迷える子蛙達
発表:二重 達紀さん
作品概要:変身能力で敵を倒して進む2D横スクロールアクション。
作品名:「Sweets Carnival」
チーム名:MatcH
発表:岡田 弘さん
作品概要:お菓子の国をイメージした2D横スクロールアクション。
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作品名:「Plantory」
チーム名:ユグドラシル
発表:小山 周矩さん
作品概要:「ジョウロで水をあげる」それだけの能力で道を切り開く2D謎解きアクション。
作品名:「Get And Away」
チーム名:NONAME
発表:合田 翔さん
作品概要:様々なギミックを利用し、お宝を探し出す2Dトレジャーアクション。
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作品名:「魔法の筆の物語」
チーム名:さにーサイドアップ
発表:中嶋 裕貴さん
作品概要:切り取りや色塗りを駆使し、絵本の中を進む2Dアクション。
作品名:「A.V.S HALYASU.exe」
チーム名:鬼Project
発表:藤村 浩太郎さん
作品概要:電脳世界を舞台に、様々な装備で突き進む2Dアクション。

 続いて、2年生の発表へ。3Dをはじめ、難易度の高いテクニックを用いた作品に加え、コンセプトを堂々と、的確に伝えるプレゼンテーション能力の高さにも圧倒させられる。

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作品名:「Thief And Treasure」
制作・発表:長砂 貴士
作品概要:盗賊が様々な仕掛けをくぐり抜け、宝を探し出す探索アクションゲーム。
作品名:「ビョノビー」
制作・発表:石井 秀和
作品概要:伸び縮みするバネを操作し、拾ったアイテムで足場を作りながらゴールを目指すアクションパズルゲーム。
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作品名:「Land Crawlers」
制作・発表:塩谷 佳明
作品概要:複数の武器を搭載した戦車型兵器でミッションをクリアしていくアクションシューティングゲーム。
作品名:「Gravity Gate」
制作・発表:中村 徹
作品概要:タイムトラベルを駆使し、過去の自分と協力して仕掛けを突破していくアクションパズル。
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作品名:「メリーベアー」
制作・発表:和田 悟
作品概要:クマを操作して箱を移動し、ゴールまでの道筋を完成させるパズルゲーム。
作品名:「スプラッシュ・フェスティバル」
制作・発表:岡原 舞
作品概要:小屋に湧いたブドウモンスター退治し、ワインを生産していくアクションゲーム。
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作品名:「Distorter」
制作・発表:斉藤 綜一
作品概要:空間を歪める銃を駆使して仕掛けを突破し、ゴールを目指すFPS視点のアクションパズルゲーム。

 プロレベルに限りなく近い3年生の作品は、非の打ち所がないほど完成度が高く、プレイヤーを第一に考えたストーリー展開はさすが。ゲームの内容やプレゼン能力はもちろん、バランスのとれたグループワークに対しても、来賓企業から「現場主義的な考え方がすばらしい」と賞賛の声が多数あった。

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作品名:「TAKARA BAKA」
チーム名:モリモとタケダ
発表:森本 章太
作品概要:様々なセキュリティーをかいくぐりゴールを目指す3Dアクション。
作品名:「CoresXcite」
チーム名:GLISH
発表:瀬戸 健太
作品概要:ロボットアクションシューティングゲーム。

 すべての作品発表が終わり、いよいよ最優秀作品の授与式へ。緊張ムードが高まる中、見事最優秀作品に輝いたのは、3年生のチームGLISH(グリッシュ)が制作した「CoresXcite」。学生がつくったとは思えない技術力の高さと、進行スケジュールを見据えたチーム運営が高く評価された。作品は、ロボットシューティングゲーム。敵を攻撃しながらステージをクリアするシンプルな内容だが、試作を重ねてユーザーに響く爆発エフェクトを見せつけるなど、シチュエーションにメリハリをつける表現にこだわっている。また、複数の技法を組み合わせて、表現の幅を広げたテクニックも学生とは思えないほど。得意分野の異なる学生がチームに在籍し、その能力をうまく引き出すリーダーがいるというメンバー構成ゆえに成しえた技だ。

↓本年度最優秀作品  3年生チームGLISH制作の作品「CoresXcite」

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▲表彰式の模様と最優秀賞を受賞したGLISHのメンバー(左から佐藤亮太さん、中野睦海さん、藤川貴司さん、瀬戸健太さん、黒川巧さん)。
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▲チーム代表の瀬戸健太さん(写真左)は「効果音やMAPの配置、ボスが登場するタイミングなど、ストーリーがシンプルな分、ギミックをあちこちに効かせています」とのこと。また、プログラミングを担った中野睦海さん(写真右)は、「リーダーがメンバーの意見をまとめるトップダウン式にして、無駄な時間を削減。技術習得に重点を置いたのが、賞をとれた理由だと思います」とコメント。

 最優秀作品は3年生に決まったものの、発表内容からしても、1・2年生に対する期待は高まる一方。ゲーム業界に就職後、即戦力として活躍する卒業生たちが多い理由がうなずける。デジタル化が進み、ゲームが欠かせない存在になりつつある今、彼らのフレキシブルな姿勢に研ぎ澄まされたセンス、何よりも濃密な授業で学んだ経験は、業界を担う戦力になって行くに違いない。

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 イベント終了後、同分野のリーダーを務める白石久雄氏にコメントを頂いた。

「Digital Worksは今年で12回目を迎えますが、回数を重ねるたびに、レベルアップがはかれているのは確か。最優秀賞を飾ったGLISH(グリッシュ)の『Cores Xcite(コアーズキサイト)』は、今、学生たちが持つ力を最大限に生かせている印象を受けました。それはテクニック面に加え、新しさを追求するアイデア力にも言えること。シンプルなのに面白いのは、たくさんのギミックが施されているから。今日のような発表の場においては、1年生は先輩の高度な技を見る、2・3年生はゲーム業界で働く上で、求められているものを知る絶好の機会です。Digital Worksを筆頭に、本校では、普段から合評やセミナーに重きを置いていますが、そこから社会の厳しさを知り、作品を制作する上でいい刺激になればと思っています」