ボイス管理ツールは大きな可能性を秘めている

 2012年3月5日~9日(現地時間)、アメリカ・サンフランシスコにて開催中のGDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス) 2012。現地時間2012年3月7日(日本時間2012年3月8日)、ユービーアイソフトのアレクサンドル・ピシェ氏による講演“How can I ship my game with voices in 10 languages? ...on the same day? ...while ensuring consistency?”(10ヵ国語のボイス入りのゲームを、同日に、一貫性を保ったまま発売するにはどうしたらいいか?)が行われた。

多言語での開発を同時進行する、ユービーアイソフトのボイスデザインとは【GDC 2012】_01
多言語での開発を同時進行する、ユービーアイソフトのボイスデザインとは【GDC 2012】_02

 最初に、ピシェ氏はユービーアイソフトのこれまでの作品を振り返り、ゲームに収録されるセリフ数、録音ワード数が年々増大している事実を述べた(2012年に出る新作は、セリフ数30000、録音ワード数は27万5000にものぼるという!)。

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 ではセリフ・ワード数が増えると、どんな課題が生まれてくるのか? ピシェ氏は、“Quality(質)”、“Complexity(複雑さ)”、“Quantity(量)”、“Agility(すばやさ)”という4つのキーワードを挙げた。ボイスの質がよくなければ、プレイヤーはゲームに没入できない。ゲームの内容が複雑になるほど、作品全体でのボイスの管理も難しくなる。ゲームの内容が充実するほど、ボイスの量も増える。ボイスはゲームのほかの要素に付随するものなので、変化に対応できる能力と柔軟性が求められる、ということだ。

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▲言葉を翻訳するときは、それぞれの国の文化の違いについても考えなければならない。たとえば、ルートビアという炭酸飲料にアイスクリームを浮かべた“ルートビア・フロート”という飲み物が劇中に登場するとして、その飲み物が存在しない国では、別の飲み物に置き換える必要があるのだ。

 これらの問題に対応するためのものとして、ピシェ氏は以下の方法を挙げた。

・データを論理的に体型づけて整理する
・音声ファイルの名前をわかりやすいものにする
・前後関係・文脈のわかるデータをセリフに付与する
・土壇場での変更にも対応する準備をしておく
・スタッフ間のコミュニケーションを活発化させる
・ボイスの使われかたを統計的に調べる
・“ボイスデザイナー”というポジションを用意する
・ボイスマネジメントツールを利用する

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▲ユービーアイソフトの最初のボイスデザイナーであるカラマタス氏の言葉。「ボイスデザインとは、キャラクターボイスと音声システムをデザイン・統合することであり、ユーザーのゲームプレイをよりよいものにすることである」

 ここで、最後に挙げられた“ボイスマネジメントツール”の例として、ユービーアイソフトのツール“OASIS”が紹介された。

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▲マップやイベントごとにセリフが分類されており、閲覧が簡単。
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▲そのセリフが各言語で何と言うのか、一覧表で見ることも可能。
▲そのボイスが収録済みかどうか、セリフに変更があったかどうかなども、アイコンを見ればすぐにわかるようになっている。
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 ピシェ氏はこのツールがいかに便利かを述べたほか、将来的には、ほかの開発ツールとのつなぎ役になるなど、さまざまな面で役に立つ可能性を秘めていると語った。多言語での開発がますます活発になるであろう今後、ボイスデザイナーとボイス管理ツールの存在はきわめて重要なものになりそうだ。