スクウェア・エニックスの音声ローカライズの秘策は“MOOMLE(もう無理!)”【GDC 2012】

ゲーム ニュース
アメリカ・サンフランシスコのモスコーニセンターで開催中のGDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス) 2012。ゲームにおける音声ローカライズの効率化について、スクウェア・エニックスの谷山輝氏と柴山正治氏が講演を行った。

●『ファイナルファンタジーXIII-2』での音声ローカライズの方法とは?

 昨今のゲーム、とくにビッグタイトルは、多国語での同時開発が業界標準となりつつある。中でも、日本語のような複雑な言語からのローカライズは、翻訳者はもとより、サウンドエンジニア、レコーディングスタジオ、そして開発チームとのあいだで混乱が生じないように、効率的な作業環境の構築が求められる。


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 今回の講演では、スクウェア・エニックスの谷山輝氏と柴山正治氏が『ファイナルファンタジーXIII-2』での音声ローカライズの事例をもとに、同社の管理ツールを紹介した。


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▲写真右がサウンドプログラマーの谷山輝氏、写真左がローカライズトランスレーターの柴山正治氏。

●レコーディングスタジオの“悪夢”

 ゲームのデキはすばらしいのに、ローカライズがよくない。そんなゲームに出会ったことはないだろうか? ローカライズは紛れもなくゲーム開発の主要なパートであり、その品質もとても重要だ。ビッグタイトルであればあるほど、多言語でのリリースは不可欠なのだが、その開発規模の大きさゆえに効率化を迫られている。

 『ファイナルファンタジーXIII-2』の音声まわりの仕様は、55万5047の日本語の文字と137万3388の英単語、7つの言語(英語、フランス語、イタリア語、ギリシャ語、スペイン語、中国語、韓国語)、そして18098行ぶんの音声で構成されている。スクウェア・エニックスのパッケージタイトルでは、サウンド部門とローカライズ部門というふたつのセクションの協調作業によって音声ローカライズを行っているが、これほどの規模の作品を開発と同時進行かつ複数の部署との連携でローカライズすることはそう容易ではない。ゲーム開発中は、変更や更新が延々と続く。セリフがひとつ書き換われば、その音声、翻訳の内容も変わるわけだ。頻繁に更新されるセリフ、そして1日単位での追加や削除がくり返され、その都度、役者のスケジュールも取り直すことになる。こうした一連の更新内容と現在の進捗具合を、ローカライズに関わるすべてのスタッフが把握してないければ、レコーディングスタジオは瞬く間に機能しなくなり、“悪夢”のような状態に陥るのだ。


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▲ローカライズは単に翻訳するだけと思われがちだが……

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▲実際は、開発の変更に合わせて、複数のセクションが同時に変更を行う必要がある

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▲この“悪夢”から逃れるには……?

 では、どのようにして情報共有を図るのか? 膨大なセリフの量を前にして、メールではまず無理だ。ましてや、ミーティングなどではあまりにも時間的損失が大きく、非現実的だろう。そこで、同社が開発した管理ツールが“MOOMLE(モームリ)”だ。お気づきの方もいると思うが、このMOOMLEは『ファイナルファンタジー』シリーズに登場するキャラクター“MOOGLE(モーグリ)”と日本語の“もう無理”をもじったもので、前述の“悪夢”の状況を皮肉った名称になっている。


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▲会場でも笑いが起こったMOOMLE。

●大事なのはコミュニケーション

 MOOMLEの設計思想は以下の通り。

・音声に関連した情報の集約
・変更履歴も含めたオリジナルのセリフと音声の徹底した管理
・翻訳に関係する情報管理

 このツールを使うことで、すべてのセリフ、すべての言語を一元管理できる。音声の変更は章単位、あるいは行単位で行うことが可能で、さらにドッキングビューと呼ばれる、動画と合わせてセリフをチェックできる機能も備えている。また、管理ツールの大部分がビジュアライズされており、直感的なステータスアイコンによって、何がどのように変更され、その作業はどこまで進んでいるかが、迅速に確認できるのだ。

 ひと通りの説明を終えた後、谷山氏によるMOOMLEの実演も行われた。ある特定のセリフを選択すると、他言語のセリフにも瞬時にアクセスすることができ、ファイルをどのように更新していくかも説明していた。


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▲MOOMLEの画面。左側のカラムからシーンを選び、その詳細が中央に表示される。セリフごとに再生や修正が可能で、他言語のものも同時に確認できる。

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▲各ファイルがどのような状況にあるか伝えるためのアイコン。

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▲動画といっしょにセリフをチェックすることもできる。

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▲MOOMLEで効率的な同時作業を実現する。

 さまざまなテクノロジーに支えられ、規模が大きくなってきた今日のゲームだが、音声ローカライズにおいては、質を向上させるためにもっとも肝要なのは何か特別な技術ではなく“コミュニケーション”ということに、考えさせられるものがあった。関係するすべてのスタッフとの連携をより密にするために、こうしたウェブ・ベースによる快適な作業環境の提供というのは、大きなキーワードとなりそうだ。


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