北米展開を行うワーナーの“本気度”
GDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス)開催中は、各国から記者が集まるということもあって、さまざまなゲームのイベントも会場周辺で開催されるのが通例。開催初日となる2012年3月5日には、グラスホッパー・マニファクチュアの『ロリポップチェーンソー』のイベントが行われた。
イベントを主催したのは、北米でのパブリッシャーであるワーナー(Warner Bros. Interactive Entertainment)。ロリポップ仕様のブラディーなスクールバスを持ってきたり、軽食などを提供するケータリングスタッフをゾンビメイクしたりと、プロモーションにかなり気合が入っていた。
これは北米での展開上、かなり重要なことだ。今回はスクールバスだけ取ってみても、ゾンビの襲撃でズタボロに見えるがちゃんと公道を走れるし、中もフルスクラッチでチアリーダーのロッカー仕様に改造してある。今日のためだけに作られたわけじゃないとはいえ、結構な投資だ。イベント中に本作のクリエイティブディレクターである須田剛一氏に話を聞いたところ、ワーナーのこの“本気度”の高さへの驚きと好感の声が聞けた。
そしてもうひとつ欠けていたピースがある。須田氏とグラスホッパー・マニファクチュアの独特なテイストを“うまく翻訳してくれる”人がいなかったことだ。唯一無二のギリギリなセンスこそが味だが、ギャグのセンスひとつとってみても、そのまま訳せばいいってもんじゃない(もっとも、ニンジャとかサムライとか、その土地にはないセンスが逆に新しさをもって受け入れられることもあるが)。
そこで本作にいわば“センス保証人”として関わっているのが、映画業界でどインディーからメジャーまで幅広くこなすジェームズ・ガン監督である。悪趣味映画の大量生産基地トロマで修行をして『トロメオ&ジュリエット』(トロマ版ロミオとジュリエット)などを生み、『スクービードゥー』シリーズを手掛けたかと思えば『ドーン・オブ・ザ・デッド』リメイクにまで起用されたナイスガイ。かと思えばキワどい精神を忘れずに、アブない親父と女の子の勝手スーパーヒーローもの『スーパー!』なんて作ったりするんだから、ジェームズ・ガンは映画業界の須田剛一か、それとも須田剛一氏がゲーム業界のジェームズ・ガンか、ってなもんである。
そんなガン監督に本作の関わり方を聞いてみたのだが、いわく「(英語版の)ストーリーを作り上げることと、それを面白くすること。あとキャラクター作りの手伝いだね。どんなパーソナリティを持っているのか。アメリカ人声優の配役や演技も監督してるよ」とのことで、結構積極的に関わっている模様。「須田さんとは世界観が似ているので、一緒に仕事をしていて楽しいよ。全く違う分野の仕事をしてきたけれども、美的感覚が似ているから自分のところに話を持ってきてくれたんじゃないかな」と、制作も快調のようだ。「血と内臓がドッロドロの中に、ハートに来るようなスイートなところもあって、非常にユニークな経験が出来るゲームだと思うよ!」と、独特な表現でオススメしてくれた。
ゲーセンでゾンビ相手に大暴れ! ミニゲームもいっぱい
さて、イベントの内容そのものは須田氏とガン監督が簡単にあいさつした以外は、海外の映像メディア向けのインタビュー撮影がメインで、海外での発売日がアナウンスされた程度(ちなみにアメリカは6月12日)だったのだが、会場にはデモ機も出展されており、実際にXbox 360版をプレイできたので、本記事の後半はデモリポートといこう。
プレイできたのは、ゾンビ映画の巨匠から名前を取った“フルチ・ファン・センター”という巨大ゲームセンターのステージ。生首彼氏ニックと突入し、チアリーダー殺法とチェーンソーのコンボでゾンビを蹴散らしながら進んでいくのだ。コンボはショップで買いたしていくことができるのだが、チアリーダーの掛け声に沿った殺戮コンボは、意外に声にテンポ感があっておもしろい。
フロアーを進むに連れて、グラスホッパー・マニファクチュアらしいミニゲームも頻繁に出てくる。このステージでは、舞台がゲームセンターということもあって、エレベーターで上下しながら2Dの建物の上を目指していく“エレ●ーターアクション”風のミニゲームや、上視点でドクロに追われながら鍵を集めて脱出を目指す“パッ●マン”風のミニゲームなど、アーケードの香り漂うミニゲームがジュリエットを待っている。
ジュリエットの“ムダな明るさ”は特徴的で、ゾンビを大切断していようと、首がない身体にニックの生首を植えつけていようと(ボディをゲットしたニックが、ところどころでジュリエットを助けてくれるのだ!)、金髪チアリーダーのテンションでやられると湿っぽさがゼロ。無茶な設定やセリフなどを言われても、「まぁそういうものなんだろうな」と納得させられてしまう妙な魅力がある。
しかし須田氏らしい漢のブルース感や、サブキャラクターのマッドネスとしか言いようがない性格設定といった近作の傾向からは真逆な感じもするのだが、ここからいったいどう話が展開していくのか気になるところだ。とくにボスの“闇の呼び声”たちは、かなりクレイジーそうな予感がするのだが……。
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