仏ユービーアイソフトに直撃!! ポスト・イット・ウォー”とは?
メッセージを書いて机にペタッ。のり付き付箋の“ポスト・イット”は、学校やオフィスなどで欠かせない文具として、世界中の人に使用されている。だが、そんなポスト・イットを利用した“戦い”がくり広げられていたことをご存じだろうか?
この戦い(通称“ポスト・イット・ウォー”)の戦場は、フランスのユービーアイソフト本社。同社は『アサシン クリード』シリーズや『ラビッツ』シリーズなどで知られる、世界的にも有名なゲームメーカーだ。ファミ通.com取材班は2011年、フランスのユービーアイソフトを実際に訪れ、“ポスト・イット・ウォー”を取材してきたので、その様子をお届けしよう。
“ポスト・イット・ウォー”の発端は、あるときユービーアイソフトのスタッフが気まぐれで、オフィスの窓にポスト・イットでビデオゲームのキャラクターを再現したことから始まる。ポスト・イットのカラーバリエーションを組み合わせて、ドット絵のようなピクセルアートを作ったのだ(最初のアートは『スペースインベーダー』の敵キャラクターだったという)。
すると、ユービーアイソフトの向かいにあるBNP(フランスの大手銀行)が、同じくポスト・イット・ウォーによる『パックマン』を作って対抗してきた。このことをきっかけに、ユービーアイソフトとBNPによる“ポスト・イット・ウォー”がスタート。両者はつぎからつぎへとビデオゲームのキャラクターを量産し、そのクオリティーを競い合うことになったのだ。ユービーアイソフトの広報を務めるティボ・ルイリエ氏の話は当時を振り返り、「BNPが作った『パックマン』のピクセルアートを見たときは本当にビックリしました。我々が持っていた銀行員の“シリアスなネクタイとスーツ”と“生真面目な表情”というイメージが一変したのです。同時に、彼らのような大手企業に働くスタッフが、ビデオゲームに興味を持っていることに喜びを感じました」と語る。
ユービーアイソフトとBNPの“無言のコミュニケーション”は徐々にヒートアップし、周囲を騒がせた。そしてインターネットのゲーマー用フォーラムで「ユービーアイソフトとBNPが何やらスゴイことをしている」という口コミが広がり、それを聞き付けた世界各地のメディアがこぞって報道した。ユービーアイソフトのスタッフのふとした思いつきが、大きな社会現象にまで発展したのだ。
2社の窓には、連日クオリティーの高いアートが張り出され、その度に話題となった。ときにはより細かいドットを表現するために、ポスト・イットではなく、目が小さい方眼紙が使われたという。こうして、いささか加熱しすぎた感のある“ポスト・イット・ウォー”に終止符を打ったのは、ユービーアイソフト側だった。
ユービーアイソフトのスタッフは戦争を締めくくるクライマックスとして、同社の看板タイトルである『アサシン クリード』シリーズに登場する人気キャラクター、エツィオ・アウディトーレをモチーフとした超巨大なアートを作った。このエツィオのアートには、40人以上のスタッフが携わり、数日間がかりで総計8000枚のポスト・イットが使用された。こうしてあまりにも見事なピクセルアートが完成したことで、さすがのBNPも反撃を止めたという。この“世界中でもっともクリエイティブな戦争”は、ユービーアイソフト側が勝利を収めたようだ。現在、“ポスト・イット・ウォー”は、スウェーデン、ベルギー、ルクセンブルク、スペイン、ドイツなどのヨーロッパ諸国などに飛び火し、各地で盛り上がりを見せているとのこと。ユービーアイソフト広報のティボ氏は「いいタイミングでバトンタッチができてよかった」と語る。ユービーアイソフトで生まれたポスト・イット・アートは、いまや世界のあちこちで見られるようになったのだ。
ここからは、ファミ通.com取材班が見たポスト・イットのアートを紹介しよう。上の動画と併せてチェックすれば、当時の“ポスト・イット・ウォー”がイメージできるはずだ。