“想いを繋ぐRPG”が生まれ変わった
“想いを繋ぐRPG”として2007年12月に発売された、『テイルズ オブ イノセンス』(以下、オリジナル版)。携帯ゲーム機向けのゲームでありながら、オープニングアニメや豊富なキャラクターボイスが盛り込まれた『イノセンス』は、奥深いストーリーやバトルシステムなども、据え置きゲーム機向けのシリーズ作品と比べて遜色なく、ユーザーから高く評価されました。そのオリジナル版が、約4年の歳月を経て、プレイステーション Vitaで再構築されたのが、本作『テイルズ オブ イノセンス R』(以下、『イノセンス R』)です。その魅力を、ライターのぽんせ松本がガイドします。
再構築された世界とストーリー
タイトルに付け加えられた“R”の文字。これは、リメイクではなく、リ・イマジネーション──“再構築”のRです。その名の通り『イノセンス R』では、目に映るあらゆる要素が、いちから築き直されています。その筆頭がストーリー。本作では、キュキュ、コンウェイというふたりが新たな仲間キャラクターとして登場し、ストーリーに違和感なく絡んでいきます。一般的なリメイク作品では、ゲームシステムやグラフィックなどに手が入ることは多いですが、ストーリーまで大幅に変わる作品はほとんどありません。『イノセンス R』が、単なる移植やリメイクではない、“再構築”である理由のひとつです。
そもそもオリジナル版のストーリーは、前世でつながりがあった者たちが、現世で運命的に出会い、新しい絆を繋いでいく……というものでした。ここに、新たな仲間キャラクターを加えようと思ったら、現世におけるストーリーを書き直すだけでは済みません。いったいどうなるんだろう……と思っていると、なんと、キュキュとコンウェイはいずれも異世界からの来訪者! 異世界という存在を新たに盛り込むという、ある意味、前世&現世のストーリーを書き直すよりも難しいイバラの道が選択されていました。しかし、あえてそこまで踏み込んで、作品の再構築を目指した開発陣の並々ならぬ決意が伝わってくるようです。
ちなみに、ストーリーの詳細をここで語るわけにはいきませんが、とりあえず、キュキュの言動に要注目! とだけはお伝えしておきましょう。カタコトの言葉で意思を伝えようと懸命になったり、ときには子犬のような健気さを見せる彼女の姿に、心をギュッとつかまれてしまう方は少なくないはず。私のように!
なお、再構築されたストーリーに合わせて、新規のオープニングアニメが用意され、幕間アニメも多数追加。さらに、イベントシーンはフルボイス化されています。オリジナル版でボイス付きだったシーンも、ボイスをすべて新規収録しているという徹底ぶり。オリジナル版を遊び倒した方は、オリジナル版と『イノセンス R』のイベントシーンを、目と耳で比べてみるのも楽しいかもしれません。
いっそう爽快感が増したバトル
再構築の波は、ストーリーのみならず、ゲームシステム全般にも及んでいます。『イノセンス R』のバトルシステム“DI-LMBS(ダイレクト インタラクション リニアモーションバトルシステム)”は、バトルフィールドを縦横に駆けながら戦う従来のシステムを踏襲しつつ、戦いがうまくいっているかどうかがパーティーの“勢い”に直接影響する、というもの。これを支えるのが“レイヴシステム”です。敵にダメージを与えたり、コンボをつなぐなどして、画面左上のレイヴゲージが溜まると、戦況を有利にするさまざまな効果が発動します。逆に、敵から攻撃を受けたり、何もせずにいるとゲージは減っていくので、レイヴシステムは積極的な攻撃姿勢を後押ししてくれるはず。敵側も、ダメージを受け続けると、“怒り攻撃”で反撃してきますが、味方側はそれを“ガードカウンター”で無効化することが可能。こういった要素を活用するうちに、おのずと爽快感満点のバトルが楽しめますよ。
また、バトル画面の下部に表示される仲間キャラクターの顔をタッチすることで、あらかじめ設定しておいた術技の使用を指示することが可能。まるで、仲間を指差して、直接指示を出している気分になれます。操作が直感的になったことで、コンボをますます決めやすくなり、レイヴシステムの恩恵を得ることにもつながるはずです。
レイヴシステム以外にも、キャラクターが前世の姿になって放つ“第二秘奥義”や、バトルの勝利報酬として獲得したポイントを割り振ってキャラクターを強化する“スタイル”システム、探索するときに便利な簡易マップなど、新しいシステムが盛りだくさん。仲間どうしの繋がりを示す“絆値”も、スキット(会話)や共闘を重ねることで高まっていき、冒険をともにする仲間たちへの愛着をいっそう強くさせてくれます。
シリーズの完全新作を遊んでいるような心地をもたらす『イノセンス R』。ですが、根幹の部分では、オリジナル版以来の魅力を少しも失っておらず、オリジナル版が持っていた独自の魅力を、最新ゲーム機のパワーでより深く表現しています。オリジナル版を遊んだことがなくても楽しめる“再構築”の成果を、ぜひ皆さん自身の目で確かめてみてください!
■著者紹介 ぽんせ松本
ゲームライター。『テイルズ オブ』シリーズをこよなく愛し、雑誌や攻略本の執筆依頼が来ればガッツリと遊びまくる。依頼がなくても遊びまくる。ファミ通.comにて連載したプレイ日記をまとめた単行本、『『テイルズ オブ エクシリア』プレイ日記 人と精霊の守護者(まもりて)』(エンターブレイン刊)が発売中。
テイルズ オブ イノセンス R
メーカー | バンダイナムコゲームス |
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対応機種 | PSVPlayStation Vita |
発売日 | 2012年1月26日発売 |
ジャンル | RPG / ファンタジー |
備考 | PS Store ダウンロード版は4980円[税込](2012年4月1日より5380円[税込])、プロデューサー:大舘隆司、制作プロデューサー:村北美夏 |