エレクトロニック・アーツは2011年12月22日、自社オフィスで2012年春発売予定のプレイステーション3用サッカーゲーム『FIFA ストリート』と、PlayStation Vita用『FIFA ワールドクラス サッカー』のメディア体験会を開催した。FIFAシリーズの開発を行なっているEAカナダでエグゼクティブ・プロデューサーを務める牧田和也氏へのインタビューとまとめて、新たなFIFAシリーズの姿をお伝えする。

これはサッカーのアクションゲームだ! 『FIFA ストリート』プレビュー

 まず『FIFA ストリート』は、イングランド、スペイン、ドイツ、イタリア、フランス、アメリカの6リーグの公式チームや、海外の代表チームなどを収録しており、世界のスーパースター選手を使ってストリートサッカーをやってしまおうという豪華なタイトルだ。

 プレイしてみてすぐに気がつくのが、メインの『FIFA』シリーズとのゲームのテンポの違いだ。あちらは11人制のフルコートのサッカーで、こちらはいわばフットサルに近い(試合ルールにはフットサルルールもある)のだから、あたりまえといえばあたりまえ。

 プレイ感覚としては、アクションゲームに近い。フェイントで左に体を振り、右に一瞬ボールを出してからまた抜きをかけ、寄せてきた次のプレイヤーを華麗なターンでさらに交わす……といったようなプレイは、いわば4連コンボ。足裏でボールをコントロールし、ためを作ってからテクニックを駆使して一気に抜いてシュートへ持ち込む独特のリズムが、ハマってくると心地よい。この感覚はちょっと触ってみないとわかりにくいところもあるので、可能であれば体験版などを出してほしいところ。

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 操作は『FIFA』シリーズのボタン配置をベースに置きつつも、トリックが出しやすいようチューニングされており、サッカーゲームを遊んだことがあれば、いわゆるガチャプレイでもすぐに“それっぽい”感じにプレイできるだろう。成功したトリックなどは画面下に操作が出るので、“覚えてから出す”のではなく、“出してから覚える”こともできるのもうれしい。

 試合ルールは、5対5のものをベースに、フットサルルール、股抜き(Panna)などのトリックを決めるとポイントが入っていく本作らしい変則ルール(ただ点を決めるよりもトリックを決めた方が有効!)などもあり、カスタマイズも可能。
 中でも気に入ったのは、“Last Man Standing”だ。これは、4人対4人でスタートし、点を決めるごとにチームから人が抜けていくというもの。4-4でスタートして、続けて3点決めようものなら、4人対1人という圧倒的不利な状態に立たされる。ラスト1点を決めようとドリブルで仕掛けてきた相手を止めさえすれば、相手陣地にはもう誰もいない。勝っているプレイヤーには緊張を、負けているプレイヤーには戦力的優位を与えるというのがおもしろい。
 もしあなたが本作を気に入って、遊びにきた友達にオススメしたくなったら、このモードを一緒にプレイしてみてほしい。“接待プレイ”なんかやらなくても、早々簡単に4-0の試合はできないだろう。友達だって多分1点は取れるハズだ。

 そのほかにも、自身のクラブで世界を転戦していくツアーモードや、もちろんオンライン対戦などもアリ。リプレイ動画をアップすることもできるので、本作の発売後は世界中から「俺スゲェー!」な超絶技巧のゴールシーンがアップされることだろう。

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世界のサッカーが手の平に――PS Vita版『FIFA ワールドクラス サッカー』

 世界で高評価を受けた『FIFA』シリーズは、PS Vitaというハードを手に入れ、どう進化するのか? Xbox 360版でサンダーランド(プレミアリーグのチーム)を世界最強にすべく日夜努力している記者だが、恐る恐る触ってみると……普通だった。いや、違和感がほとんどないのである。若干の違い(インタビューを参照のこと)はあるものの、じつに快適。実況解説だって、フルバージョンと同様、おなじみ西岡明彦氏と岡田武史氏だ。
 データも、たとえばプレミアならフットボールリーグ2まで収録しているのを確認。これ、上から数えると4部ですよ。日本でどれだけの人がクルーアレクサンドラ対ロザラムユナイテッドの試合を遊ぶかはわからないが、データの豊富さが命の『FIFA』シリーズでは、これは重要なこと。

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 タッチスクリーンを使ってパスを出せたり、背面のタッチパッドでコースを狙ってシュートを打てるようになったりといった、PS Vitaならではの進化もじつに興味深い。とくにタッチパッドは、当初は指が引っかかったりしてしまったが、慣れてくると便利! シリーズにはPSP版もあったが、本作の登場により、PS Vitaのハイクオリティーさで、よりフルバージョンにより近づいた『FIFA』が、手軽にどこでも楽しめるようになる。

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エグゼクティブ・プロデューサーが両タイトルを語る

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 ここからは、牧田和也氏へのインタビューをお届けする。『FIFA 12』や、ソーシャルゲーム版についてもちょろっと聞いているぞ。

――海外では、『FIFA』に“大型移籍”が起こりましたね……(※メッシが本作のカバープレイヤーになることが発表されたこと。日本版でも採用されるかはいまのところ未定)。そして、メッシが選ばれたのが象徴的ですが、『FIFA ストリート』は、パスよりも、テクニックのゲームになっていますね。
牧田 そうですね。『FIFA』と違う遊びかた、サッカーをそんなに知らない人でもすぐに遊べるものを作りたいというのがコンセプトです。
――アクションゲームに近い印象を受けました。
牧田 そっちに寄ってますね。でも、前に出していた『FIFA ストリート』はもっと本当にアーケードゲームな感じだったのですが、今回は『FIFA』のエンジンを活用して、いかにストリートサッカーを体験してもらうか、という部分に力を入れています。

――股抜きしてナンボというルールがあるのには笑いました。無理やり点を決めていたのですが、スキルをあんまり使わなかったので負けちゃいまして。
牧田 作るにあたって、ストリートサッカーのリサーチをしたんですよ。イギリスとかだとフットサルが中心で、点が入れるのが大きな要素。でもブラジルやオランダだと、点を入れるよりも、クールな動きをどうやって生み出すか、そこを求めて遊んでいる人が多いんです。それを取り入れたものですね。ルールと言えば、“Last Man Standing”もオススメですよ。

――『FIFA』らしく、世界の有名チームや選手が渋いところまでちゃんと入っていますね。
牧田 5大リーグと、代表はまだ調整中なのですが20カ国ぐらい入っています。それと世界で戦うので、いろんな国のステージを作っています。スタジアムであったり体育館であったり倉庫であったり、環境の部分も力を入れて作っています。

――ストリートサッカーならではですね。
牧田 攻めて行くときは、顔がつねにゴールに向くようになっています。それと、操作については誰でも動かせるようにしています。足裏でコントロールするストリートサッカーならではの動きも、アニメーションをたくさん作って再現していますよ。点を入れるだけじゃなくて、いかに自分のプレイを生み出すかという部分も遊んでほしいですね。

――レスポンスもすごくいいと思いました。
牧田 『FIFA』と違うアニメーションを入れたりしながら、特別にチューニングしています。ピッチも狭いので、動きが早くないとついていけないですよね。1対1でいかに抜くかを追求するために、レスポンスは重要でした。

――自分はパスサッカーが好きなので、あまりドリブルは使ってこなかったのですが、独特な気持ちよさがありますね。
牧田 スキルムーブをかなり入れてあるので、積極的に使って楽しんでほしいですね。コマンドはこまめに画面に出てきますし、試合中もどういうトリックが出たのか表示するようにしているので、学べるようにもしています。

――オンライン要素などはいかがでしょうか。
牧田 そこも力を入れていますよ! たとえばワールドツアーモードでは最初にプレイする地域を選ぶのですが、対戦相手にその地域で実際にプレイしている人のチームも出てくるんです。つねに変化がありますよ。

――超絶プレイのビデオが世界中からアップロードされそうですよね。
牧田 ゲーム内からYouTubeやFacebookに簡単にアップロードできる仕組みを作ってあるので、スキルムーブで抜いた瞬間やゴールシーンをどんどん投稿してください。

――PS Vitaの『FIFA ワールドクラス サッカー』についても聞かせてください。作ってみていかがでしたか?
牧田 大変おもしろい試みだと思いました。正直、簡単ではありませんでしたが、ポテンシャルがあるハードだと思うので、今後どうやってこれを活かしていくか楽しみなプラットフォームだと思いましたね。

――プレイステーション3/Xbox 360版の『FIFA』のエンジンを使っているのでしょうか?
牧田 それを基盤にしていますが、PS Vita用に作り変えています。どの部分というのは難しいのですが、たとえばインパクトエンジンは入ってないんです。でも物理エンジンの元の部分、衝突やボールの挙動などは使っています。コントロールも、『FIFA 12』でディフェンスのスタイルが変わりましたが、本作では『FIFA 11』に近いシステムにしています。というのも、『FIFA 12』のシステムって、かなり集中しなければいけないので、PS Vitaで操作してプレイするのは、操作が煩雑すぎて難しいんですよ。なので、『FIFA 11』のシステムを採用しました。そういった具合に、取捨選択して作っていますね。

――タッチを使った操作も取り入れてますね。
牧田 はい。タッチスクリーンでパスを出したり、タッチパッドでシュートを打つこともできます。これでまた新しい『FIFA』の遊びが生み出せたのではないかと思います。

――収録チームをざっと見たらマイナーチームまでちゃんと収録していてびっくりしました。
牧田 基本的には『FIFA 12』と同じです。苦労はしましたが、『FIFA』タイトルなので、そこは極力同じになるように努力しました。インターフェースなどもほぼ同じです。

――ちなみに『FIFA 12』、今年も日本人選手の移籍がいろいろ起こりそうですが、もちろん更新は行われますよね?
牧田 そうですね! 移籍市場が閉じしだい、やれると思います。

――ソーシャルゲームでは、Greeで提供されている『FIFA ワールドクラス サッカー』がランキング1位になるなど、伸びがすばらしいですね。
牧田 はい、ありがたいことです。日本のチームがよくやってくれたと思います。うれしいですよね。EAスポーツと『FIFA』の名前が広まるチャンスですし。

――では最後に、読者に向かってメッセージをお願いします。
牧田 『FIFA ストリート』は、『FIFA』のいいところを取り、新たな魅力を出せたと思います。これまでと違った遊びかたを入れていますので、オンラインや友達と遊んでみてください。PS Vitaの『FIFA ワールドクラス サッカー』は、これまで築いてきた技術を凝縮しています。過去5年~6年の『FIFA』の歴史を新たなハードに詰め込みました。家で遊んでいる方も外で遊べるので、つねに『FIFA』を遊んでほしいですね。
――世界のサッカーがいつでも一緒、と。
牧田 それいいですね(笑)。

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