ベセスダ・ソフトワークスが2012年12月8日にプレイステーション3とXbox 360とPCで発売したオープンワールドRPG『ザ エルダースクロールズ V: スカイリム』のプレイ・インプレッションをお届けする。プレイはXbox 360版で行った。

他シリーズの蓄積も活かし、より没入感の高い世界へ

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 本作は『ザ エルダースクロールズ』シリーズ最新作で、『ザ エルダースクロールズ IV: オブリビオン』の続編となる。シリーズが舞台としてきたタムリエル大陸から、北方の地スカイリム地方が冒険のエリアとして選ばれている。

 時代は『オブリビオン』の約200年後、帝国の治世には綻びが生じ、スカイリムでは反乱軍も出没。そこに何かの天啓か、長いあいだ目撃されていなかったドラゴンが出没するようになる……。

 さて、ファミ通.comで連載を担当しているライター、ジェイソン・ブルックス(元『EDGE』誌の編集長)は、サンフランシスコで本作をプレイした感想として「2006年の『オブリビオン』は、ベセスダにとって初代Xbox世代からXbox 360世代に移るにあたって時代に適応するためのゲームだったんじゃないだろうか」と述べているのだが、この問いかけには頷けるところがある。本作では、2011年のゲームにふさわしい膨大なコンテンツが整理された形で用意され、すばらしいファンタジー世界に心底没入することができる。

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▲雪やツンドラが広がっている風景からも、北欧をイメージしていることが見て取れる。

 これはベセスダ・ソフトワークスとして、同じオープンワールドRPGである『フォールアウト 3』と外注のObsidian Entertainmentが開発した『フォールアウト: ニュー・ベガス』を経ていることが大きいだろう。実際、敵のレベルシステムや鍵の解錠などは、『オブリビオン』のそれではなく、『フォールアウト』シリーズに近い方法を採用している。

 ただでさえコンテンツ量が膨大なオープンワールド型のゲームにあって、よりよいタイトルを開発するために、開発チームがフィードバックや改善案を両シリーズで共有しているのではないだろうか。公開されているインタビュー映像によると、トッド・ハワード氏が率いる開発チームは、本作ではあらゆるプレイヤーが思うがままにプレイできる、究極のRPGを目指したのだという。

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 当然のことながらグラフィック面も進化しており、『スカイリム』を知ってしまったいま、『オブリビオン』を振り返ると、格段の差がある。前述のジェイソンも触れているように、決して最先端のグラフィックというわけではないのだが、本作が世界がシームレスに繋がったオープンワールド型のゲームであることを考えると、これは十分な進化と言えるだろう。ちなみに、先行して発売されている海外では、PC版向けにグラフィックを拡張させるさまざまなMOD(ユーザー作成の拡張プログラム)が開発されている。それ自体サポート外であるし、そのすべてがPC日本語版で動作するか不明ではあるが、さらなる高みを求める人は検討してみてもいいかもしれない。

ドラゴンが生きる世界スカイリム

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▲会話は重要な要素のひとつ。クエストのきっかけになることもしょっちゅうあるし、商売をすることもできる。仕事をくれたり、スキルをトレーニングしてくれることも。

 では、ゲーム内容の話に移ろう。キャラクターメイクを終え、「え、この表現、規制なしでオーケーなの?」という驚きのショックシーン(ローカライズチームの努力に敬服致します)があるオープニングを経てチュートリアル部分をくぐり抜けると、最寄りの町“リバーウッド”にたどり着く。

 ここから先、何をするか? 自由だ。プレイヤーは、ドラゴンの力を利用できる選ばれし者“ドラゴンボーン”として世界の異変に立ち向かってもいいし、まずは街の人々と会話してみるのもいいだろう。街の人々は生き生きとそれぞれの生活を営んでおり、プレイヤーにクエストをくれたり、仕事を手伝わせてくれる人もいる。

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 メインクエストに従って北にある都市“ホワイトラン”に行けば、ドラゴン出現の真相を追う大いなる冒険が始まり、やがてプレイヤーはドラゴンをいたるところで目撃するようになるだろう。ドラゴンは本当にどこにでも出現する――たとえ街中であっても。周囲の一帯をを悠々と旋回しながら気まぐれに暴れるドラゴンは、まさに天災の感。都市の守衛や巨人を襲っている現場に遭遇することもある。

 あるいはちょっと西のほうに行けば、静かな湖畔でさびれた小屋に住む老婆に会うだろう。とくに何があるわけでもないし、メリットも大してないのだが、好奇心が強いプレイヤーは、彼女の真の姿に思いがけず驚かされることになるかもしれない。

 さもなくば、その手前にある坑道を探索するのもいい。ちょっとばかり盗賊に占拠されているが、鉱石を発掘するいい練習になるし、くまなく探せばちょっと便利な魔法を習得できる本も落ちている。ダンジョン探索のいい練習になるだろう。

 「自由だ」と言い切っておきながら一応補足しておくと、自由と無秩序は似ているようでちょっと違う。序盤などは特に、何となく暴れてしまったりすると後々面倒なことになってしまうことも多々あるので、世界の構造を把握するまではほどほどに……。それと、難度をハードにすると本当に難しくなるので、厳しいと思ったら一度難度を下げてみるのをオススメする。

世界の奥行きと深み

 プレイヤーは冒険の過程で、じつに様々な人物や勢力に出会うことになる。さまざまな事件に出くわし、まことしやかに語られる物語の真相を知り、古書に記された伝説の人物と遭遇し、あるいは征服者としてダンジョンに住み着いた一族を滅亡させることにもなるだろう。

 この世界には驚くべき奥行きと深みがあり、勧善懲悪的な話ではまったくもってないのがミソだ。一応の体制側である帝国には、オープニングから殺されかける始末。あらゆる意味で絶対的な正義などはなく、それは勝った側が勝手に決めるだけなのだ。たとえ野蛮人や異端であっても、もしかするとアジトに死体を並べている怪しげな連中は何か医学的研究をしているだけなのかもしれないし、そもそも自分の好きな神を信仰して何が悪いのか。

 本作において善悪を判断するのはプレイヤーであり、クエストを通じてどちらにつくか求められることもしばしばある。「ちょっとアイツらヒドいから協力してやるよ」と考えるのも、「お前らの持っているアイテムが欲しいんで、ちょっと一族郎党で滅亡してください」と考えるのも、面倒なほうを「邪魔だ」と、ただ力で圧倒するのもプレイヤーしだい。

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▲さまざまな陰謀や思惑が渦巻く街と、人の論理を超えた存在も潜む森。街や帝国が正義で、森や異端が悪とは限らないのが本作の豊かさだ。

 ちなみに設定好きの人は、メモや書物を収集してみるのをオススメする。書物にはさまざまな物語や歴史が綴られており、それだけでも十分楽しいのだが、同じ書物でも、なぜそこにそれが置かれていたかを考えると、より深みのある推測を楽しめるだろう。

 どんな状況で置かれていたかによって、何の変哲もないアイテムの意味合いが変わってくるように、セリフですべてを語らずに、状況を作り出して語るのは、ベセスダ・ゲームスタジオが得意とする方法だ。肉が肉屋やキッチンにあるのは普通だが、祭壇の前にあれば捧げ物となる。ではそれが、死体なら? 洞窟にあれば野垂れ死んだ旅人か奥に潜むモンスターに襲われた冒険者だろうが、解剖器具が近くにあれば何かの実験台かもしれないし、祭壇にあれば暗黒魔術のいけにえかも。近くの皿に内臓でも乗っていれば、カニバリズムの犠牲者のできあがりである。注意と想像力を張り巡らせれば発見がある。だからこそ探索が楽しくなるのだ。

何をしたいか、どんな存在になりたいか

 今回は基本的にクラス(職業)の概念もなく、種族によってパワーなどの特性がちょっと違う程度。キャラクターをプレイヤーのやりたいことに応じて好きなように成長させることができる。

 プレイヤーの視点は、一人称と三人称がいつでも切り替え可能。今作では両手に自由に武器と魔法を割り振ることができ、プレイヤーが幅広いスタイルを選べるようになっている。右手に剣で左手に盾を選べばナイト風、両手武器を選べば戦士っぽいし、剣と魔法をひとつずつ割り振ったら魔法剣士のできあがり。弓矢とか杖とか両手魔法という手もある。さらに両手とは別に、種族によって授けられた能力“パワー”や、ドラゴンの能力“ドラゴンシャウト”を使うこともできる。

 よく使う装備・アイテム・能力はお気に入りに入れておくことができ、方向パッド/十字キーでいつでもゲームをポーズして呼び出せる。弓矢に毒を塗ってから放ち、敵が気づいたら召喚魔法を仕掛け、接近戦になったら剣を取り出すという作業も、それほどストレスなく行える。スキルメニュー、マップ、インベントリ、魔法リストなどはBボタン/○ボタンで簡単にアクセスできるので、お気に入りに入れていないものも楽に呼び出せるのはうれしいところ。

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▲戦闘スタイルもさまざま。左手に魔法、右手に剣という魔法剣士スタイルを取ってもいいし、魔法の弓を召喚するのもいいだろう。潜入時などは、闇に身を潜めて不意打ちを仕掛ける暗殺者スタイルも効果を発揮する。どんな戦い方をするかによって、伸ばしておくといいスキルや装備が違ってくる。

 ステータス周りは整理され、基本ステータスはヒットポイント、マジカ(MPにあたる)、スタミナの3種類のみ。レベルアップ時は、後述する追加効果“Perk”を取得できるポイントを得るとともに、どのステータスを上げるか選ぶことになる。

 そしてもうひとつ重要なのがスキルだ。本作ではスキルは18種類(戦士系、魔法使い系、盗賊系の3系統に6種類ずつ)あり、片手武器で攻撃するとか、重装のアーマーを着た状態で攻撃されるとか、魔法を使うとか、プレイヤーの行動に応じて経験値が貯まり、スキルのランクが上がっていく。それぞれのスキルにはPerkが用意されており、取得に必要なランクを満たしており、Perkのポイントが残っていればアンロック可能。特定の攻撃にボーナスが得られるとか、特定レベルの魔法の使用マジカが減るといった効果がある。Perkのポイントは貯めておけるので、強化方針が固まらないうちは使わずにとっておくのもいいだろう。

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▲フロストスパイダー相手に大斧かついで突っ込んでいくような戦士も、街では秘蔵のレシピを元に錬金術の妙を活かした毒やポーションを生成しているかもしれない。職能が固定化されたクラスに沿って成長していくのではなく、18種類のスキルのどれを伸ばし、どう使うかが本作におけるキャラクターの成長となる。
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オープンワールドRPGの新たな完成形! 『ザ エルダースクロールズ V: スカイリム』プレイ・インプレッション_06
▲強力な敵とどう戦うか? もちろん正面から戦えるまで強くなるのも手なのだが、遠距離から矢に毒を塗って射るのもいい。弱点を持つこともある。召喚術で頭数を増やして敵の攻撃を分散させるのも常套手段。戦わないのだって手のひとつ。

 まとめると、プレイヤーは自分がなりたいと思った姿になれる。なりたい姿になり、やりたいことをやる、これはロールプレイングの本質でもある。そして、やりたいこと(あるいは行きたいところ)と、なりたい姿は相互に関係する。魔法を極めたければ腕利きのメイジが集まる大学に行くのがベストだろうだし、そうするとやらなくてはいけないことも変わってくる。あるいは、最強の戦士を目指すならば、戦闘系の能力アップだけでなく、鍛冶やエンチャントについても考慮しなけりゃいけない。錬金術が役に立つこともあるだろう。

 プレイヤーがこの奥深い世界で何になりたいか、あるいはどんなことをしたいかによって目指すべき姿が決まり、さらにそのために必要なやらなければいけないことが出てくる。その過程では、大いなる物語の渦に巻き込まれ、奇妙な連中や、異形の神など、さまざまな存在に遭遇することだろう。そして、さらに世界に惹きこまれていく……。本作は疑いなく、オープンワールドRPGの新たな完成形だ。

 まぁ、戦士スタイルで行きたいけどどうすればいいかわからないと言った人をガイドしてくれるわけでもないし、やっぱり萌えるオークは作れないので、この自由度の高すぎるスタイルが合わないとか、かわいいキャラクターがいないと無理といった人にゴリ押しすることはできない。でも、そうでもなければ、ぜひ冒険者としてこの世界を訪れることをオススメしたい。FPS(一人称視点シューティング)のマルチプレイじゃないんだから、ちょっとぐらいはじめるのが遅くても大丈夫。じっくり時間をかけて自分の物語を紡いでいけばいいのだ。 (編集部 ミル☆吉村)

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