高難度ダンジョンはかつての『ウィザードリィ』を彷彿とさせる容赦なさ
1981年に誕生した3DダンジョンRPGの名作『ウィザードリィ』。同シリーズの誕生から今年で30周年を記し、2006年に立ち上げられたプロジェクト“ウィザードリィ ルネサンス”の一環として、PlayStation Storeにて配信中の『ウィザードリィ 囚われし魂の迷宮』と『ウィザードリィ 囚われし亡霊の街』。この2作品の全シナリオを収録し、さらに、新規の高難度ダンジョン“残魂の迷宮”が楽しめる『ウィザードリィ パーフェクトパック』が2011年12月8日に発売予定だ。本作をプレイした週刊ファミ通編集者、ノンマルト小林によるインプレッションをお届けしよう!
ウィザードリィ 囚われし魂の迷宮
月日の経つのは早いもので、『囚われし魂の迷宮』をダウンロードしてプレイしたのが約2年前……。たまたま仕事の依頼があり、このゲームをプレイすることになったのですが、そのときはまだ個人的にプレイステーション3のハードを所持しておらず、そもそも高解像度の液晶テレビもなかったので、これを機会にとテレビとハードを同時購入し、会社の机の上に設置したのを思い出します。つまり個人的には、新生『ウィザードリィ』(以下、『WIZ』)シリーズがMyプレイステーション3デビューというご縁がありまして、この度、『パーフェクトパック』のインプレッションを書くというお仕事をいただいたのも何か運命のようなものを感じます。いえ、ただの偶然ですけど。最近はお仕事でほかのプレイステーション3のタイトルに携わっていたのですが、Myプレイステーション3には、『囚われし魂の迷宮』 のダウンロードデータがずっと残っていたわけで、あまり活用方法のないプレイ済みのクリアーデータが役立つときがきてたいへんうれしく思っています。
データを改めてロードしてみて、まず思い出すのは、失敗談。だいたい、いいことというのは覚えていないものですね。「どれだけのボリュームがあるかを調べてほしい」と言われてクリアーまでプレイしたのですが、最初はよくわからなくて、クエストをぜんぜん受けずに、試練の迷宮を最下層まで進めてしまって「マップは完成したけどストーリーがまったくないぞ」なんて思ったり……。本当は、もうひとつのダンジョンのシーインの迷宮をクエストを受けながら探索し、試練の迷宮でキャラを育てたりアイテムを拾って行くのが正しいスタイルだったと後で気が付き、あわててクエストを受けてシーインの迷宮に挑んだら、キャラがすでに強くなっていたため、そんなに苦労もなく進められたのは、損だったのか得だったのかよくわかりません……。
でもタイトルが『WIZ』なだけに、パソコンゲームソフトの黎明期にコンピュータゲームでRPGを定着させたあの草分け的なスタイルは受け継がれていたので、懐かしく思いながらすんなりプレイできました。冒険者登録でキャラを作成するときにステータスの数値がランダムで変わるので、何度も選び直すところからもう『WIZ』。数字を確認しつつ、少ない場合は選び直し。ボタンをポンポンと手早く押しているため、たまーに出た50超えの数字を消してしまってアゴが外れるほど愕然としたり、ステータスの振り分けで考え込んだりといった作業が楽しくてたまりません。さらに新生『WIZ』は、本来のシリーズよりも少しやさしくなっています。加年齢の概念がないので、同じキャラクターを長く育てることが可能ですし……。キャラが死亡すると灰になることがあり、さらに灰からの蘇生に失敗するとロストするというキビシさは以前同様にありますが、バーティーが全滅するとその場に置き去りになり、別のパーティーで死体を回収にいくという超キビシイところは、寺院にお金を払うことで回収する形になるなど、改訂されていました。寺院でお布施をするとお金がキャラの経験値に変換されるので、お金の貯まりやすい終盤にこれを活用してレベルアップや新キャラ作成をしたり、レベルが下がってもHPが一気に下がらないという仕様を活用して、位置固定で出現し、レベルドレインをしてくるモンスターのバンシーを利用してレベルを下げ、HPの底上げもよくやりましたっけ。ずるい? それで楽しい? と、理屈では思いますが、そうしたことをしてキャラを強化することこそ『WIZ』だと思うんです。しかも、そうでもしないと、両方のダンジョンとシーイン最深部のクリアーが厳しいということは、実際にプレイした人ならわかるはず。いえ、クリアーそのものよりも、最深部に出現するザコ敵に歯が立たない! ダンジョン内でもセーブができる仕様のため、(旧来の『WIZ』は、死んだらオートセーブされる。セーブはダンジョンの外の街でのみ行う)やりようによってはクリアーはできないことはないのですが、まともにやろうとしたなら、レベル上げは必須になります。そして凶悪さで忘れられないのが最終クエストの“暴走する闇の力”……。レベルMAXクラスの敵との連戦が、都合6回! 勝ち進むほど難度が上がり、持てる限りの力を振り絞っても、闇雲にやっていてはまず勝てません。作戦と運が必要になる壮絶な戦い。近年のRPGでもっとも力の入った戦いになりました。勝った後にガッツポーズも出ましたし。コマンド選択式のRPGであれほどの戦いは本当に久しぶり。これに勝って初めて『囚われし魂の迷宮』を卒業と言ってもいいでしょう。おかげでストーリーは、ほとんど覚えていません(笑)。『WIZ』らしい、重厚感とどこかもの哀しいお話で雰囲気がバッチリだったことは確かです。皆さんもぜひ、挑戦してみてください。
ウィザードリィ 囚われし亡霊の街
前作のシステムを受け継いだ第2弾。前作と同様にダウンロード版が発売され、同時に前作とセットになった『ツインパック』も発売に。のちにシナリオ2と3が追加配信。シナリオ1、2、3が遊べる『フルパック』版も追加配信されました。
さて、前作で少々燃え尽き症候群になってしまったためか、こちらのほうは未プレイで、今回の『パーフェクトパック』でのプレイが初体験。記事には目を通していたので、とくに後に追加された新しいふたつの種族、フェアリーとフェルバーがずっと気になっていました。従来の『WIZ』には未登場の種族を登場させたということは、前作の反応がよかったからでしょうか。ここにきてオリジナル度というかルネサンス度がグッと押し進むことになりました。同じく、従来同様に街がひとつだけだった前作から、複数の街(村)を移動する形へ、そしてさまざまな迷宮の探索をしていく……。しかも、ジメっとした薄暗い地下迷宮だけではなく空の見える屋外(?)の探索があり、とスケールがアップ。種族ごとのキャラクターのグラフィックも追加され、ますます華やかになっています。そして、何より主人公がいない。いえ、主人公がキライとか、ほしいとかいうわけではないけれど、ちょっと方針の違いに驚かされました。もしかしたら、前作で育てたキャラを冒険者として雇えるのかなー、なんて、甘い考えを抱いていたわけで……。それなら、イチから育てなくてもいいし。……ムリでしたね。というわけで、また、イチから出直しです。えっと、フェアリーは、AGIとLUKが高く盗賊、野伏、忍者向きでINTがそこそこあるので後衛職もいい……と。フェルパーは、STRとVITがそこそこ高く、AGIも高いので前衛職向きだと思う……などなど、またまた悩みつつ、冒険者登録で○ボタンと×ボタンを順にポンポンと、50……40、あ、いや、せめて30越えを狙って、失敗して消して口アングリ……、を始めました。やっぱりお約束のこれをやらないとね。例によってただダンジョンを探索するだけではなく、クエストを受けながら進めると物語というか複数のエピソードがわかり、世界観が広がっていきます。でも、いちばんは、ダンジョンマップを埋め尽くすことなんでしょうね。方眼紙にエンピツで書き込んでいた昔の『WIZ』とは違い、オートマップになっていて、ダンジョンでマップを拾うか魔術師の呪文“Arcane Map”を使うことで歩いた跡が自動で書き込まれる仕組み。これを見ながらマッブを“埋めていく”のが、作業チックではありますが、やっぱり楽しいんですよ。……楽しいというか性分というか、空いているところを見たら埋めないと気がすまないというか……、お絵かきパズルみたいな心境になってきます。敵は前作よりやや強く感じました。前記しましたが、ダンジョン中でもセーブ可能なことや、レベルダウンしてもHPが大きく減らない、やや簡単な仕様なので、そのあたりはきびしく調整してあるのでしょう。前作のユーザーも慣れてきていますので刺激が欲しいでしょうし……。初めての人は、とにかくキャラの育成をしましょうね。武器、アイテムも集めながらがんばってください。ところで困ったことに、寺院でのレベルアップに必要なお金が前作より高め(※1レベルに対して前作の倍程度必要?)になっているじゃありませんか……。というわけで、「マップも多いし前作より時間がかかるかなー」と覚悟を決めたら、たしかに時間はかかりましたが案外コツを知っているので、面倒なことはありませんでした。ただし、今回の『パーフェクトパック』を購入して、前作から新たに始める人は、相当長い道のりになるでしょうね。遊び甲斐はありそうですが、休み休みやらないと体を壊しそうなほどのボリュームになりますから気をつけてください。ゲームは1日3時間っ! ……なら、半年以上は遊べるかもしれませんよ。職業ですが、新たな上級職も増えていますけど、前作同様、侍は必要だと思います。強いですよやっぱり。私は侍、侍、侍、忍者、忍者、司祭、司祭のパーティーでやりました。全員女性で侍がいれば、ま、オッケーです。侍は、やはり前作同様ドワーフが作りやすく前衛には外せません。あ、顔グフラィックも増えたので、同じ種族の女性を使っても顔がダブらなくていいですよね。うん。……イイ(笑)。しかし、気になるのは壁に当たったときの声。……大げさですねぇ(笑)。壁に当たる度に大騒ぎしてる。気になる人は音声をカットできますからね。私は、まあ、入れっぱなしでルネサンス気分を味わってます。
エクストラダンジョン“残魂の迷宮”
さてさて、今回の目玉。エクストラダンジョン。その名も“残魂の迷宮”! 旧来の『WIZ』を彷彿とさせる高難度のダンジョンが『囚われし魂の迷宮』と『囚われし亡霊の街』の両方に用意されていて、行けるということなので、いよいよ挑戦したいと思います。行けるとはいてもねぇ……。行ったらすぐ戻ることになりました。全滅して(笑)。『囚われし魂の迷宮』はさておき、『囚われし亡霊の街』は、最初からこれがあることを想定してキャラを育成していたので、プレイは『囚われし亡霊の街』のほうからにしてみました。……が、ヤバイですよ。地下1階から敵が強く、毒、石化、マヒ、恐怖、眠といった状態異常になるのは当たり前。ブレイブコボルドやオーク・ファランクス、ソロー・マンティスやアイアンスコーピオン、フロストジャイアント、そして霧を総べる者など以前に見かけた敵たちが出現するのですが、レベルが80~90近くあり、大体1撃3000近いヒットをザラに食らうわけで、全員HP9999のパーティーも1戦しただけで誰かが瀕死、即死の連続に。幸いにもダンジョンのトラップはシンプルで、隠し扉とショック床がある程度。レベルの高さも幸いしたのかトラップを踏んでもダメージは受けず、閉じられている扉を開くレバーを探し回りながら1階のマップを完成させました。しかし、地下2階から、エクストラ全開に! ザコに全滅させられてなかなか前に進めません。状態異常からのパーティー全滅が頻繁になってきます。敵は、ハヤテ、ムサシ、深淵なるビフロスなどが出現。おまけにレベルドレインもあるある。前は「キュ~ポン!」という、あのドレインの音が鳴るとうれしかったのですが、もはやHP9999という数字に達しているキャたちなので、ドレインはちっともうれしくありません。レベル150のキャラのレベルをドレインされるのだからウザイことこの上なし! 即死回避のためのスキル、マジックウォールを2枚重ねても簡単に破られ死を覚悟の世界です。ま、ホンキでアテにはしてなかったけど。プレイスタイルとしては、こまめにセーブして、全滅→ロードをく返す、この奥の手を使うしかない!? あとは魔法でダンジョンから脱出し、ワープで戻るとかをくり返すとか……。よくRPGとかのオマケダンジョンでこういうスタイルのものがありますが、レベル150まで育成し、自身満々だったキャラが即死ってナニ? ナニ? っていうか、久しぶりに笑えるほど強い敵と戦っている気がします。昔の『WIZ』の最下層もかくや。不条理に全滅するする(笑)。とにかく、ザコ戦でも魔法の使い惜しみなんてしてられません。ザコに見えてすべてがボス戦だと思ったほうが正しいのかも。
つぎの地下3階が残魂の迷宮の最下層になります。敵の平均レベルは99。もう笑うしかありませんね。地下3階がどんなものかは、皆さんが確かめてみてください。先に全体即死魔法を食らって全滅しないためにもスピード、すなわちAGIを上げての先制攻撃は必須。じつは、コレって、最初のほうで書いた『囚われし魂の迷宮』最終クエストの“暴走する闇の力”に近い敵と毎回戦っているんだと、いま気が付きました。つまり、ザコ戦1回勝つごとにガッツポーズしてもいい難度かも知れません。まさにパーフェクトの締めくくりに相応しいダンジョンだと思います。『WIZ』ファンも新生『WIZ』のファンも、未プレイの人もぜひお楽しみに!
■筆者紹介 ノンマルト小林
週刊ファミ通などの記事も手がけているファミ通メディア編集部所属の編集者。じっくりできるゲームが大好きなので、その点では本作に向いている。何よりダンジョンに潜るというシチュエーションが大好き。先祖はモグラだったのかと思って母親に聞いたら、哀しそうな顔をされて複雑な気分になった。キャラクターのレベルを上げていくのが大好き。レベルを上げるだけで勝てるのはゲームの中だけだと、社会のキビしさは知っている。
ウィザードリィ パーフェクトパック
メーカー:アクワイア
対応機種:プレイステーション3
発売日:2011年12月8日発売予定
価格:6090円[税込]
ジャンル:RPG / ファンタジー