地獄と化したドバイから生還せよ
Take-Two Interactive Japanは、2012年に2K Gamesの新作TPS(三人称視点シューティング)『Spec Ops: The Line』をプレイステーション3とXbox 360で発売する。最新デモプレイとインタビューから、本作の最新情報をお届けしよう。
※当初PCを発売プラットフォームとしておりましたが、国内でのPC版販売については現状未定です。お詫びとともに訂正致します。
ゲームプレイ1――チーム・砂・AI
本作の主人公となるのは、エリート特殊部隊デルタ・フォースのマーティン・ウォーカー大尉。プレイヤーは、副官のアルフォンソ・アダムスとスナイパー兼通訳のジョン・ルーゴ軍曹とともに、超巨大砂嵐によって壊滅状態と化したドバイへと向かうことになる。その目的は、現地の状況を報告し、生存者を救うとともに脱出すること。
昨今のミリタリーものはFPS(一人称視点シューティング)タイトルが多いが、本作はチームで戦うTPSであるのが特徴。遮蔽物に身を隠してカバーリングしたり、仲間に目標を指示して攻撃させることができる。敵が少ない状況では、サイレンサーを装備して一斉に複数の敵を攻撃し、迎撃態勢に入る前に制圧するといったことも可能。
もうひとつユニークなのが、砂の存在だ。ひさしや壁を壊して堆積した砂で近くの敵を押し潰したり、グレネードで砂を巻きあげて一時的にひるませて隙を作るなど、砂を使ったさまざまな戦闘テクニックがある。また屋外では、突発的な砂嵐により、中距離戦闘が困難なほど視界が閉ざされてしまうことも。
そして、記者がプレイした限りでは、AIがかなりアグレッシブだったことも付け加えておきたい。記者がプレイした難度は下から2番目のノーマルだったが、敵は左右から回り込もうとしたり、より有利なポジションへとじりじり移動してきたりと、なかなか油断ならない。RPGを持った敵に遮蔽物を破壊されたり、ちょっと離れた敵に手こずっている間に別の敵が迫ってきていたりして、慌てさせられることもしばしば。だからこそ、厳しいシーンでは、仲間への的確な指示や、何か利用できるものがないか迅速な判断が求められるのは言うまでもない。
ストーリー――砂の楽園に王国を築いた狂気の英雄
ここで、ウォーカーたちがドバイに到着するまでの背景を説明しておこう。6ヶ月前、ドバイには米陸軍の英雄ジョン・コンラッド大佐が率いる第33部隊が駐留しており、国防総省の撤退命令を無視してまで、民間人の避難支援活動に従事していた。だが、最後の避難キャラバンを送り出した直後に砂嵐が直撃し、第33部隊とキャラバンは音信不通となった……。
しかし、彼らが消息を絶ったと思われる地点から謎の遭難信号が発信され、ウォーカーたちが派遣されることになる。オープニングを経て、ドバイに到着したウォーカーたちは、すぐに生存者に遭遇する。ただし、武装ゲリラとして。外界と隔絶されたドバイは、難民と第33部隊が交戦し、死体の山が築かれる修羅場と化していたのだ。
第33部隊は健在なのか、ドバイで一体何が起こっているのか? 国防総省の命令を無視したウォーカーはドバイ市内へと入り、やがて第33部隊が武装ゲリラとなったことを知る。ウォーカーは部隊が砂嵐による混乱の隙にコンラッドに逆らって蜂起したのではないかと考えるが……。
勘のいい人ならピンと来たかと思うが、本稿の後半に掲載されているインタビューでも語られているように、これは明らかにジョゼフ・コンラッドの小説『闇の奥』を題材としている。映画『地獄の黙示録』の元ネタともなっている作品だ。駐在員が本部の意向から逸れて暴走し始め、“白人酋長”として僻地の王国を築き上げるという話は、3作品とも共通している。『闇の奥』では植民地時代の今後が舞台だったのが、『地獄の黙示録』ではベトナムとなり、そして本作では中東のホットな土地ドバイとなっているワケだ。では、英雄だったはずのコンラッドはなぜ暴走したのか? それこそが、本作でウォーカーが追っていく核心部分となる。
ゲームプレイ2――地獄で問われる選択
ウォーカーは、コンラッドを追っていく旅の過程で、数々の問いかけと選択をつきつけられることになる。デモでは、ふたりの男のどちらを処刑するか選ばされるシーンがあった。水を盗んだ男と、彼を罰するために家族まで殺してしまった兵士。橋から吊り下げられたふたりには、高台にいる数人のスナイパーが照準を合わせている……。
水を盗んだ一般人を許容して、同じ兵士とはいえ、行き過ぎた治安活動を行使した男を殺すか、あるいは最初に罪を犯した者を殺し、任務にやり過ぎなほど忠実な兵士を救うか。間に合うかはわからないが、もちろんスナイパーを全員殺しにかかるのも手のひとつだ。しかし判断に躊躇すれば、コンラッドは「選ばなかったこと」にふさわしい結末を用意するだろう……。
記者は瞬時に兵士を殺害し、スナイパーは水を盗んだ男の綱を撃ち抜いて解放したのだが、元とはいえ同じ米軍の兵士を殺したことで、隊員に「俺たちは救いに来たんじゃねぇのか!? 何で殺してるんだよ!」と責められるハメになった。じゃあこんなイッちゃってる相手にどうしろってんだよ……。
ステージ――美しくもグロテスク、バリエーションも豊富
本作はグラフィック面も印象的で、砂漠の遠景が幻想的なグラデーションで描かれる一方、プレイヤーは死屍累々の悪夢のような光景もしばしば目にする。一列に並べられ、頭陀袋を被せられて処刑された死体、座ったままの姿勢で黒焦げになるまで焼かれた死体、そしてフロアーを埋め尽くすほどうず高く積み重なる死体……。コンラッドの王国は幻想と狂気の上に成り立っているのだ。
ステージもバリエーションに富んでおり、砂漠に打ち棄てられた飛行機の残骸で戦ったり、ジップライン(ワイヤー)を伝って高層ビルから高層ビルへと飛び移ったり、ラペリングで移動したり、スローモーションの演出とともに突入したり、滑落して武器も仲間のサポートも失った状態でたくさんの敵と戦うハメになったりと、プレイヤーを飽きさせない。
中でもハンドガン一丁で多くの敵と戦うシーンでは、それ自体はよくあるシーンでありながら、気付かれた瞬間から敵がアグレッシブに攻めてくるので、かなりの緊張感が味わえた。
インタビューで開発チームに直撃!
本作を開発しているYAGER Developmentのシニアデザイナーであるショーン・フライゾン氏と2K Gamesのアソシエイトプロデューサーを務めるクリス・トーマス氏に話を聞いた。
――今日はじめて触ってみて、予想以上におもしろかったのですが、本作の基本コンセプトをあらためて教えてください。
トーマス コンセプトとしては、緊迫したTPSであること、そして深みのあるストーリー―TPSではなかなかないものだと思うのですが―を提供することをひとつの狙いとしています。それとプレイしていただいて、砂がひとつのキーになっているのを感じてもらえたかと思います。砂嵐で視界がなくなることもありますし、砂で攻撃することもできます。
フライゾン グレネードで地面の砂を巻きあげて隙を作ることもできますよ。
――ジョン・コンラッド、マーティン・ウォーカーというのを聞いたときに『闇の奥』を書いたジョゼフ・コンラッドと、『地獄の黙示録』で主人公ウィラードを演じたマーティン・シーンの名前を思い浮かべたのですが、やはり影響を受けているのでしょうか?
フライゾン そうですね、それ以外にも『プラトーン』とか『フルメタル・ジャケット』(どちらも戦争映画のクラシック)から影響を受けています。ただゲームが進むに連れ、もっと独自のストーリーが展開されていきます。ただ、マーティンの名前はたまたまです(笑)
トーマス 『フルメタル・ジャケット』などからは、兵士がどういう思考をするかといった部分も参考にしています。
――ミリタリーのシューターにしては、結構キツい死体などがいっぱい出てきますね。
トーマス 戦争の暗い面・闇の部分というのを描きたかったんです。兵士が究極の選択を迫られたときにどう判断するか、プレイヤーに判断を求めるのもそういった一環になります。
――選択を求められるシーンはほかにもあるのでしょうか? それと、それによってメインストーリーが変化したり?
フライゾン はい。ゲーム中にプレイヤーはしばしばモラルを問われることになります。プレイヤーが何を正しいと考えているかが描かれていくことになるでしょう。デモでご覧になったように、それによって周囲の反応も変わってきます。メインストーリーに関わるかは、いまは申し上げることができません(笑)。
――光の表現が印象的だったのですが、それも工夫したポイントでしょうか?
フライゾン ありがとうございます。ライティング専門のアーティストがいて、彼の研究の成果ですね。室内外でもライティングを変えていて、視覚的な新鮮さを与えるようにしています。
トーマス ミリタリーものはモノトーンで暗い感じがありますが、本作の舞台はドバイですので、シーンによってはそのきらびやかな部分を出すようにしています。
――YAGERが以前手がけた『Aerial Strike: Low Attitude - High Stakes(原題『YAGER』)』はフライトもので、本作とはかなりテイストが違いますが、ミリタリーTPSというのはチャレンジだったのでは?
フライゾン 確かに『YAGER』とジャンルは違うけれども、、本作を開発するにあたってアクションシューティング開発のベテランが各国から多く加わっているので、乗り越えていけると思っています。
――仲間へ指示を出してともに戦う感じが出ていて良かったですね。『ギアーズ オブ ウォー』なんかだと一緒に戦っている感じがしますが、ミリタリーFPSなどではバラバラに戦っているカンジがすることが多いですから。
トーマス 仲間へのコントロールやAIは重視している部分のひとつです。仲間とどう戦うかという戦術面を持たせたかったですし、そのためには、彼らがデルタフォースにふさわしくないバカな動きをしていてはいけませんから。つねに指示を出す必要はないのですが、激しい銃撃戦になる局面ではうまく使ってほしいですね。それに、ドバイの奥に進んでいくに連れて心理的に追い詰められていく中で、仲間と戦う意味合いも変化してきますよ。
フライゾン 仲間のひとりが倒れたときに自分が助けに行くか、もうひとりに助けに行かせるかといったコマンドもあります。
――ノーマルでもかなりやり応えがありました。敵もアグレッシブでしたね!
トーマス プレイヤーに緊迫感やプレッシャーを与えたいので、やりごたえ感は残しつつ、これからうまく調整していきたいと思います。
――敵のまっただ中にひとり取り残されるシーンがとくに印象的でした。普通、ステルスっぽいステージになっていて、後ろを向いている兵士を倒してアサルトライフルを手に入れてから「さぁ始めるぞ」ということになりそうですが、スタートしたときには敵がもう近くまで徘徊していて、武器を奪ったらもうすぐに敵が撃ってくる。全然一息つけないので緊張しました。
トーマス あれは自分が一番好きなシーンですね。ああいう状態に陥ることで、自分の部隊がどれだけ大事かというのもわかりますし。ハンドガンに弾が5、6発しかないし、敵がすぐ近くまで来ているので、どう動けばすべての敵を倒せるかという判断が重要になってきます。砂を使うという手もありますよ。
――たまにスローになるのは何だったんでしょうか?
フライゾン だいたいはヘッドショットをした時や、グレネードの爆風は直撃した時です、それと人質が取られている場所に突入するシーンなど、映画っぽくスローの演出を入れているところもあります。
――フライゾンさんはアメリカ出身で、いまドイツで仕事をされていますが、「アメリカとは違うなぁ」と思うことはありますか?
フライゾン ドイツに行く以前はアメリカのさまざまなゲーム会社で働いていたのですが、ゲーム作りに関してはあまり変わらないですね。お国柄なのか、ドイツ人は意見がストレートというところはあるかもしれません。気に入らないところがあると容赦無く言ってきますね(笑)。それとYAGERは17ヵ国からスタッフが集まっていて、いろんな文化が体験できるのがおもしろいですね。
――ではゲームファンにメッセージを。
フライゾン 本作を世に出せることに興奮しています。ミリタリージャンルに、いままでにないものを確立できればと思います。ゲームは来年の春に完成しますので、よろしくお願いします。
トーマス 言いたいことを全部言われちゃったので、同じ!
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