多人数でのチーム戦が楽しめるカプコンのPC用オンラインゲーム『イクシオン サーガ』。11月25日開始予定の第2次バトルαテストでの変更点や見どころなどを同作のキーマンに伺った。なお、こちらの記事で募集も行なっているので、気になる人はぜひ応募してほしい。
株式会社カプコン CS開発統括 副統括 兼 東京制作部長
『ストリートファイターZERO』シリーズ、『ストリートファイターIII』シリーズなど数多くのビッグタイトルの開発に携わり、『ストリートファイターIV』、『モンスターハンター フロンティア オンライン』ではプロデューサーを務める。
株式会社カプコン 東京制作部 開発運営室 室長
『モンスターハンター フロンティア オンライン』運営プロデューサー。『イクシオン サーガ』でも運営プロデューサーを務める。
「コテンパンにされた」第1次バトルαテストを経て……
――まずは、1回目のバトルαテストを終えての率直な感想をお聞かせください。
小野義徳(以下、小野) 大風呂敷を広げてしまってごめんなさい、です。
杉浦一徳(以下、杉浦) はっきりいっちゃいましたね……。
小野 移動ひとつにしても、ここがダメだという意見が山のようにありました。公式メンバーサイトなどで、できるだけ回答させていただきましたけど、やはり、よくなかった部分が多かったと思います。前回のバトルαテストは、まずはこのバージョンをもとに、ユーザーさんとテストしながら作っていくという意図がありましたから、あえて余計な部分は入れていなかったのですが、ここが落としどころではなかったことが、はっきりわかりましたね。我々とユーザーさんの意識がずれていたのかもしれません。そうでないと、ここまでは変えませんから。
杉浦 コテンパンにされた、というのが率直なところです、開発隊員(テスター)の皆さんにアンケートをお願いしたところ、はっきり悪いという結果が出ましたからね。
小野 つぎの第2次バトルαテストのバージョンは、改めて気を引き締め直して制作したものです。これが正解かはわかりませんが、前回のテストで集まった意見に対しての回答をできる限り入れました。今回の第2次バトルαテストでは、これが正解なのか、そうではないのかをまた見ていただくわけですが、バツが少なくなるように調整したつもりです。とはいっても、まだまだバツのところは出てくるかと思いますので、それに対してのテストはやることになるでしょうね。3回目のバトルαテストになるのか、クローズドβになるのかは反応を見て決めることになりますが、すべてがマルになった状態で船出したいです。
杉浦 残念ながら、今回のテストに反映するのが間に合わなかった要望もいくつかありますが、つぎのテストには入れられるように進めています。ただ、今回のバージョンも相当変わりましたね。
――具体的にどの部分に対する要望が多かったですか。
杉浦 動きがもっさりしていたこと、スピード感のなさに関しては、かなり多くの意見が集まりました。
小野 スピードについてはジレンマもありました。前のバージョンのどこがいいんだ、と思われるユーザーさんもいるかもしれませんが、スピードが上がりすぎると、ワーワーと集まって殴り合うだけのゲームになってしまいかねないんです。対戦ゲームならではの駆け引きや楽しさを出そうとすると、ある程度考えられる時間が必要になりますので、前回のバトルαテストでは、あのスピードにしてみたわけです。でも、ユーザーさんの満足は得られませんでしたね。今回の第2次バトルαテストではスピードを上げましたが、だからといって思考の必要性を削ったわけではなく、別の駆け引きを入れるなどして、目指す楽しさは損なわれないようにしました。
――キャラクターのグラフィックやモデリングも完全に変わりましたね。先入観があったのかもしれませんが、前回のテストでは『MHF』のキャラクターが戦っているなあという印象でした。今回は、それがなくなりました。
小野 我々からすると、もちろん、そうするつもりはないのですが、『MHF』を作っていたチームと接しているわけですから、重なってしまう部分はあるのかもしれませんね。グラフィックに関しても、ユーザーさんからコテンパンに言われたので、デザイナーには考えかたをガラッと変えてもらいました。
――キャラクターの頭身から変わってますよね。モーションも変わってくるでしょうから、作り直しに近い作業なのでは?
小野 この短期間でよく作り直したなあと思います。モーションも全部変わってしまいますからね。かといって、できたことができなくなってしまっては意味がありません。そのへんをきちっとクリアーしながら、グラフィックに関しての回答をお見せすることができるのは、非常によかったですね。このスピード感は、『MHF』でなるべく早く答えを返すというクセがついていたからこそ、実現できたことだと思います。開発途中だから、このくらいでいいんじゃないか、という緩んだ空気はなかったですからね。
杉浦 前回のテストが終わってすぐ、小野や僕も合わせて主要メンバーで会議をしたのですが、議事録も残せないような紛糾した会議になりまして。お客様から突き付けられた現実はこうなんだよ、と。それもあって、このレベルまで持ってこれたのだと思います。
小野 あの段階で、これだけ熱い意見をいただいて、本当にありがたいと思いました。デキがデキですから、遊ぶのが苦痛なところもあったかと思うのですが。
――テスト開始前からユーザーといっしょに作り上げていくということを明言されてましたから、それなら最後まで付き合ってやろうじゃないか、と思ったユーザーさんも多かったのかもしれませんね。
杉浦 そうかもしれませんね。オンラインゲームは海外から輸入されてくることが多く、サービス開始前にクローズド、オープンと、テストは行ってますが、ほとんど変更がない、もしくはできない場合がほとんどです。『イクシオン サーガ』は、1から作り直したと言えるレベルのことをやっていくつもりですし、今回のテストもそれに近いことをやりました。どうせテストに少し毛が生えたくらいの内容でサービス開始しちゃうんでしょ、と思った方もいたかもしれませんが、今回のテストを見ていただければ、開発隊員(テスター)の皆さんの意見が反映されていることがわかっていただける思います。
職業をより差別化
――今回のテストを実施するにあたり、もっとも意識したことはなんでしょうか。
小野 ゲーム内容でいえば、ストライカー、キャスター、ブラスターの役割と、やれることをはっきり見せようということですね。キャスターとブラスターは後衛で、近づかれたら何もできないし、おもしろくないんじゃないか、といったイメージもあるかと思いますが、そういう部分を解消しています。どのスタイルを選んでも、やれることがいっぱいある。もちろん、スタイルごとの役割、立ち位置みたいなものはありますし、本当に実行できるかはプレイヤーの腕前しだいです。ただ、腕前しだいでどうとでもなる、という段階までは調整できたと思いますね。前のバージョンであったような、決まりきった攻撃しかできない、ある状況では、もう何もできない、といったことはなくなりました。
杉浦 運営側では、短期間で開発隊員(テスター)の皆さんの意見を集計して、分析を行い、それをわかりやすくに開発チームへ伝え、直してもらうということをやってきました。コミュニケーションの部分などで苦労も多かったのですが、
そこがある程度は実ったデキにはなっていると思います。ゼロから作り上げていくというテストのやりかたを最後までやり遂げられたとき、カプコンがオリジナルゲームをユーザーとともに作り上げたという歴史ができあがると思っています。
正直に申しますと、最初のテストでコテンパンに叩かれるのは、想定外だったので、この意見を聞いて、どこまで変えることができるかがポイントだと考えていました。「せっかく意見を出したのにこの程度かよ」と思われてはダメなんです。
――スタイルごとに特徴などをお聞かせください。まずストライカーについて。
小野 とくに移動に関する能力やスキルを強化しました。最前線に立つスタイルですから、まずは気持ちよく移動して、アクションを楽しんでもらおうと。ただ、ストライカーを調子に乗ってチューニングしていくと、ほかのスタイルの立場がなくなってしまいかねないんですね。今回はありがたいことに、全部のスタイルにダメ出しをもらいましたから、いま一度フラットな気持ちになって、ストライカーの気持ちよさを追求して、それを基軸に置き、まわりのスタイルをどうチューニングして立場を与えてあげるか、ということができました。自由度も広げてますので、アクションに関するストレスはなくなるでしょうね。それが楽しさにつながるか、という調整はいまやっていて、これから最後の最後までやることになると思います。
――アクションの気持ちよさは、見ているだけでも感じることができました。
小野 前回のはなんだったんだ、という感じですよね(笑)。
――つぎはキャスターについて教えてください。
小野 味方のブーストアップ、つまり強化や支援をするという役割を明確にしたということですね。いちばん立ち位置が不明瞭なスタイルでしたが、その方向性でチューニングしました。ただ、このゲームはアクションゲームですので、アクションの楽しさと支援の楽しさをどう結び付けるのか、というところを強く意識しています。ほかのプレイヤーが気持ちよさそうに戦っているなかで、ただ回復や強化をしているだけでは、つまらないですからね。チーム全体をサポートする醍醐味はもちろん残していますが、そうではない攻撃的な部分をどう調整していくかを考えています。
――とても難しい調整になりそうですね。
小野 そうかもしれませんね。後衛で支援というと、黒魔法なのか白魔法なのかといった単純な見かたをされることが多いかと思います。ただ、アクションゲームですから、そこだけを考えていては、おもしろくはならないのかなと。このゲームにユーザーさんが何を求めているのかというと、やはりアクションの気持ちよさでしょうから、前のめりに動きながら支援ができるようにしたい。後ろから杖を振って指示をしていく軍師的なイメージのスタイルではなく、自分で積極的に局面を作ったり、戦局を動かしたりして、みずから打って出ていく……突撃軍曹といった感じイメージですかね(笑)。
――ブラスターにはどのような調整を施したのでしょうか。
小野 銃をかまえながら動けるといった、当たり前のことがようやくできるようになった、という感じですね。思うような動きができるようになっているはずですので、このスタイルに関しては、ここからスタートです。アクションゲームって、やりたいことができないなあと思われた瞬間にゲームとは言えなくなってしまうんです。前のテストでも、まったく考えずにチューニングしていたわけではなかったのですが、こういう戦いかたをしてほしいから、あえてあのフォーマットに当てはめたという部分がありました。ただ、それが間違えていて、ユーザーはこれを求めていないという回答が得られましたから、フォーマットから何からすべて変えたということです。といっても万能にするわけではなくて、やれることは増やしたので、あとは腕でなんとかしてください、というチューニングですね。
――役割としては、やはり遠距離からの狙撃がメインに?
小野 基本はそうでしょうね。でも、前線に出てもけっこう大丈夫だと思いますよ(笑)。回避する能力はありますし、そのときヒットアンドアウェーというか、接近戦でも敵を仕留めながら自分の間合いを維持していく、ということもできますので、遠くで座っているだけではなく、戦局の中にみずから入っていくこともできます。ただ、おいしい思いができるかどうかは、アクションゲームですから、当然テクニックが必要となります。
――トラップを仕掛けることもできるようですね。
小野 ええ。トラップは種類を増やしていきたいとは思ってます。ただ、キャスターの支援能力も含めて、あまりそういった部分に注力してしまうと騙し合いゲームになってしまい、アクションが楽しめなくなってしまいます。ストラテジーは必要なバランスにはなりますが、あくまで戦ってほしいんですね。調子に乗って戦っていたらやられた、くらいのバランスでないと、にらみ合いを続けるだけになってしまいますから。このへんはテストを続けて見極めていきたいと思ってます。
――最後にひと言、お願いします。
小野 まず、開発隊員(テスター)の皆さんには、本当に耐えて遊んでいただき、貴重なご意見をしていただいて、本当にありがとうと言いたいです。それが開発や運営チームの奮起につながって、意見に対する回答はほとんど用意することができました。実際にマッチしているかどうかは、ぜひ今回のテストで見てほしいところですね。それと、いいところが少しでもあったら、ほめていただけるとありがたいですね。悪いところを悪いというのは、これまでどおりでかまいませんが、そればかりだと、開発スタッフの心が折れてしまう。いいオンラインゲームをメーカーに作らせるコツは、ちょっとだけほめてあげることです(笑)。
杉浦 公式メンバーサイトの”イクシオンサーガ開発隊”を予想以上にご利用いただき、感謝感激です。まだまだ皆さんの熱い意見を反映させていきたいので、ぜひこれからも開発隊にドシドシ投稿をください! 言われるうちが華ですから。
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