オープンワールドを舞台にしたシリーズ3作目

 オープンワールドを舞台にギャングの抗争を描く、THQジャパンのプレイステーション3、Xbox 360用ソフト『セインツロウ ザ・サード』。随所に盛り込まれたおバカな内容や、ぶっ飛んだ展開などがファンからの賞賛を集める同作の魅力を、シリーズを遊び尽くしているライターの村井聡が語る。


 本作『セインツロウ ザ・サード』は、ギャングスタの戦いをテーマにした『セインツ・ロウ』シリーズの第3作。抗争の舞台となる街が、まるごとオープンワールドで構築されているのが特徴だ。主人公が所属するギャングは、“サード・ストーリート・セインツ”(以下、“セインツ”)。シリーズ第1作『セインツ・ロウ』では、スティルウォーターという街の弱小ギャングに過ぎなかったが、ふとしためぐり合わせでチームに加入した主人公や、ジョニー・ギャットら幹部メンバーの活躍により、一大勢力へと成長した。最新作ではついに地元のスティルウォーターを飛び出し、セインツに圧力をかけてきた巨大組織“シンジケート”が拠点とする街、スティールポートに殴り込みをかける。

『セインツロウ ザ・サード』インプレッション、語り尽くせない魅力を持ったアクションゲーム_08
『セインツロウ ザ・サード』インプレッション、語り尽くせない魅力を持ったアクションゲーム_09

素手の格闘でも魅せる多彩な攻撃アクション

 ニューゲームで始めると、なぜかいきなり映画『スター・ウォーズ』風の大げさなオープニングと、セインツ印の栄養ドリンクのCM(しかも日本向けという設定)を目にすることに。ハードボイルドな内容を展開していたプレイヤーは早くも面食らってしまうかもしれないが、「ここまでやるか!?」とツッコミたくなるような過激な描写と、おバカなノリをあわせ持っているところが、『セインツ・ロウ』シリーズの独特な持ち味なのだ。

 つづいて、主人公とジョニー・ギャットやショーンディらおなじみのメンバーとともに、銀行強盗のミッションに突入。警備員やSWATを相手に、冒頭からハイテンションな銃撃戦を演じる。操作方法はこれまでのシリーズ作品と同じく、オーソドックスなTPS(サードパーソン・シューター)タイプ。照準を自動的に合わせるオートエイム機能は搭載されていないものの、命中判定はさほどシビアでないので、シューターに慣れていないプレイヤーでも十分に戦えるはずだ。どうしてもむずかしく感じられたら、オプションメニューでいつでも難易度(EASY、NORMAL、HARDの3段階)を変更できる。また、本作では格闘アクションのバリエーションが豊富になった。ダッシュしながら攻撃したり、攻撃ボタンを変えたりすることで、飛び蹴りや肘鉄、裏拳など、さまざまなモーションがくり出される。一般人以外の敵対する警官やギャングに対しては、ヒューマンシールド(人間の盾)も実行可能だ。ゲームを進めると、狙ったポイントに空爆を指示したり、誘導ミサイルで標的を破壊したりと、とんでもない武器でいっそう派手に暴れまわれる。

『セインツロウ ザ・サード』インプレッション、語り尽くせない魅力を持ったアクションゲーム_12
『セインツロウ ザ・サード』インプレッション、語り尽くせない魅力を持ったアクションゲーム_13

アップロード機能も搭載! 自由度の高いキャラクターエディット

 冒頭のミッションをクリアーしたところで、キャラクターエディットの画面へ。もともと自由度の高さに定評のある『セインツ・ロウ』シリーズのキャラクターエディットだが、本作でももちろん、性別や人種、体型、顔の造形、ヘアスタイルなど、たくさんの項目をこまかく設定して、思いどおりのキャラクターを誕生させることができる。さらに新要素として、“アピール”という項目も登場。スライダーを動かすと、男性キャラクターは股間、女性キャラクターは胸の大きさを調整できる。ゲームプレイには一切影響しないが、一流のギャングスタを目指すなら、セックスアピールにもこだわりたい。
 また、オンラインで自分が作ったキャラクターのデータをコミュニティーにアップロードして、ほかのユーザーと共有することも可能になった。美男美女やイロモノキャラクターなど、人をあっと言わせるようなキャラクターを作って披露し合えるわけだ。

 ちなみに筆者の場合、カッコよくエディットしているつもりでも、設定をいじればいじるほど、なぜかキャラクターが人間離れしていくようなセンスの持ち主なので、今回はあらかじめ用意されたプリセットキャラクターを使った。あとで「やっぱりキャラクターを作りこみたい」と思ったら、いつでも街にある美容外科でキャラクターエディットを一からやり直せる(性別も変更可能)。

『セインツロウ ザ・サード』インプレッション、語り尽くせない魅力を持ったアクションゲーム_05
『セインツロウ ザ・サード』インプレッション、語り尽くせない魅力を持ったアクションゲーム_06
『セインツロウ ザ・サード』インプレッション、語り尽くせない魅力を持ったアクションゲーム_07

ミッションは予想を裏切る展開の連続!

 ゲームの基本的なパートは、ストーリーの進行に関係するミッションと、縄張りの占拠やリスペクト(仲間からの信頼度)を影響するアクティビティに分かれている。従来のシリーズ作品では、リスペクトをある程度溜めると新しいミッションがアンロックされるという流れだったが、本作ではリスペクトに関係なくミッションを進められるようになった。ギャングスタが主役のゲームだと、派手なドンパチだけを想像されるかもしれないが、本作はプレイヤーを驚かせるような展開がてんこ盛りだ。飛行機から落下しながら空中で銃撃戦をくり広げたり、仮想空間で敵のアバターと対峙したりと、さまざまなシチュエーションを用意してプレイヤーを飽きさせない作りになっている。オンライン協力プレイにも対応しているので、歯ごたえのあるミッションでフレンドやゲストに助けてもらうことも可能だ。ミッションによっては途中で選択を迫られる場合があり、ストーリーの描写が変化したり、アンロックされるアップグレード要素が異なる。

 もう一方のアクティビティは、ストーリーの進行には直接関係しないサイドミッションのようなもの。街の各所にあるアクティビティのポイントに向かうと開始できる。クルマにぶつかって保険金を稼ぐ“保険金詐欺”や、武器や乗り物を使って街中を破壊する“メイヘム”など、シリーズではおなじみのアクティビティは健在。それに加えて、トラップだらけの専用ステージで銃撃戦を切り抜ける“天才ゲンキ博士の超絶有頂天倫理委員会”や、戦車に乗って破壊の限りを尽くす“タンクメイヘム”など、新しいアクティビティも登場していた。

 ミッションやアクティビティをクリアーすると獲得できるリスペクトは、本作ではRPGにおける経験値やレベルのような扱いになった。リスペクトのポイントを溜めてレベルが上がると、さまざまなアップグレード要素を購入できるようになり、ゲームを有利に進められるようになる。アップグレードの内容は、主人公や仲間の能力アップ、クレジットやリスペクトを効率よく稼げるボーナス、どこにでも乗り物を届けてもらえる便利機能など、かなりの種類が用意されている。主人公が強くなっていくさまを実感できるので、自然にリスペクトやクレジットを稼ぐモチベーションが高まる。クレジットについては、武器ショップ、衣料品店といった店舗や、マンションなどの物件を購入することで、定期収入を増やせる。

『セインツロウ ザ・サード』インプレッション、語り尽くせない魅力を持ったアクションゲーム_01
『セインツロウ ザ・サード』インプレッション、語り尽くせない魅力を持ったアクションゲーム_02
▲アクティビティの“"天才ゲンキ博士の超絶有頂天倫理委員会”。
『セインツロウ ザ・サード』インプレッション、語り尽くせない魅力を持ったアクションゲーム_04
『セインツロウ ザ・サード』インプレッション、語り尽くせない魅力を持ったアクションゲーム_03
▲同じくアクティビティの“メイヘム”(左)と“タンクメイヘム”(右)。

やりこみ要素も大充実!

 オープンワールド型のゲームでは、マップをくまなく探索してアイテムなどを発見するコレクタブル要素も醍醐味のひとつ。もちろん本作でも、エクササイズドール(セクシーな空気人形)や札束の山など、さまざまなコレクタブルアイテムがマップの各所に隠されている。また、個人的にとくに楽しめたのが乗り物のコレクション。クルマやボート、航空機を奪って、アジトのガレージに登録することができる。特定の場所やシチュエーションでしか登場しないレアな乗り物もあるので、コレクション魂に火を点けられるプレイヤーも多いはずだ。所有している乗り物を修理工場に持ち込めば、性能や外観をカスタマイズすることもできる。

 本作はとにかく“できること”が多く、魅力をひと言で語り尽くすのはむずかしい。正直なところ、「まずはプレイしてみて!」と言うしかないのだ。どこに行っても開発者の意図が見え隠れする緻密なアクションゲームも楽しいが、本作のように敵のギャングと戦っていると、パニックに陥った一般市民がクルマで突っ込んでくるといったハプニングが多いゲームも独特の楽しさがある。不条理な展開でさえも楽しめる欲張りなプレイヤーに、とくにおすすめしたいタイトルだ。(ライター/村井聡)

『セインツロウ ザ・サード』インプレッション、語り尽くせない魅力を持ったアクションゲーム_10
『セインツロウ ザ・サード』インプレッション、語り尽くせない魅力を持ったアクションゲーム_11

『セインツロウ ザ・サード』
発売元:THQジャパン
対応機種:プレイステーション3、Xbox 360
発売日:2011年11月17日
価格:7770円[税込]