『FF零式』コンポーザー・石元丈晴氏激白のインタビュー完全版!

『FF零式』の楽曲を担当した、コンポーザー石元丈晴氏。週刊ファミ通2011年11月10日号に掲載した石元氏のインタビューをベースに、誌面に載らなかった部分を補完した、インタビュー完全版をお届けする。

●『FF零式』へ込めた石元氏の想い

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 『ファイナルファンタジー零式』(以下、『FF零式』)で流れる楽曲を作曲したのは、コンポーザーの石元丈晴氏。これまで『すばらしきこのせかい』や、『クライシス コア -FFVII-』の楽曲を担当し、従来のゲーム音楽と異なるテイストを創り上げ、高い評価を受けている。そんな石元氏が新たにチャレンジした作品が、『FF』シリーズの新機軸作品『FF零式』だ。ここでは、週刊ファミ通2011年11月10日号に掲載した石元氏へのインタビューに、スペースの都合上誌面に掲載できなかった部分を補完した完全版を掲載。インタビューの文面から、石元氏の貪欲なチャレンジ精神と、向上心を感じ取っていただければ、幸いだ。


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コンポーザー
石元丈晴氏
Ishimoto Takeharu

FF零式』のコンポーザーとして、ほとんどの楽曲制作を担当する。代表作は、『クライシス コア -FFVII-』など。


FF零式』のオリジナルサントラ2種類で発売中!
FF零式』の楽曲を余すところなく収録したオリジナル・サウンドトラックが、発売中。豪華装丁になっている初回生産限定盤には、0組のキャラクターイメージを含んだ32ページブックレットや、DVDが同梱されている。なお、CDは通常盤も限定盤もどちらも3枚組だ。


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初回生産限定盤
CD3枚組+DVD/3800円[税込]

通常盤
CD3枚組/3300円[税込]

 


 

●『FF零式』ならではの戦争

――『FF零式』の楽曲のコンセプト、キーワードについて教えてください。
石元丈晴(以下、石元) キーワードは“戦争”です。『FF』というタイトルの通り、ファンタジーではあるん'ですが、生々しい戦争をイメージしています。このタイトルの企画が動き出してから、ディレクターの田畑(端氏)がずっと「今回は戦争をモチーフにしたドキュメンタリーにしたい」と、言っていました。それで、当初は戦争映画などの音楽を思い浮かべたのですが……、地味なものが多いんですよね。しかも、それらの作品は過去のものですので、『FF零式』の楽曲は、自分らしさを出した新しい方向性のものにしたいと考え、さらにゲームに合うのはもちろん、作品としても単独で聴けるものにしたいと思って作りました。

――作曲の際、イラストやシナリオといった資料などはご覧になりましたか?
石元 それはもちろん。ただ、戦争と言っても、現在の日本は戦争をしていませんし、僕は戦争を体験した世代でもないので、リアリティーを出すのが難しかった。また、『FF零式』は、ゲームならではの戦争でもあるので、そこに音楽を付けるのはたいへんでしたね。

――重厚感のある曲が多いように感じました。
石元 確かに明るくはせず、多くの曲で重さを意識しながら作曲をしています。

――7つの楽曲をオーストラリアでレコーディングされたということですが、オーストラリアを選んだ理由について教えてください。
石元 まずゲームの音楽をオーケストラで演奏してもらうときに、いくつか候補があったのですが、オーストラリアのシドニーシンフォニーは、メンバーがみんな社員のような形態で所属していたので、事前にたくさん練習をしてくれるんです。ほかのオーケストラでは、収録する当日に初めて譜面を見るということが一般的ですので、それに比べると、とてもうまい演奏をしてくれました。

――収録をされたのは、有名なオペラハウスの中だったとのことですが?
石元 シドニーと言えば、変わった形のオペラハウスですから(笑)。でも、オペラハウスは、本当に音響がいいんです。日本のスタジオではリバーブというエフェクターを使って、疑似的な残響音を作り出すんですが、ここではエフェクターをいっさい使う必要がなく、とてもいい曲が収録できました。


●ひとりで作り上げた楽曲

――本作の楽曲は、石元さん以外のコンポーザーは関わっていないのでしょうか?
石元 アレンジなどは別の方に編曲などをお願いしていますが、書き下ろしの曲は僕ひとりでやりました。もともとひとりでやりたいと思っていましたし、手柄を自分のものにしたいという思いも……というのは冗談ですけど(笑)。何より、楽曲に対する肯定も否定もすべて、自分ひとりで受け止めたいと考えていました。というのも、『FF』零式は5年以上前に立ち上がったプロジェクトですから、いまさらほかの人に任せられませんよね。

――『FF零式』が、携帯電話用に『FF アギトXIII』というタイトルで開発されていたころに考えていた曲のイメージは、いまも残っているのでしょうか?
石元 当時、フルオーケストラで作った曲があったんですが、時を経て合わなくなってきたので、一部以外はすべて作り直しています。やはり5年も経つと考えかたが変わりますし、僕も成長して、いまのほうがいいものが作れるだろうという自信もあります。また、『FF アギトXIII』からイメージを一新したいという野村(哲也氏)の意向もあり、メインテーマを新しく録音し直したんですね。結果として、明らかに以前よりいいものができたという手応えがありました。そうそう、オーストラリアの録音スタッフが収録の合間に、そのメロディーを口ずさんでくれたのがうれしかったです。

――これまで石元さんが携わった『FF』作品は、“コンピレーション オブ FFVII”や、『ディシディア FF』といった、シリーズ作を踏襲したものでした。『FF零式』は、従来作とあまり関連性がありませんが、作曲する際にそういったことは意識しましたか?
石元 あまり意識しませんでした。『FF』の楽曲は、それぞれ担当する人によって変わると思うんです。それはコンポーザーだけでなく、ディレクターや開発チームによっても異なりますし、将来的には僕のはるか後輩たちが担当することになると思いますので。何より僕は、長寿シリーズならではの規制などがあると、壊したくなっちゃうんです。作り手としてはつねに自由な状況のほうがいいですし、言われたこと以上のものを作るのが楽しいと思っているので。僕はこんな人間ですから、開発スタッフはかなり扱いにくいと思いますよ(笑)。とは言え、第一開発部(『FF』シリーズや、『キングダム ハーツ』シリーズの開発を担当する部署)には、野村を始め、はっきりとした意思を持ったリーダーが多いのでやりやすいです。リーダーはみんなの意見を聞くだけじゃなく、はっきり選んでいくほうが重要だと思いますね。

――なるほど。では、田畑さんとのお仕事はいかがでしたか?
石元 いえ、田畑とは何作もいっしょに作っていますし、信頼関係があるのでぶつかりません。ほかのスタッフに対して、仕事の進めかたや、予算のことなどにはきびしくしますが、いい仕事をしていれば何も言いません。“扱いにくい”と言っても、そういう当たり前のことをやっているだけですよ(笑)。


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●今後の石元氏の目標は?

――今回の楽曲の中で、とくに印象的だった曲はどれでしょう?
石元 オープニングに流れる『開闢の刻』、『我ら来たれり』や、マキナ、レムのテーマソング、『戦―静かな激闘』などですね。

――マキナとレムのテーマ曲を作った意図は?
石元 これは開発スタッフから作ってほしいという要望があったんです。僕は、最初からそのキャラクターのテーマを作るのも、曲名を“○○のテーマ”と付けるのも嫌なんですよね。そういう曲名を付けるのではなく、曲を聴いた人に「これって、マキナのテーマなのかな」というように想像させるのが好きです。

――アコースティックギターを使った楽曲も印象的に感じました。
石元 そういう意味では、いま楽曲を振り返ると、『クライシス コア -FFVII-』の楽曲に似てるというご意見があるかもしれません。ですが、これは意図的に似せたわけではなく、自分らしい曲を追求した中で生まれた自然な結果です。自分が得意なスタイルで、人がやっていないものをやろうとしたら、『クライシス コア -FFVII-』と同じ、アコースティックギターを使った曲が生まれたんです。

――『FF零式』の曲で、“石元さんと言えばアコースティックギター”というイメージが、さらに強くなりそうですね。
石元 結果的に『クライシス コア -FFVII-』でそのイメージが付きましたね。でも、僕はもともとギターがあまりうまくないんです。ギターの練習もあまりしませんし、ギタープレイヤーに憧れることもなくて。ただ、ずっと触ってきた楽器ですので、どうせやるなら得意なものでやりたいと思って、使っています。

――今後、ライブをやって、ギターで出演するといったことをされる予定は?
石元 お酒を飲めるバーや、ライブハウスでライブをやってみたいですね(笑)。。そういうライブで、もっと自分の楽曲を広めたいと思うんです。ゲームの楽曲は、ゲームをプレイしながら聴くことが前提ですし、サウンドトラックだけを買っても、曲の魅力がすべてわかるということは多くないと思います。とは言え映画の『トロン:レガシー』の音楽を手掛けたダフト・パンクは、15秒の映画のCMですら、すぐにフレーズを覚えてしまうようなカッコいい楽曲を作るわけです。もちろん、彼らは映画の曲を作る前にアーティストとしての実績を築いていたわけですが。ですから、僕らもただ曲を作るだけでなく、どう作っていくかをもっと考えなくてはいけないと思うんですよ。たとえ『FF』のサントラが売れたとしても、曲がいいから売れたって考えるのは違うと思うんです。当然ですが、『FF』だから買ってくれている人が多いですし。そうではなく、僕がゲーム主軸ではない何か新しいことをやって、それが受け入れられて初めて「売れた」と考えていいと思うんですよね。

――以前から、「売れたい」と言うことは悪いことではないとおっしゃっていましたね。
石元 売れたからいいというわけでも、売れるためなら何をしてもいいというわけではないんですが、売りたい、売れたいと考えるなら、そのための工夫をしなくてはいけませんよね。作った人が納得できるもので、自分が好きなもの。それが売れたら最高だと思うんです。その自分なりの工夫のひとつが、僕にとっては『すばらしきこのせかい』で挑戦したボーカルの入った楽曲だったわけです。でも、あれで終わりではなく、ゲーム会社に所属してはいますが、ゲームとは関係ない楽曲を作るプロジェクトをやってみたいですね。会社に指定されたタイトルやプロジェクトの曲を作って満足している人もいると思うんですが、5年先のことなどを考えると、別のことをやってチャレンジしていかないと、作曲家としてとてもきびしい気がします。

――石元さんはあまりメディアへの露出がありませんね。
石元 そうですね。だから、インタビューも何をしゃべればいいのかよくわからないんです。先日、タイトーのZUNTATAさんと対談をしたんですが、あのときはすごく盛り上がっておもしろかったですね。

――対談はとくに珍しいですね。どなたか対談をされたい方はいらっしゃいますか?
石元 スティーブ・ジョブズですね。残念ながら亡くなってしまいましたが……。僕は、スティーブ・ジョブズが大好きなんです。もう発想が違いますよね。アップルにいるときは極端な考えかたで、かなり激しい人物のようでしたが。でも、いいものを作る人への反応は肯定と否定が半々くらいだと思うんです。それくらいでないと、リーダーシップを取れないですよね。それと、サッカー選手の本田圭佑や、メジャーリーガーのイチローと対談してみたいですね。ああいう人たちの考えかたを知るのが好きなんです。考えかたとなると、直接話してみないとわかりませんから。ぜひ、直接お話をして、彼らの考え方を知ってみたいですね。

――個性の強い方がお好きですね。
石元 日本は個性を嫌いますよね。遠慮して人を立てて、謙虚でやさしくて。そんな人は、ただの“いい人”で終わってしまう。それでは世界に出ても勝てないと思います。本田圭佑やイチローは、みんな本音をバシバシ言って個性を出しています。だから、対談も建前ばかりなのは嫌ですし、こういうインタビューも心のない部分ばかりじゃ、受ける意味はないと思うんですよね。


●『すばらしきこのせかい』の曲を制作中!?

――『すばらしきこのせかい』と言えば、主人公のネクが『キングダム ハーツ 3D[ドリーム ドロップ ディスタンス]』に登場しますね。
石元 はい。その影響で、いくつか『キングダム ハーツ』の楽曲を手掛けることになりました。『すばらしきこのせかい』の楽曲のアレンジをしているので、ご期待ください。

――楽しみにしています。では、最後にファンにメッセージをお願いします。
石元FF零式』のサントラはぜひ買ってもらいたいですね。じつは、ちょっとした仕掛けがあるんですが……、この仕掛けだけが話題になったらイヤだな(苦笑)。