●編集者ふたりが体験した14時間の『ファイナルファンタジーXIII-2』
スクウェア・エニックスから2011年12月15日に発売予定のプレイステーション3、およびXbox 360用ソフト『ファイナルファンタジーXIII-2』(以下、『FFXIII-2』)。週刊ファミ通11月17日号(11月2日発売)では、同作を冒頭からエピソード3までプレイ(時間にして14時間)した時点でのプレビュー企画を掲載している。本稿では、そこで伝えきれなかった部分を追記してお届けする。ちなみに、今回プレイしたバージョンは10月下旬時点のもの。今後、修正・調整・削除される可能性もあるので、その点はご了承いただきたい。
●『FFXIII』は序章だった!?――Text by トマト杉原
■前作から輪をかけたスペクタクル感
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あえて乱暴な言いかたをすれば「『FFXIII』は序章だった―」。14時間ほどのプレイしただけでもそんな感想を抱かせるほど『FFXIII-2』の変化は激しく、中身は濃い。それがファーストインプレッションだ。
まず、オープニングからカッ飛ばしている。街ひとつを破壊してしまうほどのスケール感で超絶バトルが展開され、「本編のクライマックスはこれをどう超えるのか」と余計な心配をしてしまうほど。
数分で心を鷲づかみにされた後は、セラとノエルの時空を超えた旅が始まる。ふたりはライトニングを捜すために、“ゲート”を使ってさまざまな時代や場所を行き来し、個々の異変と因果関係を持つ問題を解決しながら、少しずつ物語の真相に迫っていく。その冒険の中で、出会うことになる『FFXIII』に登場したキャラクターたちは、時が経ち、意外な立場で登場することも。コクーンを支える柱となったファングとヴァニラが本作でどうなのかも気になるところだが……。前作は“ファブラ ノヴァ クリスタリス”作品群の第1弾ということもあり、独特の世界観の把握に正直、ひと苦労する部分もあった。だが、本作はわかりやすいよう配慮されている印象で、物語にも集中できるように感じる。
時空を移動するには、“オーパーツ”を入手してゲートを起動し、時空の羅針盤である“ヒストリアクロス”(※1)を使って、行き先となる時空エリア(マップ)を選択。ひとつのマップにゲートが複数存在することもあり、そのマップを起点に新たな道が複数開けることもある。
■ひとつのマップから派生する数多のお楽しみがスゴイ!
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訪れることができる場所は、セラから見て数年後から数百年後の新規マップや、『FFXIII』にも登場した既存マップとなる。ただ、既存マップと言っても『FFXIII』で見られた場所ではなく、同作をプレイした人にとっても未体験のゾーンがほとんど。加えて、同じマップでも時代によってその様相が違い、すべきことも異なる。物語のクリアーだけなら必ずしも訪れる必要のないマップもあり、寄り道要素も十分用意された、自由度の高い作りになっている。
しかも、一度クリアーしたマップは、時間を遡って、クリアー前の状態(イベントが適度に省かれていたり、二度目の挑戦に配慮されているところが親切)から冒険することも可能。これはやり込みにつながる要素で、たとえば、あるエリアにボスクラスの敵がいたとする。最初に撃破したときは、あるフラグ立てをして弱体化してから倒したが、物語を進めてキャラクターが成長したので、再びその時代の最初に戻って、素の状態のボスに挑戦したい、といったときに利用できる。見事撃破すると、驚きの展開が待ち受けていることも……。つまり、本筋に従って進んでも、後戻りしても、新たなルートが開けていくワクワク感が味わえるのが、本作の魅力のひとつなのだ。
さらに、マップのお楽しみとして、街などにいるNPCから請け負えるミッションや、隠された宝箱をモーグリを使って発見する(通常では手が届かない場所に配置された宝箱は、モーグリをブン投げて確保! 「ひどいクポー!」)探索要素、カジノが楽しめる場所もあるなど、『FF』らしい盛りだくさん感も復活。
■仲間にするモンスター、その使いかたで印象が変わるバトル
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バトルは、基本的な部分は『FFXIII』と大きく変わらないが、既報の通り、シネマティックアクション(※2)や仲間モンスターの必殺技(※3)などが追加され、爽快感はアップ。パラダイムシフト(※4)時にあった演出もなくなり、テンポアップしている印象だ。特筆すべきは、やはり仲間となるモンスターの存在。モンスターには固定のロールが設定されており、たとえばチョコボならアタッカー、ケット・シーならヒーラーといった具合。本作のバトルはロールの組み合わせや、それを切り替えるタイミングによってバトルが簡単にも難しくも感じる特徴があるため、どのモンスターをバトルに出すかの選択はかなり重要。同じロールを持つモンスターでも、種類ごとに覚えるアビリティに一部違いがあるようなので、多くの種類のモンスターを仲間にすると、それだけ戦略のバランスも広がる。極端に言うと、強めのモンスターを(フェニックスの尾などを駆使して)力押しで仲間にすると、その後のバトルの難易度もガラッと変わる印象。よって、バトルの難易度はプレイヤーによって感じかたは違いそうだ。どのタイミングでどのモンスターを仲間にするかもポイントとなり、筆者はその時点で行ける範囲の時空エリアを片っ端から巡り、モンスター集めに多くの時間を割いてしまった。敵だと厄介だが、仲間にすると何と心強いモンスターが多いことか!
また、モンスターが習得するアビリティは別のモンスターに引き継がせることも可能なので、序盤に仲間にすることができるモンスターをガンガン育成してもムダにはならないところがうれしい。育成に必要となるのはモンスターのドロップ品や店売りアイテム。ゆえに、セラやノエルを成長させるためのCP(クリスタルポイント)稼ぎと相まって、バトルをこなすモチベーションは自然と高くなる。本作ではバトルリザルトの結果によるアイテムドロップ数の増減の幅も広く設定されているようで、効率よく戦う→ドロップアイテム増→モンスターの成長もその分早くなる、といった具合に、リザルトでいい結果を出すために、効率よく戦うことの意義は、前作より大きいと言えるだろう。
■ベタ褒めですみません
ひとつのゲートをくぐるごとに解決する謎、深まる謎、新たに仲間にできるモンスターの登場、請け負えるクエストの発生など、気になる要素が雪崩式に振り掛かる本作。『FFXIII』からガラリと変わった『FFXIII-2』は、似て非なるRPGとして、大きな進化を遂げている。どこかちょっと気になる点はないか、と改めて振り返っても……思い浮かばない。蛇足だが、映画でも第1作目のヒットを受けて制作された続編が、とんでもない大作となって帰ってくる、ということがよくあるが、自分の中ではそんな期待感が『FFXIII-2』にはあり、14時間のプレイのだけでも、その期待に違わぬ作品だと感じた。12月15日の発売がいまから楽しみで仕方がない!
※1 ヒストリアクロス……すべてのマップのつながりが見渡せる、時空の羅針盤。ほかの時空へ行くときに必ず通過する。
※2 シネマティックアクション……バトルやイベント中に表示されるコマンドを入力すると、特殊技を出せたり、行動を選択できるシステム。
※3 仲間モンスターの必殺技……仲間にしたモンスターが、特定のゲージを消費して発動する。シネマティックアクションと同じく、コマンド入力式。
※4 パラダイムシフト……前作のオプティマチェンジのこと。ロール(役割)を切り換えるシステム。
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●プレイヤーの手に委ねられた冒険の方向性――Text by 河合リヱ
■感情移入がしやすくなった物語
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抗いようのない流れに飲み込まれ、絶望的な逃避行の中から道を切り拓いた『FFXIII』。続編となる『FFXIII-2』では、セラがみずから旅に出ることを決意し、運命を選び取る過程が描かれます。動機は“お姉ちゃんに会うため”。想像しやすいシチュエーションだからか、プレイヤーとキャラクターの“温度”が近付き、感情移入しやすくなった印象。
その温度の近さは、“ライブトリガー”によって、キャラクターを身近に感じられるようになったことにも起因しています。ライブトリガーは、移動中やイベントの後などに4つの選択肢が表示され、ひとつを選ぶことで、その内容に応じた会話イベントが見られるという要素。答えが気になる選択肢が多くて、2周、3周と遊ぶときにも楽しめそう。挿入される頻度は比較的高く、完全にお遊びの選択肢もあって、ノエルのノリ突っ込みが見られたり、セラがイマドキの女の子っぽいことを言ったり。「イメージと違う!」という人もいるかもしれないけれど、私としては、道中で素顔が明らかになっていくにつれ、彼らへの理解が深まっていくのは楽しかった!
そうそう、いままでよくわからなかったノエルのキャラクター性が、親しみやすく、すごく魅力的なものだったのは意外(失礼)でした。彼の謎めいた出自、ある人物との関わりにおいて見せる繊細な表情、そしてセラとの会話で覗く、前向きな姿勢と真摯な言葉。いわゆる、“主人公らしい主人公”。セラとノエルのふたりが不動の軸になることで、プレイヤーはつねに彼らと同じ目線で、物語に秘められた謎を追っていけます。言うなれば、コレも“RPGらしいRPG”要素ですが、単純というわけではなくて、わかりやすさを追求した結果かと。物語が、時を越えることで複雑になりがちなので、操作キャラ側の設定はわかりやすいほうがいいですしね。
また、セラとノエルの旅のお供であるモーグリは、マスコットとしても、システムに関わるものとしても予想以上に大活躍。最初は正直「下膨れてんな……」と思っていましたが、ともに過ごすうちに、なぜかすごくカワイく見えてくるから不思議なもんです。スルメ並に味がある。モーグリを投げてアイテムを取得するギミックでは、それによって新たなエリアへ行けるための鍵が入手できたりもするので、なかなか侮れません。何より、投げるときに「ク~~ポ~~!」と抗議しながらジタバタするのがおもしろくて、やたらつかんでしまう……意味もなく。
ちなみに今回は、前作以上にオープニングの流れがスゴイ! ライトニングと謎の男・カイアスの戦いは、地上戦あり、空中戦ありの怒濤の展開。冒頭から「あれ、これって……?」と、既出のイメージを覆すような演出もあって、先が気になり、早く物語を進めたくなりますよ。
■親切になり、ストレスを排除したシステム
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ゲームの流れは、“オーパーツ”という鍵を探し、時空を越えるための“ゲート”を開く。これのくり返しが基本。とはいえ、各マップに多彩な仕掛けがあるのでお使い感はナシ。たとえば、ある暗い場所には光を嫌うモンスターがいて、サーチライトの光をたどれば安全に移動できます。ほかにも、モーグリのお宝探知能力がモノを言うマップもあれば、時空の狭間でのパズルがメインのマップもある。コンセプトが異なるマップがつぎつぎと出てくるので、進むたびに「つぎは何だろう?」とワクワク。新しく導入されたジャンプを駆使する場面もほどよくあり、また、チョコボに乗っていると異なるアクションが見られるなど、地形に即したちょっとした遊びも。しかも、ひとつのマップの広さがちょうどよく、「戻るの面倒だわ~」と感じる場所では、どこからともなくチョコボが登場。アルカキルティ大平原のような広い場所では、ワープして拠点に戻れるような仕掛けもあり、ストレスになるような移動がなくて「どこまで親切なんですかね!?」と突っ込みたくなるほど。
街にはたくさんの人がいて、会話をしたり、クエストを受けたりと、いわゆるRPGっぽい構造に。モーグリやチョコボに反応するなど、細かい部分まで作り込まれています。また、クエストをクリアーしたり、ボスを倒すことで手に入る“フラグメント”を集めるのも収集要素好きにはたまりません。これは世界設定に関する情報や、ノラのメンバーからのお知らせ(?)など、さまざまなテキストが読めるもので、160個ほどある様子。意外な事実がわかることも多く、興味深いものになっています。ライブトリガーと同様、周回プレイでのモチベーションにもつながりそう。
なお、ナビマップの方角固定やパラダイムの保存機能など、前作で気になった部分のフォローはバッチリ。さらに、どこでもセーブができ、ヒストリアクロスにも戻れるといった、ちょっとしたことではあるけれど、それによってプレイが快適になるような気配りが随所に見られます。セーブデータをロードすると、海外ドラマのように“前回までのFFXIII-2”というイベントのダイジェストが流れるのにはちょっと笑いました。ヒストリアクロスからマップを選ぶとき、そこでのストーリーダイジェストがナレーション&テキストで流れるのも、プレイ間隔が開きがちな社会人にはうれしい仕組み。ユーザーのストレスを排除し、プレイに集中できる環境が整えられているのは、『FFXIII-2』が周回プレイ前提の作品になっているだけに好感触です!
■プレイヤーの個性が問われるバトル
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バトルは、前作をプレイした人ならスンナリ遊べます。逆に言うなら、前作をプレイしていないと、いきなりはちょっときびしい。序盤にしては強い敵が普通にいたり、バトルが長期化するとだんだん不利になったりするので、これは的確な状況判断とパラダイム(前作のオプティマ)の切り換えができないと難しいわ、という感触。一応、“初心者の館”やオートでのパラダイム編成など救済措置はあるものの、可能なら先に前作をプレイしておいたほうがいいですね。
前作から比べ、操作キャラが打ち上げられるようになったり、リーダーチェンジが可能になったりという細かい変更はありましたが、もっとも気になったのはモンスターが仲間になる新要素。彼らはアイテムで成長させられるほか、すごくたくさんあるプリセットの名前から好きなものを付けたり、装飾品で外見をカスタマイズすることもでき、手を掛けられる分だけ愛着が沸きます。性格もいろいろあって、もう「ンナーオ」とネコのように鳴くケット・シー(命名:ウボァー)を、パーティーから外せない! かわゆい!
しかし、ここでハッとしたのが……バトルには3体のモンスターだけを連れていくことができ、モンスターはロールが固定されているということ。最大で3つのロールだけを使えることになるので、前作のように、3人とも同じロールのパラダイム×6個という最終形がなくなったわけです。何を入れるかは、プレイヤーによって個性が出るところ。“俺の最強パーティー”論がアツくなりますなコレは。
プレビュー用のROMにはカッチリとは実装されていませんでしたが、2体のモンスター間でアビリティを継承する要素があり、これもプレイヤーによって個性が出る部分。同じロールどうしならアビリティを引き継ぐことができ、ほかにもアビリティを習得する方法があります。こちらは、以降の『FFXIII-2』の記事で紹介予定なので、お楽しみに。
また、操作キャラの成長システムは、ざっくり言うと、どのロールをどれだけ成長させるか、自分でコントロールできるシステムになっています。ある程度レベルを上げて節目が来ると、新たなロールの開放やATBの追加などのボーナスからひとつを選択でき、ゆえに同じ進行度でも、プレイヤーによって使えるロールやステータスが違ってくる。こうしたモンスターのカスタマイズやアビリティ継承、操作キャラの成長、そしてヒストリアクロスでの攻略ルート選択など、本作ではプレイヤーに方向性が委ねられている部分がとても多いように感じました。
■素直におもしろかったです
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ほかには、楽曲を手掛けるコンポーザーが3人になり、場面によってテイストの違う曲が流れることも印象深かったです。統一感の面で好き嫌いが出そうなところですが、“前作に関わる部分”、“新たな敵に関わる部分”など、使われている曲のテイストには区分けがあり、前作からの違いを強く感じられる部分でもあって、とても新鮮味がありました。ファンファーレも前作のものをアレンジしたバージョンになっていて、バトルにも新たな気持ちで臨めます。
最後に。成長に関するバランス、イベントでのキャラクターの挙動、カメラ、一部のロードの長さなど、ちょいちょい引っ掛かる部分はあったものの、確認してもらったところ、これらはすべて修正されるとのこと。全体のボリューム感など、解き終わらないと見えない部分もありますが、ここまでの時点で「あー、ちょっとダルいな」などと思うようなことはいっさいなく、夢中になって遊んでいる自分がいました。思った以上の“お楽しみ”があって……うん、おもしろかったです。前作を遊んだ人ほど、イロイロ驚くんじゃないかな。未公開の要素ももちろんあるので、今後公開される続報にも注目していただければと。
前作における、物語を重視して綴られる映画的な構造から、プレイヤーが物語を作る、より能動的な構造へ。『FFXIII-2』は前作を越え、さらなる進化を遂げる。14時間のプレイの中に、その兆しは確かにありました。
ファイナルファンタジーXIII-2
メーカー | スクウェア・エニックス |
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対応機種 |
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発売日 | 2011年12月15日 |
価格 | 7,980円[税込] |
ジャンル | RPG(ロールプレイング) |
備考 |
※画面は開発中のものです。