1388shot00684

 ベセスダ・ソフトワークスの新作FPS(一人称視点シューティング)『RAGE(レイジ)』。2011年10月6日に発売され、27日にはベセスダ・ソフトワークスの日本初となるPC版の発売も予定している本作について、FPSを得意とするライター、スオミ松崎に語ってもらった。

 というのも、本作の開発元id Softwareは、90年代に『DOOM』と『QUAKE』といったタイトルで、現在のFPS流行の礎を築いた重要なメーカー。その最新作となれば、語るっきゃないってわけだ。

●FPSヤローならやるべき!

1390shot00764

 ドモー、スオミ松崎です。発売されてちょっと日数が経過してしまいましたが『RAGE』を遊んでみての感想などを書きます。最初から脱線してしまいますが、これもちゃんと理由があってのことなので悪しからず。

 僕が本作の開発元id softwareのタイトルと出会ったのは1997年のことで、まだあまりインターネットが普及していない状況。で、たまたま僕の兄貴が購入してきた某PC洋ゲーオンリーのムックに付属していたのが『QUAKE』というタイトルだった。

 『QUAKE』の体験版はオンライン対戦が可能で、最大16人で遊ぶことができたのだけど、それまで1対1の対戦ゲームしか知らなかった僕には対戦人数の多さが衝撃的すぎて驚いたのを今も覚えている。そこからは割と真面目に生きていた人生をドロップアウトして、電話代も考えず対戦にあけくれた結果、電話代が7万円を記録。両親に滅茶苦茶怒られたなぁ。それだけ僕にとって『QUAKE』は転機となるようなタイトルだったわけです。

 「そんなid softwareの新作っていうんじゃ遊ぶっきゃねぇ!」って思っていたんで、今年は北米のイベントまでわざわざ触りに行ったりもしたんですよね。で、10月6日に発売されたので遊びまくってました。

 ここからは本筋です。実際に『RAGE』ってどうなのよ? って気になるトコロのインプレッションを書いていきます。

 まず物語は、id softwareにしては珍しく地球上を舞台としており、なぜ『RAGE』の世界は荒廃しているのかといった点を説明するムービーが導入で流れる。地球に小惑星が衝突するまでの短いムービーなのだけど、物凄く魅せられる内容だった。特に女性オペレーターが最後に放つ「こちらアトラス司令室、ログオフする。人類に未来があることを祈って」というセリフは凄く心に残った。

 さて、ゲーム開始時の主人公は貧弱な装備しか持たないのだけど、色々な人と接したり依頼を達成していくごとにお金と武器が徐々に揃ってくる。中でも、マップ上で拾えたり店で売っている設計図を基にパーツを組み合わせることで制作できるガジェット類は非常に面白い。
 索敵して敵を自動で攻撃するセントリーボットや、ブーメランのように投げられ、相手の頭を吹き飛ばすウィングスティック。登場するガジェットはいい意味でid softwareらしくないバラエティーに富んだ内容で、どれもユニーク。ただ、種類が豊富というわけでもないし、登場する銃火器は火力の高いものが多いので、戦闘に慣れると使用する機会が減ってしまうのが残念。特に爆弾を乗せたラジコンのガジェットがあるのだけど、あまり使用できる場面がなかったかな。

 銃火器はショットガンからスナイパーライフルまで数種類が搭乗する。中でも面白いのが“クロスボウ”。このクロスボウに装着できる矢が数種類あるのだけど、マインドコントロールボウが強烈だった。この矢で刺された敵は一時的にプレイヤーが操作できるのだけど、頭を抑えながら苦しがり、最終的には敵自体を大爆発させることが可能。この頭を抑えながらヨロヨロと歩き、最後に周辺の敵も巻き込んで大爆発する様子はブラックユーモアが効いていて最高でした。あ、ショットガン系の武器はid software伝統の強さなので、至近距離でぶっ放して頭を吹き飛ばしましょう。ストレス解消にもなりますよ。

1389shot00730

 敵は野盗やらミュータントやら最先端のアーマーに身を包んだ敵やらがモリモリと登場します。敵のAIは賢いかな? こちらが敵に照準を合わせようとして「よし、このタイミングで撃てば!」なんて思っているとサイドステップで射線をズラされたりといったイヤラシイ動き方をしてくれる。また、敵が被弾するとダメージを受けた部分をかばいながら移動するといった細かい演出が実装されている。敵が胸や足に被弾しても普通に銃撃戦を展開して興醒めするようなこともなく遊べました。

1391shot00777

 ビークル(おもにサンドバギー)に乗ってマップを移動したり、レースに出ることもできる。最初はレースなんて面倒なだぁと思っていたのだけど、広大なフィールドを移動するときに野党に襲われることが多発。仕方なしにレースに参加し、獲得したクレジットを消費してビークルのカスタマイズをしているうちに楽しくなってしまった次第。ただ、ビークルのバリエーションや、実装可能な武器の種類は多くないのが残念。

 さて、肝心のマルチプレイヤーですが、本編のサイドストーリーを楽しめる協力プレイモードと。ビークルを使用したぶっ壊しまくりのレースが楽しめます。協力プレイはフレンドと喋りながらプレイするのに適した難度なのだけど、油断していると敵に袋叩きにされる絶妙なバランスになっています。対戦モードは対戦を重ねるごとに使用できるビークルの武器などが増えるため、プレイ回数に比例して強くなる仕組み。だけど、やっぱりビークルのバリエーション不足は否めない。最終的に似た装備の車両ばかりになっている気も。

 こんな感じで感想を述べていきましたが、個人的に「FPSファンなら買っとけ!」と言いたい作品です。このハイクオリティーな映像美を魅せつけられ、さらに秒間60フレームの描画を維持しているこのクオリティーを見てしまうと、30フレームのゲームを遊ぶときにガッカリしてしまうレベル。本編のボリュームはサイドミッションとかをこなしていても12時間も掛からないかな。本筋だけをプレイするならもっと短いかもしれず。残念なのはエンディングの短さというか味気なさ。これは続編が出るということなのかな? 見ていて「えっ? もう終わり?」って感じでした。

 もちろん、洋ゲーにありがちなイースターエッグ(開発者がネタで仕込む隠し要素)もあるんですが、往年のid softwareファンなら感涙モノと言える。『Wolfenstein3D』、『DOOM』、『QUAKE』といったタイトルの最初のマップが最新のエンジンでテクスチャーもそのままに再現されている素晴らしさといったら最高ですよ。特に『DOOM』はE1M1の曲がそのまま流れるサービスっぷり。もちろん、どこから見ても同じ方向から見たように表示されるスプライトも当時のまま。最新技術でやることじゃないよね(笑)。
 そんな感じで個人的には凄く楽しめた作品です。ただ、やっぱりFPSでの対戦モードが欲しかった。が、そのへんは次回作の『DOOM 4』で実装するとのことでそちらを楽しみにします。いやー、面白かったわ!