●レースゲームはもう限界なのか?
Xbox 360で2011年10月13日に発売される『Forza Motorsport 4』。マイクロソフトが誇る開発チームTurn10 Studiosの手による最新作だ。さらにパワーアップしたグラフィックとシミュレーション精度、そしてKinectを活用した先進的な機能などを搭載した、次世代レースゲームのプレイインプレッションを、クルマゲームをこよなく愛する後手青木プロがお届け!
たとえばRPGやアクション、シミュレーション、アドベンチャーといったジャンルは、クリエイターの発想次第でいくらでも新しいアイデアを盛り込むことができる。新しい世界であったり、キャラクターであったり、ゲームシステムであったり。今後も斬新なアイデアが世に出てくるであろうことは、想像に難くない。
だが、現実のクルマが登場するリアル指向のレースゲームはどうだろう? 架空のマシンを登場させることはできるかもしれないが、現実からかけ離れた動きはできないし、メビウスの輪みたいな、実際はあり得ないコースも出しにくい。現実がベースになっている以上、ここまでグラフィックやシミュレーション精度が向上した現在、画期的なリアルレースゲームは難しいのではないかと、個人的には考えていた。そんな中出会ったのが、『Forza』シリーズの最新作『Forza Motorsport 4』だ。何も予備知識がなかった俺は、「まあ、前作にクルマとコースを足したって感じなのかなあ」などと、ちょっと高をくくっていたのである。
●クルマへの愛が伝わるAutovistaモード
しかし、そんな俺の浅はかな思惑は、“Autovista”モードで速攻打ち砕かれた。これは、高解像度で作り込まれたクルマを自由に眺めることができるモードで、ドアやボンネット、リアゲートなども開けて中を見ることが可能だ。それだけではなく、ドアを開けて中に入り、車内を眺めることすらできる。「なんだ、ただ見るだけか」と思うかもしれないが、では、マクラーレンF1やFord GTのコクピットに座ったことがある人が、どれだけいるだろう? そう考えると、これはなかなか貴重な体験だ。しかも、スターター部分にあるアイコンをタッチすれば、リアルなエンジン音も聴ける。残念なことに、すべての車種がそうではなく、閲覧できるのは限られた車種なのだが、チョイスがけっこう絶妙で「このクルマがどうなっているのか見たい!」と思わせるものばかり。けっきょく、本編をプレイする前に、Autovistaモードだけで数時間没頭することになった。世界的に有名なクルマ情報番組『TOP‐GEAR』の解説者によるクルマの解説もおもしろく、本作がいかにクルマ好きのスタッフによって作られたかが、しみじみと伝わってくる。開発陣のこだわりようには恐れ入った。
さらに驚いたのは、これにKinectを組み合わせると、体の動きによって視点が動き、手でアイコンが触れるようになるということ。ドアを開けて、ちょっと体を前に移動させると、スルリと車内にカメラが滑り込む。まるで実際にディーラーでクルマを眺めているかのよう。まさかこんなKinectの使いかたがあったとは。
●スピードホイール+Kinectのドライブが心地よい!
さて、いよいよ本編について。グラフィックやサウンドの進化はもちろんだが、じつはいちばん楽しかったのは、ワイヤレスハンドルコントローラーの“ワイヤレス スピード ホイール”。クルマのハンドルだけを取り外したような形で、ワイヤレスだからコード類がなく、取り扱いが非常に楽だ。ハンドルの抵抗や路面からのキックバックなどは構造上再現できないが、お手軽にハンドルでプレイできるという点が、それを補って余りある。無論、本格的なプレイ感覚を得たいなら、固定式でペダル付きのハンドルコントローラーがいちばんだが、別のゲームと取っ替え引っ替え遊ぶときには、ちょっと面倒に感じることもある。ノーマルのコントローラーと固定式ハンドルコントローラーの中間を埋める存在として、ワイヤレス スピード ホイールは揃えておいて損はないと思った。
特筆すべきは、ワイヤレス スピード ホイールとKinectのヘッドトラッキング機能の組み合わせだ。ヘッドトラッキングとは、Kinectのセンサーでプレイヤーの頭の角度を検知するという機能。これを有効にしてレースをすると、プレイヤーが見た方向に視点が移動するようになる。たとえば、左コーナーを旋回中にグッと顔を左に向けると、視点が左に移動して、コーナーの先が見えるようになる。現実のクルマの運転では、誰もが自然に行っている動作だが、これだけでドライビングが格段にしやすくなるのだ。コーナーリング中だけでなく、直線を真っ直ぐ飛ばしているときも“よそ見運転”が可能で、なんだか本当にクルマを運転しているような感覚に襲われる。これは楽しい!
『Forza Motorsport 4』は、新しいデバイスによって、数々の新機能を盛り込んだ。でも、ただ盛り込んだだけで終わりではなく、ユニークな活用法で、ゲームをよりおもしろく、魅力的に見せている。本作を買おうと思っている人は、ぜひワイヤレス スピード ホイールとKinectも組み合わせてプレイしてもらえたら幸いだ。きっと、これまでのレースゲームでは味わえなかった、新鮮な体験ができることだろう。
■筆者紹介 後手青木プロ
週刊ファミ通の編集者。レースゲームを担当することが多いが、超絶ドライビングテクニックを持っているわけでもなく、腕はそこそこ。クルマは好きだがペーパードライバーという、中途ハンパ感が漂う“なんちゃってマニア”。ヨーロッパ系の軽量コンパクトなハッチバックとか、昔の日本車などが好み。
メーカー | 日本マイクロソフト |
---|---|
対応機種 |
![]() |
発売日 | 2011年10月13日 |
価格 | 7,140円[税込] |
ジャンル | レース |
備考 | 『リミテッドエディション』が8190円[税込]にて発売 |