●2011年の年末商戦は豊富なラインアップを揃えられた

 東京ゲームショウ2011の会期に合わせて、日本マイクロソフト 執行役 インタラクティブ・エンターテイメント・ビジネス ゼネラルマネージャー 泉水敬氏に単独インタビューを敢行。東京ゲームショウ2011に出展しての手応えや、今後の展望などを聞いた。Xbox 360のこれからの戦略は?

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日本マイクロソフト 執行役 インタラクティブ・エンターテイメント・ビジネス ゼネラルマネージャー 泉水敬氏

――東京ゲームショウ2011は、どのような方針で臨まれたのですか?
泉水 コンセプト自体は例年通り変わらないのですが、これから年末にかけてリリースされるすぐれたタイトルを中心にセレクトして、できるだけ多くのユーザーの皆さんにプレイしていただけるような形でセッテイングしました。試遊スペースの兼ね合いで、Kinectタイトルがかなりの場所を占有しているように見えますが、コントローラ向けタイトルに関しても、できるだけ試遊台を置いて体験していただける状況にしたつもりでいます。コントローラ向けゲームとしては、とくに“CERO Zコーナー”の占めるスペースが多くなりました。近年、ハイエンドのゲーム機に締めるレベルの高いCEROレーティングZ区分の比率が比較的高くなっているように思うのですが、今回の東京ゲームショウ2011でも、『ギアーズ オブ ウォー 3』や国内初プレイアブル出展となるベセスダ・ソフトワークス様の『The Elder Scrolls V: Skyrim』、スパイク様の『DEAD ISLAND』など、人気作を揃えられたように思います。

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――例年に比べると、ブース面積が半分程度になっていますが……。
泉水 私たちとしても、できるだけ広いスペースで、できるだけ多くの皆さんに遊んでいただきたいと思っていたのですが、いまの日本の事業規模を考えると、なかなか大きく出すのが難しいというのが現状です。我々としては、できる範囲でできるだけ多くの人に、できるだけいいタイトルを遊んでいただくという工夫を、今回はしたつもりです。スペースの兼ね合いから、タイトルは選ばざるをえなかったので出展タイトルは減っていますが、非常にいいタイトルが揃えられたのではないかと。今年出展しているタイトルを見ていただければわかると思いますが、本当にものすごいタイトルが揃っていると思うんです。どれひとつを取っても「おーっ!」と喜んでいただけるようなタイトルばかりで、どこにも引けをとらないラインアップだという自信はあります。来年は事業をもっと大きくして、これまで以上に大きく出展できるようにがんばりたいですし、やらなければいけないという使命感を新たにしています。

――年末に向けてたしかに、タイトルは揃ってきていますね。
泉水 コントローラ向けゲームだけを見ても、東京ゲームショウ以降、2011年9月22日に『ギアーズ オブ ウォー 3』がリリースされて、10月13日『Forza Motorsport 4』、11月17日『Halo: Combat Evolved Anniversary』と展開されます。一方、サードパーティー様からもエレクトロニック・アーツ様の『バトルフィールド3』やユービーアイソフト様の『アサシン クリード リベレーション』、『The Elder Scrolls V: Skyrim』が控えています。スクウェア・エニックス様の『ファイナルファンタジーXIII‐2』も、『ファイナルファンタジー』シリーズで初めてXbox 360版が他機種と同時にリリースされます。ユーザーの皆さんもぜひ楽しみにしていていただきたいです。

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▲『Dance Central 2』。

――一方で、Kinect対応タイトルも充実していますね。
泉水 まずは、10月27日に『Kinect スポーツ: シーズン2』と『Dance Central 2』がリリースされます。この2タイトルは、Kinectの普及に貢献したタイトルの続編です。『Kinect スポーツ: シーズン2』には、日本で人気のある野球やゴルフなどが収録されています。ゴルフはとくに皆さんからの要望が高かった種目です。一方の『Dance Central 2』は、ゲームとしても進化していますし、日本のアーティストであるEXILEの楽曲も収録されました。最近のダンスブームの流れの中で、盛り上がっていければと期待しています。さらに、『Kinect: ディズニーランド・アドベンチャーズ』へと続いていきますので、Kinectとしての流れも作れると思うんです。昨年のKinect本体の発売以降、タイトル数はあまり多くなかったのですが、少しずつ満足していただけるラインアップになっているのではないでしょうか。Kinect対応タイトルに関しては、コントローラ向けタイトルと比較すると、どちらかと言うと長く売れていく傾向があるので、ひとつひとつのKinect対応ゲームを大切に長く売っていけるようにしたいと思っています。

――Kinect対応ゲームはロングテールなんですね。Xbox 360だと、コントローラ向けゲームは比較的初週に圧倒的に売れることが多いようですが……。
泉水 そうなんです。Kinectタイトルは、本当にずっと長く売れています。昨年発売した『Kinect スポーツ』もそうですし、『ユアシェイプ フィットネス・エボルブ』もそうです。やはり、対象ユーザーがよりカジュアル層ということも大きいみたいです。カジュアルな方は、ゲームについての情報を入手されるタイミングもバラバラだったり、いろいろなところで情報を得られる傾向があるようです。一方で、Kinectの認知度というものをまだまだ訴求し切れていない部分があるのも確かです。Kinect体験キャラバンイベントでも、「Kinectって、こんな体験ができるんだね!」と驚きを持たれる方が、まだまだ多いようです。今後も試遊会などを積極的に行い、Kinectの体験がこれまでのゲーム体験とはどう違うのかを理解していっていただければ……と思います。

――Kinectまわりで、とくに重視している施策などはありますか?
泉水 個人的に重視しているのは、コアゲーマーの方への訴求です。Kinectというと、どうしてもカジュアル層やファミリー層といったイメージがあると思うのですが、今後はもっとコアゲーマーの方に楽しんでいただけるものをリリースしていきたいです。

――一部には、泉水さんは 「コアゲーマーから離れてきた」との意見もありますが……。
泉水 いえいえ(笑)。けっしてそんなことはありませんよ! たしかに昨年はKinectの発売にあわせて“カジュアルゲーム”を強調した嫌いはありますが、今年の東京ゲームショウの展示を見ていただければわかる通り、コアゲーマーの方に満足していただけるようなタイトルが揃っています。

――カジュアル系は、『Kinect ディズニーランド・アドベンチャーズ』や『Dance Central 2(ダンスセントラル2)』など印象的なタイトルが多いからかもしれませんね。
泉水 そうなんですよ! それらのほうが派手だし、かつ知名度が高い。「ディズニーが来た!」「EXILEが来た!」となると、「コアゲーマーのことは気にしていないのか?」ということになるのですが、そんなことはありません。もちろん、カジュアル層に支持されたいと思っています。そこは間違いありません。でも、我々をここまで支えてくれたのも、これから中心となって支えていただくのも熱心なXbox 360ユーザーの皆さんであることは間違いないです。コンテンツの供給を含めて、コアな方に対するアプローチがおろそかになることはありません!

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▲『Forza Motorsport 4』。

――コアユーザー向けに注目してほしいタイトルは?
泉水 まずは、『Forza Motorsport 4』です。本作には、コアゲーマーの方にも喜んでいただけるような機能が含まれていますので、ぜひ試してみていただきたいです。たとえば“ヘッドトラッキング”ですね。

――ああ! 確かにあれはいいですね。顔をちょっと向けるだけでカーブの先が見られるんですよね。視界が広がって見える。
泉水 ちょっとマニアックに聞こえるかもしれませんが、“ヘッドトラッキング”はやってみるとすごくいいですよ。ふつうクルマを運転するときは、カーブを曲がるときに必ず曲がる先を見るのですが、レースゲームではカメラが固定していてそんなわけにはいかなかった。それが今回Kinectに対応したことで、ちょっと顔を向けるとカーブした方向が見えるようになったんです。さらに言えば、ちょっと顔の角度を変えるだけでバックミラーが見えたり、サイドミラーが見えたりする。うしろから来るクルマがどの位置にいるのか、いちいち視点を変えなくてもいいんです。最初のうちは“頭を動かす”ということを意識して運転に戸惑ったりしますが、慣れてくると自然に顔を向けて操作できるようになります。それは当たり前です。なぜなら実際のドライブ感覚に近いわけですから。そうすると、“ヘッドトラッキング”なしにクルマを運転することに、逆に違和感を抱くようになってしまうんです。

――なるほど。Kinectは、人間の本質的な欲求を叶えてくれるゲームシステムなのかしら。
泉水 単にコントローラをKinectに置き換えた以上の没入感がありますよね。ここまでグラフィックのレベルが上がって、リアリティーを再現できるようになると、いかにそこに入っていけるかがポイントになる。本当にちょっとしたことですが、Kinectの“ヘッドトラッキング”で、その場にいるような体験を提供できるのが『Forza Motorsport 4』です。

――そういった意味でも、僕らはまだKinectのことをすべては理解し切っていないのかもしれないですね。
泉水 それはクリエイターさんも同様のようです。Kinectは新しい機能を追加していろいろなことができるようになっているのですが、そのたびにクリエイターの皆さんから「こんなこともできるんだ!」という驚きの声をいただきます。そういった意味では、お話していてとても楽しいですし、まだまだこれから期待が持てるという実感はありますね。

――昨年のちょうどこの時期、「日本にクリエイターがKinectの可能性を広げる」とおっしゃっていましたが、1年を経てのご感想は?
泉水 大いに手応えを感じています。たとえば、セガさんの『ライズ オブ ナイトメア』は、世界に先駆けてホラータッチのコアゲームをKinect専用で出していただけたというのは、ひとつの大きなステップだと思っています。さらには、KONAMIさんのXbox LIVE アーケード用『リードミーズ』など、日本のメーカーさんやクリエイターさんは、新しいことにチャレンジしていると思います。今後『重鉄騎』や『Project Draco(仮題)』、『Diabolical Pitch』、『ホーント』など、これまでのクオリティーを下げることなく、Kinectの機能が追加されて、より没入感の出るゲームで遊べるようになる。今後は、そういう世界が広がっていくのではないかと期待しています。

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――ちょっと話題を変えますが、今年の東京ゲームショウをご覧になってのご感想は?
泉水 いちばん大きな変化はGREEさんの出展ですよね。そういったカジュアルゲームの台頭は否定できないですし、今後伸びていく分野となることは間違いない。それは基調講演で和田さん(和田洋一氏/スクウェア・エニックス 代表取締役社長)もおっしゃっていましたが、ソーシャルゲームはいままでの市場に取って代わるものではなくて、いままでの市場に追加されるものです。けっして業界が縮小するというものではない。ゲームユーザーの裾野が広がるという意味では、業界にとってもいいことだと思います。あとは、ユーザーの皆さんが状況に応じて使うデバイスやサービスを選択する時代になるのでしょう。我々もXbox 360に加えて、WindowやWindows Phoneなど、さまざまなプラットフォーム上でエンターテインメントを提供していくことになります。

――全面展開するということですね?
泉水 そういった意味では、私たちのプラットフォームであるXbox LIVEにも注目してほしいです。ご存じの通り、Xbox LIVEのサービスは初代XboxやXbox 360に提供されてきたわけですが、クラウドサービスを先取りした一面があって、コンシューマーやPC向けはもとより、これからは携帯端末向けにも提供されようとしています。今後Xbox LIVEというクラウドサービスが、いままで以上に加速して大きな存在感を放つようになるのは間違いないです。ゲームサービスとしてもそうですし、ゲームの提供形態も広がっていく。もちろん、ゲーム以外のエンターテインメントにも広がっていきます。我々は映画の配信サービスを始めていますが、映画に限らず放送も含めできるだけ取り込んでいきたいというのが方針です。そのもっとも有効なデバイスとしてXbox 360があるんです。

――いまの日本市場におけるXbox 360を見ると、なかなか波に乗り切れていないという印象もありますが、今後の方針を教えてください。
泉水 ひとつだけはっきりしていることがあって、それは日本以外の市場を見ていただければわかると思うのですが、Xbox 360は世界中で支持されているということです。国民性や消費者の好みの違いもありますが、そんなにつまらないものが世界的に見てこれだけ普及するわけがない。となると、方向性は明確で、我々が日本のユーザーの皆さんに合ったコンテンツなり、喜んでいただけるサービスをいかに展開できるか、ということと、あとはそれをいかに日本のファンの方にきちんと伝わるようにするか、です。ソフトラインアップ、Kinect、Xbox LIVEと、ますますXbox 360を充実させていきますので、今後にご期待ください。