モンハンフェスタ決勝大会を見ようと、朝早く起きてお台場に向かった。今回のフェスタでは俺は完全な傍観者だったので書こうかどうか迷ったけど、やっぱり伝えたいことがあるときは素直に書こうと思い、筆を取った次第だ。
開場時間の午前10時間ちょうどくらいにお台場のTFTホールに到着。さっそく何人もの顔見知りに出会い、挨拶をする。その中には、今日の狩王決定戦の決勝ステージに向かう強者の顔もたくさんあった。彼らは、開発チームが丹精込めて作り上げた『モンスターハンターポータブル 3rd』というすばらしい神輿を、晴れの舞台で担ぐことを許された選ばれし担ぎ手だ。長い時間を費やして仕込んできた祭の仕上げをできるのは、彼らしかいないのだ。
イベントが始まり、まずは当日予選参加者が列をなしてアオアシラの討伐に挑んだ。知った顔もこぞってこれに参加し、笑ったり、泣いたりしている。俺は今回の狩王決定戦のタイムアタックはいっさいプレイしていないので、ギリギリまでパートナーと作戦の確認をしている参加者の姿を見て素直に「うらやましいな」と思う。こういった競技は何でもそうだけど、結果以上にそこに到達するまでの過程が大事であり、楽しいもの。真剣な表情でクエストにチャレンジする彼らの顔を見て、「つぎの機会があったら、絶対に俺も参加するぞ」と、早くも心に誓った(笑)。
次長課長の井上さんら芸能人ハンターさんのトーク&プレイが行なわれた後、ステージでは最速女子ハンター決定戦と最速親子ハンター決定戦が実施された。これ、イベントの華的なユル?い大会なんかじゃまったくなくて、狩王決定戦の参加者と同じく、必死に努力し、技を収めた“強者”たちによるキレイで見事なタイムアタック勝負だった。ステージに上がってプレイしたどの女子ハンターも親子ハンターも、トライ&エラーの末に導き出した自分たちのだけの作戦を実践するために一生懸命に立ち回り、そして会場を沸かせていた。そのキレのある動きは間違いなく努力の土台の上に作られたもので、俺は観戦しながら「すげえすげえ! いいぞいいぞ!!」という言葉を連発。なかでも、女子ハンター、親子ハンターともに優勝チームの作戦と立ち回りは鳥肌が立つほどすばらしく、大げさじゃなくタイムアタッカーの次世代の息吹を感じた。
そしていよいよ、待ちに待った狩王決定戦の決勝大会が始まった。参加するのは、各地区大会を勝ち抜いた代表チームと、当日予選を突破した3チームを加えた計14組。言うまでもなく、いま日本のハンターの頂点に立ついずれ劣らぬ精鋭ぞろいだ。
1回戦は、ティガレックス亜種討伐。ここで14チームはいきなり、4チームに絞られる。すごく目の粗い篩の上にハンターたちは乗るわけだ。この狭き門を抜けなければ準決勝も決勝もないわけで、ここに残ったチームはおそらく、ティガレックス亜種討伐の練習をもっとも厚くやってきたことだろう。チラリチラリとステージ上に映し出される映像を観るにつけ、7チームずつまとめてのタイムアタックなのがもったいないようだった。
そして準決勝。『3rd』が誇る凶悪モンスター、イビルジョーの討伐だ。勝ち残ったのは、見る人が見ればわかるとんでもない4チーム。決勝戦に進めるのはこのうちの2 チームだが、どのチームが勝ち残ってもまったく不思議じゃなかった。「本気でヤバい奴らが残った!」と、俺はステージの真ん前の砂かぶりで、ささやきにしてはいささかデカすぎる声をあげた。
イビルジョーを相手にした4チームの立ち回りは、どれもすばらしいものだった。大剣と狩猟笛を巧みに操り、あのイビルジョーを完全にコケにしているのである。フィールド上ではつねに主導権を握ってハンターを恐怖のどん底に陥れる恐暴竜が、一瞬たりとも自分のターンを作れない。ただ斬られ、めまいになり、罠に脚を止められて、あっという間に屠り去られていく。あまりにも簡単そうに狩っているので「俺にもできそうだな」と思ってしまうが、大剣のタメ3を正確にイビルジョーの弱点部位に当て、そのまま横殴りを頭にぶちかますことだけ取ってみても、生半な努力では身に付かないなと確信する。こんな動きは氷山の一角で本当はもっと詳しく書きたいのだが、今回は傍観するつもりだったのでひと文字もメモを取っていないし、そもそも俺程度のスキルではとてもじゃないけど詳細を書くことなどできないので、表面をなぞっただけのうす?い記事になってしまうことをご容赦ください……。
そんな、超人たちの準決勝を勝ち抜いたのは、福岡代表のインフィニティと大阪代表のJuiceだった。インフィニティのひとり、God君(通称ゴッディ)はたびたび俺のコラムにも登場するのでご存じの方も多いかと思うが、その相方の“のん”さんもJuiceのふたりも、ゴッディと同じ世界、同じレベルにいる掛け値なしに“とてつもない”ハンターたちである。きっと彼らは、歴史に残る決勝戦を見せてくれるに違いない。
そして決勝。長かったモンハンフェスタ11のフィナーレに立ち塞がるのは“狩猟王の大連続狩猟”、ナルガクルガ亜種、ギギネブラ亜種、ドボルベルク、ジンオウガの連続討伐だ。この4頭のモンスターを前に、ステージの4人は全員、狩猟笛を手にする。決勝でのダブル狩猟笛なんて第1回大会を制した Jast25'sを彷彿とさせるが、さてさて今回はどんな立ち回りを見ることができるのだろうか?
始まった決勝戦は、歴史に残る名勝負となった。どちらのチームも、ハンターの位置取り、くり出す攻撃、アイテムの使いどころと完璧で(後で優勝チームに話を聞いたらミスだらけだったと言ってたが……)、冗談抜きでモンスターをまともに立っておかせずにつぎつぎと屠り去ってしまう。2頭目のギギネブラ亜種が討伐されたとき、時計はまだ5 分針になっていなかった。しかも、2チームのタイム差はほとんどない。3頭目のドボルベルクの姿が闘技場から消えたとき、若干インフィニティがリードしているように見えたが、ワンチャンスでいくらでも逆転できるタイムでJuiceも最後のジンオウガの前に立つ。さあ泣いても笑っても、これが最後の勝負だ!
どちらのチームの立ち回りも、じつにじつに美しかった。血のにじむような努力と、ちょっとのセンスと、そして誰よりも『モンハン』が好きだという気持ちがあれば、人はかくも美しく立ち回ることができるようになる……。そんなことを見るものに思わせる、胸が締め付けられるような勇壮な戦いだった。
「このままずっと、プレイを見ていたいな……」
勝負の傍観者とは思えない感情を迸らせる俺。彼らのプレイにただただ身を委ねていたこのときの10分間は、ほかにたとえようがないほど心地いいひとときだったよ……。
そして、クエスト終了。ナルガクルガ討伐の段階からわずかなリードを保っていたインフィニティが、猛追するJuiceを振り切った。インフィニティのゴッディはこれで、狩王決定戦2連覇。フェスタ07では4位、フェスタ08で2位、そしてフェスタ09、フェスタ11で連続優勝という、彼以外の誰も到達できない高みに達した。じつはジンオウガ討伐の途中、観戦していたタイムアタッカーをして「Juiceが逆転しそうな場面があった」というくらいの僅差の戦いだったが、彼の歴戦の勝負勘と蓄積は、勝利の女神の首根っこを引っ掴んで離さなかったようだ。本当に、たいしたもんだよ。大会終了後、俺は彼らタイムアタッカーが集うフェスタの打ち上げに誘ってもらったのだが、そこは技を収めた人たちだけが立ち入れる神聖な場所だと思ったのと、ちょっとでも早くいまの気持ちを文字にしたいと思ったので、気持ちだけをありがたくいただくことにした。
こうして、長かったモンハンフェスタ11は幕を閉じた。東日本大震災もあって一時は開催も危ぶまれたが、関係各位の努力とハンターの情熱で、過去最高の来場者を記録するじつに華々しいイベントになった。
そうそう。
この日は最終日ということでいろいろな発表も行なわれたのだが、なかでも俺が「やった!」と拍手喝采を贈ってしまったのが仙台でのモンハンイベント開催の発表である。イベントの詳細は明らかにされていないが、来る11月に仙台の地でモンハンイベントが実施される。震災の影響で中止にせざるを得なかった仙台でのイベントを、ファンの気持ちを裏切りたくない一心でずっと検討を続けていたスタッフの皆さんの熱い想いに、ただただ拍手を贈りたかった。この発表も含めて、モンハンフェスタ11は本当にすばらしいイベントだったと心から思う。
関係者の皆さん、心の底からお疲れ様でした。またぜひ、この日のような感動を味わわせてくださいね。
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