●アンコールで行われたのは……

 “4年に1度の開催”をコンセプトとするゲーム音楽フェス“4starオーケストラ”。2日目となる2011年10月1日に行われたステージの中から、セガのサウンドユニット[H.(エイチ)]と、『逆転裁判』や『グランディア』の楽曲で知られる岩垂徳行氏率いる“岩垂徳行SPECIAL BAND”が登場したバンドステージのリポートをお届けしよう。

 最初に登場したのは、セガが誇るサウンドユニット[H.]。[H.]は、ゲーム音楽の作曲家であり、数々のセガ作品のボーカルを務めてきた“日本一歌のうまい社員”こと光吉猛修氏と、『ファンタジーゾーン』や『アウトラン』などの作曲で知られるHIRO氏を中心にしたバンド。ライブの時期に応じてメンバーが入れ替わるが、今回はHIRO氏(キーボード)、光吉猛修氏(ボーカル&ベース)に加え、『歴史大戦ゲッテンカ』などの作曲を務めるタカ氏(ギター)、『クロヒョウ 龍が如く新章』などの作曲を手掛ける福山光晴氏(トランペット&キーボード)、そして現役高校生の工藤詠世氏(ドラマー)を加えた全5名のメンバーになっている。

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▲光吉猛修氏。

▲HIRO氏。

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▲タカ氏。

▲福山光晴氏。

▲工藤詠世氏。

 [H.]の1曲目は、ファンから人気の高い『バーニングレンジャー』のオープニング曲「Burning Hearts~炎のANGEL~」。光吉氏のシャウトでライブが幕を開けると、観客は総立ちになって盛り上がる。その勢いのまま、『アフターバーナー』の「Final Take Off」、『CRACKIN'DJ Part2』の「Could Be」へ。「Could Be」は、[H.]が結成された10年前に初出演したステージで歌った曲。すなわち[H.]は今年で10周年を迎えるということを改めて発表すると、会場中から大きな声援が送られた。

 その後、「スクランブルスピリッツ ステージ1」(『スクランブルスピリッツ』)、「Receive You」(『龍が如く』)とテンポのいい曲が続くが、ここで一転して「LAST WAVE」(『アウトラン』)ではしっとりと聴かせるムーディーな雰囲気に。その後、光吉氏からの「立ちたいだろ?」という声とともにアップテンポなリズムが刻まれ、バンドメンバー紹介に突入。各々が担当楽器でソロパートを披露するなか、トランペットの福山氏は『ファンタジーゾーン』のイントロを奏でて、観客を大いに沸かせていた。

 「Superlative」(『戦国大戦』)を経て、最後の曲「The Winners」(『WORLD CLUB Champion Football』)を披露すると、観客は拳を振り上げて大盛り上がり。光吉氏とともに観客もシャウトし、興奮冷めやらぬ[H.]ステージは幕を閉じた。

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 続いて、登場したのは岩垂徳行SPECIAL BAND。フランスで開催されたJAPAN EXPO 2010で初お披露目されたバンドで、メンバーは岩垂徳行氏(キーボード)、『かまいたちの夜2』や『牧場物語』シリーズの楽曲を務めた福田康文氏(ギター)、岩垂氏のレコーディングメンバーであるウりゃ氏(ベース)、ゲーム音楽などを手掛けたツーファイブの常務取締役であるローズ堀口氏の4人。さらに、今回は特別ゲストとして、『ワイルドアームズ』シリーズの楽曲を担当した、なるけみちこ氏も参加している。

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▲岩垂徳行氏。

▲福田康文氏。

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▲ウりゃ氏。

▲ローズ堀口氏。

▲なるけみちこ氏。

 岩垂徳行SPECIAL BANDの1曲目は「追求~つきとめたくて」(『逆転検事2』)。「みんなー!」と陽気に呼び掛ける岩垂氏は、リラックスムードながら軽々とメロディアスな曲を披露していく。[H.]と比べるとゆったりした雰囲気でステージをくり広げ、続く「光と影の戦い」(『ルナ ~ハーモニー オブ シルバースター』)では、なるけ氏によるコーラスが入ったり、メガドライブのソフトである『ラングリッサーII』の曲をメドレーにした、「聖なる剣の調べ~ラングリッサーIIメドレー」を披露したりと、貴重な演奏で会場を盛り上げていく。

 4曲目は、「ゴドー~珈琲は闇色(やみいろ)の薫り」(『逆転裁判3』)。ここで、なるけ氏がキーボードからサックスに楽器を持ち換え! 見事なサックス演奏を披露すると、会場からは大きな拍手が起こっていた。なるけ氏は、「この年になって人前で演奏するとは思いませんでした(笑)。もともと演奏者になりたくてピアノなどをやっていたんですけど、一向にうまくならなくて。それでアレンジや作曲のほうが楽だと思ってやっていたんですが、まさかいまごろお鉢が回ってくるとは……」と、今回のゲスト出演について感想を語っていた。

 その後、楽器編成をカントリー風に変更し、「街の曲メドレー」を披露。これは、なるけ氏が手掛けた『ワイルドアームズ セカンドイグニッション』と『ノーラの工房 霧の森の魔女』の街の曲をつなげた特別メドレー。なるけ氏は、ここでもサックスと笛を担当し、華麗な演奏をくり広げていた。

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 「街の曲メドレー」終了後、なるけ氏は再びキーボードに戻り、岩垂氏がセンターに。ここで披露するのは、『グランディア』の「サルト遺跡」と「バトル3」。とくに「リクエストがすごく多かった」(岩垂氏)という「バトル3」は、演奏中に会場全体で手拍子が起こるほどの人気だった。そして、最後の曲へ行く前に岩垂氏から『グランディア』に関するメッセージが送られる。「最近、東日本大震災を始め、各地で地震が起こっています。でも、僕たちは立ち止まらずに前に進んでいこうと思います。『グランディア』は、“一歩前に進む勇気”をテーマに作っていました。できれば、皆さんにも前に進んでほしい。『グランディア』をいっしょに作った宮路武さんが先日亡くなりました。彼は“ゲームは愛だ”と語っていた。ゲームが愛ならば、僕らもいっしょにゲームを発展させて、前に進んでいきましょう」。そんな熱いメッセージの後には、バイオリンの藤原文吾氏を加えて、『グランディア』のメインテーマである「グランディアのテーマ」が披露される。キーボード、そしてバイオリンの音が加わった「グランディアのテーマ」の演奏が終わると、会場からは惜しみない盛大な拍手が。

 その拍手を受けて行われたアンコールの楽曲は、同じく『グランディア』の「緊迫四連発」。本日最後となる曲に観客は聞き入り、ついに曲も終了。本日のステージが終わる……と思いきや、マイクを持った岩垂氏から「[H.]も、もう一回出てきなよ! いっしょにやろうよ!」という衝撃の発言が! その発言通り、なんとここで2度目のアンコールとして、[H.]×岩垂徳行SPECIAL BANDのコラボレーションステージが行われることに!

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 コラボステージの準備のあいだに、今回の司会を務める声優の磯村知美さんが登場し、[H.]の光吉氏とHIRO氏、そして岩垂氏とのトークが行われた。その中で再度2011年で[H.]が10周年を迎えることと、現在Ustreamで“[H.]な夜”という番組を放送しており、11月に第3回が行われることが語られる。すると、岩垂氏は「今度、行っていいですか?」と突如の出演希望。もちろん、光吉氏とHIRO氏はこれを快諾。どうやら、次回の“[H.]な夜”には、岩垂氏が登場するかも!? また、今回の4starについて岩垂氏が「こういうフェスをユーザーのみんなが作ってるというのがすごくいいですね。4年後も呼んでください」と語ると、光吉氏は「4年後と言わず、毎年やればいいじゃん!」とコメント。このコメントには、会場中から大きな歓声が挙がっていた。

 コラボステージの準備完了とともに目の前に現れたのは、ふたつのバンドが合体した大所帯のユニット。しかも、岩垂氏がトロンボーンとなり、ドラムだったローズ堀口氏が光吉氏とともにボーカルを務める、ツインボーカルに。この編成で演奏されたのは「Let's Go Away!」(『デイトナUSA』)。「デイトーナー!」でおなじみのこの曲が始まると、会場は最高潮の盛り上がりに! ステージに立っている出演者たちも笑顔いっぱいで、非常に楽しそうに演奏を披露する。“欽ちゃん走り”でステージの端にローズ堀口氏が移動すれば、光吉氏も同じように追い掛けたりと、観ているだけで楽しいステージは、会場全体の「デイトーナー!」の声で、この日最高の盛り上がりを見せて幕を閉じた。

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▲バンドステージ終了後の熱気も冷めやらぬ中、会場のロビーに[H.]が登場! ロビーにいるお客さんを交えて「セガ」コールを行ったあと、物販でCDを買った人を対象に、即興のサイン会を開き出す。これにはお客さんも大喜び。ステージの汗も引かない状況にも関わらず、笑顔でサインをする[H.]が印象的だった。