●よりディープになった地下世界へと潜れ!

 2011年9月15日から18日まで、幕張メッセで開催された東京ゲームショウ2011。近隣のホテルでは、プレス向けのさまざまなプレゼンテーションが花盛り。中でも、多数のソフトラインアップを取り揃えていたのがTHQだ。ここでは、スパイクが発売したFPS(一人称視点シューティング)『METRO 2033』の続編、『METRO: LAST LIGHT』(日本発売未定)のインタビューの模様をお届けする。実際にはプレゼンテーションもあったのだが、すでにお伝えしているE3での内容と同じだったのだ。E3でのデモについてはすでに映像がほぼ全編公開されているので、それらをチェックしてほしい。

 とはいえ、基本は説明しておこう。本作は、いわゆる“核の冬”が訪れたモスクワを舞台にしたFPS。核汚染と、地表に出現するようになったミュータントを避け、人類は地下鉄(メトロ)に逃げ込んでいるという設定。ドミトリー・グルホフスキー氏の小説を原作としており、小学館から邦訳も出ている。前作の印象は、どこか旧東側諸国を感じさせる冷え冷えとした世界構築がすばらしく、個人的には3言語音声収録という変わったローカライズだったのも気に入っているところ。ローカライズはともかく、プレゼンテーションを見ると、世界の雰囲気はそのままに、戦闘なども物理破壊表現なども積極的に入るようになって、かなりパワーアップしている印象。

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 インタビューに答えてくれたのは、4A GamesとTHQ本社のコミュニケーションの中継を行なうスタジオ・コミュニケーション・リードをTHQサイドで務めるヒュー・バイノン氏。なお、本作は海外では前作のプラットフォームであるXbox360とPCにくわえ、プレイステーション3とWii Uで2012年発売予定。日本での発売は現状未定となっている。

――前作のすばらしいところとして、日本では日本語・ロシア語なまりの英語・ロシア語の3言語収録だったのが非常におもしろかったのですが、本作での外国語対応などはいかがでしょうか?
バイノン まだ決まっていないことが多いので「こうしたい」ということでしかないのですが、我々のローカライズの考えとしては、現地語(日本の場合は日本語)の字幕は当然として、ロシア語と現地語の音声も入れられればと思っています。

――前作でよかったと思うところと、悪かったので変えたというところを教えてください。
バイノン 良かったのは、雰囲気が非常に良かったことですね。いかにもありそうな世界を作れたのではないかと思います。これは『METRO 2033』の核だと思ったのでその部分については引継ぎ、伸ばしています。ちょっと不満だったのは、戦闘の部分です。細かいところに仕上がりが完全でなく、没入感をちょっと阻害する部分があったのが残念でしたね。本作ではおもに3点について重点的に改善を行なっています。まずは敵のAIです。敵をより恐ろしく感じてもらうために、真実味があるようなAIにしました。そしてステルス要素。隠れているのかそうでないのかを明確化し、戦略的にうまく使えるようにしました。最後に武器を使ったときにプレイヤーが「いま武器を使っている」と実感を持てるようにすることですね。たとえば弾が当たった壁などが壊れれば「ああ、いま自分は弾を撃っているんだ」と没入感が増すと思います。

――確かに、プレゼンテーション映像で、身を隠している壁がどんどん壊れていくのは印象的なシーンでしたね。
バイノン その通りです。気づいてくださってありがとうございます。前作のエンジンにも物理表現の機能はあったのですが、戦闘ではあまり使われませんでした。今回は戦闘が起こるような場所では、壁や柱などの環境自体をダイナミックに破壊できるような要素を多く入れています。これによって「いま戦っているんだ!」という実感が沸くようにしています。

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――ステルス要素では、“ライトを撃って壊す”というやり方をしているゲームは多いですが、本作のデモでは、“電球を回して消す”とか、“鍋を撃って中身をこぼして焚き火を消す”というシーンがありますよね。あれがとても好きなんです。
バイノン あれは一石二鳥なんですよ。鍋を撃ったことで守衛の注意がそちらに引きつけられ、さらに中身がこぼれて火が消えることで暗くなる。そこに誘い込まれた守衛が暗闇に放り込まれるわけです。もしあそこで守衛の近くのライトを撃ったのでは、恐らく守衛は攻撃を受けていると感じて、戦いが始まるのが早まるでしょう。
 あの場面では、もっと違ったやり方も用意してあります。私自身、出来がいいと思っている場所のひとつですね。弾を撃って火を消すことなく、かつ見つからずにクリアーすることもできるんです。奥のランタンの横に箱があったのに気が付きましたか? ランタンを撃つことで箱がだんだん燃えていくわけですが、あの周囲の影になっている場所に、じつは地雷がたくさん置いてあるんです。地雷を階段の下にばらまいてから、ランタンを撃って箱に引火させると、守衛が近寄ってきますよね。何があったのか階段を降りてくると、そこには地雷が……という寸法です。みなさんがいろいろ見つけてくれるとうれしいですね。

――空気銃とか、ハンドメイドのガトリングガンとか、変わった武器が出てくるのも、あのデモで好きなところです。
バイノン 軍用の高性能な武器と、お手製の武器を混在させています。前作から引き継いでいるのもありますし、ハンドメイドの新作もあります。スタジオにはメカニカルエンジニアもいて、「こんな感じのものが可能だろう」と設計してくれています。

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――集会をしているシーンはストーリー的にどういうことが起こっているのですか?
バイノン 前作の終盤で、主人公アルチョムが軍の施設D6を起動しましたね。そのことが人類間の対立バランスを不安定にしています。あそこで集会をしていたのはロシア版のネオナチというか国粋主義者で、赤軍の過激派と戦うようになります。人類はこんなになっても権力闘争をやめないということを描いたいいシーンだと思います。

――ちなみにWii Uのインターフェースはどう使うつもりですか?
バイノン いまの時点では何も言えないです……。

――もともと世界構築がディープなゲームでしたが、戦闘もより奥深くなり、没入感も高まって、非常におもしろくなりそうですね。
バイノン ありがとうございます。これからもっと磨き上げていきますので、どうぞご期待ください。