●数々の進化により、新たな次元へと進む
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2011年9月15日〜9月18日(15、16日はビジネスデイ)まで、千葉県の幕張メッセで開催中の東京ゲームショウ2011。エレクトロニック・アーツのサッカーゲーム『FIFA12 ワールドクラスサッカー』のプレイリポートと、EAカナダでエグゼクティブ・プロデューサーを務める牧田和也氏へのインタビュー、セガブースで行われたステージの様子をまとめてお届けする。
まずは『FIFA12』のインプレッションからお届けしよう。とはいえ、体験版がすでに配信されているので、すでにプレイ済みの人はサクッと飛ばしてほしい。
さて、本作の概要としてさまざまな改良点・変更点がすでに紹介されているが、プレイしてみて最初に気がつくのは、ディフェンス時のタックルやプレスの扱いが変わったこと。
これまではディフェンスラインを引き締めながらタックルやプレスでプレッシャーをかけ、ボールを持ったオフェンスの選手の選択肢を減らしていくというのが楽な手段だった。しかし本作では、“タクティカル・ディフェンディング”という新システムの導入により、自動的にボールに追尾してタックルしにいくようなことはなく、ドリブラーに距離を置いてついていくならついていく、タックルするならはっきりと奪いに行かなければならない(しっかり入れば強いが、その代わり外すと隙が大きくなっている)。
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もうひとつの新システム“プレシジョン・ドリブル”との関連を考えると、FIFAの開発チームが本作におけるサッカーをどう変えていこうとしているかがわかりやすい。プレシジョン・ドリブルは、細かいボールタッチのドリブルを可能にしたもの。ディフェンスが“手抜き”をできなくなり、ドリブラーをチェックしにくるところで、オフェンスのプレシジョン・ドリブルを交えた緩急をつけたドリブルがプレッシャーとなる。「そこにあるボールを奪いに行くか? 交わされればピンチに繋がるかもしれない……」と考えているディフェンスへ、じわじわと仕掛けていけるのだ。
となれば、スキルムーブによるトリッキーなドリブルもさらなる意味が出てくる。体を振ったりフェイントをかけ、焦れてタックルに来たディフェンスを一気に抜きにかかる……。抜かれることだけを恐れて引いてくる相手には、ゴールに向かって進んでさらなるプレッシャーを与えるか、よりゴールに直結するようなパスを通してしまえばいい。
こういったディフェンスとオフェンスのやり取りにさらに関係してくるのが、これまた新システムの“プレイヤー・インパクト・エンジン”。これは、ボディコンタクトをよりリアルに再現するというもので、体を入れた競り合いの表現が増している。勝負ドリブルを仕掛けるオフェンスへのボディチェックなど、球際の勝負がリアルになったことで、より熱い戦いがピッチで展開されるようになっている。
●エグゼクティブ・プロデューサーが語る進化の方向性と理由
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まぁそんなわけで、今年も『FIFA』はさらに進化を遂げ、新たな提案をふんだんに盛り込んでいる。開発チームがどう考えているのかは、エグゼクティブ・プロデューサーの牧田和也氏に聞いてみるのが一番だ。
――体験版をやった人はすぐに感じると思うのですが、ディフェンスがすごく変わりました。これまではパスコースを消しながらプレスでもかけておけばある程度戦えましたが、タックルが大きく踏み込むようなものになり、踏み込むぶんだけ外した時の隙が大きくなっています。この変化の理由を教えて下さい。
牧田和也氏(以下、牧田) 一対一の駆け引きを、より深いものにしたかったからです。これまでは、サッカーゲームの歴史はずっとそうでしたが、ボタンを押しておけばディフェンスできちゃったじゃないですか。ディフェンスの遊び方が単調で、オフェンスで遊ぶサッカーになっていたと思うんですよ。でも、サッカーってディフェンスも大事で、ずっと脳を活性化して遊んでもらいたかったんです。
――ああ! 確かにパターン化したディフェンスをやっていました。抜かれないようにディレイして(ドリブラーに抜かれないようにしながらチェックして、進行を遅れさせる)、プレスをかけておけばいいやという感じで。
牧田 考えてプレイしている方はいいのですが、オートプレスをかけておいて、ボールを奪ってくれるのを待つだけでは駆け引きがないですよね。その駆け引きを作りたかったんです。一番苦労したのは、いかに点数差が崩壊しないバランスで駆け引きを作り出すかということ。それでできたのがコレなんです。初めてやられる方、そしてさらに、いままで『FIFA』をやられてきた方は難しいとおっしゃるのですが、プレイテストでも、2〜3試合やると「あ、こういうことかな」とわかってきて、慣れると「これっておもしろいね!」と変わるようになっています。最初はちょっと時間が必要ですが、コツをつかんで頂ければ、これまでのサッカーゲームを超えるおもしろさが得られるものになっています。
――「いままでだったらプレスを掛けておけばよかったけど、コレ抜かれちゃうよ」という人に、オススメのディフェンス方法はありますか?
牧田 安易につっこまないことですね。様子を見てチャンスを狙うのが大事です。必ずしも前でムダに突っ込む必要はないので、相手のミスを誘うようにしていくとか。実際のサッカーってタックルの回数は少ないじゃないですか。なので、そういうサッカーを目指していただくと、もっと思うようなサッカーになってくると思います。
――もうひとつ、AIがものすごい賢くなりました。これまでだと最高のレベルでも、こちらが中央を固めてしまうとサイドにサイドに逃げていきますけど、中央とパスを交換してから展開するとか、外側寄りにディフェンスしていると内側に切れ込んでくるとか、一瞬トリックを使ってきたり、こちらの裏をかいてヒールパスを使ってくるとか……。
牧田 はい(笑)。それは今回ゲームプレイの根本を変えたことによる結果なんです。プレシジョン・ドリブルが入って、AIもそれを使えるようになったわけですよね。いままでだったら簡単にドリブルすると取られてしまうので、彼らはサイドに行っていたんです。でもプレシジョン・ドリブルを与えたことで「ドリブル突破もできるな」と、選択肢が増えたことがわかった。それですべてが変わってくるんです。まったくチート(ズル)をせずに、すべて入力をやらせていますから、プレイヤーの皆さんもおなじことができますよ。それともうひとつ、プロ・プレイヤー・インテリジェンスによって、自分のチームの特性をお互いに理解できるようになったのも効果がすごくありますね。どういう選手がどこにいるかで判断が変わってきますので、試合の展開にそういう影響が出ていると思います。
――“BE A PRO”ではどうでしょう? 自分の特性によって周囲のAIプレイヤーの考えることは変わるのでしょうか?
牧田 はい。自分の特性に合わせたプレイを選択するようになります。もしクラウチのような背の高い選手でプレイされているとしたら、クロスをあげてくれる可能性は高いです。
――もっとチームとしてサッカーをするようになったということですね。
牧田 そうですね。なので、チームの特徴の違いも出るようになったと思います。キャリアモードとかでも、どういう選手を連れてくるかで、チームが変わって行きますよ。今回はいろんな変更が重なったことで、はじめていろいろな特徴が出てきたと思います。
――よりリアルなサッカーになってきたわけですが、これまでお伺いしたことがピッチで起こっているサッカーだとすれば、EA SPORTS FOOTBALL CLUBは、スタンドで起こっているサッカーをゲームに入れたものになっていますね。
牧田 それはいい表現ですね(笑)。みんなで繋がって、実際のサッカーで起こったこともどんどん取り込んでいくものにしました。
――ライバルチームのファンの平均と比較して「お前ら人数はいるけど、俺たちよりポイントは低いじゃねぇか! やっぱりファンはヘボいのばっかりだな!」とか思いますよね。
牧田 Play for your Teamという機能があって、自分の好きなチームのためにポイントを稼いでランキングにするのですが、そこではガンガンライバル視しあってほしいですね。
――自分はサンダーランド(プレミアリーグのチーム)が好きなんですけど、サンダーランドのファンはニューカッスル(永遠のライバル)のスタッツを絶対に見に行きますよ。バルセロナだったらレアル・マドリードとか。
牧田 見ますね! ファン数も出ますし、平均のXP(経験値)も出ますから。始まったらどういう結果が出るか楽しみです。レアル・マドリードだったらレアル・マドリードのファンサイトとかはいくらでもありますが、ライバルチームのファン同士が直接競い合うようなものって、なかなかないんですよね。バーで「俺たちのほうがスゴい」と話すことはあるかもしれませんが、それがゲームでできるので、おもしろいと思います。今年が初めてなので、個人的にも楽しみにしている機能です。どういう意見が出るかを集めて、今後どう変えていくか考えていこうと思っています。
――ちょっと話が変わりますが、おなじエレクトロニック・アーツの『バトルフィールド3』で、体の動きの部分でFIFAのエンジンが使われていると聞きました。
牧田 体のアニメーションを行う“ANT”というエンジンがあるのですが、『FIFA』チームが中心になって『FIFA06』ぐらいからずっと改良してきたんです。今回それの出来がいいということで、『バトルフィールド3』のFrostbite2エンジンに組み込んで、ロコモーション(体の動き)を制御することになりました。今後も、もしかすると“プレイヤー・インパクト・エンジン”などを提供することもあるかもしれませんね。
――ところで今年はいいパッケージになりましたね!
牧田 ここで『FIFA』の新たな魅力を伝えるためには日本人選手の力が欠かせないということで、世界で活躍されているこのふたりになりました。本田選手は欠かせないし、長谷部選手は日本のキャプテンですし。
――海外で活躍する選手がこれだけ増えると『FIFA』の多彩なリーグが入っている強みも利いてきますね。
牧田 ほとんどの選手をカバーしてますからね。長友選手もいますし。Ultimate Teamで日本人選手のカードを集めてチームを作ってみるのもいいかもしれませんね。日本人選手は結構安いので、オークションでも集めやすいと思いますよ。
――これまで毎年『FIFA』のパッケージが発表されると、サッカーの歴史がある国はちゃんと地元の選手が出てくるのに対して、「日本は、うーん、ルーニーでもいいけど……」と思っていましたけど、今年は「本田ですから、長谷部ですから」と胸を張れます!
牧田 ありがとうございます。日本のスタッフも頑張ってくれました。
――脱線が続いたので、ゲームの話に戻します。オンライン対戦がディビジョン制になりましたが、その理由などをお聞かせください。
牧田 一回オンラインで対戦してコテンパンにやられたからもうやりたくない、という反応が結構あったんです。そこを誰でも入りやすいようにディビジョン別に分けて、最初は10で入って、勝っていったら9になってと、近いレベルで対戦できるようにしています。
――本当に初心者だと、これまでだったら10戦試合しても結構厳しかったかもしれない。でも近いレベルのプレイヤーと対戦することでちょっと勝てる喜びも出てくるかもしれませんね。
牧田 そうです。そうすると上のディビジョンに行くという目標も出てくると思うので、ここまで行きたいという目標を持ってプレイしてもらえるとうれしいですね。あとは友達との対戦も記録するようになりましたので、もう(勝敗を)紙に書く必要もありません(笑)。
――プレシジョン・ドリブルが入って、ほかの機能も入ってきたことで、ドリブルがあるからこうなる、逆にディフェンスはこうなる、するとスキルムーブの意味が変わってくる……といった具合に、ドミノ的に『FIFA』のサッカーが変わりましたね。
牧田 ゲームプレイはさまざまな要素が噛み合ってできているので、一個変わったらすべてが変わったり、本当にドミノ崩しのような感じなんです。今回はおかげさまで、本当にうまい感じになってきたと思います。『FIFA10』から『FIFA11』までは「ちょっと変化が少ないんじゃないの?」と言われることも多かったんです。そこで進化の幅をどうするかを考えてきた結果が『FIFA12』です。さきほどおっしゃったように、触って頂ければその違いをわかってもらえると思います。
――ちなみに、体験版ではセスクがまだアーセナルにいましたが、移籍はいつ反映されましたか?
牧田 今年アーセナルきついですよねぇ……。これは体験版の締切の関係でこうなっているだけです。製品版では夏の移籍は反映できていますし、もちろん冬の移籍も対応していきますのでご安心ください。『FIFA』はデータも命ですので。
――では最後に、サッカーファンにメッセージをお願いします。
牧田 新しい『FIFA』の魅力を感じていただきたいので、デモなり店頭なりで触っていただいて、サッカーゲームがどう変わってきたのかをぜひ感じていただきたいですね。サッカーが好きな方であれば理解していただけると思いますので。AI対AIの試合を見るだけでも楽しいので、ぜひ見て触ってください。
●TGSではセガブースに!
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東京ゲームショウ2011では、セガブースに出展されているほか、9月16日にはステージイベントも行われ、牧田氏とともに、シリーズで実況を務めている西岡明彦氏も登壇し、本作の魅力を紹介した。本田選手と長谷部選手からのコメントが紹介されると、見ていた人が思わずうなる一幕も。本作の発売は、プレイステーション3とXbox 360、PSP(プレイステーション・ポータブル)で、2011年10月20日を予定している。
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