●見どころは最新ゲームだけじゃない
いよいよ明日……というか、この記事が上がるころには日をまたいでいるので本日、2011年9月17日より、東京ゲームショウ2011の一般公開日がスタートする。ニュース記者の視点から見て、今年のTGSは例年になく注目すべきポイントが多い。まずは、カプコンブースのニンテンドー3DS用ソフト『モンスターハンター3(トライ)G』のプレイアブル出展。比較的人が少ないプレスデーにも関わらず、ブース周辺および関連ステージには同作を目当てとする人たちで賑わい、これが一般デーになったらどれほどの盛り上がりになるのかと、楽しみな反面、取材する身としは不安だったりする。ちなみに、同作の体験コーナーは混雑が予想されるため、一般公開日には整理券の配布を実施。入場口付近の配布所にてひとり1枚先着で配られるので、あわててブースへ直行したりしないよう気をつけてほしい。(参考ページ・整理券配布所のご利用について(東京ゲームショウ2011)
盛り上がりと言えば、ソニー・コンピュータエンタテインメントブースもすごい。その理由は説明するまでもないだろう。ズラリと31タイトルも出展されたPlayStation Vitaの体験コーナーだ。プレスデー2日目は早々に入場制限がかかるなど、注目度の高さは言わずもがなだ。そのほか注目したいのが、初出展にして会場屈指の規模を誇るGREEブース。これは昨今のスマートフォンアプリ、ソーシャルゲームの台頭を象徴するような出来事なので、記者として一般公開日にどれほど盛り上がるのかは見逃すことができない。
記者として、そしていちゲームファンとして今年の東京ゲームショウは本当に見どころが盛りだくさんだ。連日の慌ただしい取材も「いま自分は国内ゲームシーンの最前線に立っているのだ」と考えればどうってこない。しかし、ゲームと同じくらいロックンロールを愛する記者は、取材の合間にふと思ってしまう。メインストリームだけを追うのが、果たしてロックなのだろうか? かつてルー・リードは歌った、「ワイルドサイドを歩け」と。
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▲なんとなくここら辺の話をします。 |
もったいぶった前置きになってしまい大変恐縮だが、本記事では完全に記者の趣味で、ロック文法にのっとってTGS会場の見どころをお伝えしていこうと思う。一般公開日に来場する人はぜひ参考にしてほしい。と思うのだが、実際はファミ通.comのTGS特設サイトを見たほうが遙かに参考になるはずだ。
ロックンロールを語るうえで外せないキワードと言えば“ラブ”である。ロック史に残るキングスメンの『ルイ・ルイ』で歌われていることは基本的に「君に会いたい」だったし、ジョン・レノンはずばり『Love』をいう曲を作った。もしTGSでロックンロールを鳴らしたいのならば、何はなくともラブ注入から始めるべきだ。そして、それはビジネスソリューションコーナーにある。アーキテクトが出展しているiPad、iPhone向けアプリ『Brain Kiss』は、脳波を測定することによって恋愛感情を分析する次世代の相性診断アプリだ。遊びかたは簡単。脳波測定機を装着して、気になる相手と15秒ほど見つめ合うと、自分の相手に対する気持ちが5段階で診断されるのである。不幸にも気になる相手がいなかった記者は、スタッフのお姉さんとインスタントラブを築くことにした。今年三十路の男から「なんだか気まずいですね」などと言われながら見つめられる15秒が、お姉さんにとって果てしなく長い時間であったのは想像に難くない。果たして、結果は5段階中最下位の“嫌い”という結果に。「インスタントラブはいかん!」と、コンピューターに怒られている気がした。
さきほどの意見は撤回する。ラブなんてどうでもいい、ロックンロールは喧嘩の音楽だ。オアシスのギャラガー兄弟は年がら年中喧嘩した末に解散したし、ストーン・ローゼズもバンドの中心的存在だったジョン・スクワイアが、半ば喧嘩別れのような形で離脱したことによって解散してしまった。しかし、彼らの作り出した音楽はセンスオブワンダーなものばかりである。つまり喧嘩あるところに良質なコンテンツあり、というわけだ。我ながらこじつけも甚だしいが、そんなことを考えながら会場を歩いていたところ不意に殴り合いの現場に遭遇した。ひょっとして記者が求めている喧嘩か? 近づいてみると、殴り、蹴り合うふたりはともに見慣れない防具を身に付け……わざとらしいのでふつうに説明する。これは計測技術サービスという会社が開発した電脳防具“雷鳴ψ(サイ)”の技術デモ。防具に設置されたセンサーで衝撃を敏感に感知し、PCにそのデータを送信するというもので、強い打撃を必要とせずに武道の練習などを行うことができるのだ。ちなみに記者は計測技術サービスと言う名前からお堅い雰囲気を想像していたのだが、パンフレットを見てみると独自に作り出した“X:Martial 交陣(クロス:マーシャル こうじん)”という武道について熱っぽく語っていたりして、じつにノリノリである。タテノリである。
記者のTGSロックンロールツアーはまだ終わらない。ローリング・ストーンズのギタリストであるキース・リチャーズはかつて、「あなたの仕事は何ですか?」と問われたときにこう答えた。「いちばんデカイ音を出すことだよ」。デカイは正しいのだ。マグレックスが出展しているPSP用周辺機器“MG1000”は、PSPのゲーム画面をデカくしてくれる。つまりはアップコンバーターなわけで、注目なのはその向上率だ。なんと、PSPの解像度の16倍、1080P(1920×1080)にまで引き上げてくれるのである。もちろんジャギーを和らげる補正機能付きで、さらに外部出力時に発生する黒枠をなくしたフル画面表示も可能。また、実際に触ってみたがラグは一切なく、プレイは極めて快適だった。記者はこれを持ってふてぶてしく言い放ちたい。俺のPSPはいちばんデカイ、と。
そろそろこのノリにも息切れしてきたので、先を急ごう。ロックと言ったら野外フェスだ。一方で、さまざまな電子端末を持つ現代において野外フェスでは、電気をどこから得るのか? という問題に頭を悩まされる。だったらソーラーパワーだ! 昨今のエコブームおよび節電の呼び掛けで、ソーラー電源への注目度は格段に高まっている。すぐれた商品も数多く出ているが、「持ち運ぶにはちょっと……」というサイズのものも少なくない。しかし、アスクが出展していた携帯型ソーラー電源“Joos Orange”はサイズ、デザインともに思わず持ち運びたくなるデキとなっている。5400mAhの電池容量を誇り、携帯電話、スマートフォン、もちろん携帯ゲーム機にも対応。水に濡れても平気なので、野外フェスでのふいの雨に見舞われても大丈夫だ。とは言え、過信は禁物。スタッフの方も「あくまで補助的な電源として活用してほしい」と語っていたので、いくらあなたがロックでもJoos Orangeでエレキギターを鳴らすのは難しいだろう。ちなみにアスクはそのほかに、“Guide 10 Plus”という携帯型のソーラーパネルも出展している。こっちならばもしかしてエレキが……何か重大な勘違いをしている気がするので、先を急ごう。
ついにこのツアーも終わりだ。最後に紹介するのは、会場内7ホールに設置された飲食コーナーである。しつこくロックの文法にのっとって説明すればフェス飯である。カレー、焼きそば、唐揚げ、フライドポテトと言った定番メニューに加え、博多白天、肉巻き弾など何やら個性的でうまそうなものも用意。それと、ここにはアルケミストがパン屋を出展している。昨年のTGSで『ぎゃる☆がん』のPRに際して伝説を残した(詳しくはこちら)アルケミストなのだから、もちろんただのパン屋ではない。なんと、ブルマ&スク水の女の子が店頭でお出迎えしてくれるのである。ファミ通.comではどういうわけか、同店舗に関する記事を2本もアップしているのだが(その1、その2)、実際に取材してみてその理由がよくわかった。これは記者として本能的に記事にしたくなる。ブルマ&スク水には、そんなセンスオブワンダーが満ちているのである。
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以上、一般公開日を楽しみに待つゲームファンのための会場ツアーをお届けした。くり返しになるが、今年のTGSは非常に見どころが多い。しかし、大手メーカーブースの向こうに目を向けてみると、思わぬ新たな発見が転がっていたりもする。最新ゲームをしっかりと楽しんだあと、もし余裕があるようだったらぜひ記者が紹介したワイルドサイドも歩いてみてほしい。もちろん、こっちだけ歩くというのもそれはそれで非常にロックな行為だと思う。でも、せっかく来たんだから全部見たほうがいいと思います。
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▲ファミ通ブースも忘れないでください。 |