●最高の『バイオショック』が最高の形で日本市場をロックオン

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 2K Gamesのアクションシューティング『バイオショック』シリーズ最新作『Bioshock Infinite』の日本語音声入りムービーが、2011年9月15日に開幕した東京ゲームショウ2011に合わせて公開されている。未見の人はぜひチェックしてみてほしい。

 本作の日本発売は正式発表されていないが、前述の動画により、それにかなり近づいたと言っても過言ではないだろう。というのも、あれはただ既存の動画の音声を入れ替えてみたようなものではない。記者は2K Gamesに、すでに実機で動いているデモを見せてもらった。というわけで、その模様をお届けする。デモで披露されたシーンは、すでにプレスイベントなどで公開されたシーンだったので、具体的なゲームプレイや設定などの内容については、すでにお伝えしている、E3前に行われたプレスイベントのリポートを参考にしてほしい。とはいえ、披露された場面こそ一緒だったが、今回のほうがすばらしかった。

 

●ブッカーとエリザベスのやりとりがより魅力的に

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 デモは、打ち棄てられた商店に主人公ブッカー・デュイットとヒロインのエリザベスがやってくるところからスタートした。略奪の痕跡を見て「マナーのなっていない先客がいたようだな」と呟くブッカーに、自分を棚に上げた発言に呆れて「人のこと言えるの?」と返すエリザベス。

 前述の動画でお気づきの人もいるかもしれないが、ブッカーを演じているのは藤原啓治で、エリザベスは沢城みゆきが演じている(役名はまだ非公開ながら、朴ロ美(ロは王偏に路)も参加するとのこと)。ブッカーのシニカルなセリフは藤原啓治にバッチリだし、商店で金メッキの像を見つければ「ブッカー、ブッカー、黄金よ!」と子供のように騒ぎ、リンカーンの被り物を被って「見てブッカー! “あれは87年前のことぉ~”」とモノマネ(?)をしてみせる沢城のエリザベスは個人的に正直かわいい。

 吹き替えがハマっているのは、初代『バイオショック』が非常に孤独な物語で、『バイオショック2』の主人公とヒロインのエレノアにしてもかなり特殊な哀しい存在であったのに対して、本作におけるブッカーとエリザベスが、とても人間的な魅力にあふれたキャラクターとなっているのも大きい。ブッカーは、あくまで仕事としてエリザベスを空中都市コロンビアから脱出させようとしているのだが、エリザベスを脱出させまいとするさまざまな障害に直面するうち、ふたりはともに戦い、ともに感情を共有し、ともに冒険するようになる。一流の声優によって、ふたりの感情豊かなやり取りが真に迫ってくるのがたまらない。

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 とくに、感情を爆発させるようなシーンは最高だ。たとえばエリザベスが、傷ついた馬を助けてやろうようとするシーン。エリザベスは、安楽死させてやろうとするブッカーを止め、彼女だけが使える特殊能力“TEAR”で助けると言いはる。エリザベスがTEARを使いこなしきれていないことを知っているブッカーはムダだと言い放つが、それでもエリザベスは渾身の力でTEARを発動。一瞬成功するものの、結局は失敗に終わり、己の無力さを嘆き悲しむのだ。先ほどまではしゃいでいたエリザベスが、何で自分にこんな力が与えられたのかと悲しみにくれる姿には、思わずグッと来るものがあった。

 また、愛国者集団“The Founders”と、アナーキスト“VOX POPULI”が抗争を続けるコロンビアという環境にも、音声吹き替えはマッチしている。こちらではVOX POPULIが人々を襲い、あちらではプロパガンダ放送が流れているというときに、字幕では表示できる内容に限界があるからだ。音声でスッと耳に入ってくることで、自然と没入感が高まっていると言えるだろう。プレスキットでは、Take 2 Interactive Japanが音声吹き替えでの完全日本語版をプレイステーション3とXbox 360で発売する意向だとしており、今後の発表に期待したい。

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●開発者インタビュー

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 また、東京ゲームショウに合わせて来日中の、開発元Irrational Gamesでデザインディレクターを務めるビル・ガードナー氏へのインタビューも合わせてお届けする。

――いやぁ、本当に日本語吹き替えになっていましたね!
ビル・ガードナー氏(以下、ガードナー) はい。他言語版をご紹介するのは今回が初めてになります。いまご覧頂いたのは日本語音声でのプレイでしたが、実際には日本語音声でプレイするか、日本語字幕+英語のオリジナル音声でプレイするかを、プレイヤーが選択できるようになっています。

――ブッカーとエリザベスは、『バイオショック』では初めてと言えるかもしれないほど、感情が豊かなメインキャラクターです。このふたりの関係を中心に持ってきた理由を教えてください。
ガードナー ひと言で言うと、プレイヤーの皆さんにつねに新しい体験をしていただきたいということです。エリザベスは確かに新しいタイプのキャラクターです。彼女と一緒にいることで、プレイヤーはいままでの『バイオショック』とは違った体験、違ったプレイが可能になります。

――エリザベスはシリーズで初めて“かわいい”女性でもあると個人的には思います。注射器を持ってうろうろしていたりしないし、マッドサイエンティストでもないし、頭に謎めいたメッセージを流し込んできたりもしない。誤解を恐れずに言えば、日本の映像文化のかわいらしさとは少し違うかもしれませんが、『塔の上のラプンツェル』などのディズニー映画のヒロインのように表情がころころ変わって、これまでにないキャラクターですね。
ガードナー ありがとうございます(笑)。我々はディズニーやさまざまなものを参考にして、エリザベスをかわいく、表情豊かなキャラクターにしてきました。ですので、そう言っていただけると非常に光栄です。

――ところでふたりは何才ぐらいですか?
ガードナー エリザベスは20才ぐらいで、ブッカーは40才近いですね。でもエリザベスは最初かなり若く見えますが、ブッカーとさまざまな体験をするうちに、しだいに見えかたが変わってくると思います。そして、ふたりに年の差がありますけれども、それによってキャラクターに幅を出しています。

――ちょっと違った質問をさせてください。プレイヤーがThe Founders寄りでプレイしたり、VOX POPULI寄りでプレイすることはできますか?
ガードナー 高い次元で、完全にFoundersについたり、VOX POPULIにつくということはないのですが、冒険をして両勢力のメンバーと会った際に、小さな選択といいますか、彼ら・彼女らとどう関わるかという選択をする場面はあります。

――過去に公開された画像で、パワードスーツのようなものがありましたが、あれは何ですか?
ガードナー “ハンディマン”という種類のキャラクターです。着用することによってすごく強くなります。ゲーム中ではさまざまなハンディマンが出てきます。

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――武器だけじゃなく、飲み薬の“Vigor”で獲得する特殊能力や、エリザベスの使うTearがあり、浮き島をつなぐレールのスカイラインで自由に移動できたりして、本作の戦闘はとてもユニークですね。戦闘のフィールドを見ても、浮き島いくつかで小さなオープンワールドを形成しているとも言える。こうするのは非常に大変だったと思うのですが、どう工夫しましたか?
ガードナー 全体としてすばらしいものにするために、戦闘の各要素、たとえばスカイラインならスカイラインだけで、どうおもしろくできるか試作を重ねて、完成度を高めていきました。選択肢を増やして、プレイヤーがよりおもしろいと思う行動を選べるようにするのが目的です。そのうえで、ストーリーや展開的にもおもしろくするというのは大きなチャレンジでした。

――ケン・レビン氏が手掛けるゲームには独特のものがあります。いまやその名前とゲームの性質が一致するクリエイターはあまり多くありません。彼のようなクリエイターと仕事をして、楽しかったり、めんどうだったりすることはありますか?
ガードナー ケンと仕事をするようになって10年になりますが、日々彼と仕事をするのは喜びでもあります。いかにすばらしいアイデアをプレゼンしたとしても、彼から「こうしたほうがもっといいんじゃないか」とか、さらにそのうえを行くアイデアを提案されるのはちょっとプレッシャーでもありますけど、もっとゲームをよくできるのはすばらしいことだと思います。

――では最後に、動画を公開したことで「日本にも『Bioshock Inifnite』が来そうだ!」と喜ぶ『バイオショック』シリーズのファンや、「このゲームはすごそうだな」と思った人、「この声優が出るならやりたい!」と思う人、いろんな人がそれぞれいろんな感想を持っているのですが、メッセージをお願いします。
ガードナー 本作にぴったりの声優が選ばれていると思いますし、これで日本での成功がより大きなものにできると思います。まだ正式にいつリリースすると発表したわけではないのですが、その際にはもっと声優の皆さんについてご紹介できると思います。

――元から本作はすごいと思っていたのですが、没入感が高まって最高でした。期待してます!
ガードナー 我々としても最高のゲームとするために毎日努力しています。ぜひ期待してお待ちください。