●新たなキャラクター情報も続々と公開に
![]() |
2011年9月15日に開幕した東京ゲームショウ2011。セガブースではPSP(プレイステーション・ポータブル)用ソフト『クロヒョウ2 龍が如く 阿修羅編』(2012年春発売予定)の完成披露会が行われた。同作は名越稔洋氏率いる“龍が如くスタジオ”の設立と同時に発表された、『クロヒョウ』シリーズの第2弾。完成披露会では最初に、名越氏から龍が如くスタジオ設立の経緯が改めて紹介された。名越氏は『龍が如く』シリーズが自身の人生の分岐点になったと語り、作品を手掛ける中では「多くの財産を得た」とコメント。龍が如くスタジオは、その財産を有効活用するべく立ち上げたものであると説明した。
『クロヒョウ2』のプレゼンでは最初に物語の方向性へ言及。主人公はどちらも右京龍也だが、前作で彼が“孤独”を背負っていたのに対し、本作では“仲間”を背負っているのだという。「仲間と出会いわかり合う中で、自分を取り戻し、自分を再発見するストーリーです」(名越)。とは言え、根本となるテーマ、“右京龍也の成長のドラマ”という部分は前作から変わらない。「教科書では教えてくれない、若者には大事なこと。経験、仲間のすばらしさ」を、名越氏は本作を通じてプレイヤーたちへ伝えるのだ。
完成披露会にはゲストとして、右京龍也を演じる俳優の斎藤工も登場。じつは前作『クロヒョウ』と『クロヒョウ2』では、主人公の声優が高良健吾から斎藤工に変更されている。シリーズで主人公の声が変わるというのはあまりないことだが、もちろんそれには名越氏の考えがあった。斎藤工は実写ドラマ版の『クロヒョウ』で右京龍也を演じており、その演じっぷりが名越氏にとって「非常に納得のいく内容」になったからなのだという。また斎藤自身も今回の声優起用は望んでいたものだったようで、「自分だけでは見い出せないキャラクター。それを名越さんに引き出してもらえてうれしく思っています」と右京龍也というキャラクターへの強い思い入れを披露。「ゲームの物語が(前作から)1年後、斎藤工としても1年後の作品ということで、両方がリンクしているのは新鮮な体験です」(斎藤)と意気込みを見せる。また、ここまでキャラクターに入れ込んだ理由については「自分自身と(龍也が)重なりまくって、演じるのではなくそこに存在しようという気持ちで臨みました。自分の第2章が始まったと思いますし、役者としての限界を超える意義を『クロヒョウ』と名越さんから学びました」と熱っぽく説明。それを受けて名越氏も、「本当にいい雰囲気を出しているし、作品にも本当に入れ込んでくれています。まっすぐでシャープな感じ。ある意味で尊敬しています」と斎藤の演技を高く評価した。
ステージでは最新のプロモーション映像も公開され、新キャラクターの存在も明らかに。『2』の新たな舞台である大阪・蒼天掘の地下格闘技集団“阿修羅”のリーダー秋田靖人、阿修羅で整体師の助手であり盲目の占い師でもある野崎亮、現・東京都知事の鶴見正が公開された。もちろん、それぞれを演じる役者も豪華だ。秋田靖人役に高知東生、野崎亮役に要潤、鶴見正役に大杉漣と、実力派俳優を起用しているのだ。
阿修羅リーダー・秋田靖人 |
阿修羅整体師助手・野崎亮 |
現・東京都知事・鶴見正 |
さらにもうひとつの新発表が。『龍が如く』関連作では毎回ビッグアーティストとのコラボが行われているが、『クロヒョウ2』では人気ジャパニーズレゲエグループ“湘南乃風”が同作のために書き下ろしの新曲を用意するのだ。そのほかにも劇中では、湘南乃風の過去の名曲が流れるとのこと。
斎藤工はステージの最後で、改めて本作にかける意欲を披露。「前作から『2』までのあいだに震災があり、日本はいままでどおりにはいかなくなっています。この作品はそんな日本に本当に必要なこと、絆、仲間、家族、というテーマがあります。また暴力がテーマにはなっているが、それは自分のための暴力ではなく取り戻すための暴力。それがいまの日本の現状にリンクしていると思う。本当に、いま出すべきゲームです」(斎藤)。
名越氏も斎藤の言葉に「言いたいことはほとんど言っていただきました……(笑)」とコメントしつつ、「前作もそうでしたが(『クロヒョウ』は)活力の出るゲームを目指してやっています。期待に添える作品なので、楽しみにお待ちください」と語りステージを終えた。
![]() |
■ステージ終了直後の名越監督、斎藤工のコメントをお届け
――『クロヒョウ2』の見どころやポイントを教えてください。
名越 舞台に大阪が加わって、遊ぶフィールドがドンと増えたところ。まずはそこですね。また、舞台が広がったということは、遊びの要素も充実させなければいけないわけですから、そこも注目していただきたいなと思います。ムービーは前作で「くそ長いな!」と言われるくらい長かかったのですが、今回はくそくそ長くなっています(笑)。UMDの限界まで入っているので、そこもぜひ楽しんでください。
――開発で苦労された点はありますか?
名越 ナンバリングタイトルには前作を越えなきゃいけないという指名があります。なので、舞台という要素、ドラマという要素、遊びという要素、それともちろん技術的な要素……それらすべてにおいて、「前作を超えた」と言えるところまで来ないと作ることはできません。売れたから次、という時代ではないんですよね。また、次に行けると踏んだから次を作るというのが僕のスタンスでもあります。『クロヒョウ』はまだ伸ばせる余地が十分あると思いますし、新しいエネルギーもいっぱいもらっている。苦労というよりは伸ばせる要素を具現化して、熱いうちに早く届ける、というのを目標にしていました。
――携帯機で2作目ですが、前作の経験が活かされた部分などはありましたか?
名越 前作は30万本売れたので“いまの時代に認められた”という自信がありましたし、根幹の部分は変えちゃいけないという思いはもちろんありました。たとえば、前作には猫を探すというホンワカした要素があったのですが、ああいう体験は今回も入れ込みたいなと思います。今回は犬かもしれませんね(笑)。
――斎藤さんは今回声優としてオファーを受けたときどう思われましたか?
斎藤 ゲームだからドラマだからという垣根は自分の中ではなくて、まず『クロヒョウ』の生まれる瞬間にも立ち会っている人間として、続編が出ること自体を本当にうれしく感じました。名越さんからはわりと早い段階で構想をうかがっていてのですが、名越さんがそれを少年のような顔でお話する姿が美しく、僕も同じようにそのストーリーに夢を見ていたと思います。『クロヒョウ』はいちファンとして、龍也に自分が関わらなくなったとしても見守っていたと思うので、声優のお話はとても光栄でしたね。
――前作のように実写ドラマ化といった展開は考えているのでしょうか?
名越 (斉藤工を見て)やりたいよねぇ? もう、やりたい!
斎藤 僕ももちろんですよ。
名越 でも、彼はすごい忙しいからね……さっきも楽屋で「やろうにも時間あるのかな」っていう話をしていて。
斎藤 なんとかします。
名越 あ、言ったね?(笑)
――斎藤さんのスケジュール次第ということでしょうか。
名越 (笑)。まあ、お金の問題とかもありますけど、ふたりともやる気あるという点で共通しているのは間違いないと思います。
――斎藤さんは演技で見てほしい部分などはありますか?
斎藤 僕は声優さんではないので、声の出しかたのリミットがわからなくて、出しすぎて音が割れちゃう心配があったんですね。でも今回はその調整を考えずにやらせてもらえたんですよ。恐らく裏では技術さんのたいへんな作業があったと思うのですが……。なので、叫ぶシーンでは本気で叫んでいました。僕自身は気持ちよく右京龍也をやるというか、存在できたんですけど、それを支える技術面の方たちはたいへんだったと思います。
名越 役者さんにお願いするというのはそういうことですからね。理解した範囲の中でやってもらうのは声優さん。役者さんにはちょっとはみ出てもいいからパンチがほしいというか、はみ出してほしいんです。