●プレスカンファレンスでも明かされなかった新技術とは!?

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 2011年9月15日より開催中の東京ゲームショウ2011。基調講演の第二部には、ソニー・コンピュータエンタテインメント ワールドワイドスタジオ プレジデントの吉田修平氏と、同じくソニー・コンピュータエンタテインメント SVP兼第2事業部長の松本吉生氏によるPlayStation Vita(以下、PS Vita)のプレゼンテーションが行われた。

 壇上に上がった吉田氏は、この基調講演では、PS Vitaがどんな新しいゲームの世界を提案するかを、ソフト、ハード、新しい技術を交えて紹介していくことを説明した。吉田氏から提示された、この講演のおもな内容は以下となる。

・PS Vitaのコンセプト
・PS Vitaのタイトルラインアップ
・PS Vitaの新技術(AR、PS3との連携)
・PS Suite

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この日のテーマが明かされた後、続けて松本氏から、それぞれの詳しいプレゼンテーションとなった。松本氏は、まずE3、Gamescomでの出展を振り返りつつ、ようやく日本で、直にPS Vitaを触れる機会ができたことの喜びを語ったのち、つい先日、2011年9月14日のプレスカンファレンスで公開した内容を改めて説明(詳細は【コチラ】。加えて、日本で2011年12月17日に発売した後は、欧米で年明けに販売開始するべく、着々と準備を進めていることも明かされた。
 また、ここで実機デモを披露しながら説明したところによると、PS3、PSPで提供されているのと同様に、PS Vitaにおいても、システムソフトウェアのアップデートにより、ネットワーク機能の拡充や、PS3との連携機能強化などが行われているとのことだった

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●PS Vitaが見せるARの可能性

 つぎに吉田氏から示されたテーマは、AR(仮想現実)を利用したPS Vitaの可能性について。吉田氏は、プレイステーションフォーマットが、Eye-ToyやPSPカメラなどを用いて積極的にAR技術をゲームに取り入れてきた歴史について振り返ってから、PS Vitaで初めて実現するというふたつの技術について説明した。

 ひとつ目の技術は、“ワイドエリアAR”。これは、従来のARにあった“カメラが捉えきれないとキャラクターが消えてしまう”、“カメラが少しずれただけでARマーカーを見失ってしまう”といった欠点を解消したもの。PS Vitaでは、高いプロセッサー能力により、同時に複数のマーカーを感知したり、広いフィールドを扱うことができるのだという。

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▲テーブル全体をゲームのフィールドに見立てている様子。

▲ワイドエリアを扱えることで、高低差を活かしやすくなる。

▲画面からはみ出すくらいの巨大なオブジェクト(この場合はエイリアン)も。

 続けて吉田氏が「さらに先を行く、最先端の技術です」と前置きしてから紹介したのは、“マーカレスAR”だ。これはARからマーカーをなくすという技術。PS Vitaの高いパフォーマンスにより、目の前の物体をリアルタイムでマーカーとして取り込み、ゲームに活かすことができるのだという。
 吉田氏によると、これらのAR技術については、開発ツールのβバージョンをデベロッパーに提供しており、デベロッパーからのフィードバックをもとに、高速化、安定化を進めているそうだ。「近い将来、これらの技術をもとにしたゲームがリリースされるはずです」(吉田氏)とのことなので、期待したいところだ。

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▲空間の特徴点をつかみ、3D空間として捉える。そこに配置したキャラクターは、角度、距離を変えても、正しい大きさ、角度で表示される。

▲プレイステーションの技術でもではおなじみの恐竜。さらに高精細に表現されている。

▲吉田氏が実演して見せたデモ。PS Vitaの画面に映ったTGSのパンフレットをタップすると、そこがへこんで、ピポサルが登場、というもの。

●PS3との連携も新たな次元に!

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 つぎに吉田氏がプレゼンテーションしたのは、PS3との連携について。今回のプレゼンテーションでは、PS Vitaによるリモートプレイが実演された。リモートプレイは、すでにPSPでも実現されている機能。PSPでは、Wi-fi、もしくはインターネット経由で、PS3の出力する画面を手元にPSPに表示させるとともに、PS3の操作も手元のPSPで行うことができる。これにより、写真やビデオを見たり、対応しているPS3用ゲームをプレイしたりといったことが、PS3やテレビモニターから離れた場所でできるわけだ。
 当然、PS Vitaでも同様の使いかたができるというわけで、まずはPS Vitaを利用したリモートプレイで、torne(トルネ)を操作するデモが実演された。デモを見る限りでは、PSPでリモートプレイをするよりもラグが小さく、より快適に操作できそうな印象だった。もちろん有機EL画面の美しさ、広さというプラス面もあるので、PSPよりもリモートプレイの価値が高まりそうだ。
 なお2011年12月に、torneのソフトウェアアップデートが予定されており、そこでPS Vitaに対応するようだ。PS3からPS Vitaへの動画書き出し機能がいつ実装されるかなど、詳細は別途公式ホームページなどでアナウンスしていくとのことだった。

 続けて、PS3用ソフト『キルゾーン3』をリモートプレイで遊ぶ模様が実演披露された。これは開発中のユーティリティを使用した技術デモとのことだったが、吉田氏が「PS3とPS Vita、まさに最強の組み合わせです」と自画自賛するだけあって、じつにスムーズにプレイが進められていた。PS Vitaはプレイステーション3のコントローラよりボタンの数が少ないが、リアタッチの下部分をR3ボタン、リアタッチの左下部分をL3ボタン、というように、ボタンをリアタッチパネルに割り当てることで、不足なくプレイできるようだ。
 この開発中のユーティリティーについては、今後デベロッパーに提供される予定とのことだった。

 続いて披露されたのは、“PS VitaをPS3のコントローラにする”というもの。このデモのために制作された『リトルビッグプラネット2』の特別ステージで、実演デモが披露された。内容は、ひとりがPS3のコントローラでプレイヤーキャラの“リビッツ”を操作。もうひとりは、PS Vitaをコントローラにして、リビッツをサポートする飛行機を操作する。飛行機のサポートで障害物を排除したり、仕掛けを起動させたりしながら、ビルをどんどん上っていく……というものだ。『リトルビッグプラネット』らしいギミック満載のステージを、ふたりで協力しながら進んでいく様子は非常にユニーで、PS3とPS Vitaの連携には大きな可能性があることを実感できる内容だった。
 なお、このPS3とPS Vitaを組み合わせるツールについても、デベロッパーに提供するべく鋭意開発中とのことだった。

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▲吉田氏が飛行機を操作。飛行機は、タッチパネルでなぞったラインを飛んでいく。

▲障害物をどかしたり、エレベーターを起動させたりと、飛行機が大活躍していた。

●PS Suiteも今秋から大規模に展開!

 最後に再び松本氏が登場し、PS Suite(プレイステーション スイーツ)に関する展開が説明された。これは、PS Vitaが初披露された(当時の呼称はNGPだったが)、2011年1月のプレイステーションミーティングにて発表されたもので、android端末に、プレイステーションフォーマットのコンテンツを提供するという取り組みのこと。最初の発表以来、しばらく続報がなかったPS Suiteだったが、しっかり準備は進められているとのこと。 現在、クロスプラットフォーム向けのSuite SDK(開発キット)が準備中だそうで、このSDKで制作したアプリケーションは、各デバイス内の仮想マシン上で動作させることができる。開発言語はC#で、3Dグラフィックライブラリや、一般アプリケーション用のUIツールキットも提供されるため、さまざまなアプリケーションを、効率的に少ない予算で開発できるとのことだった。
 Suite SDKは、SCEの基準に従った一定の審査を経て、興味を持ったデベロッパーに幅広く提供されるという。今後は、まず2011年11月より、β運用で順次リリースされる予定だが、詳細は後日、SCEの特設サイトで公開される。また、大規模な展開として、2012年春以降に、Suite SDKで開発したコンテンツをPS Storeで配信する計画も明かされた。

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▲PS Suiteの実例として披露されたサンプルデモ。3Dシューティングゲームが、Xperia PlayとPS Vitaで同じように動作していた。

▲SDKのUIツールキットを、ソニーが近日発売予定の“SONY Tablet S”で動作させるデモも披露された。

▲こちらもPS Suiteのデモ。写真と世界時計がリンクしたアプリケーションで、写真を切り替えると、時計も該当する土地の時間に切り替わる。ゲームに限らず、このような幅広いアプリケーションの開発を促すことも、Suite SDKの狙いだという。

 なお、PS Suiteに対応する、“プレイステーション サーティファイド”と呼ばれる規格を取得している端末は、現時点ではXperia Play、Sony Tablet S、Sony Tablet Pの3機種があるが、すでに発売されている端末や、今後発売される端末についても、技術検証を進めているとのこと。またコンテンツについても、2011年10月下旬より、対応端末向けに、初代プレイステーションのタイトルを中心としたコンテンツが配信される予定。日本、アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、オーストラリアの9ヵ国をを皮切りに、積極的に展開国を拡大してくとのことだった。


 今回の基調講演では、2011年9月14日に開催されたプレスカンファレンスの内容と重複する部分がありつつも、プレスカンファレンスではアピールしきれなかった要素を中心とした内容がプレゼンテーションされた。高機能、多機能ゆえに、まだまだ魅力の全容が完全には明かされていない感のあるPS Vitaだが、発売に向けてどのようにプロモーションが展開されていくか、興味深いところだ。