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バンダイナムコゲームスより2011年9月8日に発売されたRPG『テイルズ オブ エクシリア』。シリーズ生誕15周年記念タイトルたる本作に込めた並々ならぬこだわりを、開発スタッフに語ってもらうぞ。今回は、シナリオライターを務めたナムコ・テイルズスタジオの木賀大介氏だ。

※『テイルズ オブ エクシリア』連載:産地直送リポート集はこちら

●シナリオと映像はほぼ同時進行だった

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ナムコ・テイルズスタジオ
木賀大介氏

皆さん、こんにちは。
ナムコ・テイルズスタジオの木賀大介です。今回は『エクシリア』のシナリオについて、お話をさせていただきます。

エクシリア』のシナリオを作るにあたっては、まず、社内で複数のスタッフがプロット(シナリオの構想)を持ち寄り、その中からひとつを選んで具体化させていくという方法を取りました。従来の『テイルズ オブ』シリーズでは、シナリオライターが作ったプロットをもとに検討することが多かったので、『エクシリア』での方法は珍しいですね。

プロットをひとつ選び出した段階から、男女ふたりの主人公がいることや、“ミラ=マクスウェル”というキャラクターを物語の中心に据えることは決まっていました。“揺るぎなき信念”を持っている女性主人公ミラの使命が、物語の大きな軸となり、ミラに影響されてほかの仲間たちも成長していきます。心の中で何かしらの決意が芽生えたり、それを貫くために“違う自分”になろうとしたり、周りに流されることなく自分から一歩を踏み出したり。仲間たちそれぞれの成長を、ひとつながりのシナリオに組み込むのはたいへんでしたが、うまくまとめることができたかと思います。

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信念にブレがないミラに対し、男性主人公のジュードは“ふつう”の少年。ミラとの出会いをきっかけに、自分にできること、やるべきことを考えていきます。

プロットを具体化させる、すなわちシナリオを書き進める過程においても、従来とは異なる方法を取りました。従来は、シナリオをいったん完成させてから映像を作っていたのですが、今回の映像はいかんせん格段に進歩しているので、映像制作にはこれまで以上に時間を費やしたいとなりまして。そこで、シナリオと映像をほぼ同時進行で作ることにしたんです。

この方法でうまくいった例のひとつが、アグリアというキャラクターではないかと思います。モーションデザイナー(編集部注:こちらの記事でご登場いただいた渋江氏もモーションデザイナーのひとり)が、僕の書いたキャラクター設定やシナリオを噛み砕いて、アグリアのクネクネとした動きを作ったんです。自分が思い描いていた通りのイベントシーンが出来上がるとうれしいものですが、予想外のものを作ってもらえるのも楽しいですね。

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アグリアのユニークな動きかたを見て、僕も彼女のセリフをもっと破天荒に変えてみたりしました。併行作業ならではの相乗効果だったのでは。

●ごく自然なセリフ回しを追求

映像の進歩にともない、シナリオも進歩する必要がありました。キャラクターCGの頭身が上がり、顔の表情もこれまで以上に豊かになったので、説明的なセリフをなるべく避けて、CGの表情や仕草でキャラクターを表現することにいっそう注力したんです。

また、セリフのひとつひとつに重みを持たせています。同じセリフでも、何を思いながらしゃべるかによって、セリフのトーンが変わって然るべきですから、声優さんたちには、キャラクターの心情や状況をしっかり踏まえながら演技していただきました。たいへんな苦労をおかけしましたが、声優の皆さんも「難しいけど、おもしろい!」と思ってくださったようで。ゲームをプレイしていただければ、きっとその成果を実感していただけるはずです。

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キャラクターどうしのチャット(雑談)もかなり充実しています。メインシナリオに盛り込みきれなかった設定や、イベントシーンが冗長になるのを避けるために割愛したネタなどを、チャットに数多く反映していますよ。「ミラの服は誰が作ったんだろう?」とか、「ミラの特徴的な前髪はどうやってセットしたんだろう?」といった、メインシナリオを書き進める中で生じた疑問を、チャットで解消していたりします。本作のチャットは、いったん発生条件を満たせば、好きなときに何度でも観賞できるので、冒険の合間にぜひ耳を傾けてみてください。

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冒険の先々で楽しめるチャット。相当な数をフルボイスで用意しました。

最後に、僕がとりわけ気に入っているキャラクターについて語らせてください。ジュードの幼なじみである、元気娘のレイアです。じつは彼女、シナリオの執筆当初はおしとやかな性格だったのですが、このままでは本作の物語を作りにくいと感じまして。目にした物事にすぐさま反応する元気な役どころとして、そしてパーティーのムードメーカーとして、物語をよくも悪くも前に転がしてくれるキャラクターが欲しかったので、レイアの性格を大きく変更しました。変更後の声のイメージは、僕の中では早見沙織さん一択だったので、それが叶ってよかったです!

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イベントでもバトルでも元気なレイア。敵のアイテムを“盗む”のは、彼女らしからぬ能力と思われるかもしれませんが、武器の棍に敵のアイテムが引っかかった結果と解釈してみてください(笑)。

テイルズ オブ』シリーズの物語は、敵を倒すことが目的ではなく、主人公たちがみずからの思いを確立させる過程を、プレイヤーに体験していただくものだと僕は考えています。『エクシリア』でも、そのあたりを意識しながらプレイしていただけるとうれしいです。

(C)いのまたむつみ (C)藤島康介 (C)2011 NAMCO BANDAI Games Inc.