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スパイクからプレイステーション3とXbox 360を対象に2011年10月20日発売予定の、オープンワールドゾンビゲーム『Dead Island』。海外での発売が迫る本作のローカライズについて、実際に日本語版を見せてもらいながら、スパイクの飯塚康弘プロデューサーに話を聞いた。
●吹き替えは海外ドラマ風に
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飯塚 では、まず実際のプレイの様子をご覧になっていただきましょうか。(クルマでしばし暴走)
――お、いま遠くから生存者の声が聞こえましたね。こういった部分もすべて日本語ボイスになっているんですね。
飯塚 ここは日本語吹き替えにして良かったなと思う部分ですね。周りの生存者がひっきりなしに話しているので。戦いながらだとなかなか字幕を追い切れないというところもあるかなと。ですが、オリジナルの英語音声も収録してあるので、プレイヤーさんの好きな方を選んで頂ければと思います。
――声優さんはどれぐらい使われているのですか?
飯塚 主要キャラクターで20人ぐらいですかね。海外ドラマ系のキャスティングをしています。
――ああ、確かに海外ドラマっぽいところがありますね。『Walking Dead』(ゾンビドラマ)+『LOST』(南国で遭難するドラマ)みたいな。あ、クルマは荷台にも乗れるんですね。
飯塚 はい。オンラインCo-op(協力)プレイに対応しているので、1台のクルマに最大4人乗れるんです。荷台に乗った人は、銃で周囲のゾンビを撃つことができます。あとでもうちょっと詳しくご覧いただきましょう。
●内臓の色と人間の敵
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飯塚 (クルマを降りてゾンビを倒しながら)海外版からの変更点ですが、まず内臓の色味を少し落としています。
――でも、これは十分じゃないですか? ゾンビ映画によっても生々しい色だったり、もう腐りかけてドス黒くなっていたり、結構色味は異なりますし。
飯塚 血はオリジナルの色で、内臓以外の表現については、こうやって(刃物で斬りつけていく)……えーと、真っ昼間からナンですが。
――本作の場合は、皮膚の下に肉の層、さらに下に骨、と層を重ねて作られていて、リアルな表現が可能になっていますが、これを見ていてもキツいですね!
飯塚 はい。ゾンビを倒すときの欠損表現については、内臓の色以外は海外版と一緒です。斬れる部分も多くて、たとえばこうやって(スパーンと斬って)手首が斬れて、(もう一発スパーンと斬って)肩も斬れて。最初に見たときは衝撃的でした。ただ、人間の敵も出てくるのですが、海外版ではそれについても同じことができるようになっていたんですね。残念ですが、日本版での人間の敵キャラクターについては、欠損表現はありません。
――ああ、人間の部位欠損はまだ厳しいですね。でも、ゾンビの表現ですが、手や足を斬ったり吹き飛ばして、その断面が見えているというのはよくありますが、本作だと“肉が削げて中がむき出しになる”という表現まで踏み込んでいるじゃないですか。それが通っているというのはスゴいですね。
飯塚 そうですね。内臓丸出しのゾンビを作れてしまうという。しかも、さんさんと日光が降り注ぐ白いビーチでそれをやった日にはもう……気持ち悪くなりますよ(笑)
――コントラストがいいですよね。青い空と海、照り返しの強いビーチ、そしてゾンビという。
飯塚 もともとゾンビゲームが好きだったのですが、従来のゾンビゲームは、舞台設定が夜だったり、荒廃した世界といった、湿っぽく暗いイメージがスタンダードだったので、『DEAD ISLAND』の“南国にゾンビ”というコンセプトだけで「いいな」と思っていました。そして遊んでみたら「(表現が)キツいな!」という一方、「これは目立つな」と思ったんですよ。画面写真や、映像だけで、どんなゲームなのかが伝わってくるインパクトを持っていますよね。それで「これは行ける!」と社内一丸となって交渉を進め、幸いにも縁があって弊社から出せることになったんです。
●反響と疑問への回答
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――『DEAD ISLAND』は開発元のTechlandから発表された当初から、しばらくは「南国でゾンビもの」、というぐらいの情報しかありませんでしたが、武器作成の要素や、RPG要素が入っているというのがわかったとき、どう感じられましたか?
飯塚 正直な話、今年の頭までずっと情報がなかったんです。機会がある度に「『DEAD ISLAND』はどうなっているんですか?」と聞いていたのですが、先方からは「作ってる、作ってる」としかコメントがいただけなかったんですよ(笑)。今年の頭になって「そろそろゲームを見せられるよ」と言われて、実際に触らせてもらったら、「え、こうなってるの!?」と驚きました。でも、それぞれの要素がトレンドをちゃんと押さえていて、ユーザーさんが求めている要素はふんだんに入っているかなと。
――そして今年、ティザームービーで一気に有名になりましたね。
飯塚 通常はゲーム中の映像でムービーを構成するところを、ゲームのコンセプトを全面に出したオリジナルのCGアニメーション映像を作ってしまう。「こういうプロモーション映像は意外となかったな」と思いましたね。そして「『Dead Island』って何!?」と一気に盛り上がったところで「じゃあE3でプレイアブルを出します」と繋いだところも上手いと思いました。こういうアプローチがあるのか、と勉強になりましたよ。
――スパイクからの発売を発表して、反応はいかがでしたか?
飯塚 予想以上でしたね。その次に、こういったゲームにつきものの「じゃあ規制はどうなるの!?」という反応をいただいて、「頑張るから待っててください!」と思いながら作業していました。海外版との差異を告知するときに今回はちょっと新しいこともやってまして、文章だけで変更内容を伝えるのをやめようと思ったんです。
――確かに、公式サイトで日本版でのプレイ映像とともに、変更内容を発表されましたね。
飯塚 はい。日本版はこうなります、ゾンビについては映像だとこうですと。そうすることで、ユーザーさんが不安だったり、気にしているところをわかりやすく伝えられればなと思いまして。
――変更点があるというだけで悪く取られてしまう中、もちろん「変わっているならダメ!」という人もいるでしょうが、実際に映像を見てもらうことで「これぐらいなら問題ないな」という人もいますからね。
飯塚 「すごく変わってる!」と言われるかとビクビクしていたのですが(笑)、「文章だけじゃわかりにくいから映像を出そうよ」と説得して出しました。思った以上にユーザーの皆さんにご理解いただけたようなので、よかったですね。とくに気になる部分が多いタイトルなどは、これからもこういうアプローチをしていければと思います。
●Co-opは日本版同士のみながら、フリー参加可能のユニークな形式
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――オンラインCo-opは日本版とのプレイヤーのみでしたっけ。
飯塚 そうですね。どうにかならないか頑張ったのですが、表現の変更による関係でプログラムが変わってしまっているのと、レイテンシー(通信による遅れ)の問題もあって。それと本作のCo-opは、レベルが近いプレイヤーなどは比較的自由に参加できるようになっています。オンラインのメニューに行って、マッチングを待って……というのではなく、近くにいるほかのプレイヤーが検出されて「じゃあ一緒に行きますか?」と遊べるという、インタラクティブ性の高さも売りなんです。
――でもそうなると、言語や地域縛りなどができればいいですが、いきなりレイテンシーの高い海外の人と一緒になるというのが困る人も確かにいるかもしれませんね。
飯塚 それでもワールドワイドに出来れば良かったのですが、ちょっと難しかったです。
●ローカライズ方針
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――修正がいろいろあった中で、「ここだけは大事にしよう」というローカライズ方針はありましたか。
飯塚 海外のものをそのまま日本でも発売できれば最高だと思います。アメリカではタイトルロゴが規制に引っかかっていますし、本国のドイツでもそのままのゲーム内容では出せなくて、逆にKoch Media(ドイツにある『DEAD ISLAND』の発売元)の社長さんが「ドイツの基準に合わせてしまうと、このゲームの良さはなくなってしまう」と語っていたぐらいなのですが、日本でも出来る限りオリジナルに近い形で出すことを目指して、いろいろ交渉を続けてきました。「これだけはだめだ」という部分があったのは残念ですが、それ以外はギリギリまで海外版に近づけられたと思います。
――では日本語吹き替えについてはいかがですか?
飯塚 プレイしたときに、「字幕は読みづらいんじゃないか?」と思ったのが始まりです。目よりも耳から情報が入ってきたほうが、この世界観を味わえるんじゃないかと思い、選択肢のひとつとして日本語ボイスを用意することにしました。南の島で展開するとてつもなく最悪な物語を、より直感的に味わえ、感情移入しやすくできることも大事だと思ったので。そういった形でローカライズのクオリティーを上げて、ユーザーの皆さんに楽しんで頂ければなと。グロさだけではなくて、自由度もあり、いままでにないゾンビゲームになっていると思いますので。
●一人称視点と音
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――オープンワールドでCo-opで打撃メインで一人称視点って、なかなか組合わさらないものが4つ入っていますからね。
飯塚 言われてみるとそうですね(笑)。ひとりで遊ぶのと、4人でプレイするのとではまたプレイした感覚が違うと思いますね。みんなで武器を持ってクルマに乗って、ガーッとツアーに行くと。
――野蛮なリゾートツアーですね(笑)。
飯塚 それと、個人的には一人称視点であることも気に入っています。三人称視点だと、ゾンビが後ろにいることがすぐにわかるので。鈍器を持って接近して殴っていて、(一人称視点の)背後から襲われるというのを何度か繰り返すと、後ろが気になり出すんですよ。
――はい。一人称視点だと、いろんなこと、たとえば音も気になりはじめますよね。何もいないと思っていると「グルル……」と声が聞こえてきて、でもちょっと先にいるのか、それともすぐそこの茂みの影にいるのか気になって仕方がない。そんな中で、さっきみたいに人間の声が聞こえてくると「ハッ!」となる。
飯塚 そうですね。ゾンビにもいろいろいて、走ってくるヤツなんかはすごく怖いんですが、その際に必ず雄叫びを上げてくれるんです。だから「ウォオオオオオオ!!」と聞こえると360度を見回すようになりますよ。するとそのゾンビがすごい遠くから全力疾走して近付いてきていたり(笑)。
――それを蹴っ飛ばして鈍器で殴ると。野蛮でいいですねぇ(笑)。
飯塚 銃もありますが、持てる弾の限界もありますからね。ココぞという時のために、いい武器や銃は取っておくようになりますよ。ハック&スラッシュ型のRPGのように、持っている武器と落ちている武器の性能を見比べて「どっちを持って行こうかな」と悩むのも楽しいところです。
●リゾートだけじゃない!
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――ゾンビ好きにはたまらないリゾート旅行になりそうですね。
飯塚 まだ皆さんビーチの画面写真しかご覧になったことがないと思いますが、実は舞台はビーチ以外にもいろいろあるんですよ。 (マップを出して)ここのリゾート地区は島全体のまだ一部分なんです。これと同じぐらいのマップが複数あります。
――ちょっと待ってください。ここだけでも結構広いですよ?
飯塚 現地の人が住んでいるダウンタウンもあって、すごい路地が狭いところなので、リゾート地区とはまったく雰囲気が変わりますね。ジャングルのエリアもあります。
――ジャングルでゾンビなんて超怖いじゃないですか!
飯塚 本当に大変ですよ。エリア間を行ったり来たりもできます。
――ああ、大きなエリア単位のオープンワールドが複数あるんですね。
飯塚 そうです。開発元に全部合わせたらどれぐらいの広さがあるのか聞いたら「わからない。多分大きい」と言われました(笑)。普通、そういう数字をセールスポイントに使うと思うのですが、「とりあえず広いよ!」とのことです(笑)。各エリアごとに全然違う雰囲気の世界が広がっているので、やりごたえがありますよ!
――「リゾート地区だけだと思ったら、それも違うよ!」ということですね。
飯塚 そうです。まだここ(ビーチ)はゾンビ人口的にはちょっと薄いぐらいですよ。みんなで徒党を組んで「あっち行ってみようぜ!」とさまざまなエリアを楽しんでもらえればと思います。オンラインCo-opもご覧になりますか?
――お願いします!
●今後の展開にも期待
飯塚 ホラ、こうやってみんな自然に入ってくるんですよ。
――本当だ。いま、オンラインモードにしたり、招待かけたりしなかったですよね……制限をかけることはできるんですか?
飯塚 できます。プライベートスロットを設定して、プライベートスロットに友達2人、それ以外のプレイヤーをひとりといった構成でも遊べます。(クルマを運転していると背後から銃声)お、後部の荷台で撃ってますね(笑)
――ボイスチャットで遊べば絶対楽しいですね、これは。
飯塚 力尽きた場合は復活できます。シングルプレイでも同様ですね。仲間の攻撃でやられることはないのですが……(爆発物を投げて)こんな感じに爆発に巻き込まれたりするとアウトなので注意してください(笑)
――もう、絶対巻きこんで遊ぶ人いますね!
飯塚 Co-opしているプレイヤーとアイテムのトレードもできますし、経験値もちゃんと割り振られます。それと、敵の体力表示などはプレイヤーが設定でき、消すことができます。これはシングルプレイでも同様です。
――ゾンビの体力とか受けているダメージ値がRPGみたいに表示されるんですよね。僕は燃えているゾンビから炎のダメージ値が出続けているのとか、結構好きなんですが、こうやって表示を全部消すと、本当にアクションゲームみたいですね。
飯塚 RPG的な要素があるのであえて出しているのですが、それはユーザーさんの好みで切り替えられるようになっています。
――発売も迫ってきましたが、今後のプロモーション展開などはいかがですか?
飯塚 (ニヤリと笑って)いろいろ仕込もうと思っていますのでご期待ください。このタイトルは、おもしろいことをやらなきゃと思っています。このゲームは少し遊んでもらえれば、すぐによさがわかってもらえると思うので、そのためにどうしたらいいかを考えています。
――期待してます!
(c)Copyright 2011 and Published by Deep Silver, a division of Koch Media GmbH, Gewerbegebiet 1, 6604 Hfen, Austria. Developed 2011, Techland Sp. z o.o., Poland. (c)Copyright 2011, Chrome Engine, Techland Sp. z o.o. All rights reserved.