●“本気のゲーマーのためのゲーミングデバイス”の開発ポリシーとは
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2011年8月31日、PC用ゲーミングデバイスメーカーの“ZOWIE GEAR”が来日し、日本正規代理店のマスタードシードのオフィスでメディア向けの座談会を行った。ZOWIE GEARの製品開発に関わっている、『カウンターストライク』の伝説的プレイヤーであるHeatoN氏とSpawN氏も出席し、ゲーミングデバイスに関する自身の考えなどを語った。
ZOWIE GEARのCEO(最高経営責任者)であるVincent Tang(ビンセント・タン)氏は、今回の来日の目的を、他社とは違うZOWIE GEARのポリシーを伝えるためだとする。「ZOWIE GEARのゲーミングギア(PC用ゲーミングデバイスのことをこう呼んでいる)は、シリアスなゲーマーのためのものだ」と語るTang氏。それは通常のゲーミングデバイスとどう違うのか?
Tang氏が、HeatoN氏とSpawN氏にハードコアゲーマーが求めるものを尋ねると、“Comfortable(快適であること、手に馴染むこと)”、“Performance(パフォーマンスを正しく発揮できること)”、“Stability(安定していること)”という3点が挙がってきた。「これがゲーマーが選ぶことだ」として、逆に“ノンゲーマーが選ぶこと”を書き出した。値段、機能、数値的なスペック、ルックス……「こういったものを作れば、一定のセールスが得られるだろう。だが我々は、ゲーマーのためのゲーミングギアを作りたいんだ」とする。安いから、機能が多いから、スペックの数値が大きいから、見た目がかっこいいから……といった理由ではなく、勝利を求めるプレイヤーに勝つために選んでもらえる製品を作るのがポリシーというわけだ。
このスタンスは、ゲーミングマウスの動作設定や装飾についての質問を受けた際の返答でも明確だった。「(自分に合った設定の)数字は個人によって異なるものだ」とTang氏は言う。たとえばmTwというチームは125ヘルツというレポートレート(センサーが得た情報をPCに送る頻度)を好むが、SpawN氏は500ヘルツを好む。だが125ヘルツの選手ほうが500ヘルツの選手より強いとか弱いと決まるわけではない。dpiも同様だ。スペック的に見栄えがするdpiの製品を作ったとしても、実際に使うプレイヤーが下の設定にするのであれば、その部分はあまり意味が無い。「価格、機能数、スペック、これらはすべて数字だ」として、それよりも前述のニーズに応えることを重視するべきだとTang氏は述べる。
ちなみに、HeatoN氏とSpawN氏の『カウンターストライク』での設定は以下。実際にプライベートなどでもZOWIE GEARのゲーミングマウスを使ってプレイしているとのこと。「名前を貸しているだけじゃないから、ちゃんといつも使ってるぜ」とはSpawN氏の弁。
SpawN
dpi:1000dpi
レポートレート:500hz(隠しモードらしい)
Windowsの設定:3/11
カウンターストライクのセンシビリティー:3.3
HeatoN
dpi:1000dpi
レポートレート:1000hz
Windowsの設定:3/11
カウンターストライクのセンシビリティー3.0
現役時代はSpawN氏はマイクロソフトのインテリマウス エクスプローラー 1.1を、HeatoN氏はインテリマウス エクスプローラー 3.0を使っていたという。いろいろゲーミングマウスを渡されて試すこともあったが、なかなか満足できるものがなかったとか。それが両氏が引退後にZOWIE GEARと組んで開発に関わるようになった理由でもある。現在SpawN氏モデルのマウスも開発中だが、「いま言えるのは、“形が違う”というぐらいだね(笑)」とのこと。HeatoN氏は、ヘッドセットを手掛けているそうだ。
FPS(一人称視点シューティング)以外では、SpawN氏はサッカーゲームの『FIFA』シリーズを、HeatoN氏は『World of Warcraft』や『バトルフィールド バッドカンパニー2』などを普段遊んでいるらしい。そういえば、『カウンターストライク』の最新版『Counter-Strike: Global Offensive』のプレイステーション3版では、マウスとキーボードでの操作もサポートするようだが……Tang氏は自社製品のプレイステーション3対応について「最適化するためのノウハウがまだないから、中途半端なものを作るわけにもいかないし、その予定はないね」とのこと。PC用ゲーミングデバイスで製品開発力を鍛えたメーカーがプレイステーション3やXbox 360などの家庭用ゲーム機向けのコントローラーやヘッドセットなどを手掛けるようになる動きも多いが、そういった予定もいまのところはないらしい。
なお、ゲーミングマウスパッドについて、「大きすぎる」という反応に応えて、日本と韓国をターゲットにした“P-TF Speed”を2011年9月から発売予定であることも明かされた。31.5センチ×24.5センチで、34センチ×29センチのP-TFよりもさらに小さいサイズとなっている。
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最後にはメディア代表とHeatoN氏とSpawN氏との『カウンターストライク』の対戦も行われたのだが、呆れるぐらいの強さ。メディア代表には、世界大会での選手歴がある人も入っていたんですが……エイム力(狙う能力)がハンパじゃない。狭いマップでのプレイだったのだが、相手プレイヤーがリスポーン(復活)した瞬間に当て、箱の影に逃げ込んでも壁抜きで当ててくる。どうなってるんだ、このFPS超人たちは……。まぁ、そんな元世界最強選手2名が、野心あふれる代表のもとで開発に従事しているんだから(SpawN氏は開発作業で一番面倒なことを聞かれ、“Tang氏のプレッシャー”と回答)、ガチな製品が出来上がるのだろう。
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ちなみにHeatoN氏のプレイスタイルは、キーボードを傾けて置き、グイッとディスプレイに顔を寄せる感じ。デカいので迫力もスゴい。 |