●新情報盛りだくさんの濃密な発表会に

 コーエーテクモゲームスは、2011年8月30日、同社のネットワーク事業戦略に関する発表会を開催した。この日発表されたのは、大きく分けて以下の3つ。
・オンライン&ソーシャルゲーム部門の業績と戦略
・オンラインゲーム、ソーシャルゲームの新作を含む今後の展開
・ポータルサイト“my GAMECITY”のリニューアル
 それぞれ、非常に中身の濃い内容となった発表会。順を追ってリポートしていこう。

●「ソーシャルをネットワーク事業の中心ジャンルに」

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 最初に登場したのは、コーエーテクモゲームス代表取締役社長の襟川陽一氏。襟川氏は、現在コーエーテクモゲームスのネットワーク事業が急激に伸びていることを力説。オンライン・ソーシャル事業には、昨年度は約200人の人員が従事していたが、それを今年度には約300人に増員し、スマートフォンへの対応も含めて、さらに注力していくのだという。「とくにネットワーク事業の中心ジャンルとして、ソーシャルに力を入れて、世界に打って出ます」(襟川氏)と、並々ならぬ意欲を語った。

●オンライン・モバイル事業は順調、海外展開も積極的に

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 続いて登場したのは、コーエーテクモゲームス専務取締役ネットワーク事業部長の小林伸太郎氏。小林氏が説明したのは、コーエーテクモゲームスのみならず、国内外の関連子会社も含めたコーエーテクモグループ全体の戦略に関する発表だ。
 小林氏は、まずコーエーテクモゲームスのオンライン・モバイル事業について、2011年8月30日現在の状況を解説した。以下の通り、非常に好調であることがよくわかる。

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▲Mau(月間有効会員数)は、月額課金式の『信長の野望 Online』が3.8万人、『大航海時代 Online』が3.5万人。基本料金無料の『真・三國無双Online』は非公開。

▲ソーシャルゲームは、8タイトルで累計登録会員数は400万人。

▲モバイル/DLアプリは、211サイト、70タイトルで、Mauが40万人。

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 つぎに業績については、決算説明会などでも発表されている通り、こちらも非常に好調だとのこと。2009年度は約345億円の売上に対して、約11パーセントにあたる約40億円がオンライン・モバイル部門の売上で、全体としては赤字という結果となっていた。一方2010年度は、後半からソーシャルゲームを提供し始めたことにより、約320億円の売上のうち、約14パーセントの約46億円がオンライン・ソーシャル部門の売上に。利益で見ると、約33億円の利益のうち、じつに約36.4パーセントにあたる約12億円をオンライン・モバイル部門の利益が占めるまでに成長したという。この結果を見ただけでも、コーエーテクモゲームスにとって、現在オンライン・モバイル事業がいかに重要なものになっているかがよくわかる。

 今後の事業展開について、小林氏が挙げたテーマはふたつ。ひとつは、“マルチプラットフォーム・マルチデバイス”だ。DeNA(Mobage)、GREE、Yahoo!Mobageなどあらゆるプラットフォームにコンテンツを提供すること。そして、フィーチャーフォン、スマートフォン、PCなどあらゆるデバイスを通じてサービスを広げていくことが重要であるとのこと。
 もうひとつのテーマは、“グローバルソーシャルゲーム戦略”。これは襟川氏も冒頭の挨拶で語っていたことだが、今後伸びていくことが必至のスマートフォンへの対応強化や、オンライン、パッケージゲームとの連携なども含めてさらにラインアップを強化し、グローバルに展開するということだ。グローバル展開については、「とくに注目しているのは、東南アジアです。フィリピン、インドネシア、タイ、マレーシア、ベトナム。市場規模では小さく見えますが、いま急速に伸びている市場です。この東南アジアと中国に積極的に展開します」(小林氏)と、アジア進出への意欲を語っていた。

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▲マルチデバイス対応表。“対応予定”の白い星の数の多さに、意欲が伺える。

▲東南アジアの市場規模は340億円。日本、韓国、中国に比べると確かに小さく見えるが、成長著しいのだという(数字は2011年8月現在、コーエーテクモゲームスの調査によるもの)。

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 事業戦略のまとめとして、2011年度の売上げ目標を350億円、うち73億円をオンライン・モバイル事業の売上げ目標として設定しており、さらに利益は50億円のうちの40パーセントにあたる20億円をオンライン・モバイル事業の目標としていることを説明した。ただし小林氏によると、「これはあくまで目標の数字です」とのこと。「本日は弊社社長の襟川も見ていることですし、これ以上の数字を目指すと申し上げておきます」(小林氏)と冗談めかして語っていたが、確かに2010年度の実績からすれば、さらに上の結果が出る可能性は大いにありそうだ。

●コーエーテクモゲームスの有力フランチャイズが続々ソーシャルに!

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 オンライン・モバイル事業の現状と展望が説明されたところで、つぎは目標を達成するための具体的な戦略の説明となった。ここで登場したのは、コンシューマーゲームの開発でもおなじみの、コーエーテクモゲームス常務執行役員ネットワーク事業部副事業部長の藤重和博氏だ。

 藤重氏からは、いきなりソーシャルゲームの新作タイトルが3作続けて発表された。最初に発表されたのは、GREE用に提供される『100万人のWinning Post』(詳細は【コチラ】)。藤重氏は、「実際の競馬ではサンデーサイレンスの子のディープインパクトがGIを獲って、その子がまたGIを獲ったりしています。プレイヤーは、それらの馬に勝てるような馬、種牡馬を育てるなど、自分なりの楽しみを広げられます」と、『Winning Post』らしい楽しさがソーシャルゲームにうまく落とし込まれていることを説明した。本作は、すでに事前登録が開始されており、事前登録者にはゲーム内アイテムが進呈される。その後は、2011年9月よりβサービスが開始される予定で、スマートフォンでの展開も予定されているとのことだ。
 2本目は、Mobageで展開される『100万人の大航海時代』。『大航海時代 Online』は、現在オンラインゲームとしてグローバル展開されているタイトルだが、『100万人の大航海時代』でも、スマートフォン対応でグローバル展開していくとのこと。まだタイトルロゴのみの公開だが、藤重氏が「グローバルソーシャル戦略の基幹になるタイトルです」と語るとおり、コーエーテクモゲームスにとって重要なタイトルとして、精力的に開発が進められているようだ。
 新作の3本目は、ちょっと変わり種の『100万人の超WORLDサッカー!』。これは、日本最大級のモバイルサッカーサイト“超WORLDサッカー”と連動して展開されるタイトルとなる模様。こちらも、スマートフォン対応でワールドワイドに展開していく予定とのことだ。
 そのほかソーシャルゲームの現状として、『100万人の信長の野望』の登録会員が170万人を越え、スマートフォンへ対応済みであること、『100万人の戦国無双』が2011年8月31日より正式サービス開始となること(詳しくは【コチラ】)が報告された。

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 つぎに、PC、プレイステーション3などで展開中のオンラインゲームについての現状が説明された。
 まず『信長の野望 Online』については、2011年9月28日に、豪華9大特典付きの『信長の野望 Online 〜新星の章〜プレミアムボックス 決戦前夜』がWindows用に発売されることが、改めて説明された。
 『大航海時代 Online』については、台湾、韓国で続々サービスインするなど、海外展開が好調であることが説明され、新たに、2011年11月8日に大規模アップデート“Chapter3”の実施と同時に、『トレジャーパック 自由の大地』がWindows用に数量限定で発売されることが発表された(詳細は【コチラ】)。
 最後に『真・三國無双 Online』について。本作は、藤重氏の管轄する事業の中で最初にアイテム課金モデルでリニューアルしたタイトルだが、「当初はビジネス的に苦しかったのですが、ここ1〜2年は順調に伸びてきています」(藤重氏)と、苦しみながら育ててきたコンテンツであるという。その成果として、現在では、Mauベースではグループでいちばん大きなコンテンツになっているとこのこと。そしてリニューアルから4周年が経ったことを記念して、“4周年記念パック”を発売することが発表された。この4周年記念パックでは、特定の条件を満たすと、『NINJA GAIDENΣ2』とのコラボレーションアイテムも入手できる。藤重氏によると、「テクモとの統合効果の一環で、チームNINJAとの協力によって生まれたものです」とのことで、ゲームファンにとってはうれしいコラボレーションと言えるだろう。

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 最後に藤重氏からは、東京ゲームショウ2011への出展内容の説明がなされた。オンラインゲーム関連では、“ネットエンターテインメントフェスタ”と題して、試遊台を出展するほか、試遊者には特別アイテムがプレゼントされるとのこと。また、ゲストも招いた楽しいステージイベントも行う予定となっているそうだ。

●my GAMECITYは日本国内1000万人が目標!

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 続いて登場したのは、コーエーテクモゲームス執行役員ポータルサービス担当の藤田一巳氏。藤田氏から発表されたのは、コーエーテクモゲームスのポータルサイト“my GAMECITY”の大リニューアルについてだ(詳細は【コチラ】。藤田氏は、まず1999年のGAMECITYオープン以来の歩みについて説明。さらに、2011年6月の“市長選挙”によって選ばれた、my GAMECITY市長の“ニャブラハム・リンニャーン”を紹介した。この日が初お披露目となるニャブラハム・リンニャーン市長は、残念ながらうまくしゃべることができなかったようなので、代わりに藤田氏から、市長の掲げるマニフェストが説明された。

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 マニフェストの第一は、“SNSとゲームの融合”。藤田氏は、「ここが今日いちばん聞いてほしいところです」と前置きしたうえで、“my GAMECITYがゲームの集まるプラットフォームとして生まれ変わり、my GAMECITY自体がひとつのゲームになる”というユニークな構想を明かした。ゲーム会社ならではのノウハウを活かして、「新規登録、入会すらゲームのように楽しいものにします」(藤田氏)と、いままでにないポータルサービスを作り上げるとのこと。
 目標登録ユーザー数について藤田氏は、「日本国内で1000万人を目指します」と非常に高い目標を掲げたが、これについては「現在GAMECITYの会員数が200万人で、単純に考えればひとりが5人誘ってくれれば1000万人ですよね。ひとりひとりがインセンティブ、リワードを入手できる仕組み、参加しやすい仕組みをしっかり作れれば、ハードルはそんなに高くないと思っています」(藤田氏)と自信を覗かせた。

●コンテンツホルダーとして積極的に海外展開を

 最後に、再び小林氏が登場して、盛りだくさんだった発表会の締めの挨拶を行った。小林氏は、「振り返れば、パッケージソフトでは、任天堂さん、ソニーさんが展開してグローバルスタンダードになり、そこに我々がソフトを提供しました。GREE、Mobageも特徴的な日本発のプラットフォームで、どちらも積極的に海外展開しています。我々も、コンテンツホルダーとして積極的に展開し、これからもどんどん成長していきます」と、改めてソーシャルゲーム分野に注力することを力説し、発表会を締めくくった。

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