●日本語版ローカライズにも自信

 現地時間の2011年8月17日〜8月21日まで、ドイツのケルンで開催されている欧州最大規模のゲームイベント“gamescom 2011”。ベセスダ・ソフトワークスは今回、『RAGE(レイジ)』、『ザ・エルダースクロールズV:スカイリム』、『Prey2』、『Dishonored』という、いずれも大作と呼ぶにふさわしい4タイトル出展し、ブースには連日長蛇の列ができあがっている。また、同社のビジネスブースには各タイトルのクリエイターたちが待機し、プレス向けのデモおよびインタビューなどを実施。今回ファミ通.comではそれらすべてのタイトルに関して話を聞いてきたので、その模様を順次お届けしていく。

 最初に紹介するのは、北米での発売を来月に控えた(日本では2011年10月6日発売予定)プレイステーション3、Xbox 360用ソフト『RAGE(レイジ)』。同作はFPSジャンルを築き上げたジョン・カーマック氏が率いるid Softwareが、じつに6年もの歳月を掛けて作り上げたFPSタイトルだ。インタビューに応じたのは、ゲームディレクターを担当したTim Willits氏。なお同氏は先日アメリカで行われたid Softwareの祭典“QuakeCon 2011”でもインタビューに応じており、その際はおもにゲームのシステム面について聞いている。なので今回は、これまであまり多くが語られていなかった物語の部分に焦点を当ててみた。

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――ついに『RAGE(レイジ)』が完成しました。いまのお気持ちは?
Tim 完成してホッとしたたともに、イベントでプレイした多くの人が本作を気に入ってくれているようなのでとてもハッピーだ。このようなタイトルを作るのはid Softwareにとって冒険ではあったけど、リスクを負った甲斐があったと思える作品に仕上がったよ。また、日本のファンにぜひ伝えたいことがある。日本語版では非常に魅力的な声優を起用しており、ローカライズのクオリティーがかなり高いようだ。うちで働いている日本人のリード・アニメーターがそう言っているんだから間違いないよ(笑)。

――『RAGE(レイジ)』は当初考えていた通りのものになりましたか?
Tim もちろん! それどころか、当初の予定にはなかったものとして、例えばエンジニアリングアイテム(タレットやロボット)を作れるシステムなんかも搭載していて、考えていた以上の作品に仕上がったと思うね。これはゲーム開発においてあまり起こらないことだよ。

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――ゲームシステムはもちろんですが、本作は物語も魅力的に思えます。世界観などを簡単に説明してもらえますか。
Tim 『RAGE(レイジ)』は惑星の衝突により文明が破壊された未来が舞台だ。しかしプレイヤーは世界がこうなってしまう前の時代の人間なので、かつてあってハイテク技術を有している。そして彼は未来の人類をコントロールするオーソリティ(ハイテック・ミリタリー)と戦うことになるんだ。

――デモを少しプレイしましたが、主人公は非常にミステリアスな存在ですね。彼の正体はストーリーのキーになるのでしょうか?
Tim 最初は意図的に主人公をミステリアスな存在にしているんだよ。プレイヤーは物語をを進めていく中で、なぜ彼が重要であり特別なのか、未来の人類を救済するためにどうしなければならないのかがわかってくるわけだ。

――物語は主人公が機械の中で目を覚ますシーンから始まります。
Tim あれは政府が行っていたアーク・プログラムと呼ばれるもの。当初の計画では政府のリーダーが最初に目覚めて、破壊されたあとの世界に社会を作る予定だったのだが、クロス将軍という男がプログラムを破壊したため予定が狂ったんだ。結果、Wastelandはクロス将軍の支配下に置かれてしまい、それがオーソリティになった。

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――巨大なミュータントも、アーク・プログラムに関係している?
Tim ジャイアントミュータントはオーソリティたちの実験によって生まれた。そしてミュータントがどこから来たのか? という点もストーリーを語るうえで重要なポイントになるだろうね。

――ゲームシステムについても聞かせてください。『RAGE(レイジ)』はグラフィックのクオリティーが非常に高い一方で、昨今多くのゲームで取り入れられているカバーリングやスライディングといったシステムは搭載されておらず、非常にシンプルに遊べる印象でした。
Tim 開発のある段階ではカバーシステムを入れたこともあったんだけど、結局それらは必要がないという結論に至った。複雑なシステムはゲームのテンポをそこなってしまうし、FPSタイトルでプレイヤーがやりたいのは、隠れることではなく撃つことだからね。

――シンプルに遊べる一方で、敵の動きは機敏かつバリエーションに富んでいますね。
Tim 敵の動きに関しては、ほかのFPSタイトルと差別化ができたと思うよ。また、今回のデモで遭遇した集団はかなり好戦的だったけど、すべてがそうというわけではない。怖がりですぐ逃げるやつもいれば、“シュラウデッド”という部族はアーマーを身にまとっていて爆弾カーを作ってプレイヤーを追いかけるうえに恐怖心があまりないので簡単に引かない。そのほか、軍のように統率された動きをするエネミーとも戦うことにもなるよ。

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――技術的な面に関して質問なのですが、本作は安定して60フレームで動作しています。コンシューマーのFPSタイトルで60フレームで動かすことへのこだわりがあったのですか?
Tim その点は確かにこだわったポイントだ。だって、プレイヤーはそっちのほうがうれしいだろう?(笑)。とは言え、技術的には非常に難しかった。エンジンをマルチスレッド化して、プレイステーション3ではSPUを全部使用しているんだ。しかし、本当に苦労した甲斐があったと思うよ。60フレームでのプレイは気持ちがよいし、遊んでいてしっくりくる。ただ、一度このクオリティーを実現してまうと、今後それを落とすことはできないから、その点においては少し頭を抱えるね(笑)。

――もし次回作があるとしたら、挑戦してみたいことはありますか?
Tim そのためにはまず、遊んだ人たちの反応を知る必要があるね。個人的には本作が成功して、続編も作れるようになればいいと思うんだけど。

――最後に発売を待つ日本のファンにメッセージをお願いします。
Tim 『RAGE(レイジ)』にはレーシング要素やエンジニアリング要素などいろいろとやれることがあるし、直感的なプレイを意識し間口の広いタイトルにするために努力しました。また、日本版に関しては先ほど言ったように、本作はローカライズがとてもうまくいったようなので期待してほしい。9月の東京ゲームショウには日本版を出展できると思うので、ぜひ触ってみてください。