●『龍が如く』開発チームの最新作

kWGvLR4NHK74eU57LsFon8Esi7279mt5

 日本国内に多くのファンを持つセガの人気シリーズ『龍が如く』。『BINARY DOMAIN(バイナリー ドメイン)』は、『龍が如く』シリーズの開発チームとゲームデザイナーの名越俊洋氏が開発を進めている完全新作だ。ドイツで開催中のgamescomのビジネスエリアでは、その最新情報をキャッチ。デモの模様とディレクターを務める佐藤大輔氏のインタビューをお届けする。

 本作をまだご存じない方のために少しだけ概要を説明すると、物語の舞台となるのは、2080年の東京。格段に進んだロボット技術が人々の生活を豊かにするが、ひとつだけ犯してはならない国際的な取り決めがある。それは”ホロウ・チルドレン”と呼ばれる、人間とまったく区別が付かないロボットの開発だ。主人公のダン・マーシャルは、違法なロボットを調査する特殊部隊ラスト・クルーのメンバー。彼を含むラスト・クルーの仲間たちは、ホロウ・チルドレンの開発が疑われるロボット研究者の身辺を探るため、秘密裡に日本国内への侵入を試みることになる。
 
■信頼度によって態度を変える仲間たち

 デモは、未来的な電車が止まる駅のホームからスタート。物陰に身を隠すダンに加え、カインとフェイという味方を含む3人が敵ロボットとの交戦状態に入っている。今回のデモの見どころは、信頼度と呼ばれる新たに公開されたゲームシステム。最初のデモプレイは、ダンと2人の信頼度が低い状態で行われた。

 戦闘が始まると、信頼度が低いカインは主人公に対して「あなたが先に敵中に飛び込んでください」という意味の会話を投げ掛けてくる(今回のデモプレイはすべて英語)。それに対してプレイヤーは「イエス」か「ノー」を選択することになるのだが、ともかく信頼度の低さゆえに、仲間たちは自分の身をなるべく危険にさらさない行動を取るのだ。

 つぎに、同じ場面を信頼度が高い状態でスタート。すると今度は先ほどのカインが「ここは私が先行しましょう。援護してください」と、みずからリスクを取る行動を選択。もうひとりの仲間、フェイも積極的に攻撃参加し、プレイヤーが非常に楽にゲームを進められる状況となった。この例から考えても、本作における信頼度の重要性がわかることだろう。

ちなみに、味方からの提案に対する「イエス」、「ノー」は、基本的にはヘッドセットを通じた音声認識で行うことになるのだが(コントローラーによるコマンド入力も可能)、臨機応変にNPCの仲間たちと会話しながら進める戦闘はかなり斬新。ひとつの会話に対する返答が信頼度に影響し、さらなる会話を生み出すゲームシステムは”Ripple Link(リップルリンク)”と呼ばれ、本作を特徴付ける大きな要素となっているようだ(Ripple Linkの詳細やゲーム画面については、週刊ファミ通9月8日号にて掲載予定)。

会話には戦闘中のものと、それ以外のものがあり、戦闘中の画面には「援護しろ!」、「集まれ!」、「撃て!」などといった戦闘を進めるうえで役立つものが表示される。非戦闘状態のときには場合によって40種類から50種類に及ぶ会話が認識されるような仕様になっており、好きなタイミングで仲間に語り掛けることで、さまざなリアクションが発生する。会話の中には「愛している」といったものもあるそうで、女性キャラクターがどんな反応を示すのか興味深いところだ。

 今回のデモプレイは、駅のホームから構内に侵入し、未発表のゴリラ型のボスと対戦するところまで進んで終了となった。出現する敵ロボットには、もっとも出会う頻度の高いアサルトシューターのほかに、重装甲のゴーレム、名称不明の四つ足のロボットなどがいたが、E3のときと同じく驚いたのが、その精巧なデザインとリアリティーのある挙動だ。こちらの銃弾が当たってボディが破壊されたときのビジュアルの変化は非常に細かく作り込まれており、実際に存在する工業製品であるかのような錯覚を覚えるし、手足を破壊したときの動きにも説得力がある。なかなか1撃で仕留めることは難しそうだが、それだけに臨場感のあるロボットとの戦闘の感触が得られることだろう。

EY5F3rgm3UHDWtZN7f3kw25hL5VsGk3J
HV4rs7tQ884P1YkLM8XgrBrKu7151qg2
lDI2MCN9l8DqZj4TAPyAo335Imt3RX6z

●ディレクターの佐藤大輔氏に直撃インタビュー

 『龍が如く 見参!』、『龍が如く3』などのディレクターとして手腕を振るい、本作でもディレクターとして新たな境地に挑んでいる佐藤大輔氏。そんな氏に、今回のデモプレイについての話を聞いた。

――改めて作品のコンセプトを教えてください。
佐藤氏 この作品でやりたいことは、いっしょに戦う仲間たちとのコミュニケーションなんですよね。これまでゲームで遊んでいて、NPCに文句を言いたくなる経験をしたことは多くの人が持っていると思うんです。そんなときに、NPCに「バカ野郎!」みたいなことを言うとちゃんとリアクションが返ってくるというような内容を目指して、開発を進めています。

――今回の出展に関して、ヨーロッパでの反応はいかがですか?
佐藤氏 ヨーロッパのプレスに信頼度の要素を説明していくと、これまでのシューターとの違いが明確になって非常に興味を持ってもらえますね。食い付きは悪くないと思います。

DSC_0038

――先日のE3とは別のステージでのデモプレイでしたが、開発状況はいかがですか?
佐藤氏 NPCのAIなど、僕らとしてはまだまだ満足していない部分も多いですが、E3のバージョンと比べるとかなりよくなっていると思います。正直、E3のときは至らない部分も多かったのですが、今回のバージョンはかなり製品版の目途が立つ内容に仕上がりました。

――信頼度は上がったり、下がったりするんですか?
佐藤氏 そうですね。よく聞かれるのが、「信頼度は選択肢でノーを選ばなければ上がるんでしょ?」ということなのですが、僕らの作りかたはちょっと違う。ある選択肢を選ぶとべつのミッションが発生するのですが、そのミッションを無事にクリアーすることが重要なんですよね。自分の腕前や戦況を考えて会話の受け答えをしないと、ミッションが達成できずに信頼度は下がってしまう。無理難題を安請け合いすると確かに一時的には少しだけ信頼度が上がるんですが、結果的にはよくない結果を招くんです。

――戦闘状態以外の会話も信頼度に影響するのでしょうか?
佐藤氏 少なからず影響します。非戦闘時にもいろいろな会話が発生して、ほかのNPCキャラクターの生い立ちや好み、前の戦闘についての感想などが語れたりするのですが、そうした会話での受け答えも大事な要素になってきますね。

――信頼度によってストーリー自体が変わったりはしないのですか?
佐藤氏 大きな流れは変えられないのですが、エンディングまで到達すると信頼度によっていくつかの分岐が生まれます。プレイスタイルの自由度は高いですが、基本的には、より多くの仲間のを高めることがいいエンディングを迎える条件となります。ちなみに、いっしょに行動できる仲間は全部で7人出てきますが、場面によって連れ歩ける人数は変わります。どの場面に誰を連れて行くかによって発生するRipple Linkが変わるので、1度のクリアーした後も何度も遊んでみてほしいですね。

――1度のクリアーにはどのくらいの時間を想定していますか?
佐藤氏 スムーズに進めて10時間くらいでしょうか。ただし、かなりの数のRipple Linkや複数のエンディングを用意していますので、すべてを見ようとするとかなりのボリュームになりますね。

――ヘッドセットでの音声認識が特徴の作品ですが、ソフトとの同梱版などは発売されるのでしょうか?
佐藤氏 いろいろと考えていはいますが、まだはっきりとしたことは言えません。ただし、僕らとしてはぜひともヘッドセットで遊んでほしい作品であることだけは間違いないです。夜中にひとりで「愛してる」みたいなことを言うことに抵抗のあるユーザーもいるとは思いますが、そこはあまり意識しすぎないで気楽に遊んでください(笑)。ゲームを遊んでいると思わずNPCに対して出てしまう、「邪魔だよ、どけよ!」みたいな悪態までをちゃんと拾ってゲームに反映できる作品を目指していますので、どうか期待してお待ちください。