●お互いに高め合うARTERY VEINの魅力

 声優の今井麻美&喜多村英梨によるユニット、ARTERY VEINの3枚目のシングル『パンドラの夜』が、2011年8月24日に発売される。同曲は、2011年9月1日に発売予定のPSP用ソフト『コープスパーティー ブックオブシャドウズ』のエンディング曲にもなっている曲だ。今回は、そんなNEWシングル『パンドラの夜』について、ARTERY VEINのふたりに語っていただいた。

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▲ARTERYさんこと喜多村英梨(右)と、VEINさんこと今井麻美(左)。

――8月24日にARTERY VEINの『パンドラの夜』が発売になります。まず、同曲を聴いたときの感想を伺えれば。
喜多村英梨(以下、喜多村) ARTERYの喜多村です。相も変わらずARTERY VEIN節炸裂で、とても凛としたライブ感のあるサウンドに仕上がっているというな、という第一印象でした。『コープスパーティー ブックオブシャドウズ』のエンディングテーマに起用されているのですが、エンディングと言えども前向きな躍動感のある雰囲気が、サウンドや詞から受け取っていただけるような仕上がりになっていたんです。そこへさらにボーカルをレコーディングすることで、ゲームの看板としても自信を持ってお届けできる作品にできるだろうな、という期待でいっぱいになりましたね。
今井麻美(以下、今井) まだデモの段階の曲を聴かせていただいたときにすごくステキな曲だと思ったのですが、レコーディングのときには肉付けされて曲のアレンジが仕上がった状態だったんです。それがホントに素晴らしく、同じメロディーなんだけれど生まれ変わったと感じられたんですね。いわゆる“ARTERY VEINっぽさ”をアレンジとして曲に込めるとこうなるんだな、ということを体感できたので、“音楽っておもしろいな”と改めて感じられる曲でした。私はARTERY VEINのVEINさんとして歌わせていただいているので、躍動感のある雰囲気+表面的には気持ちが冷めているように見えて、じつはアツい想いを持っているという空気を意識してレコーディングに臨ませていただきました。曲が仕上がったときにARTERYさんの燃え上がるような歌声とVEINさんの歌声がうまく溶け合っていて、とても素敵だと思いました。

――おふたりは『コープスパーティー ブックオブシャドウズ』にも出演されていますが、自身が役として参加している作品のエンディングを歌うというのは意気込みが違うのでしょうか?
喜多村 お互いにARTERY VEINとしてのキャラクター性、イメージとはまったく正反対の役を演じさせていただいているんです。VEINさんとあゆみはぜんぜん似てないな、と思いますし、自分が演じている由香というキャラクターとARTERYさんは似ても似つかぬキャラクターなんですね。そういう意味では曲は曲として、芝居は芝居として『コープスパーティー』というタイトルで、ふたつのフィールドをいただいている感覚が非常に強いので、おもしろかったですね。ぜんぜん違うキャラクターを演じているからこそ、ARTERY VEINとしてやらなければいけない目標というのも、お互いに確立しやすかったと思います。作品の色やストーリーをある程度知っているので、感情だったり、ニュアンスをつけやすかったということもあります。自分の役ではないですけれど、あゆみというキャラクターが、どんな物語を描いていくのかをなんとなく知っていたので、レコーディングでVEINさんが歌っているときに、あゆみというキャラクターのテーマソングになりえるような“悲痛な妖艶さ”を感じました。VEINさんはクールで、どちらかというと無機質なところが非常に立っているので、自分は逆にアツい歌を歌うことができたんです。それが今回は、さらに『ブックオブシャドウズ』での悲しみとか切なさという世界観がVEINさんらしい妖艶なハーモニーで表現されていて、VEINさんの歌声にグッと支えられているな、という想いでサビなんかもレコーディングしていましたね。
今井 前作の『ブラッドカバーリピーティッドフィアー』のときにARTERY VEINとして初めて大役を任されて、ゲームのエンディングを歌わせていただいたんですが、そのときはキチンと正解ルートに行かないと聴くことができなくて、自分の腕によっては聴けないっていう恐怖がつきまとっていたんです(笑)。自分もプレイさせていただいて最後までクリアーしたんですが、私は怖いのが苦手なので、まずは怖さに向き合うところから始めて、どうにかしてARTERY VEINの曲を「聴くぞ! 聴くぞ!!」というその一心でプレイをしていたのを思い出しました(笑)。今回もうれしいことにARTERY VEINとしてエンディングをお願いします、というお話をいただいたときに、“あのときの曲が皆さんに受け入れていただけた結果なのかな”と思って本当にうれしく思いました。前作に比べて躍動感のあるメロディーラインだったので、これで完結という雰囲気ではなくて、つぎにつながる期待が感じられるような曲になっています。そういった意味でもまた「ARTERY VEINをよろしくお願いします!」と声を大にして言いたいところでございます(笑)。
喜多村 ございます!

――ARTERY VEINのおふたりは基本的にいっしょに収録をされているということですが、これまでの収録ではサビの、メインメロディー部分を歌う方が先に歌うというレコーディングのされかただったと思います。『パンドラの夜』ではどちらが先に歌われたんですか?
喜多村 今回は、ARTERYが先でしたね。

――先に歌う、歌いやすさとか歌いにくさってあるんですか?
喜多村 不思議な感覚で。どっちかがハモり担当という感じのユニットではないんですよ。主線が入り交じるというか、本人たちにしてみれば、もともとどちらかが主線だと思って歌っていないという部分もあります。お互いが思いの丈をぶつけあって、そのままいいものができちゃったというのが、毎回の収録の印象ですね。たとえば息を合わせて、尺を合わせるというお互いの呼吸を合わせなければいけないところは、多少なりとも出てくるんですが、基本的にARTERY VEINのサウンドは自分が持っていない引き出しのぶつけ合いだったりもするんです。デモをもらって自分のパートをイメージして練習したうえでレコーディングに臨むと、VEINさんがさらに花を添えてくれるというか。芝居をやっているのと同じで、相手がいるからこそ、自分が思わぬところでいいものを返せたという感じで歌えている感じがしています。勉強になるという意味合いのほうが強いですね。いちアーティストとして今井さんを尊敬していますので、レコーディングを聴きながら、こういうニュアンスの付けかたを自分もしたいな、と思うこともありますし。相手のレコーディング風景をコントロールルームで見たり聴いたりしているので、そういう意味ではCD作り体験教室入会、みたいな(笑)。
今井 たしかに、自分が歌うとき以外でレコーディングスタジオに行くことがないので、すごくレアな体験だと思います。喜多村さんも私もソロ活動をさせていただいていますけれど、やはり誰か別の方が歌っているのを、スタッフさんのいらっしゃるコントロールルームのほうで聴くということは絶対にないので。自分が入っちゃうと聴けないですし、ブースから出ちゃえば誰も歌わないですからね(笑)。だからARTERY VEINでいっしょに録らせていただけるというのは、いろんな意味で刺激がありますよね。喜多村英梨という人が収録している姿を、外から聴いたり、見たりすることは本当に勉強になりますし。ありがたいシステムだな、と思っています。

――どちらが先に録るということではなくて、ふたりで収録するということが重要というわけですね。
今井 でも、気持ち的にVEINさんはすぐに譲るタイプなので、「いいよいいよ、先に歌いなよ」ってすぐに言っちゃいます。まわりからは「どっちでもいいよ」と言われるんですけれど、「やっぱりARTERYさんが先に歌わないとね」って(笑)。「本当は先に歌いたくないだけでしょ」って言われるんですけれど、違います! ARTERYさんに先に歌ってもらいたいと思っているのが、VEINさんです!
喜多村 言わなきゃ、そう思われないのに(笑)。

――(笑)。『パンドラの夜』について気に入っているフレーズはありますか?
喜多村 サビ頭の“君に聴こえている?”のメロディーラインがカッコよくて、すごく好きですね。レコーディングしているときも悦に浸っちゃうというか(笑)。すごく気持ちよく歌えていますね。ふたりでハモっているところでもあるので、バシッと頭からキメるぜ、という感じになっています。今回も“儚い”、“響く”など、ARTERY VEINらしい歌詞がふんだんに散りばめられているので、どれをとってもARTERY VEIN節という感じです。
今井 歌詞に関してもメロディーに関しても迷いがないというか、聴いただけでARTERY VEINらしさがにじみ出ているな、という印象をとても受けます。こういう雰囲気が好きな方には、とても気に入っていただける曲だと純粋に思いますね。自分自身、いろんな意味で気に入っているフレーズは“パンドラの夜”という言葉です。じつは、練習しているときにずっと“パンドラの箱”と言っていて(笑)。“箱”だとすごく歌いにくいんですよ。今回ARTERYさんが先に歌っているときに“パンドラの夜”とカッコよく歌っているのを聴いて、「夜だ! 夜!!」と気づいて(笑)。しばらくは“パンドラの箱”って言ってしまいそうになるのをずっと堪えていました(笑)。いまは、ちゃんと“夜”でなじんでいるんですが、その出来事がすごく印象に残っています。

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――続いて、カップリングの『ただ一つの物語』ですが、歌われてみた感想は?
今井 歌詞が少ないな、と思いました(笑)。ARTERY VEINでこんなに少ないの初めてですよね。大丈夫? 足りてないかな? と思って最初は心配になりました。
喜多村 私は、この曲が『コープス』のエンディングでもいいな、という第一印象でしたね。ゆったりと、でも刹那に揺れた感じのサウンドが、言葉が少なくても想いを伝えられる曲だと感じました。『パンドラの夜』と合わせて、このCD1枚で『コープスパーティー』色を感じられそうです。実際には、そういうつもりで作っているわけではないと思うのですが、それぐらい『コープス』の世界に入り込める曲調で、自分的にもすごく好きです。

――気に入ったフレーズなどはありますか?
今井 2番の頭の歌詞が最初読めなくて。
喜多村 読めなかった!
濱田智之プロデューサー(以下、濱田P) 病葉(わくらば)って読むんだけれど、みんな知らないかな?
今井 すみません。私は勉強不足で知らなかったです。
喜多村 ふだん使わないじゃん!

――どういった意味なんですか?
濱田P 字面のとおり、病気になった葉っぱです。何かしらの病気になって、もう落ちちゃう葉っぱですね。
今井 初めて聴いた言葉だったので、自分でも勉強不足で情けない話だったんですが。
喜多村 仮歌の人が何て歌ってるかわからなかったんですよね(笑)。
今井 (笑)。どうしてもわからなくて、フリガナもふっていなくて。レコーディングのときに読みかたを伺って、わくらば……なんかサクラバみたいですね。プロレスラーみたいって(笑)。今回、ひとつ勉強できたなと思って、家に帰ってから辞書で調べちゃいましたね。ある意味印象的な言葉だな、と。

――喜多村さんは?
喜多村 同じくですね。ただ、私のパートじゃないので、黙ってればバレないと思って(笑)。
今井 そう! ズルいの。「これ仮歌さん何て歌ってるのかなぁ?」って聞いても……。
喜多村 「いいから歌いなよ、早く歌いなよ」って(笑)。でも、ひとつひとつの曲に対してパンチの効いたフレーズがあるからこそARTERY VEINだな、とも思いますし。ちょっと中二くさいというか(笑)。それがあるからこそ入り込みやすいんだと思うので、私はすごく好きな歌詞ですね。

――今回、ジャケットのイメージが一新されましたが、どんな意図があったんでしょうか?
今井 じつは『ただ一つの物語』の収録のときに、「そろそろジャケットについても話し合わないとね」という話が出まして。ARTERY VEINってみんなで話し合いながら作っているユニットでもあるので、レコーディングが全部終わったときに、衣装についてみんなで話し合っていたんですよ。そうしたら、「じゃあ、いまから買いに行く?」みたいなノリになりまして(笑)。けっこう勢いで決めた部分があったんですが、その勢いがあったからこそ、いままでとは違ったイメージのものにチャレンジできたのだと思います。『ただ一つの物語』のレコーディングは本当に楽しくて、スムーズにいって、その流れのままだったこともあって、よりいっそうイメージが新しいものに対して目が向きやすくなっていたのかな、と思います。ですから、今回のお衣装は喜多村さんと私とで実際にお店に足を運んで、あーでもないこーでもないと……。
喜多村 試着したね、いっぱい(笑)。
今井 もう、お店の人に協力してもらって、閉店間際のお店で完全にファッションショーみたいな感じでしたね。ふたりで着まくって決めたお衣装ですね。
喜多村 いままでARTERY VEINというと黒とか、濃い色をイメージしていたんです。それはもちろん、自分たちも好きでやっていたんですけれど。ただ今回は、私が勝手に『パンドラの夜』というタイトルから、“パンドラの箱”というイメージが強くて、“マハラジャ?”、“砂漠?”みたいな漠然とした印象を持っていたんです。それでゴシックな雰囲気とは違う衣装を纏いたいな、と。そんななかで今井さんが、「白とかでガラっと反対方向行く?」と言ってくれたんですよ。ただ、真っ白というよりは、汚れていたり、戦ったあとのボロボロになった雰囲気が出たほうがかっこいいんじゃないか、と。そういったイメージからお店を選んだりして。だから、今回は衣装を用意する段階でも非常に楽しめましたね。ARTERY VEINの新しい見せかたをみんなで考えられたかな、と思います。撮影のときもVEINさんが黒じゃない衣装を妖艶に纏っている姿を見て、雰囲気はいつもと違うけど、VEINさんだな、と思いましたね。これはこれで写真集が出せるんじゃないかな、というぐらい全身すごくキメていますので、何かの機会に皆さんにお披露目できるといいな、と思っています。

――今回も発売記念イベントがあるそうですが、ファンの方の前でふたりでいっしょに歌われるときは、どんな心境なんでしょうか?
今井 めちゃめちゃ緊張します! ソロでやるときの10倍緊張しますね。ARTERY VEINの曲は、サラっと歌っているようでホントに難しい曲が多いんです。音程やリズムを取る音がすごく静かだったり、ハモりだけで聴かせないといけない部分があったり。とくに発売記念イベントなどだと、ライトなどの演出で誤魔化せない空間が多かったりするので、本当に緊張しますね(笑)。ただ、歌う前にすごく緊張しているんですが、実際に歌うと本当に気持ちいいんですよ。ARTERYさんとVEINさんの声ってぜんぜん声質が違うのに、合わさると不思議と合うなっていう印象が強くて。歌っているとすごく楽しいけれど、前日は眠れないぐらい緊張しています(笑)。
喜多村 ARTERY VEINは、今回の曲はハモりだけだから大丈夫みたいなことがないユニットなんです。引っ張っていくポジションが各々に絶対あって、ある意味両方ともメインボーカル。その分、ひとつ間違えてしまうと全部ぐちゃぐちゃになってしまうのもARTERY VEINの難しさだなと。キメきらなきゃいけない世界観、みんなが大事に作ってきた曲なのでクオリティーも高いものをしっかり聴かせたいという想いもあって、生のときはちょっとでも間違えて引っ張らないようにしようという“マイ準備”の緊張がすごいですね。リハのときまで緊張していて(笑)。
今井 「もう1回やっとく? もう1回やっとく?」と言って、リハでめちゃめちゃ歌うんですよね(笑)。それで疲れちゃったり(笑)。
喜多村 本当にそんな感じで、リハの最中は完全に“今井と喜多村”になっているんですよね(笑)。ただ、本番は今井さんがビシッとキメてくるんです。イベントのたびに、そんな今井さんが隣にいる体験をつぎに活かしたいと思ったり、自分自身もっと向上しなきゃ、と思うんですよ、絶対に。なので、本番はなんだかんだでうまくいっている印象ですし、つぎはこの曲をさらによく歌えそうとか、大きい舞台で歌ったときにもっと違うパフォーマンスができそうという自信が生まれるので、いつかARTERY VEINでまたイベントをやりたいな、とイベントのたびに再確認していますね。

――最後にひと言ずつメッセージをいただければ。
今井 1枚目と2枚目の期間がわりと時間が空いていたんですけれど、2枚目から3枚目があっという間に発売ということで、皆さんからの期待というものや、流れというのをとくに感じています。今回の3枚目のシングルが皆さんのお手元に届くよう、祈っております。まだぜんぜん決まっていないですけれど、いつかアルバムを出せたらいいなと思っているので、それぐらい皆さんに期待していただけるとうれしいです。ぜひ、たくさん聴いてください。
喜多村 ARTERY VEINとしてのCDは気づけば3枚目ということで、非常にうれしく思っています。よくよく考えたら全部のCDにタイアップがついているというのもすごいことだなと私は思っているんです。ARTERY VEINのコンセプト自体、かなり制限がありそうなんですけれども、毎回同じにならないように、つねに新しいものを安定のクオリティーで見せていくということをみんなで目指して駆け抜けたら3枚目ができていたという感じでした。今後のARTERY VEINがどんな魅力を見せていけるか、注目していただければと思っています。よろしくお願いします。

■パンドラの夜
発売日:2011年8月24日発売予定
価格:1260円[税込]
発売元:5pb.
販売元:メディアファクトリー
【収録曲】
01. パンドラの夜
作詞・作曲:濱田智之 編曲:悠木真一
02. ただ一つの物語
作詞・作曲:濱田智之 編曲:悠木真一
03. パンドラの夜 - off vocal -
04. ただ一つの物語