●B・F……G?

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 id Softwareの輝ける歴史の中で、ジョン・ロメロ、ジョン・カーマック、アメリカン・マギーといったFPS(一人称視点シューティング)のスーパースターの影に隠れてしまいがちだが、クリエイティブ・ディレクターのTim Willits氏はid Softwareの歴史を知る重要な人物だ。入社したのは1995年。インターネットで配布した自作の『DOOM』のマップが有名になってのことというのが古き良き時代を思い起こさせるが、以降、『The Ultimate Doom』以降の『Doom』や『Quake』の全作に関わってきた。そんなWillits氏がいま関わっているのが『Rage』だ。2011年8月4日にテキサス州ダラスで開幕したid Softwareの祭典“QuakeCon 2011”で、Tim Willits氏に『Rage』についてインタビューを行った。

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――id softwareは今まで少数精鋭で各作品を制作していたと思うのですが、『Rage』では何名くらいで制作しているのでしょうか?

Tim Willits(以下、Tim) 『Rage』は64人で開発しています。そして、つぎの『Doom』プロジェクトには、もっと多くのスタッフがいる。総勢で150人ほどかな。でも、少数精鋭で開発していたときのid Softwareの精神は維持しているよ。

――『ウルフェンシュタイン3D』以降、『DOOM』シリーズでは火星を舞台に、『Quake』シリーズでは地球外の惑星が舞台でした。今回の『Rage』で、なぜidは地球に帰ってきたのでしょうか?

Tim 乗り物を使った戦いを最初に考えていたんだ。マスタングのような強靭なクルマ+ガンアクションとなると、やっぱり地球が舞台だろうということになった。でも、そこにさらにSFの要素を加えたかったので、隕石の衝突による大災害の後の地球という設定にしたんだ。

――ところどころ『Doom』や『Quake』シリーズを彷彿とさせる印象を受けました。特にバンディッツと呼ばれる敵の中には、『Quake II』と『Quake 4』に出現したストログに似ている連中がいましたね。過去のシリーズのファンの目線を意識した部分はあるのでしょうか?

Tim イエス。id softwareのクラシックなシューターこそがベストだと自負しているから、エッセンスとして『Rage』のカーアクションや物語に盛り込んでいる部分もあるよ。

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――id softwareのタイトルで、乗り物を使った戦闘を取り入れるのは今回が初めてです。なぜカーアクションを盛り込もうとしたのでしょうか? やはり物理演算を見せたかったという狙いもあるのですか?

Tim 物理演算を使いたかったのももちろんあるけど、いざ作ってみると、思っていた以上にハードな作業が要求された。だから、レーシングゲームを制作している開発者をもっと尊敬するようになったね(笑)。さて、ジョン・カーマックの作ったメガテクスチャー技術は大きなエリアを自然に表現することを可能にした。そこで色々検討した結果、乗り物を利用したゲームがベストだと判断したんだ。しかもカーアクションといってもリアリスティックな物ではなく、アクション性の高い今のようなアクションにね。

――ゲーム中に使用できる武器が多数あるのですが、何か『Doom』や『Quake』で登場した武器がサプライズで登場したりしませんか?

Tim いくつかのサプライズは用意しているよ。もちろん、プレイヤーが発見しなければならないけどね。クラシックなid softwareに登場する武器はショットガン、マシンガン、ロケットランチャーや、Big-Fuc……ええと、“拡散パルスキャノン”などを用意している。武器には弾薬の違いがあって、たとえばショットガンでは4種類の異なる効果を得られるので、状況に応じて様々な選択をすることができるよ。

――サプライズってことは、イースターエッグ(制作者が遊びで仕込む隠し要素)ってことになるんでしょうか?

ティム (周囲を確認したうえ小声で)イエス。

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――『Quake』や『Doom』といったシリーズ作品は、ハードコアなマルチプレイヤーFPSという側面もあって、世界的に支持も厚いです。ですが、『Rage』では、ビークルに乗り込むカーアクションバトルだけがマルチプレイヤーでの対戦に採用されています。

Tim 素晴らしい質問だね。『ウルフェンシュタイン』、『Doom』、『Quake』との差別化をしたかったんだ。同じものは作りたくなかった。そのおかげでストーリーの幅を広げることに成功し、深い意味のあるものとすることができた。今回『Rage』では、乗り物の楽しさを感じて欲しかったんだ。

――ちなみに、過去のid Software作品のPC版では、プログラムをユーザーが改造し、別の物を作り上げるMOD文化がありますが、そちらはサポートする予定はあるのでしょうか?

Tim PC版? イエス!(編注:『Rage』PC版は日本では発売未定)


――『Rage』はまもなく完成ですが、その次の予定は?

Tim 次? 『Doom 4』だよ! まだ何もしゃべれないけどね。

――個人的に初代『Quake』のリメイクや続編も作ってくれると嬉しいのですが、いかがでしょうか?

Tim 『Quake』は大好きだし作りたいね。『Quake』は世界で最初にシェアウェアを導入して大成功したから、いい思い出しか持ってないんだよね。うーん、でも続編やリメイクを作るにしてもすぐには無理だし、いまは余裕もないからね。

――まず最初に『Rage』を売らないといけませんしね。

Tim うむ! 最初に『Rage』をリリースし、つぎに『DOOM 4』、その次は売り上げによって『Rage2』になるかもしれないな。そのあと考えてみるよ(笑)。

――ありがとうございました。

Tim サンキュー!

(聞き手、写真:スオミ松崎、構成:編集部)