グラビティゲームアライズからプレイステーション5、プレイステーション4、Nintendo Switch、PC(Steam)向けに発売予定(発売日未定)の『神箱 KAMiBAKO ‐Mythology of Cube‐』(以下、『神箱』)のレビューをお届けする。

 本作は、クラフト、パズル、バトルの3つのジャンルが組み合わされたワールドクラフトRPG。ファンタジー世界を舞台に広大な大地を切り開きながら冒険を楽しむことができる。

 一見、ふつうのファンタジー世界を舞台にしたRPGに見えるが、本作の特徴は何といっても複数のジャンルが組み合わされていること。

 ゲームを構成する要素として複数のジャンルが組み合わされていることはあるが、本作では3つのジャンルがどれもメインを張れるくらいに重要かつ作りこまれている''作品だ。

 なお、本作はSteam版とPS5版、PS4版で体験版が配信中。本稿を読んで興味を持たれた方はぜひ体験してみていただければ幸いだ。

『神箱 - Mythology of Cube -』 をAmazon.co.jpで検索する PS5/PS4『神箱 KAMiBAKO - Mythology of Cube -』(PS Store)

主人公は“修復者”。異世界転生……ではなくて

 本作の舞台となるのは、広大な森林や険しい山脈が広がるゾフィール大陸。そこで暮らす人間は5つの国を築いて共存・繁栄していたが、あるとき発生した“大分断”によって、各国が孤立するように分断されてしまう。

 さらに分断された土地では大きな立方体の穴が開く現象“断片化”が発生。その穴の中からモンスターが現れて、各国の往来が難しくなってしまった。

 各国の往来が難しくなってしまったことで、“大分断”や“断片化”の原因究明や解決方法を協力して模索することもできなくなってしまった状況を見て、女神は“断片化”を修復できる“修復者”を各地に派遣。

 そして、プレイヤーは“修復者”のひとりとして、世界の分断を修復する旅に出ることになる。これが本作のあらすじだ。

 ゲームはプレイヤーが目を覚ますところから開始。目の前にいて女神がいて召喚されたとあれば異世界召喚……と思いきや、もともとその世界に住んでいて召喚されただけ。

ワールドクラフトRPG『神箱』レビュー。クラフト、パズル、バトルが1本で遊べる贅沢感。世界を作るのは自分だ!
本記事は女神クロエムを信仰するグラビティゲームアライズの提供でお送りします。

 なので、プレイヤーにチート能力なんてものはあるはずもなく、持ち前の力を使って修復の旅を始めることに。

 もし、チート能力をもらったりしたら、ゲームとして簡単になりすぎておもしろみがなくなりそうなのでこれでよさそう。唯一もらった杖も修復に必要だからという理由なので、異世界転生というよりも勇者の旅立ちという言葉がしっくりくる。

ワールドクラフトRPG『神箱』レビュー。クラフト、パズル、バトルが1本で遊べる贅沢感。世界を作るのは自分だ!
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旅のおともは妖精(?)のイリス。

 旅をすることになるゾフィール大陸はマス目状のフィールドで区切られている。

 一見、平らに見えるが、新しいマスに入ることで立体的な森や山がモリモリ現れる。基本的にマスに入らないと詳細はわからないが、平らなマスの状態でも木や山が描かれているので推測することは可能だ。

 歩く、足を踏み入れる、マップがモリモリ盛り上がる。スクリーンショットでは感じが伝わりづらいが、これが地味に楽しい。ワールドマップをウロウロする楽しさ、RPGならではの「この先はどうなっているんだろう、見てみたい!」という欲求がより強まるし、楽しめる。

 発見の喜びというか旅の楽しさというか、探索して詳細を知りたい気持ちをどうしても抑えられなくなってしまう。平らなマスの時点で何もわからないよりも、少しでも推測ができるぶん、「実際はどうなっているのだろう」という気持ちにさせられてしまう。ニクイ作りだ。

ワールドクラフトRPG『神箱』レビュー。クラフト、パズル、バトルが1本で遊べる贅沢感。世界を作るのは自分だ!
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移動は隣り合っているマスにのみ可能。山岳地帯では歩みが遅くなるなど、地形によって歩くスピードが変わる。これにより食料消費量が変わって、ルートによる旅の難易度の差が表現される。

 クエストを受注→達成することでストーリーが進むというのが本作の流れ。クエストは道や町にいる人と話すことで受注できる。

 序盤をプレイした段階では、クエストの内容は“○○を倒せ”や“○○を集める”といったものが多い。ストーリーが進むにつれてより強力な敵が現れたり、高度なクエストとなっていくのだろう。

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 クエスト進行時には画面右上に目的が表示される。これで何をするべきか確認できるのは非常に便利。クエストごとに違う色の鳥のようなマークがナビのような役割を果たしていて目的地の方角や場所に表示されるので、どこに行けばいいのかもわかりやすくなっている。

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 複数のクエストを同時進行しているとき、クエストのマークが色違いになっているのは目的地を判別しやすくありがたい。

 ひとつひとつクエストを進行する人もいれば、複数のクエストを同時進行する人もいるだろう。筆者のプレイスタイルは後者なので、仕様の恩恵を最大限に受けられた。もちろん、前者のプレイスタイルでも目的地が見やすくわかりやすいので損してしまうことはない。

 そんなこんなで旅を進めていくうちに、必ず立ち寄ることになるのが各地に点在する村や町。宿屋やショップなどの施設のほか、クエストの受注ができるので、寄らずに旅をすることはできない。というか考えられない。

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本作には時間の概念があり、時間によって村や町の中にいる人の場所や人数が変化する。

 村や町でできることとして、とくに重要な要素が食料の購入。村や町の外にいると時間経過で食料が減っていき、なくなると強制的に町に戻されてしまう。遠くまで足を延ばしているときにそうなってしまうと目も当てられないので、購入できるタイミングでは忘れずに購入しておきたい。

 ちなみに宿屋やショップなどの施設の見分けかたは木の看板で名前が書かれているか。近くまで行くと“カランカラン”のような乾いた音が鳴るので、そこでボタンを押すと利用できる。

橋がなければ作ればいいじゃない。旅に便利な村も町も作っちゃえ!

 本作の重要な要素としてクラフトが用意されている。おもにできることは武器などのアイテムと建築のクラフトだ。

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クラフトといっていいのかわからないが料理も可能。料理を作れば、さまざまな能力アップ効果が得られる。

 武器のクラフトでは、素材によって異なる効果を持った武器を作れる。さらに、同じ素材を使ったとしても毎回同じ性能の武器が出来上がるとは限らない。素材を決めた時点では、“攻撃力1~6”のように表示される。具体的な値は作ってみてのお楽しみだ。

 同じ素材を使ったとしても、毎回仕上がりが違ってしまうことを現実で経験したことがある方もいるだろう。そういう意味では感覚として料理に近いかもしれない。料理という要素があるのに武器でのたとえに料理を使うなんて……。説明がややこんがらがってしまって恐縮なのだが、個人的にはこれがいちばんしっくりくるたとえだ。

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 また、パーティーの仲間を助手に設定するとボーナスを得られる。仲間によって得られるボーナスは違うが、プラスになるのは間違いないので積極的に助手を任命したい。選んだことでクラフトするのに必要な費用が高くなるといったこともないので安心してほしい。

 そうして武器のクラフトを行って上振れを引いたときは、性能もさることながらやっぱりうれしいものだ。

ワールドクラフトRPG『神箱』レビュー。クラフト、パズル、バトルが1本で遊べる贅沢感。世界を作るのは自分だ!
ワールドクラフトRPG『神箱』レビュー。クラフト、パズル、バトルが1本で遊べる贅沢感。世界を作るのは自分だ!

 だが、ここまではほかのゲームでも見ることができる範囲だろう。やっぱり、RPGのクラフトといえば、武器やアイテムを作るくらいでメインの要素ではないと思ってしまうかもしれない。

 しかし、それだけでは収まらないのが『神箱』のクラフト。壊れている橋を架けなおしたり、民家やショップなどを建てたり。果てには、好きなように村や町を作ることも可能だ。

ワールドクラフトRPG『神箱』レビュー。クラフト、パズル、バトルが1本で遊べる贅沢感。世界を作るのは自分だ!

 クラフトをする際に必要なのは素材だけ。すでにある町の建物を勝手に壊して作り替えたり、川の中に建物を建てたりなどはできないが、かなり自由に自分の好きな場所に好きな建物を建築できる。

 村や町を作る条件は、柵や壁などで囲われていて出入り口となる門があること、人が住んでいることのふたつ。柵や壁、門は建てるだけでいいし、人は民家を建てることで住み始める。クラフト以外に人を誘致するといったことは必要ない。クラフトだけですべてが完結するのは、面倒なことがなくてありがたい。

ワールドクラフトRPG『神箱』レビュー。クラフト、パズル、バトルが1本で遊べる贅沢感。世界を作るのは自分だ!
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 すでに存在している町のようにショップを作ればアイテムを購入できるし、木こり小屋や果樹園を作れば定期的に素材を入手できるようになる。

 いかにこの世界を冒険しやすく作り変えるか、いや“修復”していくかというのは、プレイヤーの手に委ねられているというわけだ。

 クラフトが苦手な場合は、町や村をつなぐ“辻馬車屋”だけでも建てておけば、町間の移動が非常に便利になる。こういった場所を多く作れば、それだけ移動時間の短縮やプレイする上の利便性が向上する。建てておいても損はないだろう。

ワールドクラフトRPG『神箱』レビュー。クラフト、パズル、バトルが1本で遊べる贅沢感。世界を作るのは自分だ!

 クラフトにこだわる人ならば、田舎の雰囲気に似つかわしくないような城塞都市やアカデミアと学舎が並ぶ学生街などを作ることも可能。クラフトはあくまで『神箱』を構成するひとつの要素にすぎないが、そうとは思えないほどしっかりしたものになっている。

 難点といえば、城塞都市などコンセプトを決めて作ろうとすると建てたいものが多すぎて広い土地がないと作れないこと。裏を返せばそれだけやれることが多いというわけだ。

ワールドクラフトRPG『神箱』レビュー。クラフト、パズル、バトルが1本で遊べる贅沢感。世界を作るのは自分だ!
建物の数を増やせば開発レベルがアップ。村から町、町から庄のように大きくなっていく。

“断片化”の修復は簡単&爽快なパズルで

 プレイヤーが旅をする目的である“断片化”の修復はパズルで行う。“断片化”の修復を行えるマスは、黒い正方形が浮いているので一目でわかるようになっている。

ワールドクラフトRPG『神箱』レビュー。クラフト、パズル、バトルが1本で遊べる贅沢感。世界を作るのは自分だ!
ワールドクラフトRPG『神箱』レビュー。クラフト、パズル、バトルが1本で遊べる贅沢感。世界を作るのは自分だ!
平らなマスのときには、渦巻きのマークの有無で“断片化”の修復を行うマスか判断できる。

 そのマスに到達すると始められるパズルをクリアーすると“断片化”の修復が完了する。パズルのルールは非常にシンプルで決められた手数以内に指定されたピースを一定数消すだけ。

 一度に動かせるピースはひとつで同じ色のピースをふたつ以上並べると消すことができる。しかし、動かしたピースと異なる色は揃えても消えないようになっている。つまり、消したい色のピースは最初に動かさないといけない。

ワールドクラフトRPG『神箱』レビュー。クラフト、パズル、バトルが1本で遊べる贅沢感。世界を作るのは自分だ!
ピースの色は全部で6種類あり、盤面は3×3や4×4などさまざま。確認できた限りでは5×5の盤面も用意されていた。

 中には動かすことができない邪魔なピースがあるパズルも。シンプルなルールでも、こういった要素があることで飽きずに続けることができるだろう。実際にそういった制限がある中で多くのピースを並べて消せるとかなり爽快で楽しい。

 さらにクリアーまでに消したピースの数に応じてスコアが記録される。ただ消すだけではなく、つぎにまとめて消せるように移動させているピースとは異なる色のピースも並べておけば、高いスコアを狙うことができるだろう。

 パズルとしてはシンプルなルールで難度も高くないが、高いスコア目当てにプレイしたくなってしまう。

ワールドクラフトRPG『神箱』レビュー。クラフト、パズル、バトルが1本で遊べる贅沢感。世界を作るのは自分だ!
ワールドクラフトRPG『神箱』レビュー。クラフト、パズル、バトルが1本で遊べる贅沢感。世界を作るのは自分だ!

 また、パズルは“断片化”の修復とマナを集める“マナ採取パズル”でプレイ可能。基本的なルールは同じだが、“マナ採取パズル”は制限時間内に消したピースに応じたマナを入手できる。

 マナは、おもにバトルで使用するもので戦局を左右するほど重要なもの。なので、“断片化”の修復だけではなく、マナを集める“マナ採取パズル”をプレイする機会も多そうだ。

スキルでの割り込みが要のターン制バトル

 本作ではシンボルエンカウントが採用されており、マス内にいる敵と接触すると戦闘が始まる。

ワールドクラフトRPG『神箱』レビュー。クラフト、パズル、バトルが1本で遊べる贅沢感。世界を作るのは自分だ!

 戦闘はターン制バトルとなっているが、ほかの作品で見られるようなターン制バトルと違うのがキャラクターの攻撃回数。よくあるのは、1ターンでキャラクターが攻撃できるのは1回まで。本作ではキャラクターのステータスに応じて攻撃回数が変わるようになっている。

 それに合わせてターンも一定時間の経過で進むようになっている。全員の行動が終了=ターン終了ではなく、一定時間経過=ターン終了という形だ。

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ターンは左下にある砂時計の砂がすべて落ちると終了。

 ステータスに応じて攻撃回数が変わるので、操作が大変だと思うかもしれないが、バトルはセミオートとなっており、攻撃は自動で行ってくれる。急いで行動を決める必要がないのはありがたい。

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 プレイヤーが操作するのは、ターンが始まる前に用意されている“修復者行動”。ここでは、スキルを使用するのに必要なマナを仲間に振り分けたり、アイテムでの補助ができる。

 ターンが開始すると攻撃は自動で行われるが、スキルはプレイヤーが任意で発動可能。発動させるとすべての攻撃に割り込んで効果を得ることができる。いつでも発動できるので、スキルが戦闘の鍵を握っていることは間違いないだろう。

 スキルの選択中には時間が止まり、敵から攻撃されるといったこともないので、ゆっくりと発動対象を決められる。スキルの発動をキャンセルできるので、間違って選択しても問題ない。本来の使いかたとは違うが一時停止の代わりとしても使うのもいいかもしれない。

ワールドクラフトRPG『神箱』レビュー。クラフト、パズル、バトルが1本で遊べる贅沢感。世界を作るのは自分だ!
ワールドクラフトRPG『神箱』レビュー。クラフト、パズル、バトルが1本で遊べる贅沢感。世界を作るのは自分だ!

 また、戦闘が終わったあとも所持しているマナは引き継がれる。スキルを使用すれば戦闘の難度を下げられるのは間違いないが、多用しすぎると本当に必要なときにマナが足りなくなるかもしれない。

 そんなときに役立つのが“マナ採取パズル”。マナが足りなくなったり、ボスなどの強敵と戦う前には“マナ採取パズル”でマナを入手しておくのが重要になるだろう。

ワールドクラフトRPG『神箱』レビュー。クラフト、パズル、バトルが1本で遊べる贅沢感。世界を作るのは自分だ!
ワールドクラフトRPG『神箱』レビュー。クラフト、パズル、バトルが1本で遊べる贅沢感。世界を作るのは自分だ!
武器によって使用できるスキルが決まっている。

 というわけで、ここまで『神箱』のシステムや序盤の展開を紹介してきた。個人的にもっとも楽しめたのが探索とクラフト。基本的に隅から隅まで探索したいので、詳細がわからない平らなマスというのは探索したい気持ちをそそられる。道がなければ、橋を建築して探索できる範囲を広げられるのも相性がいいと感じた。

 クラフト単体でもただ村や町を作るだけではなく、作ったものが旅に役立つので、作って終わりになりにくい。作れるものの種類も多いので、最初は旅を便利にするために作っていたのが、いつの間にか理想の町を作ることに目的が変わっていたときもあった。

 『神箱』は、クラフト、バトル、パズルの3つのジャンルが組み合わされたRPGということで、1本でさまざまな遊び方ができて非常にお得。このジャンルのいずれかにあまり触れたことなかったとしても、ひとつひとつは非常にシンプルなので、楽しむことができるだろうのではないだろうか。

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