【Toby Foxの秘密基地】連載コラム第5回 はじめての『RPGツクール』ゲーム/「トビーさんが返事をくれる?投稿企画」第2弾も募集開始!

 『UNDERTALE』と『DELTARUNE Chapter 2』の作者トビー・フォックスさんの連載コラム“Toby Foxの秘密基地”。

 月一回のペースで、トビーさん書き下ろしのコラムをハチノヨンさんの公式翻訳でお届けする週刊ファミ通とファミ通.com合同連載コーナー。今回はその第5回をお届けします。

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 “Toby Foxの秘密基地”の新企画「トビーが訊く」Vol.02募集開始

 今回のコラムと連動して、トビーさんから再び「読者のみなさんに訊いてみたいこと」として、コラムの最後に簡単な質問募集フォームを準備してあります。お題は“あなたが作った(作ろうとした)ことのある、オリジナルRPGについての思い出話”。もしお時間あるようでしたら、質問への回答をこのフォームから投稿してみてくださいね。

 集まった回答のいくつかには、後日コーナー内でトビーさんから直接お返事のコメントをもらって掲載させていただく予定です!

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トビー・フォックスさん。ご存じ『UNDERTALE』を制作したゲームクリエイター。アメリカ在住。現在は最新作『DELTARUNE』を開発中! 『ポケットモンスター ソード・シールド』、『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』などにも楽曲を提供。
「なんで僕が連載? 意味がわからない! でも、がんばって書いてみたらこうなりました」。
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【Toby Foxの秘密基地】連載コラム第5回 はじめての『RPGツクール』ゲーム/「トビーさんが返事をくれる?投稿企画」第2弾も募集開始!

第5回“はじめての『RPGツクール』ゲーム”

 僕も、僕の兄たちも、小さいころからずっと、「ゲームを作りたい」と思っていました。たとえば日曜日に教会へ行くと、すぐに退屈してしまう僕たちがお行儀よく座っているように、両親からよくお絵かき用の紙をたくさんわたされていたんですが、そこに、自分たちで考えた『ロックマンX』のステージのレイアウトなんかを描いたりして遊んだものです。

 僕は5歳で、当時はまだ『ロックマンX3』までしか出てなかったけど、現実的な子どもだったので、紙の一番上には『ロックマンX4』じゃなくて『ロックマンX7』と書いていました。『X7』が出るころには、カプコンさんが自分のゲームデザインを使ってくれるんじゃないかと思ったんですよね……。

 そんなある日、小学校から帰った僕は、兄たちからビッグニュースを聞かされます。僕たちが紙の上に作り出したゲームを本物のゲームにする方法を、ついに見つけたというんです。「ターン制バトル」という形式であるかぎり、望みどおりのものをなんでも作れるというそのプログラムこそが、『RPGツクール』シリーズでした。

 こうして僕たち兄弟はゲーム作りに取りかかり、僕もいくつか作ってみました。『トビーのぼうけん』、『トビークエスト』、『トビーのぼうけん2』……。でも、なぜかいつも中盤ぐらいで必ず行き詰まって、それより先を完成させることができませんでした。

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 一方、一番上の兄が作った『New Genesis』というゲームは、当時の僕たちにはプロ並みに思える出来栄えでした。

 早く新しいエリアを完成させてくれないかと、ワクワクしながら待ったものです。笑えるところとシリアスなところが絶妙にミックスされていて、「Roth(ロス)」というお笑い担当キャラが僕のお気に入りでした。ロスはアホなことばっかりしてるけど、じつは悲しいシリアスな過去の持ち主で、知られざるSF文明社会の出身で、じつは古代テクノロジーのあつかいに長けてて……とにかく、最高にヤバいキャラだったんです。

 アジアっぽいエリアで格闘家のキャラを仲間にすることもできました。そのキャラの名前は「ダン」といって、どこかで聞いたような名前の技(「コウリューケン」とか「ガドーケン」とか)を繰り出すことができました……。

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 そうそう! そのゲームには、僕もキャラクターとして登場したんですよ。緑色の海賊のグラフィックスで、サイドクエストにしか出てこなくて、ごく一部のシーンでしか仲間に加わらないお笑い系キャラだったんですが、動作アニメーションがめちゃくちゃ高速で、いつも落ち着きがないリアルの僕がよく再現されていました。

 この「緑魔道士トビー」、戦闘中に敵を「イラつき状態」にする能力を持っていて、そんなところにもリアルな弟っぽさが出ていました。そして、主人公(デフォルト主人公のグラフィックス素材をそのまま使用)の名前は、「Ralse(ラールス)」。のちに僕が作ったゲームに登場する「Ralsei(ラルセイ)」という名前は、このキャラクターから取りました。

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想像図
イラスト:tyy

 だけど、一番上の兄も、そのゲームを完成させることはありませんでした。3~4時間分ぐらいはできてたんですが、とにかく長いゲームで、制作に何年もかかってしまって……。そのあいだに兄も成長して、初期のころに作った部分に満足できなくなって……その結果、自分の作品に自信が持てなくなって、ゲーム制作自体をやめてしまったんです。

 結局、自作のゲームを完成させることができたのは、別の兄1人だけでした。TOONAMI(注※)で放送されていた『新機動戦記ガンダムW Endless Waltz』をみんなで観た日、兄はすっかり影響されて、『EndlessOpera(エンドレス・オペラ)』というゲームを作ったんです。

※アメリカのアニメ専門チャンネル「カートゥーン・ネットワーク」の放送枠の名称。日本のアニメ作品などを多く放送する。

 ただしスペルを間違えて、『Endless Oprah(エンドレス・オプラ)』になっちゃってましたけど。これじゃ、トークショーの司会で有名なOprah Winfrey(オプラ・ウィンフリー)さんの名前ですよね……。

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 内容は、彼が思いつくかぎりのありとあらゆるネタのパロディを寄せ集めた、じつにくだらないものでした。

 主人公はエルフの女の子で、邪悪な勢力によってろう屋に閉じ込められているシーンから始まります。その5秒後、突然「アメリカ海軍への入隊をテーマにしたとあるポップソング」のMIDIが流れだして、口の悪いちっこいウサギが看守たちを蹴散らし、主人公を救出します。

 ウサギはそのまま仲間になって、主人公と2人で近くにある孤児院へ向かい、そこの管理人が3人目のパーティメンバーになるんですが、この管理人、見た目はセーラームーンそっくりでした(ありとあらゆるグラフィックスをモデルとして使ってたので……)。

 そして、この孤児院に入るのがまた、めちゃくちゃ大変で……。

 建物の外の画面は縦にものすごく長くて、見た目がまったく同じ男の子のNPCが、50人ぐらいウロついてます。彼らは全員、主人公を最大速度で「追いかける」ように設定されていて、「わー! お客さんだー!」、「わー! お客さんだー!」と口々に叫びながら群がってくるので、身動きが取れなくなるんです。

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 BGMは、「ボーカルのテンション高めのとあるアメリカンロック」のwavファイルが、8秒分、2倍速でえんえんループしてました。群がってくる男の子たちは甘いものの食べすぎで落ち着きがなくなっていて、途中にある「抗糖分ボム」を発動させれば移動速度が落ちて、ついでに音楽の再生速度も0.5倍速にダウンする仕様でした。

 他にもくだらない要素が満載で、一部を挙げると……。

  • 敵キャラとして僕の兄が登場。一見、普通の「町の人」に見えるけど、体のパーツが個別のターゲットになっていて、頭と胴体と両腕と両足を1つずつ倒さないといけない。
  • ピカチュウと邪悪な独裁者を科学技術によって融合させた悪モノも登場。
  • 最強の敵たちがはびこるエリア、「M&M島」。ここでランダムエンカウントする敵は全部、緑のM&M。エンカウントするとボコボコにされる。
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 ……要は、ポッと思いついたジョークの寄せ集めですね。こんな調子だから、このゲームは永遠に続くように思われました。まさに、「エンドレスなオペラ」。

 ところがある日、兄はいきなりこれを完結させることにしたんです。

 味方キャラは全員、一瞬で最大レベル(LV 50)にパワーアップ。そのまま最後の試練に臨む、という流れになりました。それでも、一応ちゃんと最終エリアへ行けて、ラスボスも登場して、エンディングもあったんです。

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 僕たち兄弟が作っていたくだらないゲームが完成を見たのは、それが初めてでした。一番上の兄が作っていたものより短かったけど、そのとき僕は気づいたんです。

 「そうだ、僕たちはまだ子どもなんだ。ゲームを完成させたかったら、自分の力で作りきれるものを作らないと!」って。

 以来、その考えはずっと、僕の中にあります。

 当時の『RPGツクール』シリーズのユーザーたちはみんな、『オレ版ファイナルファンタジー』を作ろうとしていました。自キャラのレベルを50まで上げないとクリアできなくて、敵キャラリストの敵全員とバトルさせられて、本当に完結すればプレイ時間が20時間ぐらいになるような大作です。

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 だけど、兄が作ったゲームを見て、そんなのはムリなんだとわかった。以降僕は、自分が作るゲームの規模は小さめに抑えて、開発計画をしっかり立てるように心がけました。
 自分の能力を把握して、心と体の限界を超えない範囲で取り組むようにしてきた結果、そこそこの本数の作品を完成させることができました。

 だからみなさんも、ゲームは今すぐにだって作れるんですよ! 『ファイナルファンタジー』を作ろうとさえしなければね。

 ……で、結局、何が言いたかったかというと……カプコンさん、今度『ロックマンX7』を作るときは、僕とお兄ちゃんたちが考えたいいアイデアが……って、え!? もう『X7』作っちゃったの!?!?

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 みなさんは、子どものころにくだらないゲームを作ろうとして、結局完成しなかった経験、ありますか? 

 とくに、自分や友だちや、家族を登場させた作品。心当たりがある人は、ぜひ聞かせてください!

〜第5回 “はじめての『RPGツクール』ゲーム”  おしまい〜

※本コラムは週刊ファミ通3月23日号に掲載された内容と同内容になります。

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 というわけですので、トビーさんから読者のみなさんに訊きたいという

 “「あなたが作った(作ろうとした)オリジナルRPG」のこと”

 という質問について、想像でも実際に作ってみたものでもなんでもOKですので、ぜひ以下の投稿フォームから、トビーさん宛ての投稿としてお返事をつづってみてもらえたらとてもうれしいです。あなたのオリジナルRPG作りの体験談、ぜひトビーさんに伝えてみてくださいね。

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募集期間:3月24日(金)18:30〜3月29日(水)23:59まで

 集まった投稿のいくつかには、今回もまたトビーさんが直接コメントを返してくれます!  結果はコラム第6回にて掲載予定です(掲載回は変更になる可能性もあります)。こちらもどうぞ、お楽しみに!

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