2018年11月16日〜11月17日(現地時間)の2日間、アメリカ・ラスベガスで開催された『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FFXIV』)の大規模ファンイベント“ファンフェスティバル 2018 in Las Vegas”。初日の最後の演目として、ピアノコンサートが行われた。本記事では、その模様をお届けしよう。

 冒頭、『FFXIV』のサウンドディレクターである祖堅正慶氏と、北米コミュニティチームのMatt氏が登場。開演の挨拶を行った。

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ピアノコンサートには必ず正装で現れる祖堅氏(左)。すっかり見慣れてしまった。

 ピアノを演奏するのは、『From Astral to Umbral』や『Duality』といったアレンジアルバムでピアノアレンジを担当、演奏しているKeikoさん。そのほか、“ファイナルファンタジーXIV ファンフェスティバル2016 in TOKYO”や“FINAL FANTASY XIV ORCHESTRA CONCERT 2017 -交響組曲エオルゼア-”といったイベント、コンサートでも演奏を披露している。

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 1曲目は『紅の夜更け 〜クガネ:夜〜』。原曲のような、ゆったりとしたテンポで曲がスタート。Bメロでは要所で装飾符が入るなど、ジャジーな雰囲気を出していた。印象的だったのは、そのBメロから再びAメロに戻ると、メインの旋律が1オクターブ下で演奏され、右手は美しいアルペジオというアレンジになっていたこと。1コーラス終わったところで突如テンポアップし、まるで『鬨の声』といった雰囲気。後半はアドリブのフレーズが増え、一気にクライマックスへ。まさに“静と動”といったアレンジになっていた。

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 2曲目は『古傷 〜ギラバニア湖畔地帯:夜〜』。原曲もピアノを基調としているため、印象はとても近い。しかし、ダイナミックレンジの広い演奏、テンポの揺らぎ、溜めが心地よく、より情感がこもった演奏になっていた。改めて聞くと、サビ(コーラス)部分の、メインの旋律に合わせた左手のアルペジオが美しい(まるでショパンのよう)。原曲の完成度の高さがうかがえる。

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 3曲目は、ボーカリストのスーザン・キャロウェイさんを招いての『Dragonsong』。スーザンさんは、それこそ旧『FFXIV』から主題曲の歌唱を担当されている方で、スーザンさんの声は『FFXIV』の“歌声”であり、一瞬で場の空気を変えるパワーがある。『蒼天のイシュガルド』でのさまざまな思い出が蘇った人も多いのではないだろうか。

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 4曲目は『美の謀略 〜蛮神ラクシュミ討滅戦〜』。引き続き、スーザンさんが歌唱を担当。この曲では、なんとコーラス部分で祖堅氏とMatt氏がステージに登場。例の“海藻(かいそう)の舞”を披露した。スーザンさんの“魅惑の抱擁”に、すっかり支配されてしまっていた。

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 5曲目は『父の誇り 〜ヤンサ:昼〜』。この曲は祖堅氏の独壇場で、胡弓のフレーズを“オタマトーン”で演奏。前半はあえて音程を外して会場を沸かせていたが、個人的には、祖堅氏のような音感が備わった人が音を外すのは、案外難しいのではないかと思っている(むちゃくちゃにやるぶんにはいいが、ついつい音が正しくなってしまうこともあるはず)。後半は、なんと自身の“口”で胡弓を再現。これは、以前エピソードとして語られたことがあるが、『紅蓮のリベレーター』のティザームービーに胡弓のレコーディングが間に合わず、止むを得ず祖堅氏が口で“演奏”したものを加工して乗り切ったという事実があり、その再現だろう。祖堅氏は音符の符尾(ひげ)の形をしたパネルを手に持ち、オタマトーンになりきっていた。

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 6曲目は『龍の尾 〜神龍討滅戦〜』原曲はオーケストラ調で、ピアノアレンジはなかなか難しい曲。Keikoさんは、これを原曲よりもかなり速いテンポで演奏し、半音階のかけ下がりなども印象的に挿入して演奏していた。雰囲気的には、『英傑 〜ナイツ・オブ・ラウンド討滅戦〜』のピアノアレンジを彷彿させる。コーラス部分は一転、テンポを少し落とし、音数も絞って、主旋律をダイナミックに演奏していた。こういった曲をピアノアレンジに仕上げるのは、Keikoさんのミュージシャンとしての挑戦でもあるのかもしれない。それを、本人は楽しんでいるように見える。

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 7曲目は『宵の海 〜紅玉海:夜〜』。こちらも原曲に似た印象だが、譜割りが若干細かくなっている。主旋律にアルペジオが絡んだり、パッセージの追加によって変化をつけていた。

 8曲目は『Revolutions』。『紅蓮のリベレーター』の主題曲だ。スーザンさんの高域のビブラートがすさまじく、ピアノアレンジということも相まって一段と引き立つ。

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 ピアノコンサートのラストは『万世の言葉 〜禁書回収 グブラ幻想図書館〜』。祖堅氏が椅子を持って登場し、「Can I play with you ?(僕と演奏してくれませんか?)」とKeikoさんに尋ねると、「No!!!」と断られ、会場は大爆笑。「何を演奏するの?」とKeikoさんに聞かれ、祖堅氏は「グブラ幻想図書館をジャズでやりましょう」と提案。連弾が始まった。オーディエンスに目一杯サービスしながら演奏していた祖堅氏だが、原曲自体もジャズ調なので、テンションコードばりばり。逆に、コーラスの部分は8分のバッキングで、かなり軽快なアレンジになっていた。

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祖堅氏曰く、「まるで先生と生徒のよう」。
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演奏もうまくいき、ハイタッチ!

 今回、ほとんどの曲(アレンジ)が初披露ということもあって、あっという間に過ぎ去った1時間だった。今後のパリ、東京でのファンフェスでまたどのような変化があるのか楽しみなところだが、この素晴らしい演奏を何らかの形でファンに届けて欲しいし、アレンジアルバムの新作も含めて「お皿を早く!」と強く訴えて、このリポートを締めたいと思う。

セットリスト
M1:紅の夜更け 〜クガネ:夜〜
M2:古傷 〜ギラバニア湖畔地帯:夜〜
M3:Dragonsong (w/スーザン・キャロウェイ)
M4:美の謀略 〜蛮神ラクシュミ討滅戦〜(w/スーザン・キャロウェイ)
M5:父の誇り 〜ヤンサ:昼〜
M6:龍の尾 〜神龍討滅戦〜
M7:宵の海 〜紅玉海:夜〜
M8:Revolutions(w/スーザン・キャロウェイ)
M9:万世の言葉 〜禁書回収 グブラ幻想図書館〜 in Jazz(Keikoさん、祖堅氏の連弾)

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