SUDA 51&SHINJI MIKAMI'S COMMENT

須田 オープニングでは、ガルシアが自宅のマンションに着くと、寝室からポーラの悲鳴だけが聞こえてくるんです。ドアを開けると首を吊っているポーラのショッキングな姿が飛び込んできます。

三上 典型的なホラーの仕掛けですよね。

須田 ええ。このシーンは開発初期のシナリオの名残りですね。

三上 主人公が首を吊っているシーンから始まるヤツですね。それにしても本作のオープニングは須田さんの作品にしては、ものすごくわかりやすい導入になっていますよね? これまでの作品はもっと“行間を読ませる作り”だったと思います。

須田 はい。導入部分はなるべくわかりやすくなるように注力しました。『ダムド』の販売元はエレクトロニック・アーツで、ワールドワイドでリリースされることが決まっていましたので。欧米のプレイヤーにとってもっとも大事なのは導入部分で、そこを間違えるとゲームの世界になかなか入り込めないということで、気を付けましたね。

三上 最近のゲームの主流は、最初のほうにキャッチーだけどクエスチョンマークが付くようなイベントを用意してプレイヤーの興味を惹く手法ですが、『ダムド』の場合はもっとわかりやすい。自分の彼女が敵にさらわれてそれを救いに行くという、ある意味王道中の王道ですからね。

須田 最初のほうのシナリオはもっとわかりづらかったんです。完成版では、ガルシアはフレミングといっしょに地獄の世界に飛び込みますが、初期のシナリオのガルシアは、フレミングについていかず、その後、自宅のマンションの地下1階と地下2階の中間にある焼却炉の中から地獄に行きますから。

三上 それって実際にステージも作ったんでしたっけ?

須田 いえ、そこまではしませんでしたね。構想段階でカットになりました。さらに自宅に到達するまでにいろいろなステージがあって、手強い悪魔を倒してバイクで自宅にたどり着くというシーンもありましたが、けっきょくばっさりカットして、オープニングから地獄に突入させることにしました。

三上 そのほうが手っ取り早くていいですね(笑)。

須田 ちなみに、これはゲーム上では語られない裏設定なんですが、オープニングで登場した街は、アメリカ・フィラデルフィアをイメージして作りました。天候に恵まれていて明るいイメージのアメリカ西海岸とは違い、東部は雨が降りしきり、地域によっては悪魔崇拝が残っているようなので、本作の世界観に合っているような気がしまして。また、もうひとつの裏設定として、ガルシアの上半身にはたくさんのタトゥーが彫られていますが、これは彼がこれまでに倒してきた悪魔たちの魂を鎮めるためのものなんです。ガルシアには、倒した悪魔をその身に刻んで魂を永遠に眠らせるという習慣があるんです。

三上 タトゥーの数を見ると、かなりの悪魔を倒していますね。

須田 そうです。彼はベテランのデーモンハンターですから。

三上 だとしたら、ガルシアはこれから先たいへんですね。タトゥーを彫る場所がもうほとんど残っていないから(笑)

須田 なるほど! じゃあ下半身に彫るしかありませんね(笑)。