2023年3月9日に世界配信された、レベルファイブのオンライン新作発表会“レベルファイブビジョン 2023 鼓(つづみ)”。「納得いくまで作り込んだ作品を世界に届けたい」という、5つの発表タイトルへの想いをレベルファイブ日野晃博社長にじっくりと伺いました。
※“レベルファイブビジョン 2023 鼓(つづみ)”の発表まとめはこちら
レベルファイブビジョン 2023 鼓(つづみ)
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日野晃博(ひの あきひろ)
レベルファイブ代表取締役社長/CEO。代表作『妖怪ウォッチ』シリーズ『イナズマイレブン』シリーズ、『レイトン教授』シリーズ、『ニノ国』シリーズ、『メガトン級ムサシ』シリーズほか多数。
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久しぶりのレベルファイブビジョン
――レベルファイブの発表会である、“レベルファイブビジョン”の開催は、2016年以来なので久しぶりになりました。
日野『デカポリス』や『ファンタジーライフi グルグルの竜と時をぬすむ少女』などの新作は、水面下で長らく開発していたので、本当にレベルファイブビジョンを開催したいと思い続けていたんです。でも、そんなタイミングで世間がコロナ禍になってしまって、イベントは結局できなかったんです。「どうやって発表しようか」などと言って迷っている中、若干『メガトン級ムサシ』が忙しくなってきて、機を逃していたっていうような状況ではありました。
――これまでは発表会を定期的に開催してきただけに、こうした状況はある意味で初めての経験ですよね。
日野いろいろな意味でそうですね。コロナ禍で、ワールドホビーフェアなども中止になってしまったり。普通だったら、そういう大きな定期イベントのタイミングで、我々も新しいタイトルのお披露目をします、という場合が多いんです。
鼓動が世界に響く
――歴代のレベルファイブビジョンでは、テーマが名付けられていましたよね。
日野今回のテーマは“鼓”でした。基本的にこれからのレベルファイブのあり方として、世界同時リリースを目指すというものがあります。他の会社さんはもう結構早い段階から世界同時にソフトを発売する体制を整えられているのですが、レベルファイブはそこが遅れていて、世界発売タイトルも必ず日本最初でその後にある程度の時間をかけて翻訳をしてから展開する、というパターンが多かったんです。
――それをこれからは同時にリリースすると。
日野そうなんです。なので世界同時リリースは今回の発表のコンセプトのひとつにしています。“鼓”の音色が世界に響いて伝わっていくイメージですね。
――まさに反響といえば、レベルファイブビジョンに先行したニンテンドーダイレクトでの発表も、世界中で話題になりました。
日野僕らが思い描いていた以上に、『レイトン教授と蒸気の新世界』などの反響が大きかったなと感じています。お客さんの反応が大きく、世界中で話題になったのは、本当にちょっと予想を超えてうれしかったです。だから今回は、世界同時リリースへの想いを発表するレベルファイブビジョンとして、非常にいいスタートが切れたなと。
――『レイトン教授』をはじめ、『イナズマイレブン』や『二ノ国』シリーズなども海外でとても愛されているシリーズですよね。
日野僕らのタイトルを海外の人たちが応援してくれるのに、届けるのが遅れてしまうということにはずっと違和感があったので、今回のタイミングで世界同時で展開していくことの意味の大きさは感じていますね。それに最近では、作品の話題性の大きさは、やはり世界規模で響かせないと広く伝わらないように思うので。ただ翻訳はたいへんで、世界同時リリースのためには、テストも含めて時間がちょっと掛かってしまうかなと。
――それが、『イナズマイレブン』最新作の開発ブログでも書かれていた「ひとつひとつ丁寧にリリースしていく」という想いにも繋がるようですね。
日野そうなんです。世界展開も視野に入れて、時間をかけてじっくり仕込んでいくつもりです。これまではレベルファイブビジョンでは新作開発が開始された前半の時期の段階での情報を発表していました。でも、これからは開発が中盤以降を過ぎて、ある程度もゲームが固まって、システム的にも手応えをしっかり感じられてから発表しよう、という方針に変えたんです。なのでここしばらくのレベルファイブは、『メガトン級ムサシ』だけを展開しているように見えたと思うのですが、並行して複数のタイトルを開発し続けていたんです。
メガトン級ムサシW(ワイアード)
【PV】『メガトン級ムサシW(ワイアード)』ティザーPV(LEVEL5 VISION 2023 Ver.)
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――まさに世界展開といえば、巨大ロボットで人類の最終決戦に挑むクロスメディアプロジェクト最新作のアクションRPG『メガトン級ムサシX(クロス)』が、『メガトン級ムサシW(ワイアード)』(以下、『ムサシW』)に進化することが発表され、しかもクロスプレイに対応したことで世界中のプレイヤーと楽しめるようになるのですね。特にヨーロッパではスーパーロボット文化が深く愛されているので、いっしょに遊べるようになったらアツそうです。
伝説のスーパーロボットがさらに登場
日野そうですよね。マジンガーZなんてスペインに銅像が建っているらしいですから。なので、このタイミングでスーパーロボットとのコラボ企画で、ボルテスVとコン・バトラーV、グレンダイザーを追加させていただきました。
――すべてパーツを集めてカスタマイズできるんですよね。オリジナル必殺技も?
日野もちろんあります。パイロット別のかけ声もギリギリで収録できて。「超電磁コマー!」という言い方は、「どう言えばいいんですか?」とかって質問に答えたりしつつ……知らないですよね(笑)。じつは『ムサシW』の大きなポイントのひとつは、コン・バトラーVとかボルテスVを実現するのに、従来のローグのゴリラ体型では無理だったため、新たなスリム体型の骨格が実装されるんですよ。
――そうなんですか!?
日野その細身の体型を実現するシステムになる影響で、ゴリラ体型かスリム体型かでパーツの共有ができないんですよね。
――スリム体型のロボを作る場合、新しいスリム体型のパーツのドロップで集めていくことになると。
日野そうですね。そして、ちょうどアニメシーズン2も最終回直前なんですが、この“スリム体型ロボ”というキーワードは、じつは最終話に関係があったりなかったりするかもしれません。
――なんと!? いきなりここでネタバレリーナはやめてください(笑)。
※3月17日(金)夜22時以降にTOKYO MX、BSフジにてTVアニメ「メガトン級ムサシ シーズン2」の最終話が放送予定。同22時30分からは、レベルファイブの公式YouTubeチャンネルにて、最終話を配信予定。その目で人と宇宙の壮大なロボット・サーガの結末に立ち合おう!
日野あ! でも、最終回の目玉はそれではないので、安心してください。もっとすごいのがありますから。そっちを楽しみにしてもらえるので大丈夫(笑)。
――さらに衝撃展開とは…でもこのタイミングで新骨格搭載のほかにも、新たな機体もお披露目になりましたよね。この機体は一体……!
アニメ最終回の先へ
日野それもまだ秘密で(笑)。アニメも最終回をぜひ見届けていただきたいのですけど、最終回を迎えたあとの展開がゲームでは予定されていたりと、アニメの『メガトン級ムサシ シーズン2』最終回で終わりです、というつもりはありません。
――シーズン2の続きの物語がゲームなどで体験できるんですね。
日野『メガトン級ムサシ』シリーズはしっかり作り込めた作品なので、レベルファイブ作品として世界を描き続けていく気持ちでいます。ただ、今回のレベルファイブビジョンでたくさん新作を発表したので、まず次はそちらも楽しんでもらいながら、“ムサシファン”の方は、未来の展開も楽しみにしてほしいなと思いますね。
――ひとつずつ丁寧に出していくという思いは、ゲームとアニメで展開してきた『メガトン級ムサシ』の鬼気迫るクオリティからも感じられるかのようでしたから、続きも楽しみに待ちたいです。
日野やっぱり本当に作品を好きな人たちがいてくれるので……今まさに思うのは、「がっかりさせたくない」ってことですね。そういうファンの人たちは、もしかしたら多少クオリティが低い部分があるものを見ても、きっと応援してくれるんだろうとは思うんです。だけど、そういう人たちの存在を感じると「手を抜いたものを世の中に出したくない」と思うんですよ。
――そうですよね……! ちょうど『メガトン級ムサシ』では、新たにアンバサダープロジェクトも立ち上がって、ファンとの交流・発信が始まった作品にもなりました。それはさらに“レベルファイブアンバサダー”施策に継続されることになったりと、ファンの声とも響き合いますね。
※レベルファイブアンバサダー:レベルファイブ作品が好きなファンを募り、アンバサダーとして情報発信を楽しんでもらう施策のこと。
日野『メガトン級ムサシ』のアンバサダー企画をやっていくなかで、好きでいてくれる人たちと直接語り合うことで、どれだけ真剣なのか、その作品に対して想いを注いでくれているのか、という……そういう文字ではわからない気持ちのようなものを、強く感じられるようにはなれたと思います。その声に応えるべく、しっかり作品をよくしようと僕もスタッフも、意識的に最後まで諦めずに磨き続けるような気概が生まれているかなって。
【PV】TVアニメ「メガトン級ムサシ」最終章予告PV
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ファンタジーライフi グルグルの竜と時をぬすむ少女
【PV】『ファンタジーライフi グルグルの竜と時をぬすむ少女』ティザーPV(LEVEL5 VISION 2023 Ver.)
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――水面下でまさかの『ファンタジーライフiグルグルの竜と時をぬすむ少女』が開発されているとは思わず……しかも、『ファンタジーライフ オンライン』(以下、『FLO』)に登場したキャラクターもPVに姿が見えていて。
日野じつは、作っていました。『FLO』に出てきたキャラクターや、過去作に登場していたキャラクターも健在です。もちろん新キャラクターもいます。
稲船氏が開発プロデューサーに
――新キャラクターも! しかも、今作は稲船さんが開発プロデューサーとして制作されているんですよね。稲船さん印のファンタジールでの暮らしが楽しめるなんて。
日野開発自体は大阪にあるLEVEL5 comceptを中心としつつ、福岡や東京にいるスタッフも稲船さんたちに混ざって作っていますね。稲船さんの持つクリエイターをしっかりまとめて、こだわった作品を作る能力とチームがあるので、『ファンタジーライフ』の新作を任せたら、新しい作品性が生まれるんじゃないかと期待してお願いしたんです。で、現にすごくいいものになってきていて。
――公開された画面からも、すでにどこか過去作とはまた一味違う、楽しげなムードが伝わってきていました。
新ライフが2種?
日野クラフト要素も新たに遊べるように稲船さんが指揮していて、しかも完全な新ライフまで仕込んでくれて。
――新ライフも! 現在イラストが公開されている、過去作からのおなじみライフ“王国兵士”、“魔法使い”、“木こり”、“釣り人”、“鍛冶屋”、“料理人”のほかにも前作までのライフは登場予定のようですが……もしかして、以前『FLO』で発表されていた“ポストマン”や“農民”などですか?
日野いや、それとはまた違った新ライフだと思います。それは、僕の口から発表するよりも今度稲船さんメインで取材して聞き出してください(笑)。
――ぜひお願いしたいです(笑)。ハウジング要素なども、稲船さんが作り込んでいるとなると、ものすごく楽しみで。『ドラゴン&コロニーズ』でも、アイテムの細かさとユニークさが印象深かったので。
日野そうですよね。すごくこだわって細かく家具なども作られていますから。
――しかも、今回は島自体もクラフトできるようになるためか、画面もかつてないほどに広がりが感じられました。そういえば、シリーズ初の大画面でのプレイになりますよね。
日野Nintendo Switch用に動きもさらに滑らかで気持ち良くアクションが楽しめるように調整していました。たしかに言われてみると大画面の『ファンタジーライフ』シリーズ作品は初めてですね。
――そうですよね。島もクラフトできるとなると、よりライフごとの生き様にも没入できそうな気がします。
日野簡単にいうと、過去にあったサンドボックス型のそういった基本的な、できることはすべて押さえてある『ファンタジーライフ』になると思います。最初はある程度の規模から始まりますが、“この世界観ならではの魅力あるクラフト”っていうのはしっかり作られると思います。もしかしたら家具などは、将来オンラインで配信したりして、追加されていくことがあれば、じわじわと過去最高の家具ゲームを目指せたらいいなという野望はきっとみんなあるんじゃないかと(笑)。
――ユニークなクラフトに武器とか装備品、島をめぐって冒険と渾然一体となった稲船印のライフ体験……!
日野もうぜんぜんスローライフじゃない、ガチライフかも(笑)。
――今回の発表で、『ファンタジーライフ』シリーズを立ち上げ以来、長年作って続けられていることはファンにはなによりの発表だったと思います。
日野たしかに初代『ファンタジーライフ』は、僕が企画したゲームでしたね。
――『レイトン教授と魔神の笛』のクリア後特典で遊べた『ロンドンライフ』から始まって。
日野そうですね。なつかしい。12個のライフを設定したりしました。『MOTHER3』を開発したブラウニーブラウンさんといっしょに作らせてもらったことで、独特の『ファンタジーライフ』のテイストが生まれ、それを引き継いで続編を作ってきて……とこのシリーズは、いろいろな人たちの感性が入り込んで融合し、ユニークで魅力的な世界観が生まれていると感じています。
――レベルファイブ作品としても、独特なんですね。
日野レベルファイブでは、クロスメディアプロジェクトの系譜作品は、日野流、みたいな作り方で僕が企画の根幹を作ることが多いんです。でも『ファンタジーライフ』シリーズは、いろいろなクリエイターたちのセンスが入っている独特な作品ですね。なので、今回は僕も1ユーザーとしてすごい楽しみにしていて。
――ちなみにリリースされたら、また日野さんは自分にそっくりなアバターを作って冒険する予定ですか?
日野たぶんそうしちゃうんですよね。今回僕に似たアバター用のパーツがあるかはわからないですけど(笑)。でも、今回発表した作品では、一番最初にリリースされる予定で進んでいるのが、この『ファンタジーライフi グルグルの竜と時をぬすむ少女』なので、できるだけお待たせせずに、みんなでいっしょに冒険できる日が来るのを楽しみにしています。
デカポリス
【PV】『デカポリス』ティザーPV(LEVEL5 VISION 2023 Ver.)
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――完全新作を常に発表してきたレベルファイブビジョンだけに、『デカポリス』には驚きました。刑事もののRPGだなんて。
日野開発チームでもう3年ほど作り続けていますね。たしか商標を3年前に取っていたので。クロスメディアで組む相手先にプレゼンテーションしたりするために商標を取るタイミングは、企画書を作って大枠の設定ができたあたりなんです。だから、実は『メガトン級ムサシ』と並走していました。
――そうだったんですね。
日野『メガトン級ムサシ』以来、シナリオもこれまで以上に丁寧に取り組んだために、『デカポリス』も同じく、何回も何回も擦り直して納得いくまで磨き続けているんです。「もう一回、ちょっと何かがおもしろくできるんじゃないかな」とかって、読み直したりとか……いまも試行錯誤中なくらいです。
――そうなんですね。今回は初の刑事もののシナリオになるんですよね。
日野『レイトン教授』シリーズに人気がある理由は、やっぱり大人の知的好奇心をくすぐる部分だと考えていて。そこにレベルファイブのRPGを作るノウハウと物語性のあるミステリーのイメージが合わされば、おもしろいものになりそうだという点が企画の出発点でした。
――『レイトン教授』シリーズのように好奇心をくすぐられる刑事物のRPGというだけでも、ありそうでなかった気がしてものすごくおもしろそうです。
日野じつは、最初はキャッチコピーとして“レイトン教授のスタッフが贈る”みたいなことを打ち出そうとしていたんです。『レイトン』の後継作品はこれだ! みたいな。
――でも、『レイトン』を作ることになったので……?
日野そういうことが言えなくなりました(笑)。
【PV】『デカポリス』ゲームシステム紹介
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――スピリットとしてレベルファイブ印のそういうミステリーやサスペンスの流れを汲む作品であると。アメリカっぽい舞台も、犯罪の香りが漂う雰囲気で気になります。
日野ニューヨークっぽくもあり、どこかシカゴみたいな架空の都市をイメージしています。犯罪の多い街という設定なんです。
――だからこそ、デカでポリスが必要になると。
日野犯罪が多い町なので、ポリスマンが子どもたちのヒーローのように思われているような舞台です。そここそがストーリーのポイントで、ヒーローのようにみんなが刑事になることを憧れていて、刑事が町の平和を守っていると思われている世界。でも実際には、その刑事や警察組織の中にも闇がある……といったムードですね。
――なるほど……やはり、刑事ものの雰囲気で、組織の闇にメスを入れるような大人っぽいイメージも漂いますね。バーボンとかが似合いそうな、ハードボイルドな。
日野大人っぽい雰囲気もあるものの、よりサイコスリラー的かもしれません。だから多分CEROも全年齢ではなくなりそうです。
捜査して、逮捕するカタルシス
――サイコスリラー的な犯罪に刑事の捜査と推理で挑む。
日野現時点でもゲームシステムが刻々と最終バージョンへと近づいているんですけど、その過程でシステムもさらに洗練されて、もっと誰でもシンプルに推理ができるようなものになっています。最初は“分析システム”と題して、キャラクターを選んで推理させていく仕組みを作っていたんです。でも、ややこしいものは流行らないどころか、遊んでもらえないと感じたので、もっとシンプルに推理ができるように“事件ボード”というシステムに変更しようと。
――あ! まさに誰もが刑事物でいちどはやってみたい、壁やホワイトボードに写真を貼って繋いでいるアレですね。
日野そうそう、なんだか憧れますよね(笑)。いろいろな人たちのメッセージを“聞き込み”で集めたりして、手に入れた情報をはめていく。その結果、推理がちゃんと的を得ているようなはめ方ができれば、そこで“犯人指摘”のモードが出てくるようになっています。例えば「こいつの謎の恋人はこの人だ」とかって情報が得られたとすると、情報カードになります。それを他の情報と照らし合わせていって。
――推理していくわけですね。
日野そうです。そうして、そのボードの整合率が高くなって“シンキングビジョン”という犯人指摘に繋がって判定される。ボードの下には、集めた証拠品も並べられるんです。捜査で集めた証拠や情報を元にパズルをするイメージですね。
――証拠品が並んでいるところも、グッときますよね。刑事らしくて。推理自体の難易度はどれくらいなんでしょうか。推理が苦手だとすべて迷宮入りしてしまうような。
日野そうですよね(笑)。だから、解けないとおもしろくないじゃんという点は考慮していて、パズルはちゃんと話を聞けばサクっと完成するようなところで調整しているんです。パズル感覚で偶然あてることもできるかもですね。
――なんと……偶然刑事(デカ)、みたいなあだ名で呼ばれそうでそれはそれで遊んでみたいプレイスタイルです(笑)。
日野〇〇刑事(デカ)、いいですね(笑)。でもそういうクリアもできないと、やっぱりダメだなと思うので。ゲームってズルができるところも、おもしろさですよね。
レベルファイブ組の豪華声優陣
――赤いコートの主人公“ハーバード”を含めて、キャラクターの声優陣も発表されましたね。『メガトン級ムサシ』と同じメンバーも多いです。
日野主人公ハーバードが斉藤壮馬さん、相棒のカールに梶裕貴さん、あと『メガトン級ムサシ』でジュンちゃんを演じた諸星さんには、マニマニーというハワイ出身の眼鏡の女の子を演じていただきました。そして、林勇さんにもチャンという太ったキャラクターをお願いしているんですが、これがまたいい感じなんですよ。
――安定のレベルファイブ組という印象です。
日野声優陣はとてもいい感じに演じてくれたのですが、作品作り自体は、かなり迷いながらここまで来た感じですね。最近になって、やっと光明が見えてきたように感じていますけど、やはり刑事ものは僕らはあまり作ったことがなかったので、チームで勉強しながら作り上げています。
倒すのではなく“逮捕”する
――RPGではあるものの、モンスターを倒す作品ではないですからね。
日野だから、人をやっつけたりできないから難しいんです。戦闘とかも変わっていて、最初は戦わないモードから始まるんですよ。刑事なので、“説得”を試みる。それがかなわない場合に攻撃を行うと。
――やむを得ず。
日野説得によるマインド攻撃的なものと、物理攻撃とがあって、それをうまく切り分けつつ展開して、最終的には手錠をかけて逮捕します。
――手錠のシーンはPVにありましたが、刑事らしいカタルシスで最高に気持ちいいですよね。
日野そうなんですよ。でもだからといって、単純に刑事が、「こいつが犯人だから」といってボコボコにはできないですよね(笑)。そこをどうゲームに落とし込んで、逮捕してフィニッシュ、というところまで持ち込むかがキモでした。結果的には、相手の対応によってこちらが取れる行動が変化する、という形にしています。
――相手が襲いかかってきたら、抵抗する形で攻撃するような……?
日野警察の武力兵器の使用については、現場の状況に即した本部の許可が必要になりますね。
――警察組織に所属している感じで盛り上がりますね。令状がないと動けない、というのは。
日野事件ボードもそうなんですが、刑事ものでやってみたいと思うことは『デカポリス』で満喫できると思います。
レイトン教授と蒸気の新世界
【PV】『レイトン教授と蒸気の新世界』ティザーPV(LEVEL5 VISION 2023 Ver.)
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――レベルファイブビジョンのテーマである鼓のように、まさに帰ってきたレイトン教授とルークへ、世界中のファンからの反響が集まりましたね。
日野自分でも驚きましたね。SNSでもトレンド入りしたりして、こんなに反響があるなんてと。
――今作でもイラストは長野拓造さん、音楽も西浦智仁さんと歴代作品に関わられてきたお二人が担当されているのでしょうか。
日野そうですね。昔からのスタッフで作ります。そんな中、今田美桜さん演じるルークの声を収録しましたけど、もうほぼルークなんですよ。手紙を読んでもらう場面なんて、ルークそのもので。
――日野さんがそこまでいうほどの演技とは。
日野古い手紙の場面と混ぜてもわからないんじゃないかな。たぶん、相当研究して練習してきてくれたのだと思いました。もちろん、これからの本収録で、ものすごい数のセリフを録る試練が待っているとは思うのですけど。
大泉さんの英国紳士とナゾ開発の伝統
――そして、これは伺わなくてはいけないところですが、レイトン役は大泉洋さんも帰ってくるんですよね。
日野レイトンは、やっぱり大泉さんなんですよね。
――PVのテロップでキャスト名が公開されたときは、ファンはうれしかったと思います。
日野大泉さんのアフレコはまだなんですが、その昔、初代『不思議な町』の収録では、僕のディレクションで最終的に「英国紳士は忘れてください」ってお願いを出した話をいつもするので、今回のアフレコでも、絶対またその話は出てくると思うんですよ(笑)。
――そうですよね(笑)。そしてもうひとつ、シリーズでも重要なナゾ開発は、QuizKnockさんが担当されるという点も驚きました。
日野QuizKnockさんとお話した時に、やっぱり『レイトン教授』シリーズのファンで、シリーズ作品を説明するまでもなく、すでにプレイされていて。「関わらせてもらえること自体が、光栄なお話だった」とまで言ってくださる方もいて。そんな人たちがレイトンが復活するというニュースだけで喜んでくれて。
――それは、やはり長年続くシリーズならではですよね。初代のナゾ開発をされた『頭の体操』の生みの親、多湖輝先生から受け継がれているものを感じてしまいます。
日野そうですよね……多湖先生には、『頭の体操』のようなナゾを練って書き下ろしていただいて、その偉大さを改めて感じます。
――多湖先生とナゾを作ってから、その後の『レイトン教授』シリーズでは、ナゾ開発は“合宿”でスタッフが籠るという制作方法が恒例になっていますよね。
日野多湖先生とは、もう7〜8年にわたって毎年合宿していましたから。なのでちょうどこの間、QuizKnockさんたちにもお願いして、合宿の予定を確保してもらいました(笑)。
――最新作のナゾも、これまでのナゾ開発の伝統を受け継いだ伝統製法で作られるんですね。
日野もちろん、僕を含めたレイトンチームもみんなで1週間ぐらいいっしょに参加します。伝統ですから(笑)。
蒸気の新世界
――最新作での体験はどんな内容になるのでしょうか。
日野新しいシチュエーションとして“発展途上の町をナゾトキで発展させる”といった内容なんです。発明好きな子どもたちが出てきて、いろいろな発明をするのですが、それがナゾになっている。その発明品のナゾを解くと……。
――町が発展していくと。
日野そうです。蒸気機関による発明で、例えばクーラーがないとしたらナゾをひとつ解くと町にクーラーができた、といったようにマップに変化が起きるというのが最新作のウリのひとつですね。
――なるほど。『レイトン教授』シリーズは町のマップを移動するゲームなので、ナゾトキに応じて風景が変化していくのはうれしいですよね。まさにタイトル通り、蒸気機関で新しい世界へと発展していく。
日野今回のPVでちらりと公開されている双子の姉妹や発明家の青年のように、クリエイティブな人たちがいて、その人たちの人間性というか……エジソンやアインシュタインのように、頭が非常にいい人たちが「どういう風なことを考えて物を生み出すのか」。そのドラマが鍵かなと思っています。そうした発明家がいるからこそ起きる陰謀のような。ちょっとなかなかこう、天才すぎて異常に見える人たちもいますからね。
――ニコラ・テスラなどの大天才的なイメージでしょうか。
日野そういう異常な世界に突入してしまう科学者や、人助けをしようとする発明家など……そんなイメージで、大枠の物語構造は完成していて、今はラストシーンを練り込んでいるところですね。
――本作は、まさにラストシーンがグッとくる名作、シリーズ3作目『レイトン教授と最後の時間旅行』から続く1年後の話ですね。
日野はい。今回は『最後の時間旅行』のエンディングの手紙が、そのまま始まりになるというのが物語の幕開けとなるので。そこをちょっとだけ見ていると、アメリカに渡るレイトンが、その手紙を読み直す。そこに新ルークの声がハマるという、ものすごくいい感じの演出で気に入っているんです。なので、この始まりに見合うラストシーンにしたいと思っているので、やはりじっくりと練り上げるつもりです。
イナズマイレブン 英雄たちのヴィクトリーロード
【PV】『イナズマイレブン 英雄たちのヴィクトリーロード』ティザーPV(LEVEL5 VISION 2023 Ver.)
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――ついに大量の情報が解禁になった、超次元サッカーRPG最新作『イナズマイレブン 英雄たちのヴィクトリーロード』ですが、まさか選手が4500人以上登場するとは!
日野コラボや権利関連の選手は除いた、過去作品の、ほぼ全員が。
――一部コラボキャラクターなどは登場しないとしても、4500人とは、もはやイナズマ選手名鑑ですよね。
日野まさにそうですね。もちろん通信機能で仲間にする選手もいると思うので、“遊ぶと全員を仲間にできる可能性がある”ということにはなります。でも、基本的には誰か過去作品で好きだった選手がいたとしたら、その選手にもこの新作で会えると思います。
――それが、新生イナズマキャラバンに設置されている“クロニクル対戦ルート”や“プレイヤーズユニバース”を使って仲間にできるなんて。
日野過去のイナズマの歴史がボードゲームみたいになっていて、そこで過去のチームと戦えるようになっているのが、“クロニクルモード”なんですよね。
――過去のチームとの試合ができるなんてクラクラします。
日野クロニクル対戦ルートに勝利することで、“キズナスター”というアイテムを手に入れ、プレイヤーズユニバースというボードにキズナスターをはめて星座を完成させると、選手が解放されます。すべて架空の星座なんですけど、たとえば獣座を完成させると、初代『イナズマイレブン』に登場した“野生(のせ)中”の選手が手に入ったり(笑)。
――初代作の野生中の選手、なつかしいです(笑)。クロニクルモードのほかに、本作のもうひとつの柱である、“ストーリーモード”の会話システムやイベントシーンでは、新たな主人公の“笹波雲明”と、まさかの初代主人公・円堂守の息子、“円堂ハル”の物語を辿るんですよね。PVとともに情報が公開されてこれまた衝撃でした。しかもアニメーションはMAPPAさんが担当するなんて。
MAPPA担当のアニメーション
日野あのMAPPAさん制作のPV、クオリティが高すぎますよね。
――いったいなぜMAPPAさんに依頼しようと思われたんですか? MAPPAさんの作品をチェックしていたからとか……?
日野そう思いますよね。でも関係なくて。理由は、ひょんなところから知り合って意気投合したから、です(笑)。
――ひょんなこと(笑)。
日野MAPPAさん、「イナズマイレブンだったらやりたい」と言ってくれて。なので、とりあえずシナリオの最初の部分はお渡ししてあって。主人公とその主人公の相手役をテーマにした、イメージ映像をお願いしたんです。
――それが今回発表された映像だったのですね。
日野アニメがこれだけのものすごいクオリティで作られるため、今後のアニメ展開はまだ未定ですが、1クールずつになると思います。ちなみに、これまでは2話に1回のペースで試合回になることが多かったんです。でも、今回はその1クール分の中で3~4試合しかしないようなイメージですね。物語的にはやっぱり一人一人の選手を、しっかり掘り下げてじっくりと描いて語っていく感じです。
――なるほど。まさに『メガトン級ムサシ』で展開したような群像劇的な構造で、個々の選手にスポットを当ててじっくりと。
日野そうですね。たくさんのキャラクターを出すよりも、最初の11人と主人公のキャラクターを深く掘り下げたいと。舞台は円堂くんの時代から25年後の世界観なんです。この世界観の中で雷門中はサッカーの超一流、トップに君臨する学校になっている。その中でも、新入生にしてすでに“サッカーモンスター”と呼ばれる程の存在である円堂ハルがいる。そして、このハルに少しでも近づこうとする猛者たちがいる……という構図ですね。
――それが、雲明たち。
日野はい。主人公は南雲原中っていう、そもそもサッカー部が存在していない、弱小ですらない学校の子です。でも、雲明くんは部活でサッカーのことをみんなに思い出させようとする。そんな彼が、底辺から円堂ハルに辿り着けるか、っていうような物語になります。
――しかも、開発ブログにかかれていたように、ハル側から見た頂点の苦悩も、同じく群像劇のように描いていく構想なんですよね。
日野まさにそうで、両方のドラマを描くつもりですね。だから、ハルは物語の最後にしか出てこないライバルではなくて、物語に入り込んでくるような仕掛けになっています。じつは、主人公たちが戦う最初の正式な試合に“ハルが紛れ込む”みたいな展開があるくらいなんです。ハルのすごさを、ちょっとだけ体験版のように味わうというか。
雲から放たれる稲妻
――“サッカーモンスター”と称されるほどのハルの凄さを、とても遊びやすく調整がされたというゲーム中の試合でも体験できたら……など楽しみが膨らむばかりなのですが、つい雲明とハルの立ち位置からは、作中の時間軸から25年前、ちょうど雷門中の円堂守が目の当たりにした、ストライカー豪炎寺の必殺シュートの場面を思い出してしまいます。やっぱり『イナズマイレブン』と言ったら、すごいストライカーが一人入ってきて、必殺技を放つ……! という伝統がありますよね。
日野まさしく今回発表した、最初の主人公達が覚える技。名前は秘密ですが、二人の合体技ですね。今回のチームのストライカーは、一人が忍原ちゃんでもう一人が桜咲くんという髪型がオクトパスな選手です。女の子の忍原ちゃんは、技術はないものの、体のバネだけはあるのでシュートをするとものすごい回転がボールにかかる、けど前に飛ばない。でもその超回転のかかったシュートを桜咲くんのキック力で押し出すことで、回転で粉塵が巻き込まれて、雲ができるんです。
――その雲の中から、雷のようなシュートが。
日野雲から雷鳴といっしょにボールが来て、「どこに来るか分からん」となって、キーパーは取れない……という、最初の必殺シュートですね。
雲と晴と雷
――ストーリーモードの主人公となる、雲明はどんなキャラクターなのですか。
日野雲明くんというキャラクターは、やっぱだいぶ特殊なキャラクターへ仕上げようとか、作る上では楽しいですね。最初は少し嫌なヤツなんだけど、それが嫌ではなくなる瞬間を描くというか。ほら、合理的にしかものを考えられない人って、一見嫌じゃないですか。
――たしかにちょっと合理的すぎると、冷たい印象に見えてしまいがちです。
日野感情とかが出ていなくて、ドライに「こうしたらいいんじゃない」的なリアクションを返されると、ね。そういったキャラクター性を前半で描きつつ、でも友情みたいなものが生まれてくると、そのドライが、“情が絡んだドライ”になるというか。サッカーの実力も底辺ですが、性格も底辺からだんだん人間味を帯びていく。そういうおもしろ味が描いてありますね。
――もやもやした曇天が、次第に晴れ上がって、青空と真っ白い雲になるといった……?
日野本当にそのイメージそのままです。その雲が、徐々に“稲妻”を起こすような様を描いて、最後には空に至るような。
――PVのイメージからは、春の雷で“春雷”というのでしょうか。なんだかそういう雰囲気も感じられるようで、めちゃくちゃ格好いいんですよね……!
日野たしかに、オープニングテーマは『春雷』というタイトルにしたいくらいですよね。でも同じ名前の有名な曲があるからなあ(笑)。主題歌もいま5曲くらい書いてもらっているんですが、まだしっくり来ていなくて。これからですね。
一人一人のドラマを
――ストーリーはどれくらい完成しているのでしょうか。
日野全体の構成はできていて、これまた『イナズマイレブン』としては異常なほどに、サッカー部が出来上がるまでを丁寧に描いていますね。
――それほどまでに、選手一人一人のドラマとかもそうやって丁寧に描かれる『イナズマ』は初めてですよね。
日野これまでは、商業作品的な側面もあるために、玩具やカードもいっぱい作らなきゃいけないので、ある一定数のチームを一つのシリーズ作品の中にガッツリ出さなきゃいけないかな、といった考えもありました。でも今回はそのあたりをちょっと押さえ気味にさせてもらって、丁寧なスポコンを『イナズマ』らしく、人間模様をじっくり見られるイメージに仕上げていきたくて。
――選手たちの人間模様に触れていくと、試合の時がまたグッときてしまうんですよね。やっぱり入れ込んでいくと「あぁ負けないでくれよ」みたいな気持ちになるじゃないですか。
日野そうですよね。今回はそれが、試合一つ一つにかかっているものを全部描いてから、試合本番になるので、きっとその気持ちはさらに渦巻くと思います。
じつは……
――2023年のレベルファイブは、ひとつひとつの胎動を丁寧に作り上げて育てていくというお話だったんですが、まさに『イナズマ』最新作が、じっくり丁寧に描かれていくのですね。
日野そうですね。それは今回イベントでもお話ししたように、その作品一つ一つの生命の鼓動をきちんと響かせられるようにじっくりと大切に作って届けたいです。なにしろ、まだ発表してない。タイトルもありますから。
――それはまさか、先日ちらりと日野さんのTwitter(@AkihiroHino)に投稿されていた謎の猫作品ですか!? しかも『妖怪ウォッチ』の流れを汲んだ作品だとか。
日野そうなんですよね、早く見せたいけれど、まだそのときではないので、これまたじっくりやらせてください(笑)。でもレベルファイブなりに、また新しく子どもたちにしっかりと認めてもらうためにタイトル作りをするっていうことを、いまやれていると感じています。
日野社長へのロング・インタビュー、いかがだったでしょうか。5つの新作を発表したレベルファイブ。この会社名は、5つ星の作品を作りたいとの想いで名付けられたといいます。“5つ星修練場”という『イナズマ』最新作の開発ブログの名前からも、日野社長が語った「じっくりいいものを届けたい」との思いが感じられるかのよう。
そんなレベルファイブにとっては、2023年はちょうど設立25周年にあたる年でもあります。久しぶりのレベルファイブビジョンが開催され、新たな鼓動を響かせ始めたレベルファイブのこれからが、楽しみで仕方がないところ。レベファイ!