ここからは、プロデューサーの間一朗氏とディレクターの鈴井匡伸氏、そして『キングダム ハーツ』シリーズのディレクターである野村哲也氏に、本作のさらに詳しい内容やこだわりなどをうかがった。
野村哲也(のむら てつや)
『KH』シリーズのディレクターであり、コンセプトデザインやストーリー、さらにはデザイナーとしてキャラクターデザインやキーアートなども担当。『KH』シリーズ以外にもさまざまな『FF』シリーズ作品に携わり、直近では『ファイナルファンタジーVII リメイク』のディレクターも務めている。
間一朗(はざま いちろう)
スマホゲームをはじめ、アーケード版『ディシディア ファイナルファンタジー』などさまざまな作品をプロデュース。鈴井氏とともに『シアトリズム』シリーズでリズムアクションゲームを手掛けた。昨年から『KH』シリーズのエグゼクティブ・プロデューサーも担当している。
鈴井匡伸(すずい まさのぶ)
開発を担当するインディーズゼロ 代表取締役であり、本作のディレクター。本作と同じく間氏がプロデューサーを務めた『シアトリズム』シリーズでもディレクターを担当。直近では『東北大学加齢医学研究所 川島隆太教授監修 脳を鍛える大人のNintendo Switchトレーニング』などを開発。
見た目も物語も『KH』シリーズらしい作品に
――『シアトリズム ファイナルファンタジー』、『シアトリズム ドラゴンクエスト』を手掛けた間さんと鈴井さんが作るリズムアクションゲームということで、『シアトリズム キングダム ハーツ』といったタイトルもアタマをよぎったのではないかと思いますが、『キングダム ハーツ メロディ オブ メモリー』というタイトルにしたのは、『KH』シリーズに入れるべき内容になっているから、というのが理由ですか?
間じつは、5年ほど前に企画書を作ったときには、『シアトリズム キングダム ハーツ』という仮題で企画を練っていました。
――以前から構想はあったと。
間構想と言うほどではないですが、『キングダム ハーツ』で作れたらいいな、とは考えていましたね。ただ、哲さん(野村哲也氏)からは、「もっと『キングダム ハーツ』らしいものを」といった提案をいただきまして。
――『キングダム ハーツ』らしい、とは具体的には?
間『シアトリズム』シリーズの延長線上にあるというよりも、見た目も物語も『キングダム ハーツ』シリーズの作品として、ということですね。そういったこともあって、細かいところだと、ゲーム内の効果音ひとつとっても『キングダム ハーツ』シリーズのサウンドチームに作ってもらっていますし、キャラクターのモーションやモデルに関しても、『キングダム ハーツ-HD 1.5 リミックス-』などのものをベースにしつつ、最終的には『キングダム ハーツ』チームに新規のモーションを作成してもらったりしています。エフェクトについても本家に監修してもらっていますし、ゲーム内の名称は哲さんに決めてもらっています。オリジナルのメンバーの方々にいろいろと協力してもらって、いちばん大事な『キングダム ハーツ』らしさというのは実現できています。
鈴井カーソルの移動音ひとつとっても、「これは『キングダム ハーツ』だね」と感じてもらえるものになっていると思います。
間なので、じつはものすごい人数が関わっているんですよ(笑)。
――ちなみに、『シアトリズム』ではかわいらしいデフォルメキャラが登場しましたが、本作に『キングダム ハーツ』のデフォルメキャラは登場するのでしょうか?
鈴井本編には登場しませんが、ロード画面などに登場してワチャワチャと動く、イメージシンボルのような立ち位置で登場します。しかもそこだけのためにモデルにボーン(骨組み)を入れて、モーションも付けてもらっています(笑)。
当初はチリシィの視点で描かれる予定だった!?
――ゲームの内容については、また後ほどうかがうとして、まず本作の物語ですが、パッケージイラストが公開されました。その構図からすると、カイリが主人公で彼女の視点から描かれる物語、ということですよね?
野村そうです。今回はカイリが語り部として過去を回想していくというお話なので、ああいったイラストになっています。ソラの絵が入った額縁が3つありますけれど、それぞれ『キングダム ハーツ』、『キングダム ハーツII』、『キングダム ハーツIII』のラストシーンをカイリの視点から見た絵になっています。
――ああ、なるほど!
野村ただ今回、マスターに向けてスケジュールがいちばん危なかったのは、じつはあのイラストでした(笑)。
鈴井タイトル画面にあのイラストが入るんですけど、締切のギリギリに完成して、その日の夜7時に、タイトル画面にイラストを入れたものを野村さんに見ていただいて、そこで演出などについて意見をもらって、会社に電話をかけて修正してもらって、修正版をもう一度野村さんに見ていただいて……というやり取りを2回くり返して完成したので、本当にギリギリのギリでした(笑)。
――それだけ難産だったということですか?
野村今回のイラストは、『キングダム ハーツIII』で描いた、ソラが椅子に座っていたイラストと対になっているんですけど、ソラのときは後ろの額に絵がなかったですよね。
――たしかにそうですね。
野村今回のイラストのイメージを思いついたとき、キャラクターをたくさん描くことになるので、スケジュール的にもすごくたいへんそうだなとは思いましたが、腹をくくって描くことにしました。
――過去を回想していくというストーリーとのことですが、新規のシーンもちらほら見受けられますね。
野村はい。でも、そこはちょっとだけですね。『キングダム ハーツIII』の物語は『キングダム ハーツIII リマインド』で完結しているので、後日談的なものが少しだけ入っています。当初の予定だと、語り部はカイリではなく、チリシィにする予定でしたが、物語を書き進めていくなかで、カイリのほうが語り部にふさわしいなと感じたので、それでストーリーも少し足すことにしました。回想シーンも最初はガッツリしたカットシーンは入れない予定だったんですけど、あるとき突然、やっぱり入れようかなと思い立って。まわりは、「えっ!?」みたいな反応でしたけど(笑)。
鈴井チームに『キングダム ハーツ』のカットシーンを作れるメンバーがいなかったので、野村さんに「新しいカットシーンを作ろう」と言われたときに、「そうは言っても、作れるスタッフがいないし……どうしよう」と困りました(笑)。ですが、野村さんが『キングダム ハーツ』チームに声を掛けてくださり、本家の皆さんに作成してもらえることになったので、懸念がなくなったうえに、作品もよりよくなるということで、すごくありがたかったですね。
野村今回はシークレットムービーなどもないので、本編で描かれるものがすべてになっています。内容に関してはプレイして確かめてもらえればと思います。
“メモリアルミュージックボックス”がヒントに
――本作と『シアトリズム』シリーズのわかりやすい違いとして、画面が横スクロールではなく、画面の奥に向かっていく立体的なグラフィックになっていますが、今回の視点に行き着くまで試行錯誤はあったんでしょうか。
鈴井『キングダム ハーツ』でリズムアクションを、という話を野村さんとしたときに、やはり『キングダム ハーツ』らしい3Dの見た目でリズムアクションを楽しんでもらいたいという意向をうかがい、それと同時に『キングダム ハーツ』シリーズ15周年記念サイトのメモリアルミュージックボックスのビジュアルをリズムアクションとして仕上げてみたらどうか、という提案をいただいたんです。そこから、ソラとドナルド、グーフィーが駆け抜けながら、リズムアクションとして『キングダム ハーツ』的な操作をしてエネミーを倒していく、という現状のシステムにつながっていきました。
――では、基本となる画面はすんなり決まったと。
鈴井ただ、そこからがたいへんでしたね。いざ動かしてみると、3D酔いしやすいことがわかりまして。
間我々はもともと酔わないほうなので、調整が難しかったですね。これは絶対に大丈夫だろう、と調整してみても酔う人は酔う。では、もう少しカメラの角度を変えて……みたいな試行錯誤を何度もくり返しました。
――実際に酔わないようにできた解決策はどんなところだったんでしょう?
鈴井いろいろなことの積み重ねでしたけれど、カメラが逆に動き出すときのタイミングや速度の変化、高さ、あるいはキャラクターの上下の動きであったり、コース自体のうねりもあるのですが、それらに対するカメラの追随の仕組みを変えて解決していきました。『キングダム ハーツ』らしいダイナミックさ、カッコよさを残しながらも、リズムアクションなので目線が動きすぎると遊びにくいですから、遊びやすさに酔いにくさも追及する、という部分はがんばって調整しました。
野村酔わないようにする調整にいちばん時間がかかったのですが、いざその調整が終わってみると、すごくシンプルな寂しいゲーム画面になってしまっていたので、そこからエフェクトを付けたり、難易度をもうちょっと上げたり、その後に操作性を調整したり……といったように、段階ごとに遊び心地を確認して、気になったところを直してもらうといった感じでした。
――ちなみに、リズムアクションゲーム自体、開発する側にとっての難易度はどうなんでしょう?
鈴井簡単ではないと思います(笑)。ターゲットがちゃんと見えないと遊べませんし、1秒間に複数入力することもありますし、入力のタイミング調整はもっとも重要です。また、ハイスコアを目指す人はプレイに集中できるものを求める一方で、ライトに遊びたい人は派手な見た目を好まれます。でも派手すぎると、ターゲットが見づらくなりますから、バランスを見ながら遊びやすく、且つ見た目も派手に、というところを目指しました。
加えて、最適化という問題もありました。リズムアクションゲームは滑らかに動かないとプレイしづらく気持ちよく操作できません。ですので、最初に理想の見た目を作って、つぎに同じ表現をさらに軽い処理でできないか、といった調整をしていくのですが、その調整ができたと思うと、今度は譜面を作るメンバーがエネミーをいっぱい置いて負荷が上がったり。エネミーを入れられるように軽量化できたと思ったら、今度は野村さんからエフェクトをもっと派手に、というお題を出されたり(笑)。上がったり下がったりをくり返しながら、ようやく完成にいたりました。
――収録曲は140曲以上とのことですが、楽曲はアレンジ版ではなくオリジナル版のものがそのまま使用されているのでしょうか?
鈴井はい。遊んでいたときの思い出がいちばん大事だと考えていますので、『シアトリズム』のときからもそうですが、オリジナルの原曲をメインに扱っています。
――選曲はどのようして決めたんですか?
鈴井人気の曲ばかりですので、コンサートのセットリストなども参考にしつつ、曲名が違ってもベースの曲が同じものはより人気の高い曲を、といった具合に選んでいます。あとは、ストーリーを追体験できるワールドトリップのワールドごとに構成上で必要な曲もピックアップしています。
――シリーズ全体だとかなりの楽曲数ですし、ひと通り確認するだけでもたいへんだったのでは?
鈴井最初に、これまでにリリースされた全CDから自分たちでリストを作って、そこから絞り込んでいきました。先ほど使用する楽曲は各作品の原曲を扱っていると言いましたが、タイトル画面や、スタッフクレジットで流れる曲は本作用に下村さん(下村陽子氏。『キングダム ハーツ』シリーズのメインコンポーザー)にアレンジ楽曲を作っていただきました。
――下村さんは、本作について何かおっしゃっていましたか?
間『シアトリズム』シリーズは、下村さんもすごく楽しんでプレイされていたみたいで、「『キングダム ハーツ』のは作らないの?」というお話も前々からされていたので、楽しみにしていらっしゃると思いますし、ご満足いただける内容になっていると思います。
鈴井以前、お花見で下村さんとお会いしたときに、『キングダム ハーツ』シリーズのCDをひと通りいただいたんですよ。そのときに、「あとはわかるよね?」という笑顔をされていたので(笑)、『キングダム ハーツ』シリーズでリズムアクションができたらいいな、というお気持ちはずっとお持ちだったのではないかなと思います。
『KH』シリーズと同じ感覚でプレイ可能
――では、本作の操作を簡単に教えてください。
鈴井 基本的なノーマルスタイルでは、3つのボタンで戦い、ターゲットがひとつのときはどのボタンでもよくて、ターゲットがふたつならボタンふたつを同時押し、ターゲットが3つなら3つのボタンを同時押しです。ジャンプボタンを押しっぱなしにするとグライドで空中を飛んでいくこともできます。
間本作は『キングダム ハーツ』シリーズの操作方法に近いというか、プレイステーションで言うと、攻撃が○ボタン、ジャンプが×ボタン、アビリティが△ボタンなので、まったく同じなんです。
――『キングダム ハーツ』シリーズのファンの方は馴染みやすい操作ですね。
間チュートリアルもしっかり作り込んでありますので、操作面で迷うことはないと思います。
――ステージはパーティで挑むようですが、パーティメンバーの編成はできますか?
鈴井パーティは4組あり、それぞれメンバーは固定されていて、メンバーを自由に編成することはできません。ただ、ワールドによっては固有のゲストメンバーがいて、リーダー以外のふたりのうち、どちらかがディズニーのキャラクターに代わったり、4人目のパーティメンバーとして王様が助けに来てくれたりします。
間王様に助けてもらったり、回復アイテムを使用したり、レベルを上げてHPを増やすこともできるので、リズムアクションに慣れていない人でも、くり返し遊んでいただければステージをクリアーできるような設計になっています。
――ゲストメンバーはどういったタイミングで登場するんですか?
鈴井そのゲストメンバーに該当するディズニーの楽曲をプレイしていると、何回かに1回登場するようになっています。登場する前には「つぎにゲストメンバーが登場するよ」といった表示が出るので、登場するかどうかを事前に知ることができます。王様はHPを回復してくるほか、アクション入力時に登場してリズムポイントをより多く獲得できるようにしてくれたりします。ちなみに、リズムポイントというのはプレイを続けていくと溜まっていくポイントで、一定量が溜まるとアイテムや楽曲が解放されていきます。
――キャラクターにはそれぞれ固有のアビリティもあると。
鈴井アビリティに関しては、“アビリティシンボル”というものが出てきた際にタイミングよく対応するボタンを押すと、魔法攻撃ができたり、巨大なエネミーが倒せたりできます。
――先ほどグライドもできるというお話でしたが、リズムアクション中のグライドというのは、どういった状態になるのでしょうか?
鈴井一般的な音楽ゲームで言うところの、ホールド的な操作に近いですね。グライドするとキャラクターが浮いて、その状態でグライドターゲットというものに対応していく形になります。
――ゲーム全体としての基本的な流れはどのように?
鈴井ワールドトリップというミッション形式のモードで物語を進めていきます。各ワールドでは曲をクリアーするだけではなく、条件を満たすと“星”がもらえます。その星を特定の数集めるとゲートが開き、先のワールドに進めるようになります。
――ワールドはいくつあるんですか?
鈴井通常のワールドが47個あって、そのうち『キングダム ハーツ』系のワールドが16、ディズニー系のワールドが31あります。それ以外にもダークホールと呼ばれる、ボス曲だけが入っている場所も33ほどあります。
――かなりのワールドがあるんですね。
鈴井そうですね。ワールドトリップで物語を進めてエンディングにたどり着くだけなら10時間くらいで、手軽に楽しめるボリュームだと思います。もちろん、そこで手に入れた楽曲をミュージックセレクトでくり返して遊んでハイスコアを目指したり、オンラインで友だちやコンピュータと対戦したり、ダブルプレイというひとつの画面で友だちといっしょに協力プレイが楽しめるモードもありますので、長く楽しんでもらえる内容になっています。
――基本操作について、ノーマルスタイル、ワンボタンスタイル、パフォーマースタイルの3つを入れた意図は?
鈴井音楽ゲームが得意でなくても、難しい曲に挑戦したい人もいると思うんですよ。ただ、簡単にするにしてもターゲットの数を減らす方向性だと単調になるので、難しい曲には同時押しや、いろいろなボタンを押し分けることに悩まない ワンボタンスタイルで挑戦してもらう、といった遊びかたもできるようにしました。スコアもスタイルごとに管理されますので、同じ曲でもワンボタンスタイルのスコアとノーマルスタイルのスコアでは価値が違ってきます。
――ステージはフィールドバトル、メモリーダイブ、ボスバトルの3種類ありますが、それぞれの違いを教えてください。
鈴井本作のメインになるのがフィールドバトルで、バーサスバトルなどのモードでもフィールドバトルで競う形になります。フィールドバトルでは五線譜風のスタッフレーンを進みながら、音楽に合わせてエネミーを倒していくことになります。
メモリーダイブは思い出の映像を楽しみながら、リズムに乗ってターゲットを入力していくというものですね。これは過去の『シアトリズム』にあったイベントミュージックステージの進化版みたいなものと思っていただければ。ボスバトルに関しては、数は多くありませんが、ワールドトリップ大事な節目でボスキャラクターと戦うものです。
『キングダム ハーツ』らしい演出やアクション、カットが変わるダイナミックさと酔いや遊びやすさの相性を試行錯誤しながら、いろいろと模索していった結果が、3つのモードに反映されています。
――オンラインでの対戦や、ニンテンドースイッチ版には、ローカル通信機能を利用したフレンドバトルロイヤルというモードも搭載されています。こちらもユニークなモードですよね。
鈴井フレンドバトルロイヤルは開発の終盤に、間さんからお話をいただいて、遊びをより発展させよう、ということで作った要素です。『キングダム ハーツ』にはクリティカルという超高難度のモードがありますが、それに近い感覚で、最大8人でいっしょに遊んで、一度ミスしたら即脱落という遊びかたは音楽ゲームとしては新鮮なのではということで、みんなで盛り上がってもらう要素として追加で作成しました。
――脱落までのミスの回数は調整できるのでしょうか?
鈴井1回、2回、3回の3種類が選べます。ただ、GOOD以上は脱落しないので、初見だったり、緊張していなければ意外とミスはしないと思うので、完走するのはさほど難しくないかなと思います。
――ところでインディーズゼロさんは、これまで任天堂系ハードのソフト開発が中心だったかと思いますが、マルチプラットフォームでの展開については、何か苦労などはありましたか?
鈴井インディーズゼロはゲーム開発会社として設立から24年ほど経ちますが、これまで家庭用ゲーム機では任天堂さんのハード以外では開発したことがなかったので、プラットフォームごとの技術的、文化的な違いもあって、いろいろと苦労しました(笑)。ですが、マルチプラットフォームでリリースすることでより多くのゲームファンに届けられるというのはうれしいですね。今回はアラビア語なども含めた10言語に対応していますので、より広い地域の、よりたくさんの人に『キングダム ハーツ』の世界を届けられると思います。
――10言語対応というのはすごいですよね。
鈴井「リズムアクションだからできるだろう」なんて軽く言われましたが、これもたいへんでした(笑)。
間ほかの『キングダム ハーツ』シリーズのテキスト量と比較したら、当然、その量は少ないですし、極端な話、遊びかたは感覚で理解できる作品なので、複数言語にチャレンジするきっかけとしては、本作はちょうどいいのかなと思ったんです。
――コロナ禍での開発になったかと思いますが、そのあたりもいつもとは勝手が違いましたか?
鈴井セキュリティなどにも気をつけながら、リモートでできるとこはリモートで開発を進めましたが、リズムアクションの調整をリモートで行うのは、どうしても限界があるんですよ。リソースやアセットを作っている段階ならもっとやりようはあったのですが、最終調整やプラットフォームごとの調整を行う開発終盤は難しいものがありました。そこを工夫して上手く乗り越えられたと思います。
野村音声の収録はけっこうたいへんだったと思いますよ。とくに海外収録に関しては影響が大きかったんじゃないかな。
間そうですね。演者さんが外出できないという前提のもとで、何とか収録を進めないといけなかったので、同時期に収録が必要だったタイトルは、同じ苦労があったと思います。本作も開発自体はほぼほぼ計画に沿って進められていたのですが、最終的にキツくなったのは、やはり収録の部分でしたし。それでも国内は比較的早い段階でスタジオに入っての収録が再開できたのですが、海外はなかなかそうもいかないところがあって、たいへんでした。
今後の『KH』シリーズについて
――シリーズの今後についてもうかがいたいのですが、『キングダム ハーツIII』でダークシーカー編が完結しましたが、すべての謎が明かされたわけではなく、さらにシークレットムービーでは新たな展開を匂わす内容にもなっていましたが、今後の『キングダム ハーツ』シリーズはどうなっていくんでしょうか?
野村2022年に『キングダム ハーツ』は20周年を迎えるんですよ。
――はい。
野村ですので……20周年に向けてがんばります(笑)。自分としてもつぎの作品に思考が切り換わっていますし、『キングダム ハーツ』チームもすでに新しいことに着手しています。『キングダム ハーツ メロディ オブ メモリー』はつぎの作品に着手する手前だったので、メインスタッフが手伝うことができたんです。今後、何が発表できるにしても、すべてが驚くような内容になると思うので、期待して待っていてください。
――期待していい、ということがファンにとっては朗報です。では最後に『キングダム ハーツ メロディ オブ メモリー』について、それぞれひと言ずついただければ。
鈴井本作ではコレクションカードを集めてミュージアムで閲覧する、といったようなコレクション要素もあります。コレクションカードは800枚以上あって、過去作のキーアートなども楽しめます。音楽が聴けるミュージックプレイヤーやムービーを観られるシアターもあり、メインのゲーム以外もすごく凝った作りになっています。対戦や協力プレイなども含め、長く楽しんでいただける仕組みや遊びをいっぱい入れていますので、1年と言わず2年、3年と末永く遊んでいただければと思います。
――ちなみに、ダウンロードコンテンツ(DLC)として追加楽曲などの予定はあるのでしょうか?
鈴井予定はしていないですね。
間DLCを用意していないのは、できるだけ広く多くの方々に、1本のタイトルを安心して長く遊んでいただきたい、それだけの内容になっている、という思いの表れです。家族や友だちなどまわりの身近な方々や、インターネットを通じていろいろな人と『キングダム ハーツ』シリーズを楽しんでいただきたいです。
――では最後に野村さん、お願いします。
野村本作は伏兵的に潜ませていた『キングダム ハーツ』タイトルで、昨今の社会情勢もあり、いつリリースできるか読みづらいところはあったのですが、無事に発売できそうで安心しています。作品的にはこれまでの『キングダム ハーツ』シリーズの総集編的な内容になっていて、シリーズのファンの方には、シリーズ全体が凝縮された形で振り返れますし、『キングダム ハーツ』シリーズは知ってはいるけれど、作品も多いので気後れしている方にも、すごく入りやすい内容になっていますので、本作に触れて、もっと知りたいと思った部分は過去作をプレイしてもらえれば。そして、本作を楽しみながら、今後の展開にも思いを馳せていただければ幸いです。