セガゲームスとCraft Egg/Colorful Paletteが手掛ける新作スマートフォン用リズムゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク』。2020年3月9日、同作の生放送特番が配信され、2020年4月下旬より、事前登録が開始されることが明らかに。また、収録楽曲や3DMV(ミュージックビデオ)が多数公開された。

現在判明している収録楽曲はこちら。

 初音ミクを始めとするピアプロキャラクターズと、本作のオリジナルキャラクター(総勢20人!)の3Dモデルが生き生きと動く3DMVは、本作の大きな見どころのひとつ。そこで本記事では、3DMV制作に関わるクリエイター3人のインタビューを交えて、こだわりが詰まった映像制作の裏側に迫っていこう。

 なお、ファミ通.comでは以前、『プロジェクトセカイ』のプロデューサー陣のインタビューを掲載している。まだお読みでない方は、ぜひ本記事と併せてチェックしてもらいたい。

セガゲームス 小菅慎吾氏(こすげ しんご)

『プロジェクトセカイ』のプロデューサー。3Dグラフィック関連のまとめ役でもある。

Colorful Palette 松田龍弥氏(まつだ りゅうや)

『プロジェクトセカイ』の技術全般を担当。3DMVの開発をひとりで(!)担当しているほか、リズムゲームの設計・開発なども手掛ける、同作の屋台骨とも言える存在。なお、松田氏が3Dのプログラミングを学ぼうと思ったきっかけは、「MikuMikuDance(初音ミクがダンスを踊る映像を制作するために開発された、フリーの3DPV作成ツール。通称MMD)の3Dモデルを、Android1.6(当時のバージョン)で読み込むにはどうしたらいいか」を研究するためだったという。ミクさんによってゲーム業界に導かれたといっても過言ではない。

マーザ・アニメーションプラネット 花田義浩氏(はなだ よしひろ)

『プロジェクトセカイ』の3D全般の演出・クオリティーチェックを行う。3~4年前に、マーザ・アニメーションプラネットも携わっているイベント“初音ミク「マジカルミライ」”のライブを見に行き、「こんな世界があるんだ」と、その熱気に感動。いつか初音ミク関連の仕事に携わりたいと思っていたところで、今回のプロジェクトへの参加が決まった。

3DMVをここまで豪華にする予定はなかった、けれど……

――『プロジェクトセカイ』の開発において、“3DMVを作る”というのは、当初から決まっていたのでしょうか?

小菅MVを作ることは決めていました。でも、いまの形ではなかったんです。

――と言いますと?

小菅当初は、ステージとなる箱があって、そこでキャラクターたちは同じダンスを踊っている……というものを考えていたのですが、だんだんと議論を重ねていくうちに豪華になっちゃいまして。

花田「ダンサーさんを揃えられるなら、みんな違う動きをしていたほうがいいよね」という話から、どんどんどんどん世界が広がっていったんですよ。

――『プロジェクトセカイ』だけに(笑)。

小菅5つのジャンルのユニットを出すことが決まった後に、「それぞれのコンセプトを体現したい」とシンプルに思いまして。

花田最初は、それを聞いたときはびっくりしましたね(笑)。でも、「やりましょう」と。

松田スマートフォンではさまざまなアイドル系ゲームが出ていますが、すごくリッチになっているので、それと比べると、同じダンスを踊るだけのMVでは見劣りしてしまうと思いましたので。

花田いきなり5つもユニットが生まれたので、最初は戸惑いましたけども。ただ、それぞれのユニットの特徴や世界観が定まっていくうちに、MVもそれぞれの方向性に振っていけば、かぶることもなく、世界が扇状に広がっていくなということがわかって。とてもやりがいはありました。

――とはいえ、そんなにもバリエーションのあるMVを作るのは容易ではないですよね……。

松田やっぱり最初の難関は、楽器でしたね。MV付きのリズムゲームはほかにもありますが、キャラクターが楽器を持っているものはほぼないと思うんです。でも、『プロジェクトセカイ』は、キャラクターがそれぞれ別の楽器を持っていたりしまして……。

――Leo/needはバンドユニットですからね。

小菅当初はバンドを想定していなかったので、楽器を持たせるつもりはなかったんですけどね。

花田「楽器を持たせる」と聞いた瞬間に、現場がザワつきましたよ(笑)。

松田「だいぶ、攻めたことを言ってきたぞ……!」と思ったのですが、言われたからには表現したくなっちゃうんですよね。現場のメンバーで集まって、どういうデータの作りにしたらそのMVを実現できるのか、ひとつずつ詰めていきました。

花田モーション収録の際も、プロの方や演奏経験のあるアクターさんに来ていただいて。たまたま、楽器を使ったモーションキャプチャーを経験しているスタッフがいたので、そのノウハウを活かせましたね。どうすればキレイにデータが取れるか、シンバルの動きを再現できるか、とか……。

松田最初から、キャラクターの手元まで見せる前提でモーションを収録していましたね。

花田モーションとは別に、演奏しているアクターさんの手元をビデオで撮って、それを見ながら仕上げていきました。

――モーションのほかに、とくにこだわっていることはありますか?

松田初音ミクたちの楽曲は、ほぼすべて、オリジナルの動画がありますよね。それをかなり意識して作っています。オリジナル版動画に関連する要素を、できるだけ取り込んでいますね。

花田それはひと目でわかるモチーフだったり、よく見るとわかるダンスの振り付けの一部だったりするのですが、必ず何かしらのリスペクト要素を入れています。『プロジェクトセカイ』のMVを見た後に、オリジナルの動画を見直すと、発見があると思いますよ。

ユニットごとにコンセプトが違うMVのこだわり

――ここからは、これまでに公開されたMVについて、こだわりなどをお聞かせください。

『Tell Your World』(作詞・作曲・編曲:kz)

小菅Tell Your World』はいちばん最初のテスト版を作るときからのお付き合いでして、はじめに起用を決定させていただいた楽曲です。スタッフみんなが大好きですし、とても思い入れがあります。

松田技術的な意味部分では、“床に反射したライトの色味が乗る”、“ステージ中段に配置したライトのON/OFFと色の変化ができる”というような部分が見どころです。最初に制作をはじめた楽曲ということもあり、まずは自分たちができることをまず詰め込んでみました。

ワンダーランズ×ショウタイム『スイートマジック』(作詞・作曲・編曲:Junky)

松田技術的なポイントは、キャラクターひとりひとりにライティングを設定しているところです。『プロジェクトセカイ』の開発にあたり、環境光とリムライト(光をオブジェクトの背後から当てること)を、ひとりひとりに関して制御できる仕組みを作りまして、それがいちばん活かされているPVだと思います。

小菅よく作りましたよねえ、これ。

――キャラクターに当たるスポットライトの色も切り替わっていって、すごくカラフルで楽しいMVです。

花田カメラワークによっては映っていないキャラクターも、ガンガン動いているんですよ。どこを切り取るか、本当に苦労しました。

The video could not be loaded.

Leo/need『ロキ』(作詞・作曲・編曲:みきとP)

松田これは苦労しましたね……。『プロジェクトセカイ』では、各キャラクターの身長をMVに反映させているんです。MVに登場させるキャラクターは自由に変えられますが、オリジナルメンバーとは身長や体格の違うキャラクターを配置させたとしても問題がないように、楽器の位置を制御しているんですよ。

――楽器を持たせるだけでもたいへんなのに、キャラクターチェンジのシステムによってさらなる苦労が!

小菅それと、Leo/needのMVの舞台は、最初は“教室”ということしか決めていなかったんです。でもやっぱり楽曲の『ロキ』仕様にしよう、ということになって。ほかの曲にした場合、教室の雰囲気が変わります。

キャラクターを変更し太場合。楽器や手の動きに違和感がないように調整されている。

MORE MORE JUMP!『ハッピーシンセサイザ』(作詞・作曲・編曲:EasyPop)

花田やはりかわいらしさを出したかったので、モーションやフェイシャルのアニメーションにとても気を使いました。それと、カメラワークですね。どう映せばかわいらしくなるのかを考えながらカメラを付けていきました。

小菅ステージを鏡面にしたことで、グッとクオリティーが上がりました。

花田背景のライトが反射することで、より映えるんですよ。

松田キャラクターや背景が反射する仕組みは、この『ハッピーシンセサイザ』のMVを作るにあたって導入したんですよ。ふつうに作ったら、処理が重くなって動かないんですけど、いろいろ検証して、軽くなるように作りました。

花田マーザは基本的にレンダリングの映像を作っているので、反射はあって当たり前の処理なんです。リアルタイム処理のMVに入れるのは難しいのはわかっていましたが、どうしても入れたくって。松田さんに「何とか入れてください」とお願いしました。

Vivid BAD SQUAD『劣等上等』(作詞:れをる 作曲・編曲:ギガP)

松田ワンダーランズ×ショウタイムやMORE MORE JUMP!は“かわいらしい”ユニットなんですが、Vivid BAD SQUADはカッコいいテイストなんです。

――ステージの雰囲気もクールですね。

松田背景にモニターがいくつかありますが、その映像をひとつずつ消していく、という処理を入れていまして。MVを作るごとに、新しい仕様をいれているんですよ、『プロジェクトセカイ』って。

花田僕が「どうしてもやりたいんです」ってお願いしまして……。

――「どうしても入れたい」のオンパレードじゃないですか(笑)。

花田テープ演出なども、どうしても入れたくて入れてもらいました(笑)。

25時、ナイトコードで。『自傷無色』(作詞・作曲・編曲:ササノマリイ)

花田MVの上下に、黒帯が入っているんです、これは。シネスコサイズ(縦横比が1対2.35のサイズ。映画などでよく使われる)なんですよ。これは、ほかのアプリでは導入していない演出ですね。

――できるだけ画面いっぱいにキャラクターを表示するというのが、常ですよね。

花田でも、このサイズにすることで、よりシネマチックに見えるんですよ。没入感も生まれますし。このサイズを選んだことに、映像制作屋としての、僕たちのプライドが詰め込まれているんです!

――ほかのユニットの背景とは趣が違う、不思議な空間です。

花田そうなんです。虚無空間と言いますか……。かなりモーションが映えますね。

いつスクショを撮っても、キャラクターがかわいく見えるようにしたい!

――楽曲や3DMVに関して、気になることをうかがっていきたいと思います。まずは収録曲についてですが、どのような基準で選んでいるのですか?

小菅やはり、バランスを考えながら選んでいますね。楽曲のバランス、ユニットのバランス、初音ミクたちの歴史におけるバランスなどを考えて、クリプトン佐々木さん、カラパレ近藤さんたちと話し合って決めています。楽曲は、原曲のほか、ピアプロキャラクターとユニットキャラクターたちが歌っているバージョンや、ユニットキャラクターのみが歌唱しているバージョンなどがあり、曲によって収録しているバージョンの数や種類が異なります。

――3DMVは、すべての楽曲に存在している?

小菅すべてではないです。一部の楽曲については、2Dのグラフィックを組み合わせたMVなどを用意しています。

――MVをひとつ作るには、だいたいどれくらいの時間がかかるものでしょうか。

花田「こういう演出をしたいな」と発案してからMVが出来上がるまで、だいたい2~3ヵ月くらいですね。1本ずつではなく、複数のMVを同時並行して作っています。

松田数を重ねることに、だんだんとスピードは上がっていると思います。セガさんとマーザさんが広げた夢のアイデアを落とし込むのはたいへんなのですが(笑)。

小菅鏡面ステージのほか、フォグ(霧)や塵も表現していただけて。

松田いちばんしんどかったのは、被写界深度ですかね。被写界深度は、きれいに出そうとすると処理が重くなるので、こういったスマートフォンのゲームでは避けられがちなんです。でも、『プロジェクトセカイ』を作るにあたって、“低スペックの端末でもしっかり処理できて、かつリッチな絵作り”をコンセプトにしていましたので、理想の被写界深度を実現するために力を尽くしました。

――並大抵のことではないですよね。

松田スクリーンショットを撮ったときに、つねにキャラクターがかわいく見えるようにしたい、という気持ちがあったので、それをどうすれば実現できるかを考えましたね。グラフィックに関しては、リッチなモードと標準のモードを用意してはいますけど、見た目にはほぼ差がないんです。スクリーンショットを撮って見比べても、どっちがどっちかわからないくらいだと思います。

――それはすごいですね!

松田それをどうやって実現したかは……うまくいったら、CEDEC(※国内最大級のゲーム開発者向け技術交流会)などで話したいと思います(笑)。

――(笑)。さて、今回多数のMVが公開されたことで、ユーザーからも反響があると思いますが……いまはどんなお気持ちですか?

小菅試行錯誤を重ねてきた結果、自信を持って公開できる内容になったと思います。ユーザーの皆さんからの声が楽しみです。

花田自分でも、何度も見ちゃうくらい、いいものができたと思っていますので。ぜひ皆さんに悶えていただきたいです(笑)。

松田これから作る曲も、もちろんこだわっていきます。楽曲ごとに、違った演出や体験を作っていきたいですね。いろいろな試みをするための土台は出来たので、そのうえで新しい見せかたをしていければと思います。

――いまの段階でこのクオリティーですから、今後、どれだけ上がっていくのか楽しみですね。

花田キャラクター、10人くらい出ちゃうんじゃないですか?

松田それは勘弁してください(笑)。