全世界累計アカウント数(※)が2200万を突破し、異例の拡大を続けるスクウェア・エニックスのオンラインRPG『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FFXIV』)。数あるコンテンツの中でも、とくにプレイヤーからの注目を浴びるのが高難易度レイドコンテンツだ。本記事は、そんな高難易度レイドにスポットを当てたインタビュー企画の第3弾。今回は、希望の園エデン:再生編の開発者インタビューをお届けする。

※日本・北米・欧州・中国・韓国の5リージョンの累計アカウント数。フリートライアル版のアカウントを含む。

本記事の取材に際して、写真撮影時以外はマスク着用、座席の間隔の確保等、感染症対策を徹底したうえで実施しています。

<これまでの記事>

 拡張パッケージ第3弾『漆黒のヴィランズ』の高難易度レイドシリーズ“希望の園エデン”。“覚醒編”、“共鳴編”に続き、第3弾として追加された“再生編”は、希望の園エデンシリーズを締めくくるコンテンツだ。本企画では、再生編の開発に携わった開発者たちへのインタビューを2回に分けてお届けする。ギミックの開発秘話やボス誕生までの顛末など、気になる話題が盛りだくさんとなっているので、じっくりと読み進めてほしい。なお、本記事は再生編のネタバレを多く含むため、未コンプリートの人は注意されたし。

 また、これまでと同様に、インタビューに参加いただいた5名の開発者が手掛けたコンテンツ一覧も掲載している。このリストを眺めていると、なんとなくその開発者の好みや傾向などが見えてきて、ヒカセン(“光の戦士”の略。『FFXIV』プレイヤーのこと)なら、妙に納得したりニヤニヤできるはず。ぜひ、こちらもチェックしてほしい。

中川誠貴氏(なかがわまさき)

リードバトルコンテンツデザイナー。バトルコンテンツを制作するモンスター班のリーダーとして、希望の園エデンシリーズの開発に携わる。現在はチームのまとめ役という立場だが、コンテンツを直接手掛けることもあり、希望の園エデン:覚醒編の2層、共鳴編の1層(企画)を担当。文中は中川。

秦 成志朗氏(はたせいしろう)

バトルコンテンツデザイナー。希望の園エデン:再生編の1層を担当。文中は秦。

高橋万里氏(たかはしばんり)

バトルコンテンツデザイナー。希望の園エデン:共鳴編の1層(実装、調整)、再生編の2層を担当。文中は高橋。

川本貴志氏(かわもとたかし)

バトルシステムデザイナー。希望の園エデン:覚醒編の1層、再生編の3層を担当。文中は川本。

吉橋和登氏(よしはしかずと)

バトルコンテンツデザイナー。希望の園エデン:共鳴編の3層、再生編の4層を担当。文中は吉橋。

自身も“ヒカセン”だからこそのモチベーション、そしてプレッシャー

──中川さんと川本さんは覚醒編のインタビュー、そして高橋さんと吉橋さんは共鳴編のインタビューで自己紹介いただいたので、ここではご紹介を割愛させていただくとしまして。まずは、今回が初登場となる秦さんにお話をうかがいます。自己紹介を兼ねて、簡単にご来歴をお聞かせください。

自分は2018年6月ごろ、パッチ4.3“月下の華”がリリースされた直後あたりにチームに加わりました。それ以前は、スマートフォン向けアプリのプランナーをしていたのですが、そろそろ自分もいろいろなゲームを作ってみたいという思いがあり、ずっと『FFXIV』を遊んでいたこともあって、『FFXIV』の開発チームの採用に応募してみたんです。そうしたら、受かってしまったという感じですね。

『FF14』“希望の園エデン:再生編”開発者インタビュー(前編)。“エデン”を締めくくる最終シリーズの制作秘話やボス誕生の舞台裏に迫る!

──「受かってしまった」という言い回しは本企画で毎回出てきますよね(笑)。さすがに、そんなことはないだろうというか、ご謙遜だと思うのですが……。

中川彼はこう言っていますが、面接のときからすごい熱意でしたよ(笑)。

一同 (笑)。

──秦さんがチームに入って最初にご担当されたのは何ですか?

最初は禁断の地 エウレカ:ピューロス編のNM(ノートリアスモンスター)を作ることでした。

──そこから徐々にバトルコンテンツを作ることに慣れていったわけですね。ほかにもさまざまなコンテンツを担当されたと思いますが、その中でもとくに印象に残っているものは何ですか?

いちばん印象に残っているのは、“ルビーウェポン破壊作戦”です。このコンテンツは、自分が初めて討伐・討滅戦を担当させてもらったもので、いままでにはないような画を作ろうとしたり、ダラガブが落ちてくる演出を挟んだりと、とにかく必死に作ったので強く印象に残っています。

──中川さんはリードとして秦さんをどう見ていましたか?

中川彼は何でも器用にこなすタイプです。先ほどエウレカの話が出ましたが、秦はヒュダトス編にも携わっていて、“バルデシオンアーセナル”の1体目のボスとして登場するアルト&オーウェンも彼が担当しています。アルト&オーウェンは、プレイヤーがふた手に分かれて同時に倒すという特殊なボスで、開発進行上、複雑な仕様を書かなければならなかったのですが、それをそつなくまとめてくれました。ほかにも、サファイアウェポンとのクエストバトルも彼の担当です。ロボットに搭乗して戦う特殊なクエストで、ノウハウがない状態から、さまざまな問題があったにもかかわらず、完成度の高いバトルに仕上げてくれました。そういったこともあって、秦はすごく器用なゲームデザイナーだなと。

『FF14』“希望の園エデン:再生編”開発者インタビュー(前編)。“エデン”を締めくくる最終シリーズの制作秘話やボス誕生の舞台裏に迫る!

──そのあたりは前職が活かされているのですか?

分野が違ったので、新しく学んでいった感じです。前職の経験がまったく活かされていないわけではないのですが……。

──そうして、ついにレイドを担当することになったと。

中川そうですね。彼にはいろいろなジャンルのコンテンツを担当してもらっていたのですが、レイドだけはやっていなかったので。

──レイドの担当が決まったときの秦さんの心境はいかがでしたか?

「とうとう来たか……」と思いました。自分も『FFXIV』のいちプレイヤーとして、ほとんどのレイドコンテンツを遊んできましたが、それらからギミックを突破できたときの興奮や、苦難の末に踏破したときの達成感など、心に残るゲーム体験をもらいました。レイドを担当することが決まって、今度は自分がその感動をプレイヤーの皆さんにお届けできるのだろうかと、正直、不安はありました。ですが、担当するなら、爪痕を残すくらいの気概で臨もうと企画を進めていきました。

──そこは自身もヒカセンであるがゆえに、というところですよね。では、続いて各層の人選の意図をお聞かせください。

中川1層から4層までの担当者がまだ白紙だったころ、川本が「自分は再生編の4層をやりたいです」と手を挙げてきたんです。自分は熱意のある人が好きなので、それはとてもうれしくて。とはいえ、川本は覚醒編で1層を担当していますが、2層と3層の経験がありません。そこでいきなり4層はきびしいかもしれないということで、再生編の3層を任せることにしました。実際、3層は公開された後の評判もよかったので、その熱意がちゃんと表れたなと。

──川本さんはなぜ手を挙げたのでしょうか?

川本せっかくなのであれば、やったことがないコンテンツに挑戦してみたいと思ったのです。あとは、急なスケジュールの仕事が来るよりは、早めに志願してきっちり作業時間がある状態で担当しようと(笑)。

『FF14』“希望の園エデン:再生編”開発者インタビュー(前編)。“エデン”を締めくくる最終シリーズの制作秘話やボス誕生の舞台裏に迫る!

──覚醒編のインタビューで、人手が足りないところの仕事をよく引き受けるという話をされていましたね(笑)。

川本それもあって、今回は早めに相談しました(笑)。4層担当に志願したのは、せっかく手を挙げるのなら、大きくいこうという思いがあったからです。

──結果的に3層を担当されることになりましたが、心境的にいかがでしたか?

川本よかったです。むしろ、1、2層かなと思っていたので、3層を担当させてもらえるのかとビックリしました。プロジェクトとしては、モンスター班の若手に経験を積ませることも大事だと思っていますし。そうした中でも、自分のような古株にやらせてもらえるんだなと。

──2層の高橋さん、4層の吉橋さんは共鳴編から続投する形ですが、これはどういう意図だったのでしょうか?

中川共鳴編では1層を高橋、3層を吉橋に担当してもらいましたが、その時点で再生編も任せることを決めていました。共鳴編で経験を積んで、それを再生編で活かしてもらおうと。

──確かに、1層ずつステップアップしている形ですね。

高橋いままで担当したレイドバトルやクエストバトルで、たくさんのフィードバックをいただいてきました。再生編の2層ではそれを参考にして、意気込んで企画を進めていきました。

『FF14』“希望の園エデン:再生編”開発者インタビュー(前編)。“エデン”を締めくくる最終シリーズの制作秘話やボス誕生の舞台裏に迫る!

──前回の反響をしっかり意識されたのですね。

高橋前回のインタビューでもお話しさせていただいたのですが、『FFXIV』のいちばんのおもしろさは、パーティメンバー全員で困難に立ち向かい、力を合わせて乗り切ったときの達成感を味わえることだと思っています。再生編は、『漆黒のヴィランズ』の最後の8人用レイドとなるので、それをうまく表現できるように強く意識して企画しました。

──4層の担当となった吉橋さんはいかがでしたか?

吉橋前回の共鳴編3層が初めてのレイドボスの企画、そして実装でしたし、4層を担当するのはもっと経験を積んでからだろうなと思っていたので、すごく驚きました。希望の園エデンシリーズの締めくくりとなるボスですし、プロミス・オブ・エデンに関しては、企画段階から野村哲也さんからすばらしいデザインをいただいていたので、すごくプレッシャーを感じていたのを覚えています。

──4層は注目度も高いですもんね。

吉橋あとは、作業が本格化したころに新型コロナウイルスへの対策があり、リモートワークも本格運用となって、自宅で心細いというか、「大丈夫かな……」と不安にかられながら作業を進めていました。リードの中川を始め、相談できるモンスター班のメンバーはたくさんいるので、本当におもしろくできるのかなと悩んだときには、チャットツールなどで声をかけて相談に乗ってもらいました。

『FF14』“希望の園エデン:再生編”開発者インタビュー(前編)。“エデン”を締めくくる最終シリーズの制作秘話やボス誕生の舞台裏に迫る!

──リモートワークだと相手の状況が見えづらいので、ちょっとした相談も気を使いますよね。とはいえ、相談のためにWeb会議の時間を設定します、というのもそれはそれでまどろこしくて(笑)。

中川そうなんですよね。モンスター班の場合は、週に1回、30分ほど雑談だけのリモートミーティングを設けています。そこでは仕事の話は禁止で、本当に雑談をするだけです。ストレス解消や、雑談から生まれるクリエイティビティーなどが目的の会議です。

川本へえ、そうなんだ!

──川本さんはバトルシステム班なので、初耳でしたか(笑)。バトルシステム班ではそういった雑談の時間を設けられていないんですか?

川本僕たちは会社で導入しているコミュニケーションツールでふだんから雑談していますね。このゲームが発売されたとか、ニュースにこんなものがあった、といったことをチャットしたりして。決まった時間を設けないのは、セクションの人数が少ないからというのも大きいかもしれません。

再生編のボスはシナリオ側の要望が色濃く反映されている

──前回までのインタビューで、各層のボスは中川さんと各セクションのリード陣、そしてプロデューサー兼ディレクターの吉田さん(吉田直樹氏)で固めていくとお話でしたよね。今回も同じような形で決めていったのですか?

中川今回は、おもにシナリオ側でやりたいことをしっかりと聞いて、その希望をどうやって叶えるかを考えていきました。

──もちろん、基本的にシナリオありきでボスが決まるのでしょうけど、今回はいつもに増してシナリオのウエイトが大きかったということでしょうか?

中川そうです。まずは、闇属性を励起するというシナリオがあって、闇属性と言ったら暗闇の雲だろうという感じで、1層のボスがすんなりと決まりました。2層で影の王を使いたいというのも、シナリオ側からの希望です。最初は、1層が暗闇の雲、2層が影の王と、そのどちらも闇属性で、バトルを作る側としては差別化が難しいという懸念があり、シナリオ側に一度考え直してほしいと伝えました。

──なんと。バトル側が要望を突っぱねることもあるんですね。

中川それはもちろんそうです。懸念があるまま進めてしまうとバトルが作りづらくなり、結果的にそれはバトルコンテンツのクオリティーに大きく影響します。

『FF14』“希望の園エデン:再生編”開発者インタビュー(前編)。“エデン”を締めくくる最終シリーズの制作秘話やボス誕生の舞台裏に迫る!
再生編1のボス“暗闇の雲”。

──1層と2層に登場する技には全部“ダークネス”が付くみたいな(笑)。

中川実際にはそうなりませんが、極端に言うとそんな感じですね(苦笑)。ただ、シナリオ側から、それでも2層は影の王でいきたいという強い要望があって、ならば闇属性のイメージをどうやって差別化させるか、ということを考えていきました。いろいろなアイデアを出していく中で、2層は“影”を使ったギミックに特化すれば、変化を出せるだろうと。

──こんなやり取りがあったことを2層担当の高橋さんはご存じでしたか?

高橋いえ、初めて聞きました(笑)。でも、中川は自分たちが作りやすいように調整してくれているのは知っているので、そのあたりは信頼しています。

『FF14』“希望の園エデン:再生編”開発者インタビュー(前編)。“エデン”を締めくくる最終シリーズの制作秘話やボス誕生の舞台裏に迫る!
再生編2のボス“影の王”。

──続いて3層のボス“フェイトブレイカー”ですが、これはどのような流れで決まったのでしょうか?

中川3層もシナリオ側からの要望で、“リーンが想像する最強の存在”というコンセプトが提示されていたんです。これはもうサンクレッドでしょう、と提案して、そこに異論はなかった感じですね。共鳴編の4層でリーンをテーマにしたバトルを作り、それでうまくいったという実感が得られていたのも大きかったかなと。

『FF14』“希望の園エデン:再生編”開発者インタビュー(前編)。“エデン”を締めくくる最終シリーズの制作秘話やボス誕生の舞台裏に迫る!
再生編3のボス“フェイトブレイカー”。

──確かに、共鳴編4のストーリーとバトルが組み合わされた完成度はすばらしかったです。

中川ちなみに、3層のフェイトブレイカーはちょっと贅沢な作りになっていて、ふだんアートを発注すると、基本的にはその時点でアート班の担当者が決まるのですが、今回はアート側のコストが多く取れるということで、コンペをやらせてもらったんです。アート班の中で手が空いる人たちに10〜15パターンくらいアイデアを描いてもらい、それを会議室に並べて、吉田やリード陣が意見を交換して決めていくというものです。

──じつは、さまざまなサンクレッド(フェイトブレイカー)がいたと。

中川そうですね。白馬に乗ったサンクレッドや、アラグの武器を使うサンクレッド、あとは『FFVIII』に登場するグリーヴァの特徴を持ったサンクレッドとか、いろいろなアイデアがありました。

──使う技なども決まっていない中で、アーティストも自由に描けるわけですね。

中川アーティストも楽しんでくれるし、いろいろな発想を見ることができるので、こちらとしてもすごくうれしいですね。

──いまのデザインを選んだ決め手はどこだったのでしょうか?

中川単純にカッコよかった、というのがいちばんの理由ですね。あとは、ランジートをイメージさせる蛇のような使い魔が周囲を飛んでいるのですが、こういったボス以外の要素があるとギミックが作りやすく、バトルを組み立てやすいのです。吉田も、“サンクレッドだけでなく、リーンはランジートのきびしさが自分に向けられた愛情だとしっかり理解していた”ことが、デザインとしてサンクレッドと融合されているのがいいと、お気に入りだったようです。ガンブレードと使い魔というふたつの要素があって、川本も作りやすいのではないかと。

川本ご配慮いただいて、ありがとうございます(笑)。

『FF14』“希望の園エデン:再生編”開発者インタビュー(前編)。“エデン”を締めくくる最終シリーズの制作秘話やボス誕生の舞台裏に迫る!

──では最後に4層ですね。

中川4層は、『漆黒のヴィランズ』がリリースされる前の段階から、希望の園エデンシリーズの最終層に登場するボスは、野村哲也さんにアートを描いてもらうということが決まっていました。吉田のほうから発注して、早い段階でガイアとプロミス・オブ・エデンのデザインをあげていただいていたんですね。開発チームで、そのふたつのキャラクターのデザインを見て、シナリオとバトルの詳細を後付けしながら組み立てていきました。

『FF14』“希望の園エデン:再生編”開発者インタビュー(前編)。“エデン”を締めくくる最終シリーズの制作秘話やボス誕生の舞台裏に迫る!
『FF14』“希望の園エデン:再生編”開発者インタビュー(前編)。“エデン”を締めくくる最終シリーズの制作秘話やボス誕生の舞台裏に迫る!
野村哲也氏デザインのガイア(左)とプロミス・オブ・エデン(右)。
CHARACTER DESIGN: TETSUYA NOMURA

──このことが覚醒編の1層でエデン・プライム(いわゆるプライム戦)が出てきた理由になるわけですね。

中川そうですね。いちばん最初にエデン・プライムを登場させて、最後にもエデンを登場させるというのは現場関係者で決めて、こういう形でいきたいと吉田に伝えました。

──最初と最後だけは決まっていたと。

中川ただ、零式4層の後半フェーズに“闇の巫女”を登場させるということは、その段階では決めていませんでした。そもそも前後半に分けるというのも、5.0開発中の段階では決めていなかったんです。

──覚醒編と共鳴編の4層は前後半制ではないですもんね。

中川覚醒編、共鳴編でのプレイヤーの皆さんのフィードバックを見ていろいろと検討した結果、再生編では前後半の構成でいくことに決めました。

──再生編がリリースされて、零式4層の後半に闇の巫女が登場すると知ったとき、ものすごく納得感があったのを覚えています。

『FF14』“希望の園エデン:再生編”開発者インタビュー(前編)。“エデン”を締めくくる最終シリーズの制作秘話やボス誕生の舞台裏に迫る!
零式の再生編4にのみ登場する“闇の巫女”。

中川覚醒編や共鳴編の感想の中には、「『FFVIII』のアルティミシアと戦いたい!」という声がけっこうあったのです。『FFXIV』のいいところは、すでに決まっていることでもプレイヤーの皆さんの声を聞いて、微調整しながら作っていくところです。そういう声があるならばと、アルティミシアを4層のボスにする可能性を吉田とも議論しました。

──検討はされていたのですね。

中川最終的な結論としては、希望の園エデンシリーズのシナリオは、ガイアとリーン、そしてエデンの3つのキャラクターを中心としたもので、唐突にアルティミシアをボスとして登場させても決して効果的な形にはならないだろうと。自分たちが腑に落ちないものを、「プレイヤーの皆さんが望むものだから」と言って出しても絶対にいい結果にはならないし、『FFVIII』を作ってくれた開発者の人たちにも、ものすごく失礼なことです。そのため、オリジナルのキャラクターを活かす形で、最後は闇の巫女でいくことに決めました。

──思い起こせば、『漆黒のヴィランズ』の発表のタイミングで、希望の園エデンシリーズの存在とともに、ガイアのイラストが発表されましたよね。そこで印象的だったのが、ガイアがハンマーを持っていたことでした。そこで吉田さんが「『FFXIV』の武器にハンマーはないのだけれど、うまく活かしたい」といったコメントをされていたのを覚えています。そこから、闇の巫女がハンマーを使う感じになったのでしょうか?

中川ハンマーを使うこと自体は、共鳴編4で氷の中に閉じ込められたリーンを助け出すシーンなどに反映されていますね。じつのところ今回の4層では、最初に闇の巫女のデザインが上がってきた時点では、ハンマーではなく杖を使う予定だったんです。ただ、闇の巫女そのもののモデリングにすごくコストがかかるという見積もりが出ていたので、杖とそのモーションまで新しく作るには期間的にきびしい状況でした。それで、最初に公開されたアートでハンマーを持っていたし、共鳴編4の演出でハンマーのモーションも作ってあるので使えるなと。

『FF14』“希望の園エデン:再生編”開発者インタビュー(前編)。“エデン”を締めくくる最終シリーズの制作秘話やボス誕生の舞台裏に迫る!
ノーマル難度の共鳴編4でのカットシーン。このときに制作したモーションが闇の巫女に活かされることになった。

──そんな裏話が(笑)。さて、再生編全体のお話はそろそろ締めに入りますが、希望の園エデンシリーズの完結編として制作するにあたり、難度やバトルの演出面で意識されたポイントはありましたか?

中川先ほどお話しした、零式の4層を前後半に分けるというところは、明確に意識して、関係者とかなり議論したうえで作りました。レイド全体の難度に関しては、シリーズが進むにつれて徐々に難度を上げていくという方針があるので、再生編がいちばん歯応えを感じられるように調整しています。

 これは以前にもお話ししましたが、拡張パッケージがリリースされた直後のレイドはそこまできびしいものにはせず、なるべく間口を広げて、レイドというコンテンツに興味を持ってもらうことを重視します。そこからだんだんと『FFXIV』のバトルの真髄でもある、“難しいコンテンツを時間をかけて乗り越えたときの達成感”というものをより味わえるものにしていくという感じですね。ですので、今回は零式としてのギリギリの難度を狙って調整をしていきました。零式4層のライオンのギミックあたりは、“絶”の難度にちょっと足を踏み入れている感じですが……。

──そのあたりはインタビュー後半でお聞かせください(笑)。ともあれ、レイドに対する考えは一貫していて、今回も変わらないということですね。

中川覚醒編や共鳴編のフィードバックもたくさんいただいて、ターゲットサークルのサイズをこれまで以上に広げたり、ギミック処理の安全地帯ギリギリから近接攻撃をできるように意図したりなど、各ジョブが気持ちよく攻撃できるように、できる限りの気配りを行ったつもりです。担当者以外のメンバーにもいつも以上にテストプレイやバランス調整に対して意見を言ってもらったりして、それらを時間が許す限り反映していきました。その結果が、再生編を多くの方に楽しんでいただけている結果につなげられたのではないかと思っています。

前編はここまで。近日公開予定の後編では、希望の園エデン:再生編の各層を深掘り! お楽しみに!

担当コンテンツ一覧(抜粋)

 今回、インタビューに参加していただいた5名の担当コンテンツ一覧(抜粋)を公開。最新アップデートとなるパッチ5.55で追加された新たな探索フィールド“ザトゥノル高原”の担当者も明らかに!

中川誠貴氏(リードバトルコンテンツデザイナー)

『FF14』“希望の園エデン:再生編”開発者インタビュー(前編)。“エデン”を締めくくる最終シリーズの制作秘話やボス誕生の舞台裏に迫る!

ダンジョン

  • 怪鳥巨塔 シリウス大灯台
  • 財宝伝説 ハルブレーカー・アイル
  • 遺跡救援 カルン埋没寺院 (Hard)
  • 神聖遺跡 古アムダプール市街 (Hard)
  • 天竜宮殿 ソール・カイ
  • 永久焦土 ザ・バーン(ミストドラゴン)
  • 漆黒決戦 ノルヴラント(幻光のバーサーカー)

討伐・討滅戦

  • ドルムキマイラ討伐戦
  • ハイドラ討伐戦
  • イフリート討滅戦
  • ガルーダ討滅戦
  • リヴァイアサン討滅戦
  • シヴァ討滅戦
  • アシエン・ナプリアレス討伐戦
  • ラーヴァナ討滅戦
  • 女神ソフィア討滅戦
  • 神龍討滅戦

高難易度レイド
<機工城アレキサンダー>

  • 律動編1:奇才のラットフィンクス
  • 律動編3:万能のクイックシンクス
  • 天動編3:クルーズチェイサー

<次元の狭間オメガ>

  • シグマ編3:ガーディアン

<希望の園エデン>

  • 覚醒編2:ヴォイドウォーカー
  • 共鳴編1:ラムウ(企画のみ)

アライアンスレイド
<クリスタルタワー:シルクスの塔>

  • 妖艶のスキュラ
  • 不壊のガーディアン
  • 異才のアモン
  • 始皇帝ザンデ

<クリスタルタワー:闇の世界>

  • アンラ・マンユ
  • ファイブヘッド・ドラゴン
  • ケルベロス
  • 暗闇の雲

<魔航船ヴォイドアーク>

  • ソウトゥース&イルミンスール
  • エキドナ

<禁忌都市マハ>

  • オズマ

<影の国 ダン・スカー>

  • スカアハ
  • ディアボロス

クエストバトル

  • 2.0〜4.0までのクエストバトル
    ※100個以上あるのでタイトルは割愛

その他

  • 禁断の地 エウレカシリーズ
  • フェイスシステムベースAI
  • セイブ・ザ・クイーンシリーズ

秦 成志朗氏(バトルコンテンツデザイナー)

『FF14』“希望の園エデン:再生編”開発者インタビュー(前編)。“エデン”を締めくくる最終シリーズの制作秘話やボス誕生の舞台裏に迫る!

ダンジョン

  • 終末幻想 アーモロート (ファーストビースト)
  • 黄金平原 パガルザン (魔導フォートレス)

討伐・討滅戦

  • ルビーウェポン破壊作戦

高難易度レイド
<希望の園エデン>

  • 再生編1:暗闇の雲

アライアンスレイド
<YoRHa: Dark Apocalypse 複製サレタ工場廃墟>

  • エンゲルス

クエストバトル
■メインクエストバトル
<5.0>

  • 仕掛けと呪いと毒と
  • 膨らんだ嘘

■クロニクルクエスト「ウェルリト戦役」

  • 飛べ! ウェルリトへ

その他
■禁断の地 エウレカ:ピューロス編
<NM>

  • レウコシアー
  • アスカラポス
  • ライトニング・ドゥクス

<エレメンタルコンフリクト>

  • 珊瑚狙いのしあわせうさぎ
  • 岩封じのしあわせうさぎ

■禁断の地 エウレカ:ヒュダトス編
<バルデシオンアーセナル>

  • アルト&オーウェン

<エレメンタルコンフリクト>

  • 水遊びのしあわせうさぎ

■南方ボズヤ戦線
<クリティカルエンゲージメント>

  • 腐乱野菜「ピーリフール」
  • 怨念の死霊「スパルトイ」
  • カストルム・ラクスリトレ攻城戦 アドラメレク

<スカーミッシュ>

  • 潔白の脱走兵

■ザトゥノル高原
<クリティカルエンゲージメント>

  • 模造統制者「IVレギオン・ハシュマリム」
  • 第IV軍団分遺隊長「メネニウス」
  • 戦慄の百獣使い「獣王ライアン」
  • 旗艦ダル・リアータ攻城戦 サウニオン

高橋万里氏(バトルコンテンツデザイナー)

『FF14』“希望の園エデン:再生編”開発者インタビュー(前編)。“エデン”を締めくくる最終シリーズの制作秘話やボス誕生の舞台裏に迫る!

高難易度レイド
<希望の園エデン>

  • 共鳴編1:ラムウ(実装・調整担当)
  • 再生編2:影の王

アライアンスレイド
<YoRHa: Dark Apocalypse 複製サレタ工場廃墟>

  • 多関節型:司令機

<YoRHa: Dark Apocalypse 人形タチノ軍事基地>

  • 融合シタ人形タチ

クエストバトル
■メインクエストバトル
<5.0>

  • 激動のレイクランド

<5.3>

  • 色あせた記憶

<5.4>

  • バイルブランドの船出

■蛮族クエストバトル
<ピクシー族>

  • この心が望むがままに

■ガンブレイカージョブクエストバトル(漆黒のヴィランズ)

  • 殺害予告? 人気演奏家を護れ!(Lv60)
  • 真のガンブレイカー(Lv70)

その他
■禁断の地 エウレカ:ヒュダトス編
<NM>

  • ステゴドン
  • モレク
  • ピアサ
  • フロストメーン
  • レウケー
  • ケートー

■ザトゥノル高原
<クリティカルエンゲージメント>

  • 新兵器投入「機甲百人隊」
  • 旗艦ダル・リアータ攻城戦 鉄火のサルトヴォアール
  • 旗艦ダル・リアータ攻城戦 ディアブロ・アーマメント

川本貴志氏(バトルシステムデザイナー)

『FF14』“希望の園エデン:再生編”開発者インタビュー(前編)。“エデン”を締めくくる最終シリーズの制作秘話やボス誕生の舞台裏に迫る!

ダンジョン

  • 惨劇霊殿 タムタラの墓所 (Hard)
  • 廃砦捜索 ダスクヴィジル
  • 霊峰踏破 ソーム・アル
  • 蒼天聖戦 魔科学研究所
  • 暴走戦艦 フラクタル・コンティニアム (Hard)(マザービット、アルテマビースト)
  • 爽涼離宮 マリカの大井戸

討伐・討滅戦

  • ギルガメッシュ討伐戦
  • 真ギルガメッシュ討滅戦
  • 真ヨウジンボウ討滅戦
  • リオレウス狩猟戦
  • 極ハーデス討滅戦

高難易度レイド
<希望の園エデン>

  • 覚醒編1:エデン・プライム
  • 再生編3:フェイトブレイカー

クエストバトル
■TANKロールクエストバトル(漆黒のヴィランズ)

  • 揺れる天秤(Lv76)
  • いつか君が言った言葉(Lv80)

その他

  • 初心者の館
  • ディープダンジョン 死者の宮殿(ボスを除くモンスター関係のみ担当)
  • ディープダンジョン アメノミハシラ(ヒルコを除くボス以外すべて担当)
  • マスクカーニバル(全31ステージ中、22ステージ)

■南方ボズヤ戦線
<クリティカルエンゲージメント>

  • 新たなる鉄巨人「魔導レイバーX型」

吉橋和登氏(バトルコンテンツデザイナー)

『FF14』“希望の園エデン:再生編”開発者インタビュー(前編)。“エデン”を締めくくる最終シリーズの制作秘話やボス誕生の舞台裏に迫る!

高難易度レイド
<希望の園エデン>

  • 共鳴編3:ダークアイドル
  • 再生編4:プロミス・オブ・エデン/闇の巫女

アライアンスレイド
<YoRHa: Dark Apocalypse 複製サレタ工場廃墟>

  • ホッブス

クエストバトル
■メインクエストバトル
<5.0>

  • ミンフィリア救出作戦
  • 廃都ナバスアレン(サンクレッドなりきり)

<5.55>

  • 黎明の死闘

その他
■南方ボズヤ戦線
<クリティカルエンゲージメント>

  • 百獣使い「獣王ライアン」
  • カストルム・ラクスリトレ攻城戦 第IV軍団魔獣大隊 獣王ライアン&ドゥン

■ザトゥノル高原
<クリティカルエンゲージメント>

  • 旗艦ダル・リアータ攻略戦