メルゴダからビーム、封印された恋愛、別ver.のOP ――野島一成氏&開発陣が語る『ドラゴンズドグマ オンライン』シナリオ制作秘話【シーズン2.3記念特別インタビュー】

『ドラゴンズドグマ オンライン』のシナリオ制作秘話を、シナリオライター・野島一成氏、開発ディレクター・木下研人氏、開発プロデューサー・松川美苗氏、ゲームデザイナー・宇野亮氏に聞く。

●シナリオ制作の裏話やここだけの開発エピソードを訊く!

 2017年3月16日実施の“シーズン2.3”アップデートにて、ついにフィンダムを舞台にしたシーズン2の物語が完結となる。それを記念して今回は特別に『ドラゴンズドグマ オンライン』(以下、『DDON』)の“物語”に焦点を当て、シナリオ制作にまつわるエピソードや、ゲーム開発の裏話などについて、シナリオライター・野島一成氏、プロデューサー・松川美苗氏、ディレクター・木下研人氏、ゲームデザイナー・宇野亮氏に話を伺った。

▲写真左より
ゲームデザイナー・宇野亮氏(カプコン)
ディレクター・木下研人氏(カプコン)
シナリオライター・野島一成氏(ステラヴィスタ)
プロデューサー・松川美苗氏(カプコン)

●そんな急なお話だったんですか!?

――まずは、『DDON』のシナリオライターとして野島さんを起用した経緯や理由をお聞かせください。

松川 『DDON』は、『ドラゴンズドグマ:ダークアリズン』と並行開発していたこともあり、シナリオやキャラクターを形にしようと思ったときに、開発の人手が足りなかったんです。そこで私が「シナリオのスペシャリスト、野島さんに電話します!」と言ったのがきっかけでした。

木下 提案を聞いた時は心配でした。ビックネームの方ですし、まずは『ドラゴンズドグマ』の世界にも理解が必要な設定だったので。踏まえて物語を書いていただけるのかと。

松川 そのとき、私の提案を聞いたメンバーは「いやいや、松川は何てことを言っているんだ(汗)」という状態でしたね。でも私が「とりあえず一度電話ミーティングをしてみて」と、現場を説得しました。それで野島さんに「助けてほしいんですけど!」と電話して。

野島 「お受けできると思います」とあっさりオーケーした気がします。

松川 大作家さんだから開発メンバーは不安があったみたいですけど(笑)。野島さんはとても制作現場と密接に物語を作って下さる方なので、大丈夫だと思っていました。

木下 自分たちの思ったものになるのかという思いが強かったのは事実ですね。でも、実際に野島さんにお会いしてみると、世界観、設定面を深く質問してくださり、シナリオ制作の話もスムーズに進みました。

――それでは、わりと急なお話だったのですね?

野島 2014年の6月頃に依頼を受けて、9月にはメインシナリオを上げてくれとお願いされました。パッケージのゲームではなく、主要なシーン以外は後から変えられる余地があったので「じゃ、大丈夫かな」と。

松川 イベントシーンの制作やボイスの収録も迫ってきており、シナリオの会話劇が必要だったので、急なお願いを無理に聞いてもらいました。

――起用のお話を聞いたときには、どんな心境でしたでしょうか?

野島 単純に松川さんに覚えていてもらえてありがたかったです。一度仕事したきりという方も多いので。そういううれしさと同時に、ほかの方が作った設定を使ってシナリオを書いたことがなかったので、ちょっと不安な部分もありました。

松川 開発チームが暖めてきた設定や展開などを時系列ごと表にまとめてお渡しして、そこからプロットを書き上げていただきました。

野島 プロットを2稿出した後、メインシナリオの執筆に入りました。でもシナリオ化するときには、かなり変更した記憶があります。

木下 シーズン1は、オンラインゲームとしての立ち上げのいちばん始めの“掴み”になるシナリオでしたから、試行錯誤していただきました。本当にありがたかったです。

●メルゴダからビームが放たれる!?

――「覚者がひとりではない」という設定は、もともと決まっていたのでしょうか?

木下 いちばん初めに決めた設定です。『ドラゴンズドグマ』をオンライン化しようとしたときに、プレイヤー全員が主人公として物語を進めていける世界にしたいという思いがありました。シーズン1では、白竜が危機に陥った背景、そこから数多の覚者が生まれた設定、それらの理由、因果関係を物語にする流れがありました。

――白竜と多数の覚者の関係は根本にあったのですね。『DDON』のシナリオ制作は、どのような部分から始めたのでしょうか?

野島 やはり、まず『ドラゴンズドグマ』の世界観や設定を知ることから始めました。

木下 シナリオだけではなく、“理の五竜”などの設定を決める部分から入ってもらったので、かなりの時間を割いていただきました。野島さんからいただいた会話劇を見たときは、ものすごく感動しました。すぐに続きが読みたくなって、「早くおかわりください」と言ったのを覚えています(笑)。

松川 1ヵ月くらい経つと、チームのみんながニコニコしながら野島さんとやり取りしているんですよ。私は思わず「ね、大丈夫だったでしょ」と開発チームに言っちゃいました(笑)。

木下 それから現場での物作りが始まって、野島さんから出てくるアイデアもあるし、開発チームからこういうものをやりたいという要望もあるしで、かなり試行錯誤しながら開発しました。

――宇野さんは開発メンバーとしてシナリオ制作を担当されているのですよね。

宇野 はい。野島さんは、開発側からの無茶な注文をいっしょに優しく考えてくださって、非常に楽しくプロットのアイデアを出し合うことができました。ほかにもいろんなアイデアをいただくなかで、野島さんから“ぶっとんだ”アイデアをもらったり。こちらも驚きっぱなしでした。

木下 野島さんからいただく“ぶっとんだ”展開は、「ごめんなさい、スケジュール的にムリです!」と謝ることも多かったです(笑)。

――その“ぶっとんだ”展開というのは?

宇野 シーズン1でメルゴダが復活した際に、白竜神殿に天空からビームが撃ち落とされ、白竜がそのビームをバリアを張って跳ね返すという。これによって多数の敵と味方が死んでしまい、また白竜もビームを跳ね返すのに力を使って死にかけるというお話でした。

野島 メルゴダ復活のイベントムービーを作ることを聞いていたので、もしかしたらアリかなと(笑)。ほかのアイデアも最初は「できないできない」と言われたんですが、完成したものを見せてもらったら、けっこう再現してもらえていましたね。

木下 野島さんのシナリオに精一杯お応えしようと、がんばらせていただきました。

松川 野島さんのシナリオに触発されて、エフェクト班がもっと凝ったものにしたいと言ってきて、そのために工数計算をやり直すなんてハプニングもありました。

宇野 野島さんが参加してくれたことで開発チームに「いいものを作りたい」、「自分たちが作ったことのないものを作ろう」というポジティブな空気が生まれましたね。

――宇野さんは、野島さんと開発チームとの橋渡し的な役目も担っているのでしょうか?

野島 宇野さんが開発から吸い上げた話を私が解釈し、何ごとかを考えて宇野さんに返す、みたいな感じでしょうか。どこまでならできるというのはその都度教えていただいています。最近はできないことがだんだんとわかってきましたが……無理を言って開発チームにこちらの要望を伝えてもらったときには、もう宇野さんも共犯です(笑)。

松川 宇野が現場から突き上げを食らうことも多いですね(笑)。

宇野 もう、すごいですね(笑)。「こんな序盤から2匹も竜を登場させないでください!」とか「スケジュールを考えてください」とか。

――紆余曲折、侃々諤々あったわけですね(笑)。オンラインゲームのシナリオ作りは、パッケージタイトルとは制作手法や表現方法などが異なるのでしょうか?

野島 オンラインゲームの場合、次の物語を遊ぶまでに間があったりする(レベル上げをしたり、休んでいたりする)ので、いざその物語をプレイするときにユーザーがどんな気持ちで入ってくるかわからないんですよ。どれくらいのテンポで物語を展開していけばいいのか、けっこう悩みましたね。

宇野 シーズン1では受注条件が原因で、メインシナリオの進行中に間が開いてしまうことが多かったと思います。シーズン2ではメインクエストを止めることなく遊べるように設定し、よりシナリオをスムーズに楽しんでもらえるようにしました。

野島 とは言っても、連続でやるかどうかはユーザー次第なので、すぐに次をやらないと話がつながらないといった書きかたにはしないようにしました。宇野さんとは毎回手探り状態で話し合っていましたね。

――たしかにシーズン2からメインクエストが一気に進めやすくなりましたよね。

木下 シーズン1は、パーティーを組んでボスを倒すところにオンラインアクションの醍醐味があるべきと思っていたんですが 、そこで難易度的に詰まってしまうと物語を純粋に楽しんでもらうことが難しくなってしまうという問題がありました。ですので、シーズン2からはメインクエスト自体は楽しく、物語の展開をテンポよく感じてもらえるような難易度にしています。その代わりに、メインクエストの後に用意しているエクストリームミッションやグランドミッションなどのコンテンツは、アクションのチャレンジ性が高いものにしています。

――なかには、ボスで苦戦したほうが“世界を救った感”があると思う方もいそうですね。

木下 たしかに難易度が高ければアクションが上手な人ほど世界を救った感覚を体験しやすいと思うんですが、その人たちに合わせてしまうと、それ以外の人たちをふるいにかけることになってしまいます。人によって感じる難しさが極端に異なるのと、パーティーメンバーが4人集まるかどうか、最前線の装備を持っているかどうかなども影響するので。メインクエストは物語が主体である以上、楽しんで攻略できる難易度にしたいなと思っています。シーズン2以降は、その目線からメインクエストを調整しています。

――シナリオ進行上、レオや覚者隊などの登場キャラといっしょに戦闘を行うこともありますが、アクションゲームとしてNPCを動かす点で苦労などはありますか?

宇野 まずは戦うキャラクター、戦わないキャラクターの設定を決めた後に、それぞれのジョブを考えます。レオとヴァネッサはファイター、イリスはハンター、ファビオはシーカーといったように、なるべく被らないようにしていますね。そのジョブを決めるのにけっこうな時間がかかります。

木下 その後に実際にどういうアクションをさせるか、どういう技を盛り込むかという部分でも悩みますね。NPCはプレイヤー用に用意したパラメーターとは別次元で動いている存在なので、そこの調整にも時間がかかります。フィールドを連れ回したりとか、段差を登らせたりとか、パートナーとしての挙動はいろいろと行いたいんですが、NPCを動かすコストだけが莫大に膨れ上がってしまうのでそうもいかず、と大変です。

――「レオはかっこよく動かさないと!」といった感じでしょうか(笑)。セリフがない主人公(覚者)というのは、シナリオを作るうえでやりづらかったりするのでしょうか?

野島 とくにはありませんでしたね。パッケージのゲームの場合だと主人公とプレイヤーをいかにくっつけるか、その気になってもらうかということを念頭に置いて設定を練るんですが、オンラインゲームではプレイヤーは最初から自分は主人公のつもりで入ってきてくれていると思うので、そういう意味ではすごく楽なんです。それに『DDON』の場合は、しゃべらない=意思表示をしないというわけではなく、頷くなどの最小限の意思表示はするので、主人公のなかにプレイヤーが入っているという認識で物語を書くようにしています。そこは、DDON』で初めて達した境地だと思います。

――ちなみに、約1年の周期でシーズンが進行していますが、シナリオ制作のペース的に辛い、あるいは楽だということはありますか?

野島 あんまり辛いと思ったことはありません。でも今後シーズンが進んでいくと、ネタを絞っていくのが難しくなるかもしれません。ネタがなくなっていくということではなく、「あれもやりたい、これもやりたい」となって、限られた中にどれを盛り込んでいけばいいか、そこに苦労する気がします。