Star Maid Gamesの『Cibele』を紹介する。

●パステルカラーの世界とのコントラストが、苦くて痛い。

 Star Maid Gamesが11月2日にSteamほかで配信予定のアドベンチャーゲーム『Cibele』(プラットフォームはPC/Macで、参考までに海外価格は8.99ドル)。カリフォルニア州カルバーシティで開催中のインディーゲームイベント“Indiecade”で全3章立ての本作の1章部分をプレイしてきたので、その模様をお伝えする。

 『Cibele』のテーマは、オンラインゲームを媒介にした大学生世代の性の問題だ。物語は2009年2月、19歳の“ニーナ”が日本のアニメのポスターやグッズで埋め尽くされた自室のパソコンに向かうところから始まる。
 オンラインゲーム“Valtameri”をプレイしている“ニーナ”は、最近“Ichi”というハンドルネームの男性と親密によくプレイしており、彼氏(または半元カレ)を放置気味の様子。彼がパーティーで別の女子と親しくしているのを発見した友達から「オンゲばっかやってないでそろそろなんとかしないとヤバいわよ」と心配するメールが届いいても、あまり気にも留めない。オンゲではモテるんだからしゃーないね。

▲結構かわいいニーナ。でもヲタっ娘なので自室のポスターはマクロスとかです(なお恐らく私物)。

 ゲームは大きく分けて、デスクトップのパート、Valtameriのパート、そして実写パートで構成されており、ゲーム中にボイスチャットの音声が入ってきたりショートメッセージが届いたり、現実の“ニーナ”とゲーム中の自キャラ“Cibele”がところどころ重なり合うように表現される。CibeleがIchiと協力してボスを倒したりするのに連れて、ボイチャで微妙に際どい話をダラダラ喋りながらロールプレイしている本人たちも引き摺られるように親密になっていくのだ(Valtameriには協力して雑魚敵を倒していくことで、ボスを一瞬行動不能にするSnareゲージというシステムがわざわざ設けられている)。

 ちなみに“ニーナ”を演じるのは、メインクリエイターであるニーナ・フリーマン氏本人。際どい実写シーンや(学生っぽい割とバカな)プライベート写真なども体を張って演じており、生々しいリアリティを与えている。
 (『Cibele』の登場人物としての)“ニーナ”自身がCibeleとIchiの関係に引き摺られるように、ニーナ・フリーマンという現実の人間がセクシャルな部分に生々しく踏み込んでいく“ニーナ”という人物を重なるように演じることで、“ニーナ”としてプライベートなメールや写真を覗き見るプレイヤーに、何か見てはいけないようなものを見ているような複雑な気分を与えているのが面白い。

▲多分本人が本当に個人的に撮った写真をデスクトップから見られる。壁紙はめっちゃ魔法少女。

 Indiecadeのデモは、ValtameriでAKKAというボスを倒した後(ちなみに戦闘自体は自キャラのヒットポイントなどが特にないので、ひたすらクリックしてるだけで終わる)、“ニーナ”が下着姿になってピースサインで写真を撮るところで終わる。もちろん、個人的に男に送るためのものだ。パステルカラーのファンシーなファンタジー世界で繰り広げられる微妙に際どい会話と、そこから一転して薄暗い部屋で撮影される生々しい肉体の写真というコントラストは、“ニーナ”の不安定な欲望を暗示しているかのようだ。

▲Valtameri部分は、基本的に左クリックだけで移動&ターゲット&攻撃する簡易設計。ボイチャのやり取りを聞いたりメールやショートメッセージを見たりするのがメイン。

 ニーナ・フリーマン氏は、昨年のIndiecadeに出展されたFLASHゲーム『How do you do it?』(Steam版もある)で、自身の体験を元に、まだ性教育をちゃんとされていない11歳の子供が人形をガチャガチャぶつけて、うわさに聞くセックスなるものを自分なりに再現してみる様子を描き、話題を呼んだ。

 『Cibele』はその延長上にある、「大人になっていろいろ育ったけど欲求と関係を綺麗にコントロールできない」時期の問題を、同じく実話をベースにえぐり出している。果たして、この関係がうまく行ったりするのか、やがてすっぱり切れて落ち着くのか、あるいはインターネット歴がそれなりにあれば周囲で一度や二度くらい耳にしたことがあるだろう“ヤリ捨て”とか“サークルクラッシャー”的なえぐい事態に発展していくのか? 製品版は全編で1時間半から2時間程度を予定しており、公式コメントとして「ヘッドフォンをして一気にプレイする」のを勧めている。

▲薄暗い部屋での実写シーン。下着姿になったりもするんだけど、サービスカットなんかじゃなくて、得体の知れないえぐさが残る。