セガのPS Vita/PS3用ソフト『初音ミク -プロジェクト ディーヴァ- F 2nd』のクリエイターインタビューをお届け。こだわりが詰まったシステムやリズムゲーム、PVについて語っていただいた。

●本当は全曲・全モードについて聞きたかったのですが、丸1日以上かかりそうだったので泣く泣く断念しました(記者)

 電子の歌姫・初音ミクが主演のリズムゲーム最新作『初音ミク -プロジェクト ディーヴァ- F 2nd』(2014年3月27日発売)。ゲームシステム、グラフィック、演出など、あらゆる面において前作からパワーアップした本作について、セガの林誠司プロデューサー、大坪鉄弥ディレクターにお話をうかがった。
※このインタビューは、週刊ファミ通2014年4月17日号(2014年4月3日発売)に掲載された文に加筆したものです。

左 セガ プロデューサー
林誠司氏 Seiji Hayashi
 シリーズ第1作でディレクターを、第2作以降でプロデューサーを担当。シリーズのすべてを知るクリエイター。動物全般のモデリングに対し、並々ならぬ情熱を注いでいる。

右 セガ ディレクター
大坪鉄弥氏 Tetsuya Ohtsubo
 シリーズ第2作以降でディレクターを担当。スタッフのスケジュールと、ゲームのクオリティー管理の要となる存在。キャラクターとメガネのモデリングに対し、並々ならぬ情熱を注いでいる。

■これまでのDIVA←→これからのDIVA

――ついに『初音ミク -プロジェクト ディーヴァ- F 2nd』が発売されましたが、いまはどのようなお気持ちでしょうか?

林誠司氏(以下、林) 今回は発売が延期してしまい、お待ちいただいたファンの皆さんには、ご迷惑をおかけしてしまいました。ようやくゲームをお届けすることができてよかった、ホッとしています。

大坪鉄弥氏(以下、大坪) 皆さんをお待たせしてしまい、申し訳ございませんでした。ゲームの内容については、前作を超えるものを作れたと思っていますが、皆さんにどう評価していただけるか、ドキドキしています。

――本作のテーマ“これまでのDIVA←→これからのDIVA”には、どんな意味が込められているのでしょうか。

 前作は、PSPで発売した3作のことは一度忘れて、新たにシリーズを立ち上げ直そうという気持ちで作りました。ですが、PSPの3作にも、シリーズにとって大事な曲や衣装がたくさんあります。ユーザーの皆さんから「再登場させてほしい」という声も多くいただきましたので、「これまでを、これからにつなげていきたい」、「シリーズのつぎの段階に進みたい」という気持ちを込めて、このテーマを定め、開発を進めていきました。

――シリーズを総括するものを目指したのではなく、つぎのステップを見据えてのテーマだということですね。

 総集編というつもりは、まったくありません。楽曲のことを、“過去のヒット作”だと捉えたことはないんです。そういう言いかたは、ぜったいにしません。それぞれの楽曲は、いまこの瞬間も、新しいリスナーさんを増やしている、生き続けているものであって、過去のものではありません。一度PSPでゲームの形にさせていただきましたが、生き続けている楽曲を、“エフ”のクオリティーで再びゲームにしたい、という考えのもとで今作を作りました。

――収録楽曲は、どのように選んでいったのですか?

 PSPで作っていたころは、無我夢中で、そのころリアルタイムで公開された楽曲を収録していたのですが、今回はこれまでのシリーズ作と、初音ミクの歴史を踏まえて、バランスを考えながら選んでいきました。2012年末から2013年初めに実施した、“Project DIVA 収録曲総選挙”の結果も、選曲の後押しになりましたね。リメイク曲については、皆さんがミクさんを好きになったきっかけの曲、ミクさんを好きになったときのことを思い出すような曲を選ぶようにしました。今回の収録曲のうちのどれかが、皆さんにとっての節目の曲だったらうれしいですね。
※“Project DIVA 収録曲総選挙”の結果は→こちら

■さらにクオリティーを追求した映像

――“前作を超える”ものを作るべく、とくにこだわった点、苦労した点を教えてください。

大坪 本作は、前作の資産を活かして、コンパクトに作ったというわけではないんです。もちろん、活かせるところは活かしていますが、一度要素を全部バラして、さらにクオリティーを突き詰めて構築していきました。たとえば、映像について言えば、PS Vita版の画質は前作より改善しましたし、ライティングの機能などを強化させました。キャラクターが半透明になる演出も本作で実現したものですね。

 PSPで登場した曲についても、リメイクだからと手を抜いたりはしていません。初登場曲と同様、力を入れて作りました。

大坪 再収録曲のPVを作っていると、やっぱり「PSPのミクさんもかわいいなあ」と思って。そのかわいさを超えるにはどうしたらいいか、考えましたね。

――3人のミクが登場し、衣装が変わっていく「メルト」のPVなどは、まさに“これまで”と“これから”の象徴だと感じます。

大坪 「メルト」のPVには、いままでのシリーズ作の演出やデザインを盛り込んでいます。チャンスタイム成功演出には、1作目のSEが入っていたりしますよ。

▲「Packaged」(アーティスト:kz) は、シリーズ1作目を作っているときに、林氏が初めて実機でリズムゲームPVを確認した楽曲。そのときようやく、ゲームの完成形をイメージすることができたとか。林氏はこの曲を聴くと、シリーズ1作目開発当時に工事中だった京急蒲田駅のホームを思い出し、気持ちがリセットされるという。
▲今回の収録にあたり、「Packaged」のモーションはすべて撮り直されている。
▲オープニングムービーでみんなが合流して向かった先が、このライブ会場だった……というイメージの、「DECORATOR」リズムゲームPV。本作の開発中、セガのモーションキャプチャースタジオが新しくなり、6人のモーションを同時にキャプチャーすることが可能になったという。「DECORATOR」のPVは、新スタジオがあったからこそ実現できたもの! なお、モーションには幻の“6人1本撮り”バージョンも存在するとか。
▲kz(livetune)さんの最初の曲「Packaged」と、最新の曲「DECORATOR」が収録されているということも、本作のテーマ“これまでのDIVA←→これからのDIVA”を表現していると言える。ちなみに記者は、KAITOが空から降りてくるところが大好きです。
▲3つのモジュールを設定でき、PV中でミクがお着替えする「メルト」(アーティスト:ryo)。電脳世界のシーンは、「ゲームのロード中、ミクさんは裏でこんなことをしているんですよ」というイメージで作られたもの。
▲“これまでのDIVA←→これからのDIVA”というテーマにぴったりな「メルト」は、今回、リズムゲーム選択画面でいちばんに上に表示される。この表示順にも、スタッフの思いが込められている。ちなみに記者は、このツインテールの回転っぷりが大好きです。
▲レンとKAITOのデュエット曲「erase or zero」(アーティスト:クリスタルP)の背景のイメージボードは、ロボットアニメ制作に参加しているスタジオが手掛けたもの。PVの内容も、ロボットアニメ的なシーンを意識しながら作ったとか。言われてみれば、ロボットアニメのオープニングっぽい……!
▲コクピットに向かいそうなレン。
▲仕事というものと向き合う人々への応援ソング「Hello, Worker」(アーティスト:KEI)。オフィス内の風景は、セガ社屋をモチーフにしているとのこと。ルカが電話をしている席は、林プロデューサーの席がある場所。
▲一方エントランスは、クリプトン・フューチャー・メディアのオフィスがあるビルをモチーフに作られたという。
▲リン、ミク、レンのトリオ曲「Knife」(アーティスト:れるりり)。前作収録の「ACUTE」とはまた違う形の三角関係が描かれている。ここで見られる、キャラクターが半透明で表示される演出は、本作から導入されたもの。
▲「Knife」のPVでは、3人が刃を交え、悲劇的な結末を迎えるが、リズムゲームが終われば、3人でパチパチと楽しそうにしている。そこまで含めて、一連の舞台として捉えてほしい、とのこと。

■譜面の形にもこだわりが

――映像はもちろんですが、譜面の形を楽しむのも、『初音ミク -プロジェクト ディーヴァ-』シリーズの楽しみですよね。

大坪 はい。譜面も担当者がかなりこだわって作っています。たとえば、「桜ノ雨」。難易度NORMALは、基本的にふたつのボタンで構成しますが、「桜ノ雨」では○ボタンと□ボタンを使います。理由は、色が桜色だから。それから、サビの「さくーらのーあめー」というところで、メロディアイコンが桜の花びらのように、ひらひらと落ちてくるところもポイントです。

▲リズムゲームならではの春の風景が楽しめる「桜ノ雨」(アーティスト:halyosy)。

――リンクスクラッチ/フリップを成功させると、軌道が図形を描くのもおもしろいです。

大坪 「ルカルカ★ナイトフィーバー」の冒頭では、PVに合わせてピシッと星が描けますね。

 映像と譜面の連動は、1作目からやりたかったことです。本作では、ゲーム性を保ちつつ、連動させられていると思います。

大坪 「カンタレラ~grace edition~」は担当者から「高貴な感じを出すために、揺れを大きくしてみました」と言われて。「おもしろいから、いいだろう」とオーケーを出しました(笑)。

▲星のモチーフが随所で見られる「ルカルカ★ナイトフィーバー」(アーティスト:samfree)。
▲メロディアイコンが優雅に揺れながら落ちてくるさまと、貴族のゴージャスな衣装がひるがえるさまが重なる「カンタレラ~grace edition~」(アーティスト:黒うさP)。
▲シリーズ2作目の「カンタレラ」PVを作っているとき、じつはリフトのモーションも撮影していたという。残念ながら当時は収録を見送ったが、本作で新たなモーションを撮り直し、リフトがついに実現!
▲「メテオ」(アーティスト:じょん)では、スクラッチ/フリップ入力時に、専用のエフェクトが表示される。「メテオ」の真のPVは、リズムゲームプレイ時に見られるといっても過言ではない。
▲「カゲロウデイズ」(アーティスト:じん)では、どの難易度でも、メロディアイコンは○と×、星型しか出現しない。これは、楽曲のイメージに合わせ、「赤色と青色しか登場させたくない!」という譜面担当のこだわりによるもの。
▲リンクスクラッチ/フリップによって描かれる模様は……ループする世界を表現する∞。

■可能性広がるエディットモード

――エディットモードは、本作で大幅にパワーアップしたという印象を受けます。

大坪 PSPのころは、ユーザー間のデータ受け渡しがしづらいことがネックになっていました。それで、前作ではPlayStation Networkにアップできるようにしたのですが、楽曲データをどう手配するかという課題は残ったままでした。この問題をどうにかしたい、というのはシリーズの悲願だったので、piaproとの連動を実現できて、本当にうれしかったです。

――作る人にとってはもちろん、遊ぶ人にとっても、うれしい仕様ですよね。piaproから音源データを入手できることによって、エディットデータを、より気軽に遊べるようになりますから。

大坪 いままで、動画投稿サイトに上がっていたエディット動画を見るだけだったという方が、手元にエディットデータを集めて楽しんで、そして「自分も作ってみようかな」と思ってくださったらいいな、と。まずはシンプルモードから触ってみていただきたいですね。

 今回の連動によって、クリエイターさんたちが、piaproにもっともっと楽曲をアップしてくれるようになったらいいな、と思っています。エディットモードから、創作の輪がさらに広がっていったらうれしいですね。

――エディットモードのおかげで、ゲーム発売後もずっと、新しい譜面のリズムゲームを楽しめるというのは、すばらしいことだと思います。

 エディットモードはもともとそういう意図で作ったのですが、これまでは遊ぶまでのハードルが高かったんです。エディットデータをいつまでも楽しめるように、皆さんに積極的にpiapro連動を利用していただきたいです。

▲サンプルデータを作ったエディット職人の工夫には、スタッフも驚いたとか。たとえば、「Glory 3usi9」(アーティスト:ナノウ 映像/譜面エディット:水の人)のサンプルデータPVの最後で表示されるこの花束。アイテムのみを配置する機能はないため、花束を持った人物を地面の下に配置し、花束が落ちているかのように見せている。
▲サンプルデータを編集して、キャラクターの高さを変えてみると……ほら、花束を持ったキャラクターが出てきた!

■シリーズの今後の展開は?

――今後のエクストラデータ配信について教えてください。

 ゲーム発売日と同時に、スキンやARライブ、ライブスタジオのデータを配信しましたが、今後は楽曲や衣装なども配信していく予定です。

大坪 これから作っていきますので、少々お時間をいただきますが、ご期待ください。

――シリーズの次回作については、どうお考えですか?

 1タイトル作るごとに完全燃焼しているので、まだ考えていません。まずは皆さんに『初音ミク -プロジェクト ディーヴァ- F 2nd』を遊んでいただき、ご意見をいただいて、「次回作がいけるかも!」と思えたら、考えていきたいですね。

――ファンとしては、PS4で新作が出るのか!? なども気になるところだと思いますが……。

 まったくの未定ですが、私個人としては、想像力をかきたてられるハードだと思っています。本当に、可能性を感じますね。

大坪 PS4は、もちろん無視できない存在です。パフォーマンスも高いですし。いままでは、各要素をギューギューと詰め込んできましたけど、PS4ならやりたいことがもっとできるようになりますしね。

――今後、新しい展開が発表されるのを楽しみに待ちたいと思います。それでは、最後に読者へのメッセージをお願いします。

 お待たせしてしまいましたが、ようやく『初音ミク -プロジェクト ディーヴァ- F 2nd』をお届けすることができました。スタッフ一同、クリエイターの皆さんが作られた曲や衣装のよさに負けないよう、ゲームとしていいものになるように作りましたので、楽しんでいただけたら幸いです。

大坪 当初の予定より少しお時間をいただいてしまいましたが、全力を注いで、なんとか完成させることができました。リズムゲームはもちろん、エディットや写真撮影のモードも充実しています。このゲームが、何かものを作ること、CGMの支えになっていたらうれしいです。ゲームを遊んで終わり、ではなくて、その先に広がりがあるような形で活用してください!

▲ファミ通.comの『初音ミク -プロジェクト ディーヴァ- F 2nd』特設サイトでは、アーティストの生の声を掲載! こちらもチェックしてみてください♪
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初音ミク -プロジェクト ディーヴァ- F 2nd
メーカー セガ
対応機種 PS3プレイステーション3 / PSVPlayStation Vita
発売日 2014年3月27日発売
価格 各7000円[税抜]
ジャンル リズムゲーム / 音楽
備考 ダウンロード版は各6286円[税抜] プレイステーション Vita版はPS Vita TV対応(リズムゲームのみ) ※オプション設定が必要です。