『The Bureau: XCOM Declassified』試遊リポート――エイリアンの侵略から地球を守れ! ストラテジーゲームの名作から生まれたTPS_01

 2K Gamesは、TPS(三人称視点シューティング)『The Bureau: XCOM Declassified』PC日本語版を8月23日よりSteamやAmazon.co.jpでダウンロード販売する。

 なおSteamでは予約販売がスタートしており。予約購入で通常価格(59ドル99セント)より10%割引されるほか、予約者の人数によりさまざまな特典がつく。執筆時点現在では、追加コンテンツ“Codebreakers Bonus Mission”の付属が確定しており、『スペックオプス ザ・ライン』の無料ダウンロードもほぼクリアーする見込みだ。

 さて、エイリアンの侵略に立ち向かうストラテジーゲーム『XCOM』(旧X-COM)シリーズから生まれた本作の出来はどうなのか? テイクツー・インタラクティブ・ジャパンのオフィスで試遊する機会を得たので、プレビューをお届けしよう。

世界観:1960年代アメリカ、ソ連の代わりにやってきたのはエイリアンだった

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 本作の舞台は1962年アメリカ。冷戦の恐怖に国中が包まれる中、主人公の情報局員ウィリアム・カーターは、謎の物体“アーティファクト”をマイロン・フォークなる人物に届ける任務についていたところ、襲撃を受けてしまう。
 アーティファクトの発動により気を失ったカーターが目覚めると、襲撃者が死亡しており、一方で銃撃による傷は癒えていた。なんとも不可思議な事態だが、それよりも目下の問題は、周囲がエイリアンによる攻撃で致命的な被害を受け、破壊されつくしていたことだ。カーターはフォークの元に向かい、這々の体で脱出する。
 ヘリに向かって脱出した先は、東側勢力の侵攻に備えて密かに建設されていた基地だった。「ようこそXCOMへ」フォークは各地から集められてきたスタッフたちを前に、未知の敵との戦いを宣言する。この最後の砦から、アメリカ奪還のための戦いをスタートさせるのだ……。

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▲基地内部は、まるでスパイ映画に出てくる諜報機関の本部。

 設定面では、冷戦の恐怖とエイリアンによる侵略を重ね合わせたオールドSFのスタイルを踏襲しつつ、スーツを着た諜報部員たちによる冷戦スパイ小説っぽいハードボイルドなところもあるのがいい感じ(本作の実写版トレイラーもそんなテイストで作られている)。
 ちなみにゲーム中で手紙や書類を読むことで、カーターたちは本人の知らない内に有事の際のエージェント候補として調査されていたことがわかるのだが、カーターの評価書類には当時のFBI長官であるジョン・エドガー・フーバーのコメントがあったりして、ニヤッとさせられる。

ゲームプレイ:仲間に支持しながら戦うタクティカル・シューター

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 さて、プレイヤーはウィリアム・カーターとなり、仲間のエージェントを選んで、彼らともに出撃する。基本的に各ミッションは一本道のTPSなのだが、ストラテジーゲームをベースに持つ本作らしく、仲間に指示を出しながら戦う戦術性を重視した内容となっている。

 本作にはシリーズの近作『XCOM Enemy Unknown』同様に、カバーリング(障害物の高さによって全身と半身がある)や、身体の露出度に応じたダメージ値の変動があり、仲間の行動をすべてAI任せにしていては、攻撃・防御が十分に行われずピンチに陥ることも多い。例えば身を隠している敵を正面から撃っても、ダメージがあまり入らないのだ(もっともカーター本人は自由に狙いをつけられるので、隠れているエイリアンのわずかにはみ出た部分を狙ってダメージを与えることなどもできる)。
 隊員が死んだら復活しないのもシリーズの定番。ダウンしている間は蘇生することもできるが、高難度では蘇生可能な時間も短い。新人を新たに配属することもできるが、毎度毎度隊員を育て直すのも現実的ではないので、まずはそう簡単に死なせないよう指揮することも、リーダーの役目と言えるだろう。

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▲死んだらサヨウナラ。せっかく一流に育てたエージェントを失わないためにも、カバーリングと蘇生はマジで超大事!
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 そこで用意されているのが、リング型のインターフェース“バトルフォーカス”だ。
 このバトルフォーカスを使うと、仲間に移動や行動の指令を出したり、カーターの特殊スキルを使うことができる。そして仲間を敵集団の側面に行かせて十字砲火を仕掛けたり、敵の行動に応じてカバーリング位置を修正させたりして、攻防ともに有利な条件で戦うのが基本戦術となる。

 ちなみに、激しい銃撃戦の最中に指示を出すのはややこしいと思うかもしれないが、バトルフォーカスを出している間は戦闘がスローモーションになるので、「この場所に移動してこの敵を撃て!」、「お前はこっちに移動して敵を陽動しろ!」といった細かい指示もガンガン出すことができるのでご安心あれ。

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▲バトルフォーカスを使って指示を出し、戦闘を有利に進める。側面からの攻撃は大ダメージ。チームが分断されるない程度にメンバーを展開していきたい。

カスタマイズ:クラス固有の能力を活かした強力なエージェントを作り出せ

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▲服装の色などは簡単に変えられる。

 エージェントには、以下の4種類のクラスが存在し、経験値を積むとレベルアップして、スキルや能力を強化できる。どの能力を獲得するか選択することもあり、それによって使い勝手も変わってくる。

■コマンドー
 前線で戦うパワフルなクラス。“パルスウェイブ”(衝撃波を出して吹き飛ばす)、“プラズマエリア”(一定範囲を焼きつくす)、“挑発”(敵の集中を自分に向ける)といったスキルを持つ。

■偵察兵
 いわゆるスナイパー。“陽動”(ホログラムを出してそちらに敵の注意をひきつける)、“クローク”(姿を消す)といった敵の視線をコントロールするスキルのほか、高レベルになると一帯を爆撃する“砲撃要請”も使用可能になる。

■工兵
 さまざまなガジェットを駆使して戦うクラス。敵を一時的に散らすスキル“散開”のほか、“レーザータレット”(自動砲台を設置する)、“地雷”(地雷を設置する)といったスキルを持つ。

■支援兵
 スキル“戦闘刺激剤”(戦闘能力向上)で仲間の能力を高めたり、シールドを張ったりと、ほかの仲間と連動することで輝くクラス。ダウンした仲間の出血を遅らせたり、アーマーを持つ敵を削りやすくしたりといった強化も可能。

 彼らの持つスキルを組み合わせてコンボにすることもでき、例えばカーターのスキル“リフト”(念動力で敵などを浮かせる)は、偵察兵のコマンド“狙撃”と足せば、浮いて無防備になった敵をスナイパーライフルで撃ち抜く強力な攻撃になる。工兵のレーザータレットと組み合わせれば、今度は空中からバカスカタレットに撃たせる空中砲台の出来上がり。仲間のチョイスによっては、コマンドーのパルスウェイブで吹き飛ばしたところを工兵の地雷で爆破といったこともできる。
 人類は圧倒的に不利で耐えるシーンも多いのだが、それだけに、うまくコンボでハメ倒した時の「ざまぁみろ!」という快感があるので、各クラスの強化・スキル一覧を見ながら、どれを取ればどんな戦術が可能になるか、じっくりプランニングしておくのをオススメしたい。

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▲どの武器を与え、どのスキルを習得させるか?

戦闘とドラマにフォーカスし、サバイバルホラーテイストに

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▲普通の生活がある日突然崩壊する恐怖……。

 XCOMの重要な要素として、作戦(戦闘ミッション)によって得た資金や技術によって基地を拡大したり、エイリアンや彼らの技術を研究したり、UFOに対抗する防空網を展開したりする組織運営のパートがあるのだが、本作ではその一部である部隊の育成・カスタマイズがあるぐらいで、基地や研究のマネージメントはなく、ストーリーミッションに応じて勝手に進行する模様。まぁちょっと残念だけど、そういうストラテジックなことがしたい人は本筋のストラテジーゲームでということで。
 なお、プレイした範囲では確認できなかったものの、どのミッションから進めるかという選択の余地は残されており、サイドミッションではカーター自身が行かずに隊員を派遣して済ませることもあるらしい。

 一方、運営パートをかなり省略したのと引き換えに、ドラマ部分はかなり強化されている。ミッションの合間にはそれぞれややこしい性格をした組織の面々や、派遣先で出会った人々との会話が入るのだが、これが海外ドラマっぽくてなかなか楽しい。
 エイリアンの戦略もミステリアスで、重要人物を操っていたり、うわ言のように生前(?)のセリフを繰り返しては辺りをうろつくだけの“スリープウォーカー”に人々を変えていたりして、なんとも不気味。

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▲エイリアン襲撃の痕跡として残される黒い粘液や幾何学的な構造物は、なかなかのビジュアルインパクト。

 ちょっと話がそれるが、FPSとして本作が最初に発表された2010年当時のトレイラーは本当に恐ろしかった。終始、黒いネバネバしたタールのような生物(本作でも出てきて、ストーリーが進むと武器として使うこともできる)と戦うのだが、あらゆるFPS/TPSで人型の敵を相手に“ヘッドショット”するのが基本になっている中、頭がないコイツらを相手にどうすればいいのかわからなくて怖すぎる! 正体不明な相手と探り探り戦わなければいけないXCOMらしさが詰まっていたと思う。

 とはいえ、人型エイリアンがメインになった現在でも、彼らの目的を推測し、研究を進め、不安とともに絶望的な戦いに挑まなければならない分厚いストーリーを十分に味わえるのは保証できる。しかも「とにかく目に入ったものを全部ブッ殺す!」という景気のいいランボースタイルではなく、仲間の死を避ける戦術を練りながらの戦いだ。

 というわけで、ストラテジーゲームとしてのシリーズの要素をうまいことTPSスタイルに変換し、サバイバルホラーシューターに仕立てていると感じた。日本語版がPCオンリーなのはちょっと寂しいが、ただでさえ洋ゲーのリリースが薄くなるこの季節、俄然気になるタイトルと言えるだろう。あとね、映画「裏切りのサーカス」とかの渋い諜報オジサンにグッと来る人はマジで要チェック!

 ちなみに、ストーリー的にエイリアンの襲撃やThe Bureauの発足から全部描かれているし、時代設定もジャンルも全然違うので、シリーズをプレイする必要はナシ。ただ、もしこの機会に名作と名高い『XCOM Enemy Unknown』をプレイするなら、PCとiOS向けに日本語版がリリースされている。個人的にはタブレット版の出来が恐ろしくいい(ただしマルチプレイはない)ので、そちらを真剣に推薦したいところです。

(取材・編集・執筆:ミル☆吉村)